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2011.06.22

強引?合理的?米国流の営業とは

text:Shunsuke Ueno

巨大な市場に多くの競合がひしめく米国。そこで新たな顧客を開拓することは至難の業です。今回は、様々な最新ツールを利用しその難関に立ち向かう、合理的な米国流“営業の流れ”を紹介します。

今回のテーマは米国流の営業の流れについてです。
と言っても、営業とは「物を紹介して売る」という過程ですから、私の知っている範囲では世界中どこもその流れは大体似ていますし、日米間でも営業の流れは大きい目で見れば、それほど違う物ではないと考えます。米国でも、例えばある企業に新規アプローチをかけたいときなどは、その企業に誰か知り合いがいないか探す事から始めます。また、向こうからアプローチをしてくるのを待ったり、ダイレクトメールなどを出してみたりするのも日本と同じです。
しかし、日本ではあまり見かけない方法が存在するのも事実です。ここでは、米国で企業に新規アプローチをかける場合の方法をご紹介します。

まず、いきなり電話をかける方法(コールドコール)です。相手企業の本社や部門の代表番号に電話をして、誰が担当責任者か聞く事が出来ます。日本の場合、まず電話に出る人たちはスクリーナーの役割を持っているようにも見えますが、米国の場合はよほど変な電話でない限り、かなりの確率で決定権のある担当責任者の名前や電話番号を教えてもらえます。
またそこに電話をしても不在などで留守番電話かもしれませんし、メッセージを残しても折り返し電話をもらえないかもしれませんが、少なくとも担当者の名前と電話番号が分るのですから、そこからは営業担当者の腕の見せ所になります。

次に、ソーシャルネットワークでツテを辿って行く方法があります。例えばビジネスに特化したソーシャルネットワークに、リンクトインというサービスがあるのですが、これは自分のプロファイル、経歴や仕事内容などを公開して利用します。米国は転職が多い国で、1つの会社に5年いれば長い方ですので、「知り合いの、知り合いの、知り合い」位まで辿れば、アプローチしたい企業の担当者が見つかるでしょう。
ここで、知り合いを通じてアプローチをかけるのもいいですし、ソーシャルネットワーク上で担当者に直接アプローチをかける事も可能です。ただその場合、いきなり「これ買って」と言うメッセージだけを送ってもスパムと見なされてブロックされるだけですが、相手の仕事内容などの情報が既に公開されているのですから、自社の製品は「なぜ&どれくらい相手の為になるのか」を伝えるメッセージも書くことができます。また、担当者がわからなくても、上から攻めて行く方法もあります。

リンクトインでは、多くの企業トップが自分のプロファイルやメールアドレスを公開していますので、そこにメッセージなりを送ると、悪くない確率で責任者に届きます。しかし、気をつけなければならないのは、担当者レベルであればその視点での利益を考え伝えれば良いのですが、トップにアプローチする場合はマネジメントの視点、つまり企業(または部門)全体の利益を簡潔に書かないと読んではくれないでしょう。従って、メッセージは「$○○コストが節約できます」や「○○%利益が上昇します」などから始めます。
また、オンラインセミナーを行ったり、ホワイトペーパーなどを作成して配布したり、ソーシャルネットワークグループを主催したり、ソーシャルネットワークで質問などに答えたりして、受動的にコンタクトを増やして行くのも手です。コンタクトが多ければ多い程、上記の方法が取りやすくなります。

その後に、非常によく利用されるのが、WebEx(Web会議)による商品説明です。これは最初のアプローチ用ツールではありませんが、最初のアプローチで見つけたお客様から次々と相手企業の社内にツテを広げる事が出来ます。似た物が日本にもあるだろうとは思うのですが、このWebExはオンラインプレゼンテーションに利用できます。複数の参加者が個々のパソコンからプレゼンサイトにログインし、プレゼン側がコントロールするスライドやビデオを見ながらオンライン通話や電話で話をする事が出来るもので、これは広い米国にとても適したツールです。

実際に訪問をするとなれば行きと帰りで一日ずつかかりますし、もし担当者たちが複数の地域にいた場合、プレゼン側は複数都市を飛び回るか全担当者に1都市に集まってもらわなければなりません。担当者が海外にいればなおさらです。WebExなら意思決定者だけでなく、実際に利用する人や、決定に影響力のある人などにも見てもらえますし、経費はほとんど掛からないので、先方の都合や必要に応じて何回でもプレゼンを行うことができます。
もちろん直接会えばもっとうまく行くでしょうが、オンラインでのプレゼンは先方も自社もコストセーブになりますから普通は歓迎されます。
先方と自社の所在地がたまたま同じ都市だったら実際に訪問すべきでしょうが、そうでないならまずはプレゼンしてみて、先方に興味があることが分かってから会いに行けば良いのです。

日本では、最初のアプローチの方法、メールの書き方、電話の方法、商談出席者の役職の格、席の位置、その他にも様々な礼儀様式(プロトコル)があると思います。もちろん米国にも似た様なものはあり、例えば役員が相手の商談にはそれなりの役職にいる社員が出ますし、英語にも丁寧な話し方・書き方があります。しかしこれらは現実的な必要性から発生している慣行です。先方も自社も、額や複雑さに見合った決定権のある社員が商談に出るのは当然ですし、ビジネス英語はこちらの要求を丁寧に、しかも強く正しく伝えられるように発達した英語です。
それ以外のプロトコルは米国ではほとんどすべて省きます。これらは日本から見れば手抜きにも見えるかもしれませんが、特にビジネスに関してはとても実務的な国ですから、商談に関係ないプロトコル自体に必要性がありません。失礼になるようなことは何も省略していませんので、相手方も何とも思わないでしょう。

ですから米国式は良くも悪くも、非常に物事が早く進みます。売る側はどんどんアプローチして、どんどん押して行かないと、他社も同じ事をしている訳ですから、いつの間にか相手側での懸案の優先度が下がってしまいます。買う側から見ると次々に直接的なセールスメールが来て、その後に少しでも返事が遅れるとたちまち催促が来ます。

また、契約締結が終わったり、買わないと分かったりすると「ok, bye」で、お互いいきなり話がおわります。もちろん流れ的にはアフターケアや今後の関係とかもありますので、関係を切る訳ではありません。用があったら呼んでくれ、という雰囲気になります。接待攻勢もいくつか見た事がありますが、社内規定や法律で贈答が詳しく規制されている(賄賂と見なされ基本的に禁止)上に、その豪華な接待を受けた担当者が意思決定者になるとは限らないので、基本的にドライな関係を保つのが米国の営業の流れです。

ノヤンのつぶやき

ノヤン 米国ではセールスパーソンの大半がインセンティブ制度で働いておるし、業界によってはフルコミッションが当たり前という場合もあるんじゃ。つまり営業のプロフェッショナルなんじゃな。売れれば経営者を超える収入があり、売れなければ収入ゼロ、という制度じゃよ。こうしたビジネス慣習の違いがマーケティングやセールスにも反映されるんじゃな。楽しいの。

Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。