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2009.02.23

STPこそマーケターの基本中の基本:セグメンテーション編

製品やサービスのマーケットを細かくセグメンテーションすればするほど、そこにぴったり合った提案が明確に見えてくる。正しいマーケティング戦略を立案するにはマーケットを細分化して見なければならないのです。

ノースウェスタン大学ケロッグ大学院の教授であるフィリップ・コトラー博士は言うまでもなく現代のマーケティングを代表する人物の一人じゃ。しかし、数多くあるマーケティングのフレームワークの中でコトラーが最初に提唱したものは意外に多くはないんじゃ。

ベルカーブ(鐘の形の線形グラフ)で有名な「イノベーター理論」はエベレット・ロジャーズ
そのベルカーブの中にクラック(割れ目)を発見し、ハイテク分野の新興企業が必ず落ちるそのクラックをキャズムと名付けて体系化した「キャズム理論」はジェフリー・ムーア
マーケターにとって最も馴染みの深いフレームワーク「4P」はジェローム・マッカーシー
その4Pをプロダクトアウトではなくマーケットイン(顧客視点)で再定義したと言える「4C」はロバート・ラウターボーン
大型商業施設や病院の売上予測のスタンダードになっているハフ理論(ハフモデル)はデービッド・ハフ
航空工学やコンピュータテクノロジー、そして行動心理学にも大きな影響を及ぼしている「サイバネティクス理論」はノーバート・ウィーナー
そのサイバネティクスを人間の心理学に応用・発展させた「サイコ・サイバネティクス理論」はマックスウェル・マルツ
そして囚人のジレンマなどで知られる「ゲーム理論」はフォン・ノイマン。・・・ という具合じゃな。

それぞれ現代のマーケティングに大きく影響を与えた理論やフレームワークじゃが、コトラーではないんじゃ。
しばしばコトラーの言葉と勘違いされている「ドリルを買った人が欲しかったのはドリルではなく穴である」(意訳)という言葉でさえ、レオ・マックギブナの言葉をセオドア・レビットがその著書の中で紹介したものなんじゃ。

では、コトラーの功績とはなんじゃろう?
もちろんマーケティングの概念やフレームワークを整理し、体系化したこと、ソーシャル・マーケティングという概念を打ち立てたこと、などその功績は途方もなく数多いのじゃが、ワシは「STP」をマーケティングの中核として位置づけたことがコトラーの最大の功績だと考えておるんじゃ。実はコトラー自身も書籍の中ではっきりそう書いているんじゃよ。

マーケティングは「売れる仕組みを創ること」じゃ。その売れる仕組みを設計する時に絶対に手を抜いてはいけないのがこのSTPであり、さらに仕組みを構築した後も常に意識し、チェックし続けなければならない事がこの「STP」なんじゃ。

マーケターの仕事はSTPに始まってSTPに終わると言っても過言ではないとワシは考えておるんじゃよ。最近はこのマーケティングキャンパスの用語集のアクセスランキングでも、「STP」は常に上位なんじゃ。これはとっても良い事じゃとワシは喜んでおるんじゃ。

改めて説明すると「STP」とはセグメンテーションの「S」、ターゲティングの「T」、ポジショニングの「P」のそれぞれの頭文字をとって付けられた名前なんじゃ。そこで今回は「S:セグメンテーション」の話をしようと思うんじゃ。

「セグメンテーション」とは市場(マーケット)を細分化(セグメント)することなんじゃよ。セグメントするからセグメンテーションなんじゃ、と・・・ここまでは簡単なんじゃが、これを実際に行うとなると途方もなく奥が深いんじゃ。ひとくちにセグメントと言っても、その切り口はもう無限にあるからの。
マーケットを大きな岩だと考えて、それを鋭いカッターで切った場合の切り口の形状とその大きさは、無限と言っても良いほどの組み合わせがあるじゃろう。マーケットをセグメントするということはそれと同じなんじゃ。センスと技術が必要なんじゃな。

なぜマーケットをセグメントするのにセンスが必要なのか?
例えばサラダ油メーカーのマーケティング担当者が競合製品として意識するのは通常は競合サラダ油メーカーであり、あるいはゴマ油やオリーブオイルなどの調理用油製品じゃろう。でもマーケットセグメントによってはビールや石鹸が競合になる。このセグメントは「お中元・お歳暮」というギフトマーケットじゃな。しかもこのマーケットセグメントはサラダ油業界には無視できないマーケットサイズなんじゃ。
じゃからこのギフトマーケットをさらに細分化、つまりセグメンテーションする必要があるんじゃよ。マーケット(市場)を細分化する目的は言うまでもなく、その中から自社の製品やサービスが勝てる土俵、つまりはフォーカスすべきターゲットセグメントを見つけ出すことなんじゃ。

では実際にはどんな風にマーケットをセグメントするのかを見てみようかの。
BtoCなら年齢、性別、職種、地域、趣味、所得レベル、家族構成などが基本的な切り方ではある。不動産や建築関連、システムキッチンや自動車などのマーケティングでは、持ち家か賃貸住宅か、などの住環境が重要になる場合もあるんじゃ。
こうした基礎データを収集するのが若いマーケターの最初の仕事なんじゃ。市役所などに通って人口動態や交通量調査のデータなどをせっせと集める訳じゃな。

「F2」という表現を聞いたことがあるかの?あれもマーケットセグメントなんじゃ。「F」が女性を意味し、「F1」は20歳〜34歳を、「F2」は35歳〜49歳までを、「F3」は50歳以上の年齢層を意味するんじゃ。
つまりある製品やサービスのマーケットを、性別と年齢層でセグメントし、例えばあるリゾートホテルのコンセプトを決める時にターゲットセグメントを「F2」として、「F2から最も支持されるリゾートを目指そう」という戦略立案に使うわけなんじゃ。ターゲットセグメントがビシっと決まるとそこが基準になるからその後の判断がぶれなくなるんじゃな。

こうしたプロファイル(略歴のデータ)からの分類の他に「あるものに興味を持った」「あるものを買った」「利用した」などという「行動(ビヘイビア)データ」を基にした非常に重要な分類法もあるんじゃよ。

例えば過去に健康食品を購入した人、というセグメントは健康に興味があり、様々な健康食品を次々に試す傾向にあるんじゃ。個人情報を違法に取引しているブラックマーケットの中で「通販で健康食品を購入した人」のリストが数多く流通している理由はこれなんじゃ。
ダイエット食品を購入したセグメントは「ダイエット・痩せる」というキーワードに反応し、食品やプログラム、グッズなどを次々と試す傾向が強いんじゃ。この人たちは基本的には痩せない遺伝子を持っている場合が多いから一時的にはダイエットに成功しても、またリバウンドし、生涯を通じてダイエットマーケットに莫大な収益をもたらしているんじゃ。

えっ!「お前のことじゃろ」って・・・なっ何を言っておるんじゃい!授業の邪魔をせんでほしいの。ぷんぷん。
少し前に大流行した「ビリーズブートキャンプ」を覚えておるかの?あれを支持した人たちは、多くのダイエット食品やプログラムを試した後で「やはり体を動かさない楽なダイエットは効果が出ない」と薄々考えていたセグメントなんじゃ。
何度もダイエットに失敗し、「やっぱ楽して痩せるわけはないわなぁ〜」などと考えていた人にとっては軍隊式のハードなプログラムは最高のダイエットプログラムに映ったのじゃよ。実はワシもこっそり試してみたんじゃが・・・あんなキツイ運動を45分も続けたら死んでしまうわい!なんと腹筋がつったんじゃよ。海老反った姿勢のまま死ぬとこじゃったわい。という訳でアッという間にお蔵入りしたんじゃな。

この「ビリーズブートキャンプ」の事例はダイエットという古くて巨大なマーケットでさえ、まだまだセンスの良いセグメンテーションによっていくらでもヒット商品を生み出すことができるということを教えてくれているんじゃな。

BtoBならプロファイルのセグメントは、業種・業態、規模(社員数・売上・資本金など)、企業形態、地域、また企業に所属する個人の場合は所属部門、役職、担当などがあるんじゃ。またBtoCと同様に行動(ビヘイビア)でのセグメントも非常に重要なんじゃ。

BtoBでダイエットに該当するのがさしずめ中途採用じゃろうな。特に社歴の浅い企業の場合、まだ企業の骨格ができていないので中途で採用しても定着率が悪い。でも社内の中堅層が機能していないので新卒採用をしても仕事を教える人がいない。しかし企業は成長しているので慢性的に人材不足で、常に即戦力の中途採用の求人活動をして、紹介・派遣・採用・適性検査・教育研修などの人材ビジネスマーケットに莫大な収益を落としているんじゃ。

じゃから、人材紹介会社の営業は求人広告を熱心に見ているんじゃ。採用意欲の強い企業は人材紹介や研修などのビジネスチャンスがある企業というセグメンテーションが可能じゃし、求人している職種を見ればどんな人を求めているかまで判るから、そういう人が紹介リストに登録されていればすぐに決まる可能性が高いんじゃよ。
もちろん「求人に積極的」ということは社員が増える、ということじゃから、オフィスも広くしなければならないし、パソコンも必要になるし、電話も足らなくなるし、人事給与システムが無いと事務経費が途方もなく掛かるし、と多くの製品やサービスにとっては重要なセグメントになるんじゃよ。

例えば「海外に工場を新設する企業」というセグメントはIT投資のニーズがかなりあるんじゃ。生産管理、人事給与、設計・デザインなどの業務システムを現地の言語や、基軸通貨に合わせなければシステムが稼動しないからの。それに現地法人の形で海外進出すれば海外に子会社を持つことになるから連結会計に対応できるシステムが必要になるんじゃ。それらすべての要素に対応するために、大規模なシステム改修やリプレース、パッケージの導入などが予想されるからなんじゃ。

BtoBの場合は昔から企業のプロファイルデータでのセグメントしかしてこなかったのじゃが、最近になって企業の行動解析でセグメンテーションする方法が編み出されてきたんじゃ。海外移転が発表される前の、まだ企業内の一部の担当者が情報収集している段階でそれを察知するための仕組みが今後のBtoBマーケティングの主流になるじゃろう。

アメリカで流行っている「デマンドジェネレーション:Demand Generation:案件創出活動」はまさにこれが目的じゃし、ワシが顧問を務めておるシンフォニーマーケティングは日本型デマンドジェネレーションの草分け的な企業なんじゃ。

自分たちの製品やサービスのマーケットを細かくセグメンテーションすればするほど、そこにぴったり合った提案が明確に見えてくるものなんじゃ。
業界紙や雑誌などのマスメディアを使った広告活動などではマーケットを大きく見なければいけない場合もあるんじゃが、実際のマーケティング戦略を立案する場合はむしろ細分化して見なければならないことが多いのじゃよ。

そうして細分化した中から「今、競合企業から受けているサービスに不満を持っている」、「解決できない困りごとを抱えて途方に暮れている」、「競合が見逃している隙間」、などのセグメントを見つけ出す作業がこのセグメンテーションなんじゃよ。

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