マーケティングキャンパス 基礎から実践までBtoBマーケティングを学ぶサイト

Loading

ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > レビット博士が提唱したマーケティングで最も重要な格言とは

2010.09.24

レビット博士が提唱したマーケティングで最も重要な格言とは

思考をマーケットインへ立ち返らせてくれる効果的な問いかけ。40年以上も語り継がれてきたマーケティングの格言は今でも色褪せません。

1968年に出版されたT・レビット博士の著書「マーケティング発想法」の冒頭に 「ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」という格言があるんじゃ。
ワシはこの言葉を「マーケティングの世界で最も重要な格言のひとつ」と考えておるんじゃ。

実はこの言葉自体はレビット博士の言葉ではないんじゃよ。文中に、明記してあるが、レオ・マックギブナという人の言葉をレビット博士が著書の中で紹介したものなんじゃ。
正しく引用すると、「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからである」というものなんじゃ。
この「マーケティング発想法」がビジネス書としては異例のベストセラーとなって世界中の言葉に翻訳され、以後40年以上も語り継がれるマーケティングの最も重要な格言のひとつになったんじゃな。

ワシがこの格言が好きな理由は、ともすればプロダクトアウト(売り手都合)になりがちなマーケターの思考回路をチェックし、マーケットイン(買い手都合)に転換するには非常に効果的な問いかけだからなんじゃ。

企業が展示会に出展するのは、ブースを作りたかったからではなく、売上げに結びつく見込み客のリストを集めたいからなんじゃ。
アポ取りのテレマーケティングをするのはアポイントが欲しいのではなく、売上げに結びつく営業案件が欲しいからなんじゃ。
Webの担当者が「ページビューがこんなに増えているのに、会社は評価してくれない」と嘆くのをよく聞くんじゃが、企業はページビューを増やしたいわけではなく、そこから資料請求や見積もり依頼、セミナーの参加申し込み、採用ページなら将来有望な求職者からの履歴書が欲しいんじゃよ。

こうした事は言われればわかるものじゃが、実務の中ではついつい「部分最適」に陥ってしまうものなんじゃ。
PR担当者は掲載メディア数だけを目標にし、展示会なら名刺やアンケートの収集目標数や、ブース内セミナーの参加者数を目標に決め、Webならサーチエンジンの表示順位や、月間のページビューなどを目標に設定するものなんじゃ。
でも、これらは売上げを創るための「手段」「プロセスのひとつ」であり、「目的」ではないんじゃ。プロセスをマネージメントするためのベンチマークに過ぎないんじゃよ。

これを思い出させてくれるのも、この「ドリルを・・・」の格言なんじゃ。

また、扱っている商材が問題解決型、つまり「ソリューション型の商材」であった場合、この格言はマーケティングの基本設計を引く時の本質的な答えになるんじゃよ。なぜならソリューション型の商材の販売プロセスに不可欠な「顧客の問題の正しい理解と整理」のプロセスをこれ程よく表現している言葉は無いからなんじゃよ。

例で説明しようかの。
ある人がホームセンターにドリルを買いにきたとするじゃろ。もし販売員が「このお客さまに最適のドリルを選んであげよう」と思えば、モーターやトルク、バッテリーのパワーなどのスペックをいくら親切に説明しても意味が無いんじゃ。なぜなら「最適」とはこの人の「課題・問題」に対してであって、つまりこの人の課題や問題をちゃんと理解しなければ最適なドリルは選べるはずがないからなんじゃ。

よくある「どんなドリルをお探しですか?」という質問も曖昧過ぎて適当とは言えないんじゃよ。なぜならこうした質問は、買いにきた人が自分の解決すべき問題とその解決方法を正確に理解しているという前提に立っているからなんじゃ。

実はソリューション型の商材の世界ではそんなことはめったにないんじゃ。目の前で起こっていることは現象であって、問題の本質は別に在ることが普通じゃから、それをプロフェッショナルが聞き出し、整理して、一緒に考えてあげない限り、問題の正しい解決手法は見つからないことが普通なんじゃよ。
だから、お客さまに最適の問題解決方法を選んであげるには、解決手法を完璧に説明すれば良いというものではないんじゃ。

小売の場合、販売員はすぐに販売奨励金の付いている、つまり値引き幅の大きい製品を勧めたがるものなんじゃ。お店としてはこの製品を多く販売することでより多くの販売奨励金をメーカーから貰いたいからの。でも、これではプロダクトアウトだけの考え方で、マーケターが最も気をつけるべき「マーケットイン」の思考の対極になってしまうんじゃ。

では、仮にホームセンターの販売員がこのお客さまのために、売り場に並ぶ数多いドリルの中から最適の1個を選ぶにはどんな質問をすべきなのか?

「穴をあけるものの材質は何ですか? (木材か、コンクリートか、鉄板か)」
「どれくらいの大きさの穴をあけたいのですか?」
「電源(コンセント)は近くに在りますか?」
「誰が使うのですか? (屈強な男なのか、女性なのか、子供なのか)」
「数個の穴をあければ良いのですか? それとも毎日多くの穴をあけなければならないのですか?」

といったものであり、さらに突っ込んで

「それは何をするための穴なのですか?」

という目的までを聞かなければ最適なドリルを見つけ出す手伝いは出来ないんじゃよ。

これらの要点、つまり「お客さまが解決すべき課題・問題」を「正しく理解して」、はじめてこのお客さまにとって必要なドリルのスペックが見えて来るんじゃ。そのスペックと在庫商品をマッチングさせることで最適なドリルの候補をいくつか選び出して勧めることが出来るし、もしお客さまがドリルを使うのは3週間先、という時間軸の情報も聞き出すことが出来れば、その時に売り場に最適なドリルが無い場合でも、最適のドリルを取り寄せてお客さまに渡すことが出来るんじゃ。

お客さまが解決すべき課題・問題を正しく理解しなければ、最適の解決策を提案出来るはずなんてないのじゃよ。

実は、これはBtoBの特にソリューション型の商材の世界では、小さな企業が大企業と互角以上に戦えることを意味しておるんじゃ。
BtoCの世界では例えば、アマゾンが書籍販売で世界的な寡占の状態で、街の書籍販売店を圧迫しているとして映画の題材にまでなったバーンズ&ノーブルという米国最大の大手書籍販売店チェーンを赤字に追い込んでしまったんじゃ。
音楽の楽曲販売の世界ではアップルがあっと言う間に世界最大のシェアを獲得し、当分このシェアを脅かす存在は出ないじゃろう。
BtoCの世界では、豊富な在庫、便利な検索機能、信頼性のある決済システム、スピード感の有るデリバリー機能などの要素がますますシェアの決定に大きく影響するようになるじゃろう。

それに比べると、BtoBの世界では、「お客さまの課題・問題を理解し、解決策を提案する」というプロセスが在るので、プロフェッショナルのスキルがどうしても必要になるんじゃ。つまり、規模が小さくても十分に勝負になる世界なんじゃよ。
こうした「問題の本質的な理解と整理」というプロセスが必要な「ソリューション」の世界では、付加価値のつもりで揃えた豊富なコンテンツの中で、多くの顧客が探している情報を見つけられずに迷子になっているかもしれないんじゃ。
だとしたら Webも含めたマーケティングの基本構造を早急に見直す必要があるじゃろ。

そんな時にこそ、この「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という格言を思い出して欲しいんじゃよ。

Copyright © 2010 Noyan All Rights Reserved.・・・・・・・