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2008.12.01

誰もが嫌いな「ID・パスワード」 認証の間違った使い方

顧客データを汚す原因のひとつが「ID・パスワード」を使った認証です。便利な反面、BtoBの世界では使い方を間違うとせっかくのマーケティングが台無しに・・・。

今日は多くのマーケターを惑わせ、苦しめてきた「認証」の話をしようかの。
認証、つまりIDとパスワード(以下PW)ってやつじゃな。

そもそもなんで認証する必要があるんじゃろ?
貴重な情報を競合のアクセスから守るため?
登録会員へのインセンティブ?
誰が何を見に来たかを解析して興味のありかを探るため?
それとも、データ管理の手間を省くため?

ワシの経験では、多くの企業が確たる理由もなくWebに認証を掛けて、その結果アクセスを減らし、データを汚しておるんじゃよ。

例えばセミナー申し込みじゃ。
顧客や見込み客がセミナーやイベントへ参加登録をする際にいちいちプロファイルを入力する手間を省きたい、と考えるのは良いことじゃな。そしてそのためにID・PWを発行し、参加申し込み時にこれを入力させる手法があるんじゃ。ID・PWで本人を特定(認証)し、登録データを表示すれば、会社名や部署名を毎回入力させる必要はないからの。顧客からの評価(CS)も上がると期待してこの機能を採用する企業も多いじゃろう。

しかし現実には、年に1度か2度しかセミナーに参加しない見込み客はIDやPWなんて覚えてくれないし、そもそも自分がIDを持っていることも忘れているもんじゃから、新規で登録してしまうんじゃな。つまり同じ人が何度も新規登録をしてしまうんじゃ。
当然データベースには、同一人物が2人、3人と重複登録されてしまうんじゃが、住所表記や企業名、部署名、ダイヤルインの電話番号などの書き方が毎回ちょっとずつ違っていたり、ID・PWを新たに登録してしまうのでマージ(名寄せ)することができないんじゃ。その結果重複だらけのデータベースになってしまうんじゃな。

データが汚れること、つまり重複が増えることは、集計などで間違った数値を出すことになるだけでなく、メール配信などで事故やクレームの元になり、DMやFAX配信、アウトバウンドテレマーケティングなどの単価の高いメディアを使うときは無駄なコストを発生させるので、担当者が最も恐れる事なんじゃが、それはこんなことが原因で起こってしまうものなんじゃよ。

マイページなどを使って、ユーザーの登録情報をユーザー自らが更新するような機能を採用すると、さらにややこしいことになるんじゃ。
これはユーザーの使い勝手というよりも、自分たちでデータをメンテナンスするのが大変なので、ユーザー自身にメンテナンスさせようという、とっても横着な発想から生まれた機能なんじゃ。

そして、本人が自分の情報を入力するのだから正確な情報がアップデートされる、と無邪気に信じていることがそもそもの間違いなんじゃ。経験すれば誰でも判ることなんじゃが、日本では本人が正確に自分のデータを更新することを前提にするのは無理があるんじゃよ。本人じゃからって、自分のデータを間違えずに入力するなんてありえないんじゃ。
社名、部署名、ダイヤルインの電話番号、URL、メールアドレスなど略式表記を使ったり、誤入力をする要素が非常に多く、どんなに几帳面な人でも前回、または印刷してある名刺とまったく同じに入力することは難しいんじゃ。

つまりこうした機能は

1.几帳面に定期的にWebを訪問してくれて

2.ちゃんとID・PWを記憶してログインに成功して

3.自分の部署や肩書きの変更箇所を更新しようと考えてくれて

4.その更新情報の入力ルールを守って略式表記無しで正確に登録してくれた

場合にのみ有効なんじゃ。

当然じゃが、この4つをクリアする確率は非常に低く、どれかひとつでもダメなら名寄せできないデータを作り、データベースの精度を落とす原因を作ることになるんじゃよ。しかも、この1〜4の過程で離脱する多くの人はこの企業に関して良い感情は持たないんじゃ。
なんで、よその会社のために自分でわざわざ今年も昇格できなかったの、部署移動したの、降格になっちゃったの、とカミングアウトしなければならないのか、とまぁ普通は思うわなぁ・・・とワシは思うんじゃよ。

しかもじゃ、マーケティング活動はセミナーだけではないんじゃ。展示会やイベントで集めたデータ、営業が交換した名刺などと一元管理する際には、このID・PWを発行したデータほど扱いにくいものはないんじゃ。ユーザーが自分で登録した個人情報を勝手に変えることができなくなるからの。
展示会やイベントで集めた、名刺情報と、ユーザーが自分で登録したこのデータを名寄せする時には、先週展示会で入手した最新の名刺情報をこのID・PW付きの古いデータで上書きせざるをえない、なんて悲劇的な話は少なくないんじゃ。

また、最近では登録会員だけにWeb上の特定のコンテンツを見てもらう目的で、ID・PW機能を活用している例も多いんじゃ。Webのある階層から先は、ID・PWを持つ人しか見ることが出来ないようにしたいんじゃな。導入事例、コストイメージ、また原価の高いコンテンツなどは登録してくれた人にしか見せたくないし、ましてや競合には見せたくないもんじゃ。その気持ちは良くわかるの。
誰でも見られるのなら会員登録したインセンティブが無いし、中には有料会員へのサービスとしてWebのコンテンツを利用しているケースもあるので、こうした認証機能を使うのも理解はできる。

しかし、ID・PWの認証画面のアクセスログを解析してみると、多い時は95%以上の人が認証画面から先にログインしていないことがわかる。パスワードを忘れたか、メンドクサイので撤退したか、つまり、せっかく用意した認証後に拡がる素晴らしい情報にはほとんどの人がアクセスしていない、ということなんじゃ。
これでは本末転倒と言わねばならんわな。

では、このID・PWの機能はどのように使うのが有効なのかを話そうかの。
1995年、日本で大手テレマーケティング会社の上場記念で「ワン・トゥ・ワンマーケティング」という本が出版されたんじゃ。これはその2年ほど前にアメリカで若きマーケティングコンサルタント、ドン・ペパーズと彼のパートナーでマーケティング学者でもあるマーサ・ロジャーズが書いた本だったんじゃ。日本でもよく売れて、この「ワン・トゥ・ワン」という言葉が大流行したんじゃ。
当時の高度な認証機能を売りにしたCRMブロードビジョンにもこの「ワン・トゥ・ワン」という名前が付いていて、世界的なキャンペーンにはドン・ペパーズも参加していたんじゃよ。

この「ワン・トゥ・ワンマーケティング」が理論として正しかったか、あるいは実現性があったかはともかく、この本の中で語られた大部分のことは「認証」すればこんな世界が広がるよ、という話なんじゃ。
「ID・パスワード」で個人を認証し、マイページにアクセスしてカスタマイズされた情報にアクセスし、そこで文字通り1対1のコミュニケーションを実現する夢の世界だったんじゃよ。

現在ではこの機能は非常に有効に機能しておるんじゃ。例えばamazonというオンラインショップでは本人を特定して、お勧め商品を表示したり、送付先やクレジットカードを複数登録して、選択できるようにしてるじゃろ。あれなんかは典型的な認証の使い方なんじゃ。この機能のお陰でワシはちょびっと本を買い過ぎておるがの。

そういえばワシは最近ダイエットに挑戦して、14キロも痩せることに成功したんじゃが、これもオンラインのダイエットサイトに登録してダイエットダイアリーを几帳面につけ続けたことが大きかったんじゃ。
そのサイトに登録すると、励ましのメールや食事のアドバイスなどが送られてきてダイエットを応援してくれるんじゃ。ライバルが登録できたりして、なかなか楽しみながらダイエットできたわい。その日に食べた内容や、運動の時間や種類、そして体重を記入するので、しっかりしたセキュリティが無いと利用は出来ないんじゃな。
こうしたオンラインサービスを受けられるのも「認証」のご利益じゃの。

BtoBでもこの認証はとっても便利に使われておるんじゃ。例えば取引先によって卸価格(仕切値)が異なる場合、認証してマイページに入った顧客が自分の会社の仕切値で見積もりが取れるし、発注した製品が今どこにあるかというロジスティックの情報もリアルタイムに見られるし、納品先の変更も簡単にできるんじゃ。しかも購入者側の担当者が急に代わっても、このマイページにアクセスすれば前任者が何をいくらでいつ購入したかが判るので、引継ぎ業務が必要ないんじゃ。
この辺の仕組みではやはり業務用のPCやサーバで実績を持つDellが一歩先を行っているかもしれんの。

こうした高密度でカスタマイズされ、かつ高いレベルのセキュリティが求められる情報へのアクセスに関しては認証を掛けるべきなのじゃが、見込み客や過去客とのコミュニケーションで認証を掛ける合理的な理由はほとんどないんじゃ。

BtoBの世界では、この認証の使い方を間違えると、せっかくのマーケティングが台無しになる危険があるんじゃ。じゃから、ID・PWを使う時は、本当にそれが必要かどうか、よくよく吟味して、認証がデータを汚す「悪夢のツール」にならないようにしなければならないんじゃよ。

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