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2007.07.27

マーケティングの定義の中には非常に広範な要素が含まれます。今回は価格設定、つまり値決めはマーケティングなのか?という疑問にお答えします。

マーケティング・・・本当に曖昧な言葉じゃとワシャつくづく思うのじゃよ。もうこのマーケティングと付き合いはじめて25年も経つがの・・・。コトラーもドラッカーもマーケティング協会も学会も好き勝手に定義をしておるが、どれも統一性がないんじゃ。「なんでも良いから決めてちょうだい」とワシャ何度思ったか知れんのじゃよ。

さて、そんな中で今日は「値決めはマーケティングなのか?」という疑問に答えようと考えておるんじゃ。
このサイトに来てくれている人の多くはBtoBのマーケティング部門に関わる人じゃと思うんじゃが、この「値決め」に関してはBtoCもBtoBも関係なく、そして外資も国内企業も、ITも製造業も関係無く、重要な問題なんじゃよ。

言葉の定義はさておいて、マーケティングを構成している要素を簡単に言えば「誰に」「何を」「どうやって」「いくらで」売るか?という4つの項目になるんじゃ。じゃから「値決め」(価格設定・プライシング)は非常に重要なマーケティングの要素のひとつと言えるんじゃ。当たり前じゃな。

ではなぜ、リサーチやキャンペーンや顧客データ管理に比べてこの「値決め」が軽視されているか、と言えばじゃ、多くの場合マーケティング部門が仕事に関わる段階で価格はすでに決定されているからなんじゃ。マーケティングや営業は多少のディスカウントは出来ても根本的な価格体系を議論する余地が無いからなんじゃ。

価格は商品企画の段階で決められるものじゃし、そもそも京セラやKDDIの創業者である稲盛和夫京セラ名誉会長などは「値決めは経営!」と常々言っているくらい、企業経営の根幹を成す行為がこの「値決め」なんじゃ。
ではなぜ、値決めはマーケティングかと言えば、ここからそれぞれの企業や製品のマーケティング戦略を見ることが出来るからなんじゃよ。

例を挙げて説明しようかの。
例えば、アメリカの大手のヒゲソリメーカーは、非常に安い価格でT字型の刃を取り替えられるタイプのヒゲソリを販売したことがあるんじゃ。売れば売るほど赤字になる価格設定で競合を凌駕して売りまくったんじゃ。これにはさすがに株主からも懸念の声が出て、「売れば売るほど赤字がでるような価格設定は馬鹿げている、今すぐ利益が出る価格に変えろ!」という声が上がったんじゃ。当然のことじゃろ。しかし、その会社のマーケティング責任者は株主に対して平然とこう答えたんじゃよ。

「我々は替え刃で収益を上げようと考えています。わが社のヒゲソリにはわが社製の替え刃しか装着できません。従ってわが社のヒゲソリのユーザーが増えれば増える程、競合企業の替え刃のマーケットを奪い、わが社の替え刃のマーケットを創造していることになるのです。」

これこそマーケティング戦略じゃよ。
何で儲ける、どこで儲ける、という部分をしっかり押さえたマーケティングの基本設計は見ていて気持ちが良いもんじゃな。
この戦略はその後日本のコピー機メーカーが踏襲しておるんじゃ。コピー機本体を格安で販売してトナーや紙やドラムなどのサプライで収益を上げる戦略じゃな。まぁ今ではサードパーティーのサプライ製品が出てきたり、京セラが開発したアモルファスシリコンドラムのようにコピー機本体より寿命の長いドラムの出現などでこの戦略は崩れつつあるがの。

他にも、価格設定を柱にしたマーケティング戦略ではコカコーラの例が有名なんじゃよ。
コカコーラが進出してくる以前は、日本の炭酸清涼飲料水のマーケットはサイダーとラムネがほぼ独占しておったんじゃ。全国の酒屋と米屋がそれら流通ルートだったんじゃ。コカコーラは当時の国産の競合製品の3倍近い価格で日本で発売したんじゃ。

コンシューマ型の消費財で3倍というのは圧倒的に不利な価格設定じゃから、あんな高いものが日本で売れるわけがない、と競合もタカをくくっていたんじゃ。しかし結果はアッと言う間にシェアを奪われて、国産製品は見る影もなくなってしまったんじゃ。今では三ツ矢サイダーを飲みたくてもめったに見ることもないし、ラムネに至ってはお祭りの屋台でしかお目にかかれないレア製品になってしもうたんじゃ。

それは何故か、先ずコカコーラの3倍の価格の中には短期間にブランドを創り上げるのに充分な宣伝広告費と、既存の国内競合製品よりも高いマージンを流通ルートに落とせる設定になっていたんじゃな。早い話がサイダーを売るよりコカコーラを売るほうが酒屋や酒類問屋は儲かったんじゃ。マスメディアへの露出で一気にブランドを創り上げ、同時に競合を上回る高いマージンで流通網を確保する。この戦略はまるで、空軍のじゅうたん爆撃と沖合いの戦艦からの艦砲射撃で充分に敵の陣地を叩いてから大規模な陸上部隊を投入して一気に周辺地域を制圧するアメリカ軍の伝統的な戦術そのものを見ている気がしたもんじゃよ。

その一方で値決めは足かせになることもあるんじゃ。
世界のパソコン販売市場を変えてしまったといわれているDellが業績の悪化に苦しんでおるんじゃ。デルモデルと言われる直販の販売システムでBtoBのパソコン市場ではあっという間に世界一になったDellじゃが、流通マージンをカットして、チップなどの大量仕入れでコストを下げて低価格のパソコンを供給するというモデルは、このどこよりも安く供給できる、という一点が崩れると支えきれなくなるモデルなんじゃ。製品の優位性でもサポートの優位性でもないからの。じゃからHPやNECが同じような直販モデルを始めると競争優位性を作れなくなってしまうんじゃ。

しかもコンシューマの市場に進出しようにも、そこはやはり流通網に乗せざるを得ないマーケットで、Dellの価格設定には流通マージンは入っていない。つまり卸売りや小売店が儲かる程のマージンを落とせる価格にはなっていないんじゃ。それらの流通の利益を乗せればコンシューマが手にする時の価格はまったく競争力の無い価格になってしまうんじゃ。
マイケル・デル氏がCEOに復帰して、これからどう巻き返すか、ワシは興味が尽きないんじゃよ。

値決めはマーケティングじゃということが理解していただけたかの?
同時に、マーケティング戦略と経営戦略が非常に近い関係にあると言われる理由も、この値決めに集約されておるんじゃ。マーケティングと経営は価格設定を通して密接に結ばれておるんじゃよ。

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