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2012.01.23

国際マーケティングの考え方

text:Shunsuke Ueno

日本企業も、アジアや欧州などグローバルに展開する企業が増えてきています。海外市場へのマーケティングはどうしているのでしょうか?米国企業の他国への戦略を例に、Ueno氏が解説します。

今までいろいろなモバイルマーケティング戦略を作ってきましたが、思い起こしてみると国際マーケティングはほんの数回、B2Bに限ると2回しか関わらせていただいたことがありません。私が専門としているモバイルマーケティングはローカル色の強いメディアであることも一因でしょうが、それにしても2回とは少ないです。なぜなのか、少し考えてみることにしました。

ビジネスの教科書によると国際ビジネス戦略はグローバル、マルチドメスティック、トランスナショナルの3種類に分類する事が出来るそうです。これらの説明は専門家にお願いするとして、私の感想を述べさせていただきますと、私が見た限り、米国を本拠としている多くの企業はグローバル戦略をとっています。
グローバルは端的な話、全世界的に全く同じ製品を出して同じマーケティング手段をとることですので、国内戦略と国際戦略で大きな違いがありません。せいぜいカタログやマニュアルの書き直しをしているくらいです。なぜそうなのかはわかりませんが、業界最大手を含む、米国本社がマーケティングを集中管理している企業は、一様に国際展開が非常に不得手で、グローバル戦略以外の手を取りたくても取れない様に見えます。

米国資本大手企業の日本支店のモバイル戦略を練る仕事をさせていただいたことが数度あります。数千人の日本人社員が勤めている日本支社ですので小さい企業ではありませんが、米国本社主導のグローバル戦略をとっているため、モバイルも基本的にグローバル戦略です。これにはとても困りました。モバイルは基本的に非常にローカルな上に、日本はいわゆるガラパゴス化が進んでいますので、グローバル戦略は無意味です。
そのせいでしょうか、日本でこれだけ携帯が流行っているにもかかわらず、携帯サイトが存在しなかったり、いまいち力を入れていない米国資本企業がよく見受けられます。これらの仕事でのリサーチ中に、Webサイトですら米国本社のグローバルサイトの意向を守りつつ、非常に苦労して日本向けに作り直されていると知ったときは、グローバル戦略の限界が見えた気がしました。

この点、逆にアメリカに進出している日本企業は、現地文化にすんなりとけ込めるような企業運営やPR方法をとり、上手に展開していると思います。もちろん、さすがにこれはマズいのでは、というマーケティングも見ますし、日本企業は不特定多数の客と話をするのがとても苦手に思えますが、それはまた別の話として、この国際マーケティングについてだけ言えば、日本企業は米国企業より経験豊富ではないでしょうか。

なぜ米国企業はグローバル戦略に頼るのか不思議です。マーケティングは買い手(客側)にアピールすることが目的ですから、手段一つ一つをとってみても客側の視点で考える必要があります。しかしマーケティングを国際展開する上で客側がどう思うかを考えるのは、現実的にはとても困難です。人の立場と簡単に言っても、その立場に一回でもなったことがない限りは何を考えてもただの想像です。もちろん優秀なマーケターはデータを駆使して経験から最大限現実に近い想像をします。国内向けであれば客が自分と同じ文化の中にいるため、相手の立場もわかりやすいのですが、これが外国ですと経験がない場合がほとんどでしょうし、データもないこともあります。
そしてさらに状況を複雑にしているのが予算でしょう。米国を本拠としている大企業は米国内が最大の市場であることが多く、その場合はマーケティング部門・マーケターへの評価は米国内での結果が最大となり、結果彼らも米国を中心として考えます。すると米国外の地域の予算は少なくなり、場合によっては予算自体がない地域も出てきます。そうすると当然データも何もありませんので、国際的に広く展開している企業のマーケティング部門はもちろん、マーケティング戦略を作ったマーケター自身が客すら知らないという状況がありえるということです。
つまり、消去法で、米国内向けにつくられた戦略や考え方を無理にでも世界中に当てはめるのが唯一残った手段になります(「何もしない」という手もありますが)。

ちなみにB2Cのモバイル国際マーケティングの仕事はもう少し頻繁にお声をかけていただきます。その経験上、米国外マーケットが米国内と同様かそれ以上に重要な企業は、マルチドメスティック戦略を使っているようです。彼らからよくお話をいただくのが中国と南米向けです。ヨーロッパはもうすでに地元の支社がマーケティングを自立して行っていますので、それがない中国と南米が本社主導のマルチドメスティックのターゲットです。

米国企業の国際マーケティングが本当に参考になるかどうかは不明ですが、少なくとも「既に米国外にいる、米国外の文化を知っている」という利点があります。島国根性とかガラパゴスとか日本の文化への批判は多少ありますが、国際的に見るとそんなに悪くはないのです。何でも差分を見つけてうまく利用するのが上手なマーケティングですから、これはチャンスではないかと思います。

ノヤンのつぶやき

ノヤン

モバイルがローカルで、瞬間的なマーケティングに有効なチャネルだと言うことは米国で実証されておるんじゃが、問題は日本のガラパゴスなんじゃな。
ハードウェアとしての進化だけが独自なのではなく、その使い方や活用シーンなどもとってもガラパゴスなんじゃ。
じゃから独自のマーケティングが発達するんじゃろうな。楽しいの。

Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。