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2008.04.18

出展準備(1)〜すべては新規見込み客獲得のために〜

出典:展コミ / 庭山一郎

展示会出展の目的は「ブランディング」から「見込み客の獲得」へ急速にシフトしてきています。より多くの見込み客を獲得するための展示会出展のプランニングと注意点とは?

さて、第2回はいよいよ展示会の出展についての具体的なプランニングの注意点です。

出展の目的
マーケティングにおける展示会の位置づけの急激な変化

もともと企業が展示会に出展する目的は「ブランディング」と「見込み客の獲得」と言われてきました。なかには「情報収集のために出展する」という意見もありますが、情報収集なら展示会に行けば済む話ですから、やはり基本的にはこの2つが大きな目的と言ってよいでしょう。

しかし、ここ数年でこの出展目的が「ブランディング」からもう一つの「見込み客獲得」へと急速に軸足が移ってきました。このことは出展企業が広告代理店や制作会社を選定するコンペのオリエンテーションに明確に現れています。アンケートや名刺を集めるだけではなく、集めた見込み客情報をどう「活用」して営業案件に結びつけるのか、という部分までの提案を求める企業がふえているのです。未だ派手なブースデザインとキレイなコンパニオンで勝負する制作会社や代理店が多いですが、ただの「お祭り」で満足する企業は減っているのです。

イベント主催者やブース施行業者の中にはこうしたシフトを悲観的にみる人もいるようですが、私はこうしたシフトは非常に健全な変化だと考えています。数年前のように企業の展示会への出展目的が「ブランディング」つまり業界の内外へ自社の勢いを表現するためであるなら、予算を縮小して少ない小間数で出展することはありえませんでした。小間数を減らせば、わざわざコストを掛けて「元気がない」ことをアピールすることになってしまうからです。

しかし、出展目的が「見込み客の獲得」であるなら、たとえ会社から予算を縮小されても小規模で出展することが可能になります。名刺やアンケートの獲得数は必ずしも小間数に比例するわけではありません。

しかも、「ブランディング」では指標が個人の認知度になりますから、どうしても費用対効果を算出することはむずかしいのですが、見込み客獲得なら明確に数値化が可能ですし、数値による展示会効果の検証も可能なのです。

ですから出展の目的を「見込み客獲得」にシフトすれば企業も「出展するか、やめるか」というゼロサムではなく、ブースの小間数を減らす、ブースの制作費を低減するなどの選択肢が出てくるのです。

私の会社ではお客様が展示会で収集する見込み客の獲得単価を算出してレポート化し、展示会の出展効果を定量的に評価できるようにしています。

これにより、収集する名刺やアンケートの数が同じであっても出展コストを抑えることができれば名刺1枚あたりの獲得単価を下げることが可能になるのです。

欧米のビジネスショーと日本の展示会の明確な違い

展示会を活かせないもうひとつの理由は「展示会で集める名刺は量より質」という考え方です。

「展示会で集める名刺やアンケートは量ではなく質が重要だから、名刺の枚数ではなく、商談の件数で評価しましょう、そのためにブース内に商談コーナーを設けましょう…」という考え方を耳にしたことはないでしょうか。

ご注意いただきたいのは、この考え方は多くの場合日本では当てはまらないということです。

アメリカやヨーロッパのビジネスショーに行かれた方ならわかると思いますが、欧米のビジネスショーの来場者の多くは飛行機を乗り継ぎ、ホテルを予約して2日以上かけてじっくり会場を回ります。ですからフロリダやラスベガスなどでの開催が多く、ヨーロッパでも大都市よりもむしろ飛行機などの交通の便がいいコンベンション施設で開催されます。企業経営者などのエグゼクティブがブースで商談をし、ときには当日大型商談が成立することもあります。いい商材を求めるリセラー、優秀な販売代理店を獲得したいメーカーなどの「商談の場」として位置づけられているのが欧米のビジネスショーです。もし日本の展示会がこれと同じコンセプトであればたしかに「量より質」「名刺より商談」なのです。

しかし欧米のビジネスショーと日本の展示会ではそもそも来場する人の目的やモチベーションが大きく異なります。

実際の日本の展示会は、関東圏での大型ビジネスショーの大半は東京ビッグサイト、幕張メッセなど首都圏内の会場で開催されています。来場者の大半も首都圏からやってきます。オフィスから会場までの移動時間は片道で30分〜1時間程度、会場の平均の滞留時間は3〜5時間。つまり午前か午後の半日を使って多くのブースをさっと見て回るという人が大半なのです。しかもその短い滞留時間内に回るブースの数は欧米の展示会の比ではないほど多いのです。また来場する人の役職を見ても、欧米のビジネスショーのようなエグゼクティブクラスは少なく、課長、課長代理、といった部門リーダーから下の層が圧倒的に多いのも日本の展示会の特徴です。

つまり日本の展示会の来場者は会場で今年の各社の雰囲気や新製品情報、トレンドなどを感じとり、つきあいのある企業のブースに顔を出し、新しい情報を「広く浅く」収集して、戦利品として資料とノベルティを両手にたくさん持って足早にオフィスへと帰っていくのです。来場する人たちの目的やモチベーションが欧米とはまったく異なるのです。

だから私は弊社のお客様に「日本の展示会では質より量です」と申し上げています。もし量ばかりを集めても実際に営業案件になる確率が低いと思われる展示会なら、それは出展するべきではない展示会だと考えたほうがいいのです。もっと自社製品の想定ターゲットが集まる展示会を探すことが問題の解決になるでしょう。

ブース、ノベルティやコンパニオンの手配
展示会の選定と準備を「見込み客の獲得」にフォーカスする

さて、展示会の出展の目的を「見込み客の獲得」にフォーカスすると展示会の選定基準は明確になります。自社の製品やサービスの見込み客リストが「集まるかどうか」が選定基準になります。数値的にはCPL(Cost per Lead:名刺1枚の獲得単価)を用いるといいでしょう。こうした展示会の数値評価の検証はこの連載の第4回目で詳しく解説しますが、とにかく自社の見込み客が集まる展示会であることが必須です。展示会の来場者のトレンドは数年で変化する場合があるので、注意が必要です。

またコンパニオンの選定も「見込み客の獲得」を基準に選定すべきです。キレイでスタイルのいい人が多くの名刺を獲得できるとは限りません。名刺やアンケートを集めるという目的に対してプロ意識をもったコンパニオンでなければまったく機能しないのです。

さらにコンパニオンに持たせるノベルティも日本の展示会では大きな要素です。これも名刺やアンケートを数多く集めるということを意識して選定すべきです。凝ったノベルティを少数用意するよりも、3日間で4000枚の名刺を集めたいなら、ノベルティは最低でも5000個は用意すべきです。名刺やアンケートがノベルティよりも多く集まることはありえないからです。

もちろんブースの位置やブースのデザインも「見込み客の獲得」にフォーカスしてプランニングすべきでしょう。基準が曖昧だとさまざまな妥協点があるものですが、目的を明確にフォーカスすれば妥協のしようがありません。

そして、こうしたすべてのコストがCPLの分子となるのです。マーケティングは「科学」です。数値化して検証できてこそビジネスに「科学」の要素を取り入れたと言えるでしょう。

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