マーケティングキャンパス 基礎から実践までBtoBマーケティングを学ぶサイト

Loading

ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > 日本に「BANT条件」が馴染まない理由は・・・

2008.03.24

日本に「BANT条件」が馴染まない理由は・・・

アメリカ人が大好きな「BANT条件」。でも日本の法人営業に当てはめるのはかなり問題があるのです。それは・・・

さて、新年度でマーケティングや営業手法や組織を見直している企業も多いじゃろうから、今日は「BANT条件」のことを書いてみようかの。
実は2007年の2月に、このマーケティング講座で【Dellに見る見込み客の単純セグメントと「BANT条件」】というテーマで書いたのじゃが、その後、この「BANT条件」に関する質問が多いのじゃよ。なんとなく気になる言葉なのか、それとも日本の企業でもこの「BANT条件」で営業案件管理をするようになったのかはわからんがの。じゃから今日はこのBANT条件を詳しく説明しようと思うんじゃ。

先ず、ちょっとおさらいをしようかの。
「BANT条件」とは

  • Budget:予算(予算(お金)はあるのか?)

  • Authority:決裁権(今会っている人は決定権を持っているのか?)

  • Needs:必要性(個人の興味ではなく企業として必要性が高いのか?)

  • Timeframe:導入時期(導入・購入する時期は具体的に決まっているのか?)

この4項目の頭文字を取ったもので、この項目で営業案件をチェックして見込み度を測定しセグメントする手法なんじゃ。

SFA系のCRMの場合、パイプラインの中に案件が可視化できるように登録され、それが【会社説明:プロポーザル】【状況確認:ヒアリング】【提案:プレゼンテーション】【見積もり提出:エスティメート】【価格交渉:ネゴ】【返事待ち:ウェイティング】【受注:オーダー】【失注:ロスト】などと進捗状況別に分類されておるんじゃ。こうした進捗状況を付ける時にこのBANT条件が使われるんじゃ。「この情報が揃わないとA案件とはしない」という風に使うんじゃな。つまりこれが揃わなければ受注になるはずがない、という前提でパイプラインを設計しておるんじゃ。

さて、このアメリカ人が大好きな「BANT条件」じゃが、近年は日本にも紹介されて、取り入れる企業も増えておるんじゃが、日本で実務に使うには問題がふたつあるんじゃ。

ひとつめの問題は、これはマーケティング部門が行う見込み客のセグメント条件ではなく、営業部門が行う「営業のヒアリング項目」じゃということが理解されずにマーケティング部門が見込み客のセグメントに使おうとしていることなんじゃ。
見込み客や顧客から取れる情報には、帝国データバンクやダン&ブラッドストリート(D&B)などの企業情報会社から購入できる「売上」や「社員数」などの企業プロファイル情報と、Webのアクセスやセミナー参加申し込みなどで取れる行動解析情報の2種類から成る【間接情報】と、訪問して直接ヒアリングすることで獲得できる【直接情報】があるんじゃよ。この「BANT条件」は訪問しなければ獲得できない典型的な【直接情報】なんじゃ。

今期の中で予算化しているのかいないのか、会っている人が決裁権を持っているのかいないのか、どんな問題や状況を解決したくて導入を検討しているのか、いつまでに導入するのか、などの情報は営業が直接会って聞かなければ手に入らない情報なんじゃよ。ちなみにこれをマーケティング部門が使う場合、展示会やWebでのアンケート項目に反映されるんじゃ。しかし、これはあんまりお勧めできる使い方ではないんじゃよ。展示会のブースのアンケートに「導入予定はありますか?Yes No」「Yesと回答した方、それはいつですか・1年以内・半年以内・3ヶ月以内」などという設問がよくあるじゃろ。でも誰が考えてもあの質問に正直に回答するはずがないんじゃな。それを知っているからこのアンケートを営業部門はあんまり頼りにしないんじゃよ。ここはマーケティング部門ではなく営業部門の領域なんじゃ。

そういう意味では、マーケティングがさまざまな手法で収集して見込み客の絞込みに使うのが【間接情報】で、営業が訪問することで獲得し、案件の見込み度を測るために使うのがこのBANT条件などの【直接情報】という訳なんじゃ。
BtoBのマーケティングの設計で重要なのは、「見込み客リストの獲得」から「案件化」、「受注」までのそれぞれのフェーズで「取れる情報」と「取れない情報」、「ここで取るべき情報」と「ここでは取る必要のない情報」をちゃんと分けて考えるべきだということなんじゃ。これを整理して、年間のマーケティング計画に落とし込めれば、かなりレベルの高いBtoBマーケターと言えるじゃろうな。

もうひとつの問題は、残念ながらこれが日本の商慣習にあまり馴染まないということなんじゃ。
例えば、今の日本で半導体関係の加工工場を作るとして、その工場のラインの主要な機械の実質的な選定を行っているのは30代前半のエンジニアだと言われておるんじゃ。肩書きとしては「課長補佐」とか「リーダー」というところじゃな。つまり「Authority:決裁権者」かと言われれば「No」なんじゃよ。数千万円から数億円もする機械の最終決裁はやはり役員クラスがするからの。しかし日本の場合は合議制や稟議などのシステムで意思決定が成されているから、例えば稟議書に5個のハンコが並んだとしても実質的に選定した人はその中に入っていない、ということが普通なんじゃ。でもこの会社に売り込もうと思えばこの実質的な選定者にアプローチしないと意味を成さない。つまり決裁権を持っていない人ほど「より重要だ」ということになるんじゃ。

しかも決裁権を持っていない人に会っている時間は無駄だ、という態度をとれば現場にいる実質的な選定者を敵に回すことになり、いくら上を説得しても現場の反対で導入できない、ということがいくらでも起こるんじゃ。これが欧米のビジネスマンが理解に苦しむ日本のビジネスの実態なんじゃよ。

予算も同じことじゃ。例年購入している消費財や原材料のようなものなら予算化しているが、ソリューション系の商材であれば顧客が自分の会社が解決すべき問題を正確に把握していないことも多いんじゃ。問題を把握していないくらいじゃから当然必要な金額を予算化などしていないんじゃ。この状態で「予算を持っているのか」を案件のセグメント条件にしてしまえば、どんな案件も先にすすむことは出来なくなってしまうんじゃ。

まぁなんでもそうじゃが、カルチャーが違うところで生まれた仕組みやシステムを日本で活用しようと思えば、日本の商慣習や風土に合わせてアレンジしないとダメなんじゃ。
確かにERPソリューションなどは、海外のやり方をほとんどそのまま導入して成功した事例もあるんじゃが、あれはひとつの会社やひとつの系列企業の中で完結できるから可能だったことなんじゃな。セールスの現場はお客様が相手なので、自分たちのやり方を押し付けられるはずもないんじゃよ。じゃから日本独自の、いやせめてその企業独自の「BANT条件」を策定しないとダメなんじゃ。

Copyright © 2008 Noyan All Rights Reserved.・・・・・・・