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2008.06.20

ノヤン先生ニューヨークへ行く

世界のデータベース・マーケティングの中心であるアメリカ・ニューヨーク。その出張報告の第1回目は・・・

前回、サイバネティクス理論は「渡り鳥」からヒントを得た、と説明したがの、ワシはオオコノハズクという種類じゃから「渡り」はしないんじゃ。せいぜい棲家のシンフォニーの森と東京を行ったりきたりするくらいかの。
そんなワシじゃが、実は今年の4月にニューヨーク(以下NY)に行ってきたんじゃよ。もちろんデータベース・マーケティングの研究のためじゃ。「遊び」でも「渡り」でもないんじゃ。
それで、今回と次回の2回に分けてその土産話をしようと思うんじゃ。

4月の下旬のある晴れた日の午後、ワシはNYの郊外にあるJF・ケネディ国際空港に着いたんじゃ。やはり入国管理は厳しくなっておるんじゃな。問答無用で10本の指の指紋を取られて、顔写真を撮影されるんじゃ。まぁテロの巻き添えになることを考えれば入国審査の2時間くらいは我慢しなくてはならんの。でも、高速道路の車窓からマンハッタンの摩天楼がだんだん近づいてくるのはいつ来ても良いもんじゃわい。

工事が始まったグラウンド ゼロ

工事が始まったグラウンド ゼロ

ロックフェラーセンターの最上階のトップオブザロックから見たエンパイアステートビル

ロックフェラーセンターの最上階のトップオブザロックから見たエンパイアステートビル

実は今回のNYでの宿はいつもとは違うホテルなんじゃよ。ワシにはNYに来た時は必ず泊まるホテルがあったんじゃ。オルコットという名前の72丁目ウエストにあるホテルなのじゃが、ジョン・レノンが住んでいたダコタハウスの並びで、セントラルパークのすぐ近くじゃ。しかも72丁目には大きな地下鉄の駅もあって本当に便利なホテルだったんじゃよ。ところが最近、ここが高級マンションにリニューアルされてホテルを廃業してしまったんじゃよ。悲しいの。

セントラルパークで人間に変装したノヤン

セントラルパークで人間に変装したノヤン

マンハッタンでは「プレウォー」と呼ばれる戦前に建てられたビルが人気なんじゃそうな。建築基準法の関係で天井が高く、構造的にもしっかりしておるので改装の自由度が高いそうなんじゃ。ワシの愛するオルコットホテルもまさにそんな建物だった訳で、おまけにロケーションが最高ときておるから投資家が見逃すはずもないんじゃな。とほほじゃよ。

ところで何でNYなのか説明しようかの。
アメリカ企業の本社は意外と全米に分散しておるんじゃ。マイクロソフトやボーイングはシアトルじゃし、ナイキはオレゴン、アップルはシリコンバレー、ガートナーはコネチカット、テキサスインスツルメントはテキサス、3Mはミネソタという具合なんじゃな。でも本社はバラバラでも、宣伝広告部門だけはNYに置いてある会社が多いんじゃ。ほとんどの広告代理店はここにヘッドオフィスを置いているし、メディアの中心でもあるからの。

広告はマーケティングのカテゴリーのひとつなんじゃが、予算配分という意味では突出したボリュームがあるから、やはり広告の中心地はマーケティングの中心地でもあるんじゃよ。

そんな理由からか、データベース・マーケティングの世界の総本山とも言えるDMA(Direct Marketing Association)の本部もマンハッタンにあるんじゃ。ワシも1990年代の初めからこのDMAの会員なんじゃ。今回はこのDMAの本部の訪問も大きな目的のひとつでな、楽しみにしておったんじゃ。

今回の最初の訪問はワシントンDCに本社を置くマーケティング・エージェンシーのニューヨークオフィスを訪ねて、戦略担当の幹部2人とミーティングをしたんじゃ。ミーティングの目的は世界の最先端であるアメリカのBtoBマーケティングがどこまで進化しているのかをリアルタイムで確認することじゃ。一方アメリカのマーケティング・エージェンシーもクライアント企業が日本に進出する際にはアドバイスをしなければならないので日本の情報には興味があるんじゃな。
面白いミーティングじゃったわい。

最初に感じたことは、マーケティングサービスの細分化が進み、企業サイドもより細かい分離発注を模索しているということじゃ。まぁ企業内のマーケティング担当者の経験とリソースがあるからできることなんじゃが。

元々マーケティングにおける日本とアメリカの最大の差は、マーケティング担当者の知識と経験だとワシは考えておったんじゃ。
そもそもこちらの大学や大学院では、本当に実践的なマーケティングを教えるんじゃ。友人が行っていたある大学では、アメリカの企業と提携して、その企業の内部資料を開示してもらった上でマーケティング戦略を立案し、学内で最優秀に選出されたプランはその企業の役員会でプレゼンテーションする権利が与えられるんじゃ。もちろんその企業の正式なマーケティング・プランとして採用されることもあり、そうなれば立案者はマーケティング・マネージャーとしてそのまま採用されることになるんじゃ。なんて合理的で実践的なワクワクするような授業じゃろう。
もちろん講師も民間企業のマーケティング部門で働いた実務経験を持っておる人が大半なんじゃ。そうでないと学生が授業を履修しないからの。

それに比べて日本のほとんどの大学で教えているマーケティングは、相変わらず「統計」から始まる眠くなる授業なんじゃ。まるで数学の授業みたいじゃよ。あれではみんながマーケティングを嫌いになってしまう、とワシは本気で心配しているんじゃ。しかも教える人の大半は民間企業での実務経験が無いんじゃ。「何かを売るためにのたうちまわった経験」の無い人が血の通ったマーケティングを教えられるとはワシには思えんのじゃよ。

一方、実務経験者が教鞭をとるアメリカの大学で実践的なマーケティングを学んだ者が企業のマーケティング部門に採用され、そこでハイレベルのプロフェッショナルと一緒に実務を重ねながら経験を積んでいくわけじゃから、やはりアメリカの企業には優秀なマーケターが多いのじゃよ。日本と違ってマーケティング部門出身の経営トップが多いのも、彼らがいかに優秀かを物語っておるじゃろう。「優秀なセールスマンはセールス・マネージャーになるが、優秀なマーケターは経営トップになる」とさえ言われておるんじゃ。

そして、優秀なマーケターは自分で立案したプランを自分で細部までコントロールしたいと考える傾向があるので、サービスベンダーを使う時も得意分野ごとに細分化して分離発注を掛けるんじゃな。
じゃから、サービスを提供する側も自分の得意分野にとことんフォーカスしてその中で生き残ろうとするんじゃ。

つまり今のアメリカは、得意分野をとことん絞った専門家集団か、世界中どこにでも同じサービスを提供できる、つまりグローバルアカウントを持てるネットワークを持つ規模の企業か、どちらかになるしか生き残れないのじゃよ。
そして専門特化の道を選択した連中は、自分の専門外のことはあまり興味も知識もないんじゃな。

夜のNYを訪問先に向かうノヤン

夜のNYを訪問先に向かうノヤン

この時の訪問では、BtoBマーケティングのストラテジスト(戦略担当)と話していて感じたんじゃが、彼らはマーケティングのために使うツールやシステム(アプリケーション)にあまり興味がないんじゃ。日本ならセールスフォースはどうだ、ダイナミクスCRMはここが使い勝手が良い、メール配信ASPはどこの機能が便利、とツールの話に花が咲くのじゃが、こちらでは、そういうことに興味があるのはマーケティング担当者の中のごく一部の人なんじゃよ。特にアメリカでは戦略を担当する人はコピーライティングなどのクリエイティブのバックボーンを持っているケースが多く、メッセージやチャネル毎のROIで比較した選択などの全体設計に話題が集中する傾向が強いんじゃ。

これは日本でよく見られるようにマーケティング・マネージャーがPR畑の出身で、広告とPRにしか興味が無いのとは根本的に違うんじゃが・・・。でも表面的には似て見えるかもしれんの。

そういう意味で、データベース・マーケティングらしい話題で話ができるのは、今なら「デマンド・ジェネレーション」(Demand Generation:案件創出)という比較的新しい言葉で総称される役割を持った人たちじゃろうな。彼らだけがマーケティング・ツールや営業支援システムやパイプライン・マネージメントやネット広告の数値に興味あると言えるじゃろう。

この「デマンド・ジェネレーション」という数年前から使われ始めた言葉は直訳すると「需要創出」となるんじゃがBtoBでは「案件創出」とした方がわかりやすいじゃろう。見込み客リストを収集する「リード・ジェネレーション」とそれを整理して育成・絞込みをする「リード・クォリフィケーション」を合わせた呼び方と覚えておけば良いじゃろう。これから日本でも非常にメジャーな言葉になっていくので覚えておいて損はないとワシは思うんじゃ。

次回はこのデマンド・ジェネレーションの専門家とのミーティングと、DMAの本部の訪問の話をしようと思っておるんじゃよ。

続く

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