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2009.05.22

08年9月のリーマンショック以降のマーケティングの新しい潮流

昨年9月に世界経済に大打撃を与えたリーマンショック。日本企業のマーケティングも例外なく転換を迫られました。昨年9月以降にBtoBマーケティングの現場に起きた変化をレポートします。

キャンパス読者のみなさん、こんにちは ノヤンじゃよ。

イベントシーズンに突入した日本じゃが、みなさんはいかがお過ごしかの?
100年に1度の大不況とか、米国の大手自動車産業の破綻とか、国内大手企業の赤字決算とか、大規模なリストラ、おまけに新型インフルエンザ・・・、本当に暗い話題ばかりじゃの。

さて、今回は昨年9月に米国で起こったリーマンショック以降、日本や世界のBtoBマーケティングがどう変化し、各社がどう工夫しているかを俯瞰的に書こうと思うんじゃ。
もちろん、まだショックが収まった訳ではないがの。

でも、いくら予算を削減されても、その中で案件や売上げを作らなければならない事は変わらないんじゃ。不景気が過ぎ去るまで冬眠でもできればこんなに楽なことはないんじゃがな・・・そうはいかんじゃろ。

じゃから、BtoB企業がこの不景気にどう対応しているかを【広告】【展示会】【Web】【テレマーケティング】などの分野ごとにレポートしようと思うんじゃ。

広告

最も大きく不況の影響が出ているのはこの分野かもしれんの。広告界の巨人である電通が創業期以来約100年ぶりに赤字決算に転落したと言えばインパクトの大きさがわかるじゃろう。

実は企業のブランディングを考えれば広告への投資は決して無駄遣いではないんじゃ。広告によって培われた企業ブランドや製品ブランドはセミナー集客などでも重要な要素になるからの。ただ、即効性という意味ではやはり「売上げ」からは「遠い」と言わざるをえないんじゃ。
しかも「費用対効果」が最も可視化しにくい分野でもあるからの。企業の危機感からすれば、メディアが出してくる認知度調査レポートは投資の参考にはならないんじゃよ。特に今のように売上げに直結する予算以外は取れない状況になれば、どうしても予算縮小の対象になってしまうんじゃな。

比較的、営業案件やセミナー集客に直結しやすいオンライン広告でも、これは同じなんじゃ。
今まではセミナー集客はネット広告やレンタルリスト(パーミッションメール)などに頼っていた企業が多かったのじゃが、近年はこの方法ではセミナー参加者を集められなくなってきておるんじゃよ。

ワシの会社であるシンフォニーマーケティングでは、認知経路が可視化できるセミナー申し込みフォームを持っておるんじゃが、これで見ても、各企業のセミナー参加者の中の、オンライン広告からのアクセス比率は下がる一方なんじゃ。直接リンクを張れるオンライン広告がこうなのじゃから、雑誌などの紙媒体はさらに効果が見えにくい。URLを大きく記載しても、それを叩いてWebに来てくれる人は少ないからの。

というわけで、ワシの見る限り、広告への投資はもうしばらく我慢する、という企業が多いようじゃの。

展示会

これも、大幅な予算縮小のターゲットになっている分野じゃな。BtoBでは広告と並んで予算の大きな部分を占めているからの。
日本は個人情報保護法などで個人情報の売り買いが原則禁止の国じゃから、大量のリード(見込み客)を収集しようと思えば、やはり展示会に出展するのはもっとも効率が良い方法なんじゃ。でも、展示会に出展すればそれなりのお金が掛かる。6〜8小間程度の中規模出展でも1300〜2000万円の予算が掛かるし、3〜4小間で安く上げようと思ってもノベルティやパンフレットなどを含めれば4〜500万円は掛かってしまうんじゃ。
コストが掛かるのは参加者も同じじゃな。交通費や宿泊費などの予算が出ないので、遠方からの参加者がめっきり減ったという展示会の話をよく耳にするからの。

この傾向は海外でも顕著なんじゃ。
アメリカやヨーロッパの展示会は、日本と違ってエグゼクティブクラスの人が2〜3日の予定を組んで飛行機でやってくる。もちろん会場近くのホテルに部屋を取るのじゃが、こうした予算が昨年9月以降出ないんじゃな。おまけに世界的な新型インフルエンザの影響でどこの空港もテンヤワンヤじゃから、みんな出来るだけ出張はしたくないんじゃ。

そしてもうひとつ、どの展示会でも「主役不在」という深刻な問題が起こっておるんじゃ。
テーマを定めて専門性を深めた展示会でないと来場者は集まらず、集まらなければ、その来場者とのコンタクトが目的の出展企業にも出展の意味は無いのじゃが、その集客のアンカーになる各分野の「主役級」の企業が出展しない、という現象が数年前から起こっているんじゃよ。
ストレージならこことここ、ネットワーク機器ならこの会社、包装機材ならこの会社、半導体製造装置ならここ、という企業がそれぞれの分野で何社かあるじゃろう。そこが展示会に出展しなくなっておるんじゃよ。

数年前にある分野で外資系IT企業の数社が今後数年は展示会に出展しない、という意思決定をしてからこの流れが出来てしまったんじゃ。来場者から見れば一番見たい企業が出展していないことになり、来年はもう来なくてもいいや、となって来場者の減少の一因にもなっているんじゃよ。

単独での開催が難しくなると、複数の展示会の合同開催になったりするのじゃが、これまた来場者には何の展示会か判らなくなるし、出展企業にとっても自分たちが「ターゲット」としている見込み客のリストが集まらなくなってくるから出展する意味が無くなってくるんじゃ。
展示会主催企業の営業が出展契約を取れなくて悲鳴を上げているのはこんな事情からなんじゃよ。

ワシの会社でも、昨年のリーマンショック以降、急に増えたのが、「展示会と営業案件との因果関係の調査」の依頼なんじゃ。どの展示会で収集したリストから何件くらい営業案件が出ているのかを調べて、来年出展する展示会と出ない展示会、小間数を減らす展示会と減らさない展示会を選別しようと考える企業が増えたんじゃよ。もちろん営業案件がちゃんと可視化できていないと出せないレポートなんじゃが、ちゃんと代替手段もあるんじゃ。
セミナーの参加者や資料のダウンロード者と各展示会来場者のマッチングなどでそれぞれの展示会と営業案件との親和性をかなりの精度で可視化できるんじゃよ。

企業がこうした数値的分析で出展を判断しようとしはじめたのは非常に健全なことじゃとワシは思うんじゃ。
もうお付き合いや、同業者への見栄だけでお金を使う時代ではないからの。

Web

広告や展示会に比べると、Webの予算は表面的にはまだ削減されていないようじゃな。「表面的」というのは、不況になってWebを閉じた企業がほとんどないからじゃよ。大規模なリニューアルを予定していたが、予算がとれず、今のWebをもう少し使いまわすことになりました、という声は昨年からあちこちで聞くようになったがの。

BtoB企業のWebもただキレイに作れば良い、という時代を過ぎて、「売上げを作る仕組み」としてどう活用するか、という時代になってきておるんじゃ。これは、「マーケティングのツール」としてWebをどうデザインし、運用していく、ということなんじゃが、これには高度なノウハウとお金が掛かるんじゃ。
仕組みにするとなればマーケティングのノウハウを織り込んだWebの設計、裏のユーザーデータベース、CGI、そしてセキュリティ、高度なログ解析など、今までとは比較にならないお金と手間が掛かる。しかもそうしたマーケティングライクなWeb運用の経験が無い企業が、これに取り組もうとすると、どうしてもコンサルタントを採用しないとうまくいかないんじゃ。これもお金じゃな。

元々日本のビジネスパーソンは欧米と違ってあまりWebからのユーザー登録に積極的ではないからの。SEOに成功してWebのアクセスを増やしても、ホワイトペーパーやウェビナーに反応して個人情報を登録してくれる率は欧米に比べて非常に低いんじゃよ。じゃからWebを売上げに活用しようと思えば、単にリスティング広告にお金を使ったり、SEOに必死になってページビューを追ったりせずに、ちゃんと営業案件に結びつく仕組みを作らなければならないんじゃ。

海外に目を転じると、BtoB分野のWebサービス企業でも元気な会社がいくつか目に付くんじゃ。
たとえばWebキャスティングといわれる動画系の技術とノウハウを持っている企業じゃな。こうした企業は不景気で展示会などのリアルイベントの予算を取れない各社の状況を反映して、オンラインでセミナーや展示会をやってしまおうという試みに取り組んでおるんじゃ。オンラインなら新型インフルエンザも感染しないからの。

このことは、今回の大不況が、日本のBtoBマーケティングでは、大部屋という日本のオフィス環境が原因でなかなか普及しなかったWebキャスティングが本格的に普及するきかっけになるかもしれん、とワシは楽しみにしておるんじゃよ。
ワシも動画になる日が近いかのぉ〜。

テレマーケティング

BtoBのテレマーケティングに関しては、昨年以降、急速に方向性が分かれているように見えるの。
その理由はいくつかあるんじゃが、例えば今までのBtoB企業の行うアポイント獲得を目的にしたアウトバウンドテレマーケティングは、マーケティング部門よりも営業部門から発注していたケースが多いんじゃな。

営業部門の予算は当然じゃが、売上げに連動する。つまり売れていれば潤沢に予算を使えるが、売上げが足りなければ予算は使えない、ということなんじゃ。これでアウトバウンドテレマーケティングの市場は昨年の9月以降かなり縮小してしまったんじゃ。さらにテレマーケティングは社内リソースにスイッチが利くから、外部にお金を出すくらいなら社内の新人君たちにかけさせろ、となるんじゃな。これはあまり良いこととはワシは思わんがの。
ワシのところにもいかにも新人君らしいアポイントコールが洪水のようにかかってくるようになったわい。一切出ないが、「なんてしつっこい企業じゃい」というマイナスのイメージは残るからの。

ただ、こうした流れとは逆行する動きもある。つまり人を減らす、または採用を見送ることで営業部門の人員の数をギリギリまで抑えた企業が、少ないリソースを有効活用するために外部リソースを積極的に活用しようとする動きがあるんじゃな。これは主に大胆なリストラが出来る外資系からの流れなのじゃが、日本企業にも拡がっておるようにも見えるの。
これはマーケティング部門が集めて、育成し、絞り込んだ後の「有望見込み客リスト(クオリファイドリード)」にコールして、案件やニーズを確認し、数少ない営業に少しでも良いリストを渡して効率的に動かす仕組みとして機能しておるんじゃ。まさにデマンドジェネレーションじゃの。ワシはテレマーケティングは本来こうして使うべきじゃと思うんじゃよ。

さらに、テレマーケティングサービスにも内容に多様性が出てきておるんじゃ。
今までの、見込みの浅い対象に対してアポイントだけを目的にコールする「コールドコール」から、社内の状況やニーズ、キーパーソンまでの情報を収集する「ハイクオリティ・テレマーケティング」というプロ集団も出てきたんじゃ。
さらに単純な商材ならセールスまでしてしまう販売代行も出てきて、プレーヤーの少なかったBtoBアウトバウンドコールの市場も今や百花繚乱の有様なんじゃ。

*

はるか南に東京の高層ビルを望むシンフォニーの森のケヤキのこずえから冷静に見ておると、昨年9月のリーマンショック以降のBtoBマーケティングには、こうした変化が見えてくるんじゃ。

実はワシは、5月のはじめにロンドンに行ってきたんじゃよ。観光じゃないんじゃよ。BtoBマーケティングに関する会議や視察のためなんじゃ。
ロンドンはニューヨークと並んで世界の金融の中心じゃが、同時に広告・マーケティングの中心でもあるんじゃ。米国企業の多くも、欧州・中東・アフリカ(EMEA)の統括本部をロンドンに置いておるし、世界に冠たる広告グループもある街じゃからの。
そのロンドン出張のお話は次回以降に書くことにしようかの。

では、みなさん、がんばってくだされや。

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