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2011.02.16

日米で異なる「マーケティング職」

text:Shunsuke Ueno

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズがなぜトップマーケターと呼ばれるのか?日本とは異なる、アメリカでのマーケティング職に対する考え方と、これからのマーケターに求められる“資質”を紹介します。

今回のコラムはマーケティング職に就くルートの日米比較がテーマです。このテーマを編集方から提案いただいてまず考えたのが、日米におけるマーケティングが何かという認識の違いです。

アメリカには、企業にとってマーケティング部門は非常に広いエリアをカバーする組織です。代表的な機能である広告宣伝も重要ではあるのですが、それ以外にも消費者や競合などのリサーチ、製品開発、価格設定、販売方法を練って最も効率よく売上を上げることを考えたり、さらには、ブランド戦略で総合的な価値を高めたりすることまでマーケティングの仕事です。

私はマーケティング部門は、マーケティング部門が無かったら残りの各部門がそれぞれ分担してやっていたあろうマーケティング業務を一カ所にまとめて最適化した組織であると認識しています。
もしマーケティング部門がなかったら、各部門の担当者がバラバラに担当することになり、業務に密接な関係を必要とするマーケティング活動の効果が出ないでしょうが、元々各部門が必要と思って行っていた業務を引き継いだのがマーケティング部門ですから、それら各部門と密接な関係を維持する事が非常に重要になります。

当然マーケティングの業務は単体ではあまり意味がありません。いくら製品やブランド、企業の価値を上げても、製品を製造する人やそれを売る人、売った後のアフターフォローや運用をする人などそれぞれがいないと、マーケティングは無意味です。それらの関わる分野の人々が最大限力を発揮できるように考え、手配をして企業を成功に導く事がマーケティングの任務で、その任務を主な業務としている人をマーケターと呼ぶのだと私は思います。
だから、マーケティング部門には、もちろん場合によっては生え抜きの人もいるでしょうが、他の部門から来たそれぞれの専門家も多くいるのがとても自然なのです。

つまるところ企業の最高地位のマーケターは企業のトップでは無いでしょうか。ここ十数年のトップマーケターを考えると、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズなどを出しても誰も異論を出さないでしょう。彼らを初めとして、トップマーケターにはマーケティングの才能に満ちあふれた、マーケティング以外の分野の専門家たちが多い事に気がつきます。

日本でよく聞くのは「総合職」という名前です。英語ではジェネラリストですね。得意分野はあるが基本的にどの分野でもそつなくこなせる仕事ができる職種の事とで、昇進に一番いいのが総合職と聞きます。

転職が昇進とほぼ同義語であるアメリカでは、いろいろな分野を経験するという事自体が不可能です。また、専門職でないと自分の職業上のランクを上げて転職するのは難しいでしょう。
ところがマーケティング部門に限って言えば、少なくとも5〜6年前くらいまでは、マーケティング専門家というのは育ちにくい環境でした。マーケティングがあまりに広いエリアを持つ上にその他の専門分野も持っていないとマーケティング業務をうまく行うことが難しいためです。

ですから上記のように別分野の専門家が持って生まれた才能でマーケティングを大成させるのが、いわばアメリカンドリームと言うか、まあ夢のような成功例になる訳です。(そこまで行かない人は、まあそれなりです。)、企業の成長の最も根幹部分を扱う仕事ですので、マーケターを名乗る人は得てして彼ら元来の専門部門でもとても優秀です。

かくいう私も、優秀かどうかは別として、プロダクト(製品)から来たクチです。約10年前、デジタルコンテンツを作成販売する会社に入社しました。今でも簡単ではありませんが、普通の儲かるモバイルコンテンツといえば着メロのランク最上位数曲かアダルトしかなかった時代でしたので、消費者以外から収入を得るビジネスを作り上げる事が必須でした。消費者と購入者が違うと、当然ながら両者の必要とするものも違います。それをふまえた上で消費者と購入者のそれぞれに利益をもたらすことコンテンツを制作しないとビジネスが成り立ちません。

それまでインターネットでB2Cプロダクトをやっていた私はここで想像すらした事も無かったB2B2Cマーケティングという状況に巻き込まれ振り回される事となったのです。
その後しばらくは、料金を払う企業の動向、消費者の嗜好、自分たちのリソースや企業価値の戦略、それぞれをリアルタイムで検討して、リアルタイムで製品、販売方法、組織の形などに反映させて、会社を発展させようと努力してきました。恥ずかしながらこれがマーケティングの根底そのものであるという事に気がついたのは4年前にマーケティングエージェンシー(広告代理店)に入ってからです。

マーケティングエージェンシーに入ってから、マーケティング生え抜きのマーケターという人と初めて一緒に働く機会を得ました。彼らは大学を出てエージェンシーに入り、ブランド(担当する企業)のアカウントマネージャーになった後、いずれはブランド側(企業側)に移るのが、一般的なキャリアプランです。
彼らは、例えば広告枠の専門家だったり、コピーライターだったり、何かしらの専門家ですし、担当が優秀でないとブランド(企業)がエージェンシーを雇ってくれませんので、大抵の場合彼らはとても優秀です。しかし、エージェンシーから担当するブランド(企業)へ移るということは、どう見ても天下り的ですので、いつまでそう言う事が許されるか疑問です。

企業でマーケティングの仕事に就くには、エージェンシーは手っ取り早い道かもしれませんが、勧めるかというと、何とも言えません。専門がエージェンシー業であることが企業のマーケティング担当としてどうなのか?ということも疑問です。

そういうことで、マーケティングの仕事に就くには、何か別の道を少しは極める必要がありました。ありました、と言うのは、最近各種新しいチャンネルやツールの発展で、マーケティングの仕事が変わってきているからです。以前はアート(芸術系)だったマーケティングが、10年ほどかかかってサイエンス(科学系)に方向性を変えた気がします。

おそらくSEOですとかデータベースマーケティングとかを聞いた事があると思います。これはつまり今までカン(クリエイティビティ:Creativityとかですね)と経験(マーケティングの本とか読むと書いてあるいろいろですね)とに頼ってきたマーケティングを、計算式にしてしまおうという動きです。数値化できるすべての情報は数値化し、各統計学等のモデリングを使って存在するマーケティング方法にランク付けすることです。

ほんの20〜30年前はマーケティングが出来るメディアチャンネルの数はおそらく十指で足りたでしょうが、2011年の現在はもはやいくつあるのか私にも分かりませんし、モバイル、フェイスブックやツイッターなど毎日のように新しいものが出来ています。これらを統括的に考えて最適な答えを出すのは、普通の人の頭脳では無理になってきたので、数学を使おうというのは自然な流れでしょう。

そしてここはシンフォニーマーケティングさんの得意分野と思うのですが、この数値化によって、マーケティングの方法も、業務自体も効率化されますので、「安い・早い・うまい」が可能になります。

一応付け加えますが、この方法の弱さは、それ単体では既知の方法による最適化しか望めないという事です。
極端な話をすれば、例えば航空業界は基本的に長期にわたって業務内容も顧客の要求にも大きな変化はありませんので、目的地、値段、時刻などを最適化すればいいでしょうが、逆に毎年新カテゴリー製品を出すアップル社などにとっては、商品も顧客も今まで存在しなかったものですので、おそらく彼らは毎新製品ごとにマーケティングプランを新しく編み直しているのでしょう。
最先端技術のアップル社が古来のマーケティング方法をとって、後端に近い航空業界が数学化されたマーケティング方法をとるのは面白い対比ですね。

これらは極端な例ですので、数学的マーケティングと経験/カンのマーケティングの組み合わせが普通です。しかし、アップル社も広告代理店業を始めましたし、コンピューターの能力もどんどん上がってきています。これからは数学的マーケティングが益々大きくなって行くでしょう。

この数学的マーケティングの仕事は不確定な要素を多く必要とする複雑な数学になりますので、数学とビジネスとを両方知っている人に向いているでしょう。学科的にいえば、理系、特にコンピューター系で大学を出てマーケティングMBAを持っている人などでしょう。

もちろんマーケティングは他分野を理解した上で初めてできる仕事ですので、もう既に別分野の専門家がマーケティングの才能を発揮する為にマーケターになろうというなら企業もそれを奨励するでしょう。
しかし、今後、マーケティング分野で才能を発揮させ、長期的に成功するためには、この数学的マーケティングなどの時代とともに変化するチャンネルやツールを良く理解して有効に使えることが必須条件になってくるのは間違いありません。

ノヤンのつぶやき

ノヤンインターネットが、マーケティングをアートからサイエンスに変えた、という見方は面白いの。確かに現場に居ればそう感じるかも知れないんじゃな。
理論的にはダイレクトマーケティングや、その一種であるデータベースマーケティングは、データマネージメントという数学的な世界とコンテンツという文学・アートに近い表現の世界で構成されていたんじゃが、実際は長い間「表現」つまり感性が主役じゃったからの・・・。
それが今では、「定量化」「可視化」「ROMI」という数学の世界じゃ。
その変化の波は日本にも既に来ておるんじゃよ。

Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。