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2006.04.10

マーケターとセールスの間に横たわる深くて暗い谷2[気質編]

出典:PowerBiz / 庭山一郎

マーケティングと営業の相互理解が進まない原因のひとつに「気質」という問題がある。しかしこの「気質」をうまく利用することができれば、売り上げを持続的に創出することも夢ではない。

マーケティングと営業の相互理解が進まないもうひとつの原因、それは「気質」の問題である。
今日は意外に見過ごされているこの問題について書いてみようと思う。

「営業推進」や「営業企画」あるいは「販売推進」などと呼ばれる日本のプロダクトマーケティングセクションの仕事は、宣伝広告のような派手さは無く、むしろ非常に地味で、緻密な作業と打ち合わせと作業の連続である。

ここに求められる気質は「農耕型」である。
林を切り拓き、開墾し、畝を作り、その土地の地質や天候を考えて何を植えるかを選定し、収穫までの暦を逆算して種を蒔き、苗を育て、水や肥料を欠かさず、雑草を取り、鳥や虫や獣から守り、間引き、そして春、夏を過ごして秋に収穫する。
時には収穫まで数年を要するこの仕事を任せられる人材は、営業に多い狩猟型では難しい。

それに対し営業に求められる気質は「狩猟型」である。
狩猟型とは、「生きた獲物」にしか興味を示さない直感的で行動的な存在だ。
毎朝鉄砲を肩に村を出て、思い思いの山に入って行き、ある時は大きな鹿を背負って誇らしげに帰ってくるかと思えば、ある時は数週間も獲物ゼロで帰ってくる。
しかしそれでもクヨクヨしないで夜は酒盛りで景気をつけ、翌朝には元気に村を出て行く。
彼らはどんなに獲物が獲れなくても、畑に出て鍬を持つ気はさらさら無いし、仮に畑仕事を手伝わせても、荒っぽくてとても戦力にならない。

それどころかせっかく育ってきた小さな芽を気付かずに踏み潰したりするのが関の山なのだ。
この「気質の違い」を無視して営業に見込み客のリストを管理させたりすると、あっという間に重複だらけで配信停止にすらフラグの立っていない悲惨なリストになってしまう。
この原因は、営業マンのスキルが無いためと勘違いされることが多いが、実は「スキル」の問題ではなく「気質」の問題なのだ。

せっかく展示会で集めたアンケートや、名刺リストを営業が熱心に追いかけないと嘆くマーケターは多い。
実際にプロダクトマーケティングに関わる人間が展示会の出展に割く労力は並大抵ではない。準備期間は打ち合わせの連続でスケジュールや予算の心配で胃が痛くなることがしばしばだし、当日を迎える頃にはリハーサルや最終調整などで徹夜になる事も珍しくない。

そうやって集めたアンケートや名刺リストを営業が追いかけないのでは嘆きたくなる気持ちも良くわかる。事実、数年前に私の会社で調査したところ、展示会に営業を配置し、その営業が展示会終了後直ぐに追いかける数を計測してみたら、追いかけるのは集まった総数の1%に過ぎなかった。
3日間で3000枚の名刺を集めて、営業が月曜から追いかけるのはその内の30社である。
残りの2970枚の名刺はせいぜい入力されて来場お礼のメールが配信される程度なのだ。

営業から見れば、30枚だけが彼らの追いかけるべき「生きた獲物」であり、残りは「種」であり「苗」なのだ。価値があるような気はするものの、猟師の追いかける獲物ではないし、そもそも「種」や「苗」では追いかけ方も育て方も猟師には判らないのだ。

しかし、この展示会の出展に社内人件費も合わせると3000万円の予算が掛かっているとしたら、1枚あたり10000円のコストが掛かっていることになり、つまりは2970万円を捨てていることになってしまう。
展示会に出展する理由が「元気」であることの証明だけであるなら、予算を削減して小間数を減らす事は「元気が無い」事を証明することになってしまう。だから小間数を削減するくらいなら出展しない方が良いと判断してもおかしくはない。
その上、掛けた経費の99%が捨てられているとしたら・・・。
このロジックが続く限り、企業内で展示会の予算が通りにくいのは仕方がないだろう。

こんなぶつ切りで相乗効果の無いマーケティングを続ける余裕はもうどこの企業にも無いはずだからこそ、マーケティングの循環【 Marketing flow 】を創り出す事が絶対に必要なのだ。
「気質」を踏まえてマーケティングと営業が得意を活かし合えるような「マーケティングの再構築」をしなければならない。

弊社が、見込み客リストを育てることを予算化する、つまり、【リード・クオリフィケーション:Lead qualification】※に予算投入する、という事を提案し続けている理由はここに在る。

※ 【 リード・クオリフィケーション 】 集めた見込み客をユニーク化しコミュニケーションとリストメンテナンスを繰り返しながらランクアップさせ、絞り込むフェーズ。

私は、この残りの2970枚の名刺リストを「苗」として育てる仕事こそが、プロダクトマーケティングの本来のミッションだと考えている。

展示会に出展するということは、その前段階である「見込み客リストを集める」というミッションを持った【リード・ジェネレーション:Lead generation】プログラムなのだ。

育て、追いかける側であるプロダクトマーケティングと営業の「気質」が違うように、追いかけられる側の見込み客と有望見込み客も、ある瞬間に本質的に「変化」する。
「種」や「苗」が順調に育ち、収穫寸前になると土から飛び出し、足が生えて、畑から猟師達の待つ狩場へと飛び出していく、とイメージしてもらえばわかりやすいだろうか。その時は企業名でも部署名でも個人名でもなく、「案件」という獲物に姿を変えているのである。

例えば、ストレージと呼ばれる巨大な記憶装置の場合、大手企業の情報システムを訪問する時の営業はのんびりしたものである。

それは定期訪問であり、御用聞きであり、顔見世興行であるのだ。
しかし、そこで「来期はストレージを入れ替えようと思ってるんだ・・・」という話を聴いた瞬間営業の目の色は変わる。
それは「見込み客」がストレージのリプレース(入れ替え)という「案件」、つまり「生きた獲物」に変わった瞬間である。

この案件を追いかける時に猟師達を効率的に動かす事を目的に開発されたツールが【Sales Force Automation】(以下 SFA)と呼ばれるものなのだが、この営業支援ツールが何故か日本ではさっぱり役に立っていない悲しい現実については次号で話そうと思う。