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ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > リクルートに学ぶ戦闘教義の移行と準備

2007.05.07

今の勝ちパターン3年後も通用しますか?上手に勝ちパターンを進化させたリクルートの成功事例をご紹介します。

前回で、成功した企業の多くは、「戦闘教義」つまり独自の「得意技」「勝ちパターン」を確立した企業だということを説明したのじゃが、今回は戦闘教義のポイントをいくつかの事例を挙げて説明しようかの。

「戦闘教義のポイント」とは何か、それは日頃からその戦闘教義を使いこなせるように十分な準備と訓練を重ねないと使い物にならない、ということなんじゃ。
織田信長は武田勝頼と決戦した歴史上有名な長篠の合戦で、鉄砲という兵器を使ったまったく新しい戦闘教義を確立したと言われておるんじゃ。織田信長はこの新しい戦闘教義を実行するために、数年にわたって堺で鉄砲を買い集めたり、鉄砲職人を集めて製造させたりして兵器の備蓄につとめ、さらに鉄砲足軽隊を組織し、厳しい射撃訓練を課したんじゃ。戦術面でも、騎馬隊の突撃を止めるための防御柵の構築法や、陣の張り方、地形などの研究を重ねたんじゃ。つまりこの新しい戦闘教義のために十分な準備と実験と訓練を行った末の長篠の合戦だったわけじゃな。
一方の武田勝頼は甲斐武田家に伝わる伝統の強襲突撃を中心とした戦闘教義をなんら変えようとはしなかったんじゃ。

つまり戦闘教義はそれを知識として持っていたり、理解していても、実際に充分な準備と訓練を経なければ使えないので、急に変更は出来ないんじゃよ。ここが難しいところなんじゃ。

古代ローマ時代のカルタゴの英雄ハンニバルは、カルタゴの属領であったスペインからなんと象隊を引き連れて雪のアルプスを越えてイタリア半島に乗り込み、当時地中海沿岸で大きな勢力になりつつあった共和制ローマを何度も打ち破って破滅寸前まで追い込んだんじゃ。ハンニバルはアフリカやスペインの領地から連れてきた歩兵隊や象隊にヌミディア出身の騎兵集団を巧みに組み合わせて敵を混乱させ包囲・殲滅する戦闘教義を持っていたのじゃ。ギリシャのアレキサンダー大王が使ったファランクスという戦闘教義よりさらに進化した戦闘教義だったんじゃよ。しかし、このヌミディア騎兵がヌミディア王マシニッサの裏切りでローマ側に回ると、最後の決戦である「ザマの戦い」で、自分がもっとも得意とした戦闘教義でローマの英雄スキピオ率いるローマ軍に破れてしまうんじゃ。
これは天才と言われた武将でも、準備も訓練も無しに急に戦闘教義を転換することは出来ないことを示す事例なんじゃ。

第二次世界大戦で日本は新しい戦闘教義を世界に示したんじゃ。空母6隻による真珠湾攻撃で、アメリカ太平洋艦隊の主力艦をほとんど撃沈や大破で戦闘不能にしてしまったんじゃ。これは航空母艦と航空機の組み合わせで、制空権(空域の支配権)ばかりか制海権(海域の支配権)まで獲得することができるという新しいものだったんじゃな。

ところが、日本はこの新しい戦闘教義を開発したことを自分達で完全に理解していなかったんじゃ。当時の日本海軍の大半は制海権は大きな大砲を積んだ戦艦でのみ獲得できる、という考え方の人が多かったんじゃ。
その結果、この新しい戦闘教義への移行の準備や訓練が不足してしまったのじゃ。航空母艦の数も質も、搭載する艦載機の数も、必要なパイロットの養成も全てが新しい戦闘教義へに移行には足りなかったんじゃ。そして真珠湾以降に大和、武蔵という2隻の巨大戦艦を進水させ、不沈艦と呼ばれたその2隻をアメリカ海軍の航空機部隊の攻撃によって失うことで、数年前に自分達が真珠湾で証明した「空母と航空機で制海権を獲得できる」という新しい戦闘教義を自ら実証することになったんじゃ。ちょっと悲しい話じゃの。

このように戦闘教義には予め準備と訓練にたっぷり時間を掛けなければ実際には使えないのじゃが、じゃからこそ、この戦闘教義が崩れた時に、次の戦闘教義が用意されていないと企業は長い間、まるで谷に堕ちたようになってしまうんじゃ。

前回書いた住宅メーカーの例で考えればわかりやすいじゃろ。展示会場のモデルハウスのディスカウント販売を餌にした折り込みチラシで大量の見込み客リストを集め、それを割り振ってじゅうたん爆撃を仕掛ける、という戦闘教義が崩れてしまったんじゃ。つまりモデルハウスを餌にした折り込みチラシへの反応がある時から急激に減ってしまったんじゃよ。こうなると、もうどうして良いかわからないんじゃ。

地域内に張り巡らせた多くの営業所網も販売員も、良質の見込み客リストが入手できなければ訪問すべきターゲットがどの家かわからないんじゃ。仕方なくアパート居住者に自動音声の電話を掛ける仕組みを購入して評判を落としたり、広い土地を買い込んで建築条件付、つまり自分の企業で家を建てることを条件にした土地販売を始めて用地買収資金で資金繰りに窮したりと散々な結果に振り回され、販売効率を大きく落としてしまったんじゃ。
勝ち続けてきた戦闘教義が崩れると、それで戦ってきた多くの企業や産業はガタガタになってしまうものなんじゃ。生き残るのはわずかの企業で、それは新しい戦闘教義を作ることに成功し、その準備と訓練が間に合った企業だけなんじゃ。

そんな中で奇跡的に新しい戦闘教義への移行を極めてスムースにやり遂げた企業があるんじゃ。
リクルートという企業があるじゃろう。莫大な有利子負債をあっという間に返済した超優良企業で、かつ人材輩出企業としても有名な企業なのじゃが、この企業は戦闘教義を短期間で組み替えた企業なんじゃよ。

今から15年程前までは大学4年生になって、卒業に必要な単位数を取得した学生のアパートにリクルートブックという分厚い就職情報誌が10数冊も入った重い箱がリクルート社から届いたもんじゃ。
つまりこの企業は卒業予定の大学生リストを収集する独自の手段を確立して、大学生に確実に届く就職媒体として競合の中で最も高い価格帯で求人広告や求人キャンペーンなどを販売する、という戦闘教義で急成長した企業なんじゃよ。
しかし、インターネットの普及や個人情報の取り扱いの法規制などの問題が出てきて、この戦闘教義をこのまま使い続けることが難しい状況になった時、この企業はそれに代わる戦闘教義の開発に素早く着手したんじゃ。

多くの企業は、例え今までの戦闘教義が使えなくなりそうだ、と判断しても、あと3年は今のままでいけると思えば、少なくとも3年間は何もしないものなんじゃよ。誰だって何かを変えることは面倒じゃからの。その結果多くの企業は新しい戦闘教義の開発と準備、そして訓練が間に合わず、気がついた時には業績をガタガタにしてしまうものなんじゃ。

しかしリクルートは違ったんじゃな。彼らの結論は「インターネット上で就職のポータルサイトを構築する」というもので、これをベースに新しい戦闘教義を開発し、充分な準備を整えたんじゃ。これが今新卒の情報サイトとして独占状態になっている「リクナビ」なんじゃよ。これのお陰でリクルートは大学生リストを購入することなく、購入していた時代よりも確実な情報を安いコストで合法的に収集できるようになったんじゃ。もっともこの過程で「ISIZE(イサイズ)」という苦しい経験もしたがの。
いずれにしてもこの「極めて強い戦闘教義」から「さらに強力な戦闘教義」への見事な移行は前代未聞の成功ケースになったんじゃ。

シンフォニーマーケティングがデータベースマーケティング導入のコンサルティングを引き受ける時に、先ずクライアント企業の「戦闘教義」の理解と構築から入るのはこういう理由からなんじゃよ。
たとえ時間が掛かっても戦闘教義の開発と準備・訓練をしっかり整えれば、勝利はより身近になるものなんじゃ。

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