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2008.05.23

サイバネティクス理論とマーケティングの意外な関係

渡り鳥の飛翔からヒントを得たサイバネティクス理論は、今やマーケティングを含むあらゆる分野に影響を与えています。もちろん現代のマーケティングにも・・・

さて今日は「サイバネティクス理論とマーケティングの関係」について話してみようかの。
インターネットが普及してからこの「サイバー」という言葉は「仮想空間」や「ネット社会」などを表現する言葉として日常的に使われるようになったんじゃが、実は高尚な学問の言葉なんじゃ。「サイバー」や「サイボーグ」の語源は「サイバネティクス」という科学理論なんじゃよ。

ちょっと解説しようかの。
「サイバネティクス理論」とはアメリカの科学者で当時マサチューセッツ工科大学の教授じゃったノーバート・ウィナー博士(Norbert Wiener)によって提唱された、通信工学と制御工学を融合した理論で、その後の航空宇宙産業やコンピュータテクノロジーに非常に大きな影響を及ぼした理論なんじゃよ。

特にコンピュータの世界への影響は大きく、プログラミングの世界標準を確立し「CASEの父」と呼ばれているジェームズ・マーチン博士が1996年に出版した本も「cybercorp」(サイバーコープ:日本名「経営の未来」)と言って、このサイバネティクス理論が今後の企業経営にどれほど強く影響を与えるかを書いた予言的な本なんじゃ。12年を経た今、周囲を見てみるとほとんどその通りになっているのが判るんじゃよ。
(※CASE:Computer Aided Software Engineering:コンピュータ支援ソフトウェア工学)

提唱者のウィナー博士は早熟型の天才で、9歳で高等学校の授業を受け、11歳で大学に入学し、14歳でハーバード大学の大学院に入学し、なんと18歳で博士号を授与されているんじゃ。そんな天才じゃから性格的にはかなり変わっていたようで、師事していた当時イギリス最高の頭脳と言われたケンブリッジ大学のバートランド・ラッセル教授を度々困惑させたり、人工知能の研究を目的に各分野の権威を集めた科学者チームを編成し、突然解散したりしているんじゃ。天才となんとかは紙一重という典型のような人だった訳じゃなぁ。

ウィナー博士は理工系の学者として有名なんじゃが、実は動物学の研究者でもあり、このサイバネティクス理論は渡り鳥を見て閃いたそうなんじゃよ。日本にも季節ごとに渡り鳥がやってきたり、春になると北の国に帰っていったりするじゃろう。
冬の畑で見られるツグミや、家の軒下に巣を作るツバメも渡り鳥じゃしぃ、湖や沼で見られるカモやガンもほとんどは渡り鳥なんじゃ。ちなみに渡りをしない鳥を「留鳥」と呼ぶんじゃが、オオコノハズク(ノヤンの種類)もこの留鳥なんじゃよ。(笑)

さて、これらの渡り鳥は種類によっては何千キロも旅をするんじゃが、考えてみれば、その鳥が冬を過ごした日本の沼と、数千キロかなたの夏を過ごす沼を直線で結んで、その角度がほんの1度でも狂えば全く違う場所にたどり着いてしまうことになるんじゃ。しかし大自然の中を飛んでいくので、天気も湿度も気圧も風向きも毎回違っているはずなんじゃ。毎回違う環境条件の中でほんの0コンマ数度も狂うことなく目的の沼にたどり着くのはなぜなんだろう?とウィナー博士は考えたんじゃな。

そして閃いたんじゃ。「弓矢や弾丸のように最初に方向を定めて出発し、直線的に飛んでいくのではなく、途中で何度も軌道修正しながら飛んでいくのではないか」。そして新たな疑問が出たんじゃ。「軌道修正はどのような情報に基づいて行っているのか?」という点じゃ。
昔の航海術は星を見ながら行ったが、鳥も星を見るのか?ならば夜飛ぶはずではないのか?曇りの日には飛べないはずではないのか?それとも山や川などの景色なのか?体内に磁石を持っていて、それで方向を知ることができるのか?そういう疑問を考察して、星や山などの周辺環境と「通信しながら制御」しているのではないか、という説をまとめ、1947年に「通信と制御」という世界に衝撃を与えた論文を発表したんじゃ。この論文の中で体系化したのが「サイバネティクス理論」なんじゃよ。

通信(コミュニケーション)し、結果をフィードバックすることを繰り返しながら小刻みに軌道を修正(制御)すれば、途中の気候や地形の変化などに惑わされずに目的の沼にたどり着ける。という考え方なんじゃな。この「結果を伝達しその情報によって制御する」という考え方はエレクトロニクスのみならず、あらゆる科学分野に応用され、心理学などのそれまで神秘的と言われてきた領域に科学のメスが入るきっかけにもなったんじゃ。

もちろんワシが20年以上夢中になっておるデータベース・マーケティングの基礎テクノロジーである、データベース・テクノロジーも、インターネット・テクノロジーも強く影響を受けておるし、シンフォニーマーケティングが提唱するリード(見込み客)データとのコミュニケーションの結果をデータベースにフィードバックして抽出条件を制御する手法などはまさにウィナー博士の発想のマーケティング的応用そのものなんじゃよ。サイバネティクス・マーケティングと呼んでも良いくらいなんじゃ。
ウィナー博士はこの論文を元に1948年に「サイバネティクス」という本を出版し、この本は科学論文としては異例のベストセラーになったもんじゃ。

このようにサイバネティクス理論はその後のコンピュータテクノロジーなどに大きな影響を与えたんじゃが、マーケティングの面で見ると特筆すべきはサイコ・サイバネティクスへの発展じゃろう。
これはウィナー博士の後の世代の人でアメリカの形成外科医で臨床心理学者でもあったマックスウェル・マルツが提唱したもので、人間の内面にも軌道修正しながら本来の自分(目的地)に近づく、あるいは取り戻す機能が備わっているのではないか、という理論なんじゃ。外科手術によって不具合を修正した患者の治療前と治療後の心理的変化を観察しながら発想したというこの理論は、ベトナム戦争の復員兵が大量に社会復帰できなくなっている問題で頭を抱えていたアメリカ政府の施策と結びついて大きく発展したんじゃ。

この時、マルツのサイコ・サイバネティクス理論とサイコ・セラピーが融合したものが日本でも流行っている「自己啓発セミナー」なんじゃよ。自己啓発セミナーに行ってきた人がしばらくの間はやたら元気なのは「本当の自分」に触れ(あるいは錯覚し)、自分の無限の可能性を信じられるようになったからなんじゃな。まぁ人間の赤ちゃんには本来無限の可能性がある訳じゃから、当たり前と言えば当たり前なんじゃがのぉ。

その一方でサイコ・サイバネティクス理論から発展した自己啓発プログラムと訪問販売が結びついたのがアムウェイやニュースキンに代表されるマルチレベルマーケティングなんじゃ。じゃからマルチレベルマーケティングの勧誘では必ず「あなたの人生の目的はなんですか?」「今のあなたの毎日は、子供の頃にあなたが想像していた毎日ですか?」という語り口で始まるし、親類や友人など身近な人たちを、その人のためと強く信じて勧誘する行動も自己啓発セミナーとそっくりなんじゃ。

自己啓発セミナーやマルチレベルマーケティングが嫌いな人は多いと思うんじゃが、マーケターたるもの、理論背景くらいは知っておいて損はないし、実はマーケティングに応用できる部分も少なくはないんじゃよ。
エレクトロニクスやコンピュータの開発に使われている理論が心理学に応用できるなんて不思議な気もするんじゃが、考えてみれば、産業用ロボットもコンピュータも、インターネットでさえ人間をモデルに開発されているので、共通点が多いのは当たり前のことかもしれないのぉ。

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