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2010.08.26

パレートとBtoB、ロングテールとBtoC

知っているようで、意外に知られてない「パレートの法則とBtoB、ロングテールとBtoC」の関係を具体例とともに説明します。

残暑お見舞い申し上げる季節じゃが、みなさんはいかがお過ごしかの? ノヤンじゃよ。
もうこのくらい暑くなると、標高600mのシンフォニーの森なんぞ涼しくもなんともないわい。

さて、今日は良く耳にする割に、あまり知られていない言葉 「パレートとBtoB、ロングテールとBtoC」の関係を考えてみようと思うんじゃ。まずそれぞれの言葉の整理をしようかの。

パレートの法則】とはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって1900年台初頭に提唱されたものでの、「20:80の法則」などとも呼ばれておるんじゃ。
実はこの法則は、パレート博士が当時社会問題になりつつあった「富の偏り」を証明するために考案したと言われておるんじゃ。
20%の富裕層に社会全体の80%の富が集中し、残りの20%の富を80%の非富裕層が分け合っているというものなんじゃが、パレート博士はこれを立証することで、一部の人々に富が集中する社会に警鐘を鳴らそうとしたんじゃの。しかし、現代の世界の富の偏りはこんなレベルでは無いので、パレート博士の努力はどうやら水の泡になったようじゃな。

では、このパレートの法則がマーケティングでどう使われているのかと言えば、売上げの80%は上位20%の優良顧客がもたらしている、というある航空会社のリサーチ結果から、この上位顧客を囲い込むためにマイレージプログラムが誕生したように、顧客分析にも使われるし、売上げの80%はトップ20%の営業マンが稼いでいるとして、残りの80%の営業マンに平均点を取らせる目的でSFAを導入したり、と今でも頻繁に使われておるんじゃ。
まぁ、こう言ってはパレート博士に失礼じゃが、現場の感覚からすると、かなり当たり前な現象を言っておるんじゃがな。
そして、このパレートの法則と対比して使われるのが「ロングテール」なんじゃ。

ロングテール】とはインターネット系の情報誌ワイアードの編集長だったクリス・アンダーソンが2000年頃に提唱した言葉なんじゃ。
当時勃興してきたオンライン企業「アマゾン」「イーベイ」などの売上げ構成を説明するために使ったのが最初と言われておるんじゃ。

つまり、この2つの言葉は100年の時を経て生まれた言葉なんじゃよ。
縦軸に販売数量、横軸に書籍のアイテムや購入顧客を取ってグラフにすると、尻尾の長〜〜い恐竜のシルエットのように見えることからこうした呼び名がついたんじゃよ。長いといっても半端な長さではないんじゃ。
例えば販売している書籍が20万タイトルとして、数千冊を販売したベストセラーが恐竜の頭、100冊以上売れた本が胴体だとして、販売数年間5冊以下の本が延々と続く尻尾になるんじゃ。そしてこの長い長い尻尾の合計金額が頭や胴体を超えてしまうビジネスモデルを指すと言われておるんじゃよ。

次に【BtoBBtoC】を見てみようかの。
「BtoB」(法人営業:ビジネスtoビジネス)、「BtoC」(個人営業:ビジネスtoコンシューマー)という言葉じゃが、実は定義が明確に決まっているわけではないんじゃよ。

例えば資生堂や森永などの消費者が購入する製品でも、これらの企業は直接消費者に商品を販売しているわけではないんじゃ。それどころか、消費者の手に渡るまでに何社もの中間商社や販売代理店などの流通網を通すことが多く、この間の取引形態から見れば企業対企業、つまりはBtoBと言えなくもないんじゃ。

ヤクルトを例にとれば、ヤクルトというメーカーと販売会社である都道府県にあるヤクルト販売との取引は企業対企業じゃ。さらに販売会社とヤクルトおばさんと言われる販売員との関係も企業対企業なんじゃ。彼女たちは自分で飲むためにヤクルトを購入しているわけではなく、販売を生業としている個人事業主じゃからBに識別した方が理にかなっておるんじゃよ。
つまりヤクルトは「BtoBtoBtoC」というビジネスモデルなんじゃ。

ややこしいじゃろう?

なので、このキャンパスやシンフォニーマーケティングでは最終のユーザーが一般消費者(個人)ならBtoC、企業ならBtoBと呼ぶことにしておるんじゃ。これですっきりするじゃろう。資生堂も森永もヤクルトもワコールもBtoCじゃよ。

では、このBtoBとBtoCはマーケティングのプランニングの現場では何が違うのか・・・。これが重要じゃな。
ワシは、この2つの違いは意思決定のプロセスじゃと考えておるんじゃ。

【BtoC】の場合、欲しいと思う人と、お金を払う人は多くの場合一人格なんじゃ。街を歩いていて、素敵なマグカップを見つけて買ったとして、購入した理由は何かと言えば 「欲しかったから」 なんじゃ。
もちろん「今使っているカップが古くなったから」「ラテを飲むのにもう少し大きなカップが欲しかったから」などと説明しようとはするんじゃが、「なぜその製品でなければダメなのか?」「なぜ今なのか?」という問いに論理的に答えられることは稀なもんじゃ。なにしろ後付けの理由なんじゃからな。BtoCは多くの場合こうなんじゃ。
じゃから不可解なことが多いんじゃよ。

  • なぜ健康に悪く、周囲にも煙たがられ、電車や飛行機でも肩身の狭い思いをしてまでタバコを吸うのか?

  • なぜヨーロッパでは貴族が持つような高級バッグを、若いOLが購入するのか?

  • 毎晩、高カロリーの食事やお酒をたっぷり摂取して、週末にダイエットと言ってジョギングするのはなぜか?

  • ガソリンが130円で高いと言っている人が、アルプスの天然水を同じ値段で文句も言わずに買うのはなぜか?

一見、経済合理性からみれば不可解なことも、一人格ならば起こり得ることなんじゃよ。人間は理性ではなく感情の動物じゃからな。じゃからBtoCのマーケティングは徹底的に感情、つまりエモーショナルな部分に訴える手法を採るんじゃよ。

ターゲット層に影響力の有るタレントをイメージキャラクターに起用する、そのタレントが出演する番組とタイアップする、ターゲット層が潜在的に持っている欲求を刺激するシーンを切り取ったCMを作成する、人気アーティストの曲をイメージソングに起用する、などじゃな。
そしてBtoCの世界を大手広告代理店が支配しているのは、これらのタレントや、テレビドラマや、音楽アーティストや、テレビなどのマスメディアを最も良くコーディネートできる力とノウハウを持っているのが広告代理店だからなんじゃ。

一方、【BtoB】では多くの場合、欲しい人と購入する人が一人格ではないんじゃよ。買うのは企業という法人じゃからの。
法人とは法によって人格を付与された組織じゃが、自然人(人間)ではないので心は持って無いんじゃな。その代わり、その企業に所属する複数の人の稟議によって意思決定するんじゃよ。
その物差しは「経済合理性」なんじゃ。BtoBとは、この物差しと稟議とハンコが支配する世界なんじゃよ。

もし新しい工場の建設計画で、製造ラインに設置する検査機器を選定する会議で、あるメーカーの製品を推薦するときに、その理由として「カッコ良いから」「イメージソングがクールだから」「広告のキャラクターが好きだから」などを選定理由に挙げれば、その人のキャリアは修復不可能になるじゃろう。
BtoBの世界では、以下のような設問をクリアしなければ稟議書にハンコは並ばないんじゃ。

  • なぜその検査機器がこの工場のラインに必要なのか、それを導入することでどんなメリットが在るのか?

  • その効果は導入費用をペイして余りあるのか?

  • なぜ競合メーカーの製品ではダメなのか?もっと安い製品があるではないか

  • なぜ「今」でなければならないのか、来年でも良いのではないのか?

特に日本の企業の意思決定は、欧米のトップダウンとは違って、基本的にボトムアップじゃから、現場の人間が稟議書を起案して、そこに必要なハンコが並ばなければ購入は出来ないんじゃ。じゃから上記の「なぜ?」に論理的に答えなくてはならず、ここは感情が入る余地は少ないんじゃよ。
これがBtoCとBtoBのマーケティングプランの設計の大きな違いなんじゃ。

*

もうお判りじゃと思うが、BtoC、つまり小売りや飲食業は基本的にロングテールなんじゃよ。
観光地にある温泉旅館を例にとれば、毎年紅葉のシーズンに必ず来てくれるお客様は立派な「お得意さん」なんじゃ。でも、その旅館は365日営業しておって、30部屋在るとすれば、そのお得意さんのシェアは365×30の10950分の1、つまり0.01%にもならないんじゃよ。ロングテールじゃろう。

レストランも同じじゃな。フランス料理のレストランなどでは、どんなに良いお客さんでも、せいぜい月に1度の来店じゃろう。20テーブルで月に26日営業のレストランだとして、ランチとディナーで日に3回転で計算すると、1560分の1、つまり0.06%のシェアなんじゃ。
トヨタや日産系のカーディーラーは、平均すると年間で15,000〜20,000台の車を販売するんじゃ。仮に毎回決まったディーラーから車を購入する人がいるとして、このお客様はもちろんディーラーから見れば「お得意さん」なんじゃが、車の平均買換え期間は5〜7年じゃから、このお得意さんのシェアは90,000台に1台、つまり0.001%以下のシェアになるんじゃよ。

これに対して、BtoBの場合は、最も取引の多い顧客企業への販売額が全体の10%を超えることは珍しくないんじゃ。製造業や建設関連ではさらに30%、40%という大口顧客が存在することもあるんじゃよ。じゃから連鎖倒産が起こるんじゃな。
もしこれがロングテールでシェアが0.001%の顧客が倒産しても、なんともないじゃろうが、売上げの30%が回収不能になれば無事でいられる企業の方が少ないじゃろう。

部品メーカー、工作機械、人材派遣、システム開発、検査機器など、どの業種業態を見ても、上位20%の顧客に対する売上げが、全体の50%〜80%になるケースが多いんじゃ。
つまり多くの場合、BtoBにはパレートの法則が効いておるんじゃよ。

もちろん例外も存在するんじゃ。BtoBでも実質的にはBtoCに近いモデルもあるし、BtoCでもBtoBに近い意思決定プロセスを必要とする分野もあるからの。
ただ、一般的には、パレートはBtoB企業の売上げ構成、意思決定、人材のスキル分布や営業成績、などに当てはまり、ロングテールはBtoC企業の売上げ構成や、顧客分布、商品構成の販売分布などに当てはまると言われておるんじゃよ。

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