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2009.07.23

STPとSWOTのポジティブでハッピーな関係

マーケティングの基本のひとつである「SWOT分析」。良い面も悪い面も把握して戦略を立てられる人こそ、真のマーケターになりえるのです。

みなさん、お元気かの?日本の湿度にはめっきり弱いノヤンじゃよ。

ワシはこのキャンパスの用語集のアクセスランキングにはいつも関心を持っておるんじゃが、ベスト3の常連はなんといっても「STP」なんじゃ。ワシはこのことだけでも、日本のBtoBマーケティングの未来は明るいと感じるんじゃよ。
マーケターにとって「STP」こそ、普遍的な最重要テーマじゃからの。
ところで、このキャンパス・マーケティング用語集で同じく上位の常連になっている言葉に「SWOT分析」があるんじゃ。

実はあまり知られていないんじゃが、この「STP」と「SWOT」はとっても関係が深いんじゃよ。
そこで今日は「SWOT」と「STP」の関係を話そうと思うんじゃ。

先ず簡単に「SWOT」の説明をしようかの。

「SWOT」は米国のコンサルティングの現場で使われはじめた戦略ツールで、スタンフォード大学で「SWOT分析」として確立されたのは1960年代なんじゃ。

何かを理解するためには、ある一面だけを見て判断することは愚かなことじゃろ?例えば新卒を採用する場合、その人を理解するために学校のある一科目の成績だけ、あるいは100m走のタイムだけで、その人が自分の会社に適性があるかどうかを判断することは危険この上ないじゃろう。
企業や製品もこれと同じで、さまざまな角度から分析してやらなければその本質的な姿は理解できないんじゃ。

「SWOT」とは、そうした企業や製品や個人またはプロジェクトなどを、

  • 「強み:Strengths」

  • 「弱み:Weaknesses」

  • 「機会:Opportunities」

  • 「脅威:Threats」

に分けて評価・分析する手法で、それぞれの頭文字をとって「SWOT」と呼ばれているんじゃよ。
4つの要素の中の「強み」と「弱み」を内的要因、「機会」と「脅威」を外的要因として整理するんじゃな。企業を分析する場合に は、内的要因には人材、財務、技術力などと共にマーケティングも重要な要素になるんじゃよ。

当然じゃが、SWOT分析をするということは、同時にそれぞれに以下のような回答を導き出す行為でもあるんじゃ。

  • 「いかに強みを活かすのか」

  • 「いかに弱みを克服するのか」

  • 「いかに機会を活用するのか」

  • 「いかに脅威を排除するのか」

さらに、この中の「S(強み)」と「O(機会)」を組み合わせてフォーカスすべき分野を導き出したりもできるんじゃ。
50年も前に作られたツールでありながら、今もまったく色褪せないのは「STP」や「4P」と同じじゃの。

さて、この誰でも知っているSWOT分析は、実はあまり活用されていない分析手法でもあるんじゃ。実際に使うにはいくつかの注意点を考慮する必要があるんじゃよ。何か判るかの?

SWOT分析には大前提が2つあるんじゃ。

  1. 「客観性を確保する」

  2. 「目的を明確に定義する」

例で話そうかの。
「自分の会社をSWOT分析したので見てください!」という若い人を時々見かけるんじゃが、とっても否定的な、つまり自社の 欠点や弱点ばかりが羅列されて、良いところが全然無いという悲しい結果になっていることが多いんじゃ。

悲しい結果になったのには、2つの原因がある。

ひとつは「SWOT」の大前提のひとつである客観性が乏しいということじゃ。
SWOT分析をする場合、ひとつひとつの項目を客観的に見なければならないのに、自分の会社だとどうしても感情的になりやすいんじゃ。まぁ気持ちは判るがの。

客観性に乏しい「SWOT」は、残念ながら赤提灯で飛び交う酔っ払いの愚痴を理論武装しただけのシロモノなんじゃ。もし本当に強みや機会が存在しないなら、その企業が今存在している事実を説明できなくなってしまうじゃろ?
何の強みも持たない企業が存在し続けられる程、甘い時代ではないからの。

もうひとつの原因は、目的が曖昧だということじゃ。
目的が明確に定義されていなければ強みも弱みも無いんじゃよ。営業拠点が多いことは強みか弱みか、と問いかけたところで目的が明確でなければどちらにも答えられるじゃろ。

漬物石は重いほど良いし、持ち歩くノートPCは軽いほど良い。理由は簡単じゃ。両方とも目的が明確じゃから評価はぶれないんじゃ。軽い漬物石は役立たずだし、重いノートPCは嫌われものになるじゃろ。「重い」「軽い」は単なる特徴なのじゃが、目的が明確になって初めて、それが強みか弱みかが判るんじゃよ。

じゃから目的が「自分の会社」ではダメなんじゃ。企業というのは多面体で定義があるようでないから、それだけではSWOTの目的の定義にはなりえないんじゃ。

では企業を分析する時にはどうすれば良いのか?
それはSWOTの目的を明確に定義することなんじゃよ。

例えば、工作機械のメーカー「A社」が自社を分析する場合、ただ自分の企業全体を分析するのではなく、「自動車部品製造業界でシェアを10%伸ばす」ということを目的にすれば、「強み」も「弱み」も「脅威」も「機会」もクリアに見えてくるもんじゃ。

  • 「機械へのセッティングが早いので、部品1個あたりの作業効率は競合製品の1.4倍」という「強み」も見えてくる。

  • 「自動車部品製造業界で最も普及しているCADに対応していない」という「弱み」も見えてくる。

  • 「職人の世代交代で今までベテランの勘に頼っていたセッティングという工程が、工期短縮のボトルネックになっている」という、自動車部品製造業界での機会も見えてくる。

  • 「競合の工作機械メーカーもセッティング時間の短縮に力を入れて商品開発をしている」という脅威も見えてくる。

こうなれば、「シェアを10%伸ばす」ためにA社が採るべき戦略は明白じゃろ。

  1. 「今、自動車部品製造業界で高いシェアを押さえている数社の競合が【セッティング時間短縮による作業効率1.4倍】というA社の強みに追いつく前に、この業界で最も普及しているCADに対応したシステム開発を完成させることに、可能な限りのリソースを投入すること」

  2. 「自動車部品製造業の設計部門や生産技術部門などの担当者、またはそうした企業に工作機械を販売している 商社の営業をリストアップして、システムが完成したことを効率良く伝える準備を整える」

というのがA社の採るべき戦略なんじゃ。

そして、これを実現するための具体的な戦術として、どの展示会に出展すればそうしたリストが最も効率良く収集できるか、というプランニングに進むわけじゃな。

目的を明確にすればするほどSWOTは生きてくるし、曖昧にすれば赤提灯の悲しい愚痴にしかならないんじゃ。

もうお分かりじゃろうが、そのSWOTでの「目的を明確に定義する」という前提こそが、STPの「T」であるターゲットセグメントなんじゃ。市場を細かくセグメント(S)し、その中で勝負すべきターゲットセグメント(T)を選定する。そのためにSWOTを使うんじゃよ。

例えば、「犬」をSWOT分析しても何も得るものはないじゃろう。体が大きい、小さい、吠える、吠えない、走るのが速い、遅い、は犬種の特徴であって、強みでも弱みでもないんじゃ。
年中ウルサク吠える犬は近所の人にとっては迷惑な存在で、住宅地で飼うペットとしては問題があるじゃろ。
しかし、目的を「クマ狩りのサポート」と定義すれば、常に声を上げることで犬に比べてはるかに足の遅い人間に獲物の場所を知らせる役目を果たせるんじゃ。猟師はその声を頼りに犬が吠えかかっているクマに接近し、鉄砲で仕留めることができるんじゃよ。この目的では静かで大人しい猟犬はまったく役に立たないばかりか、猟師が追いつく前にクマに殺されることになりかねないんじゃ。

BtoCの商材でも、「大きい」「重い」「かさばる」というのは今の時代では多くの場合「弱み」になってしまうんじゃな。
でも、「お中元やお歳暮商戦で勝てる商材」と目的の定義を明確にすれば、「大きい・重い・かさばる」ということはそのまま「強み」になるんじゃ。今でもお中元やお歳暮市場でビールの詰め合わせやサラダ油、カルピスなどが大きなシェアを持っているのは、この3つの要素を持っているからなんじゃよ。

ワシはターゲティングを説明する時に良くジグソーパズルを例に出すんじゃ。誰でも一度くらいはジグソーパズルで遊んだ経験があるじゃろう?
美しい風景の絵や可愛い子犬の写真を小さなピースをはめ込むようにして完成させるやつじゃな。
【STP】のターゲティング(T)という作業はこれによく似ているんじゃよ。

つまり、市場を細かく分類(セグメンテーション:S)した後に、どのセグメントが自社の得意技で勝てるセグメント(ターゲットセグメント)なのかを探し出す知的なパズルがターゲティング(T)なんじゃよ。

細かくセグメントしたマーケット(市場)がジグソーパズルのボードと考えれば、そこにはめ込む小さなピースは自社や自社の製品やサービスなんじゃ。ひとつのピースがぴったりはまる場所はたった1ヵ所しかないんじゃ。そこを探さなければ絵は完成しないんじゃよ。
つまり絵を完成させるためには、絵や写真の完成イメージとボードの穴の形状を良く知ると同時に、手元にあるピースの形状を正確に認識しなければ「はめ込む」ことは出来ないじゃろう。

ところが多くの企業では市場調査をしてボードの穴の形状は熱心に調べるが、一方手元のピースの形は全然把握していないんじゃ。じゃから全然形状の違う穴、つまり最も魅力的に見えるセグメントに、合ってもいないピース、つまり勝てる要素の無い商材を無理にはめ込もうとしている企業が本当に多いんじゃよ。これでは絵は永久に完成することはないんじゃな。

この手元のピース、つまり自社の製品やサービスの形状を正確に理解するためのひとつのツールとして「SWOT」を使うことをワシは薦めておるんじゃ。

【STP】と【SWOT】のポジティブでハッピーな関係とはそういう意味なんじゃよ。

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