マーケティングキャンパス 基礎から実践までBtoBマーケティングを学ぶサイト

Loading

ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > BtoBマーケター恐怖のKPI「ROMI」。その意味と意義

2011.04.20

BtoBマーケター恐怖のKPI「ROMI」。その意味と意義

「我々全員が、ROMIのプレッシャーの下で喘いでいる」その時、会場はため息と笑いに包まれた。BtoBマーケティングという戦場の本質を表現するKPI、それが「ROMI」。

今日はちょっと怖い話をしようかの。「ROMI」のお話じゃよ。

ここ数年、マーケティングの本場である米国や、ヨーロッパの中心であるロンドンで、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー:最高マーケティング責任者)の平均在職期間が目立って短くなっているんじゃよ。欧米のホワイトカラーには元々終身雇用の思想は無いので、転職を繰り返しながらキャリアアップをしていくのじゃが、それでも5年とか7年という単位でしっかりスキルと実績を積んで次のステップに転職したものなんじゃ。
それがここ数年のCMOは「平均2年、良くもって3年」なんて言われているんじゃよ。ここまで短くなった理由のひとつが、CMOやマーケティングチームの評価基準にこの 「ROMI」(Return On Marketing Investment:マーケティング投資回収率)を採用する企業が増えたことなんじゃ。

今でもそうじゃが、マーケティングというのは効果測定が難しい分野なんじゃよ。定量的に効果測定しやすい「売上げ」から少し離れたプロセスを担当しているせいもあって、マーケティング予算に関するレポートも、せいぜい対前年比でいくら削減した、というレベルのものが多いんじゃ。昨年のマーケティング予算が正しかったかどうかもわからんのに、対前年比でレポートする意味はあまり無いのじゃがの。

日本のBtoBマーケティングの現実を見れば、マーケティングプロセス全体を定量的にベンチマークできている企業は、残念ながらほとんど存在しないんじゃ。その代替として、SEOリスティング広告の効果を示すWebのページビュー、Webからの問い合わせの数、メルマガの購読申し込み数、展示会の出展効果の指標としてアンケートや名刺の収集数や収集単価、セミナーの集客率、PR活動の指標として専門誌に記事として掲載された数、などの細切れのプロセスを個々でレポートしている企業が大半なんじゃよ。
その他のKPIと言えばせいぜい出版社が行う認知度調査なんじゃが、これも広告をたくさん出稿している企業や製品が当然上位に来る訳で、結論は「せっせと出稿しましょう」となるんじゃな。

こうした細切れのプロセスをいくら集計しても、その企業のマーケティングがうまくいっているかどうかを判定することは出来ないんじゃ。
つまり、マーケティング部門やその責任者であるCMOが業績への貢献を証明できない、ということになるんじゃよ。これは景気が良い時はとっても都合が良かったんじゃ。役にたっているかどうかは判らないが、売れているんだから良いでしょ、となるからの。でもひとたび不景気になれば、交際費、交通費、広告費と並んで真っ先にコストカットやリストラの餌食になるんじゃ。自分の存在意義を証明できないというのはそういう事なんじゃよ。

ならばROMIでどう変化したかと言えば、目的である「受注・売上げ」に対して明確に定義されておるんじゃ。最も多く使われるのは、SFAのパイプラインに何件でいくらの案件を送り込んだか、を四半期毎に測定する指標じゃな。
例えばパイプラインの中に「エスティメイト(Estimate)」というステータスが在る。最終提案まで行った案件じゃな。この数を分母にして、その中の何件をマーケティング活動から創出したか、をレポートするんじゃよ。その数に、案件ごとの受注決定率を掛ければ受注予測ができる。これにその製品の利益率を掛けてやれば創出する利益を算出できるから、これを人件費も含めたマーケティング予算で割ってROMIを算出するんじゃ。「エスティメイト」ではなく「案件」や「ウェイティング」で算出するケースもあるが、その場合それぞれの定義がきちんとオーソライズされていることが重要なんじゃ。「KPIは定義が命」じゃからの。

もちろん会計のように法律があるわけではないから、企業によってステータスを定義し、計算式を独自に作るんじゃが、この物差しで四半期毎にレポートを提出するようになってから、CMOはもっとも定着率の低いポストになったんじゃよ。厳しい話じゃの。なにしろここで良い結果を出すためには単にイベントが仕切れる、コンテンツが作れる、というだけではダメで、営業部門や販売代理店とのリレーションも大きな要素になるんじゃからの。

でも、考えてみれば、例えば人事部門が新卒の採用コストをいかに削減したとレポートしても、配属された各部門のマネージャーから、「今年の新卒はレベルが低いぞ」と言われてしまえば評価はされないじゃろ。これは、採用という業務の目的が「企業の将来を担う優秀な社員の獲得」と明確に定義されているから当たり前に言えることなんじゃよ。
もしこの定義が無ければ、採用サイトのページビューや、会社説明会の参加申し込み数などの細切れの採用プロセスや、新卒向けの会社案内のデザインのかっこ良さ、などの定性的なもので人事部門の仕事ぶりを評価することになるじゃろう。それらが「優秀な社員の確保」という目的に対してどうワークしたかは結局判らずじまいなんじゃ。まるで今のマーケティング部門のようじゃろ。

ワシの会社は顧客企業の見込み客データの育成(リードナーチャリング)が本業なのじゃが、マーケティングの設計にあたって最初にその企業が過去に蓄積した見込み客データを分析すると、明らかに営業対象外のリストが大量に入っておることが多いんじゃ。これは多くの場合、過去に展示会の選定を間違った結果なんじゃが、これも展示会毎の費用対効果で見てしまえば、1500万円の予算で1500人分の名刺とアンケートを集めました。コストパーリード(CPL)は10000円でした。前年対比で30%コストダウンです。というレポートになるじゃろ。でも、売上げに結びつかないリードをいくら集めても「受注」という目的に対しては何の意味もないじゃろう。

じゃから、このROMIというKPIが日本にも入ってくるのはとっても良いことじゃとワシは考えておるんじゃ。
そもそも、企業がマーケティング活動を本気で効果測定しようとしているということは、取りも直さず、マーケティングの重要性を認めたということなんじゃ。アクセサリーではなく必需品に、モードではなく実業に、側面支援ではなく本流に、マーケティングの位置づけが変わるからこそ実際の投資効果を見ようとしているんじゃな。マーケティングの現場にいる我々にとっては、最高の環境になると言えるじゃろう。

2年前に、米国のあるマーケティングのカンファレンスに参加した時のことじゃ、キーノートスピーチで主催者がこう話したんじゃよ。

「ここにはマーケティング関連のサービスを提供している人もいます。SFAやマーケティングオートメーションのシステムを販売している人もいるし、こうしたサービスやシステムを利用するユーザーサイドの方もたくさん参加しています。つまり、今日この会場には競合も、パートナーも、見込み客も、ユーザーも混在しているわけです。しかし1点だけ、ここにいる全員に共通点があるとすれば、我々全員が、ROMIのプレッシャーの下で喘いでいることでしょう。」

会場はため息と笑いに包まれたんじゃ。
でも、BtoBのマーケティングというのはそういう戦場なんじゃよ。売上げに貢献してなんぼ、貢献できなければお払い箱、というのは社内のCMOも、ワシらのようなアウトソーシングベンダーもまったく同じなんじゃ。
そしてワシは、この戦場が大好きなんじゃよ。

Copyright © 2011 Noyan All Rights Reserved.・・・・・・・