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2009.04.20

BtoBマーケティングのKPIは「定義」が命

マーケティング活動は、プロセスを数値で可視化しないと、評価の対象にはなりません。そして、「KPI」の数値の定義を決めるときこそが、マーケターの実力が試されるときなのです。

ノヤンじゃよ。マーケターのみなさんはお元気かの?
不景気、不景気と嘆いているうちに、あちこちで明るい話題も出てきた気がするのはワシだけかの?まぁ不景気な顔をして下を向いていても良いことなんかなにひとつ無いんじゃから、明るく元気なミミズクでいようと思っているんじゃよ。

ところで最近、日本企業のマーケティング部門で最も話題になっている言葉はなんだか知ってるかの?ワシのところに一番聞こえてくる言葉は「レポート」なんじゃ。
マーケティング部門は直接販売するわけではないので、どうしてもコスト・センターになるんじゃな。その割に派手にお金を使うようなイメージがあるらしく、景気が悪くなると必ず「使ったお金の費用対効果をレポートせよ」と言われてしまうんじゃ。
もちろん、このレポートで売上に貢献していることを証明できなければ次年度の予算を大幅にカットしちゃうぞ、という「脅し」付きなんじゃ。

これは、マーケティング部門の人間にはけっこうきっつい作業での。
なにしろ多くの企業のマーケティング部門の人は、展示会にセミナー集客、WebのリニューアルにSEO、キーワードの購入、雑誌広告、休眠顧客へのテレマーケティングキャンペーン、パンフレットやカタログの制作、そしてプライベートイベントの主管や、時にはユーザー会の事務局までを担当しておる。こうなれば、費用対効果どころではなく、次々に出てくる目の前の仕事をなんとか予算内で「こなす」ことしか出来ないんじゃ。
そこに、今までのマーケティング活動を費用対効果でレポートせよ、なんて言われても、そんなこと意識もしていなかったので途方にくれるしかないんじゃよ。

仕方がないので鉛筆なめなめ手元に在る数値データを集計してみると、展示会やセミナーやWebのリスティング広告が、意外な程売上に貢献できていないことが判ってきてガッカリして泣きたくなったりするんじゃな。これは多くの場合、実際に売上に貢献していないのではなく、「データが無いから見えない」だけなんじゃが、見えているデータだけで集計するとそうなるんじゃ。

そしてそれをそのままレポートにすると予想通り、次年度のマーケティング予算を大幅に削られて、「今年は展示会には出られません」「もうリスティング広告は買えません」「専門誌への出稿はできません」「外部リストを使えないのでもうセミナーは開催できません」・・・と悲しいことになってしまうんじゃ。マーケティング部門は基本的にお金がないと何もできない部門じゃから、予算の確保は極めて重要な仕事なんじゃよ。

外資系などのもっと厳しい企業の場合は、こんなレポートを提出しようもんなら、マーケティング予算のカットどころか、部門ごと閉鎖されて自分もどこに飛ばされるか判らない、と憂鬱な気持ちになってる人もいるんじゃよ。本当に気の毒じゃの。

こんな時に使うのが今日のテーマの「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)」なんじゃ。

ちょっとこの言葉を説明しようかの。
「KPI」とは、企業活動をモニタリングする指標の一つで、目標達成を定量的に測定するためのものなんじゃ。例えば新規見込み客の獲得数や1人当たりの獲得コストといった各業務の遂行上でキーになる指標を定め、それを定量的にモニタリングする時に使うんじゃよ。
車を会社に例えれば判りやすいじゃろ。車のもっとも重要な要素であるエンジンの調子を見るのに使う指標が「回転数」でそれを表示する「Indicator」がタコメーターなんじゃよ。

では、よく営業系の会社で売上や粗利益(売上総利益)などを「折れ線グラフ」で掲示しているのはどうかというと、あれは一般的には「KGI(Key Goal Indicator:重要成果指標)」と呼ばれる指標なんじゃ。
年間の売上目標から割り戻した四半期の売上目標や、月次の売上や利益などの経理的・財務的な指標はこの「KGI」と呼ぶべきものなんじゃ。これらは成果であってプロセスではないから、数値そのものを見ていれば良く、キーになる要素を探し出してそのパフォーマンスを測定するなんてややこしいことをする必要は無いんじゃよ。

つまり、目標(Goal)となる経営数値を直接、定量的に観測するのが「KGI」で、その数値を作るためのプロセスの中の重要(Key)な項目のパフォーマンスを定量的に観測する指標が「KPI」と考えれば良いじゃろう。

マーケティングとは「売れる仕組みを創る仕事」じゃから、マーケティングそのものが目的ではなくプロセスなんじゃ。じゃから「KGI」ではなく、「KPI」を使うことが合っているんじゃよ。
欧米で産まれたCRMやSFAのインターフェースの中で「ダッシュボード」という機能があるのを見たことがある人もいるじゃろ?車についているスピードメーター(Indicator)みたいなのが並んでいる画面じゃよ。あれで何を表示するのかと言えば、この「KPI」なんじゃ。
実はちゃんと使っている会社はあんまり無いのじゃが、でもあんな風に重要なプロセスが見られたら良いなぁ、とは誰もが考えるものなんじゃな。

では、なんで日本企業は「KPI」やそれを表示するダッシュボードがうまく使えないんじゃろう?
それは「定義」なんじゃ。指標を使うときに最も重要でセンスと力が必要なのは、この「定義する」(ディフィニッション)ところなんじゃよ。
ここがぶれていたり、違う定義のデータを集計したりすると悲惨なことにしかならないんじゃ。

あまり認めたくない話じゃが、日本人がビジネスの分野で欧米人と比較して決定的に劣っているのは、この「定義する」というところじゃとワシは考えておるんじゃ。日本人は曖昧な表現を使うことで波風を立てないで共生してきた長い歴史と習慣をもっておる。白黒をはっきりさせ過ぎるとやたらと対立するからの。でも欧米はそこをはっきりさせる文化なんじゃ。曖昧さを排除することで彼らはスピードと強さを手に入れたんじゃな。

BtoBのマーケティングなら見込み客1名を獲得する単価を表す指標として「CPL(Cost Per Lead)」があるじゃろ。
展示会で名刺やアンケート1名分を獲得する、またはWebからのユーザー登録者1名を獲得するコストの指標で、マーケティング活動の重要な「KPI」なんじゃ。
これも多くの企業では把握されていないし、例えば「うちの会社はちゃんとCPLを把握してますよ」という企業に行っても、Webを主管する広報と、展示会を主管する事業本部と、データを管理するマーケティング部門の「Cost」や「Lead」の定義は共有されていない、ということが多いんじゃよ。

これでは「KPI」としては使えないんじゃ。

「CPL」で展示会での名刺収集単価を計算する場合ですら、原価に入れる項目を社員の給与まで入れるのか、交通費はどうするのか、会場で配布する資料はどうするのか、など細かく決めないと計算できないし、単発で計算するのか、同じイベントの複数年分で計算するのか、四半期ごとの出展イベントでくくってしまうのかは、企業によって違うから、決めないといけないんじゃな。

こうした細かい取り決めで「Cost」を決めた後、今度は「Lead」の定義を決めなければならないんじゃ。
これは、集めた名刺・アンケートを全部カウントする、という企業もあれば、重複・競合排除の後でカウントする企業もあれば、さらに詳細に、既存の見込み客データベースと掛け合わせることで「純増」だけをカウントするケースもあるんじゃ。もっともこれは完全に名寄せができた状態でデータ管理していないと出来ない芸当なので、普通の企業では無理なのじゃがな。

とにかくこうして「定義」を確定させてぶらさないことが重要なんじゃ。誰が集めても、集計しても、レポートしても、この分母と分子の定義をぶらさなければ、その数値データは指標、つまり「KPI」として使えるということなんじゃ。

マーケティングの「KPI」は定義が命、定義こそはマーケターの実力が試される作業なんじゃよ。

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