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2011.07.25

SFAの補完機能であるマーケティングオートメーションはなぜ日本に上陸しないのか?

ビジネスアプリケーションの中で、世界シェアのトップ5がいまだ日本に進出していない唯一の存在「マーケティングオートメーション」。それは何なのか?そしてその理由は?

マーケティングオートメーション」という言葉を聞いたことがあるかの?
業務アプリケーションの一種で、米国を中心に、マーケティングの先進国で普及しているツールなんじゃが、不思議なことに日本にはさっぱり入ってこないんじゃよ。今日はこの「マーケティングオートメーション」(以下、MA)のことを話そうかの?

営業案件とセールス活動を管理するSFA(Sales Force Automation)の事は知っておるじゃろ?セールスフォースドットコム(SFDC)が代表選手なんじゃが、日本でも導入する企業が急速に増えている業務アプリケーションじゃ。
MAは、そのひとつ前の工程である営業案件を創出するまでの「マーケティング」のためのツールなんじゃよ。展示会やWebなどで収集した見込み客(リード)データを統合して管理し、メール配信やアウトバウンド・テレマーケティング、Webでの行動解析などを行い、最終的にはスコアと呼ばれる「点付け」によって有望見込み客を絞り込むためのツールなんじゃ。

このカテゴリーの歴史を簡単に説明しようかの。
1990年代の初期にSFAと呼ばれる営業案件を可視化して管理するための業務アプリケーションが誕生したんじゃ。最初に登場したのはクラリファイ、シーベルなどじゃ。その後からコールセンターに強いバンティブ、Windows OSと相性の良いピボタルなど、特徴ある製品がどんどん出てきて米国ではこの分野は大きく繁栄したんじゃ。
このSFAの現在のチャンピオンはなんと言ってもセールスフォースドットコムじゃな。オラクル出身のマーク・ベニオフに率いられたこの企業は、今やクラウドの代表的な企業にまで成長しておるんじゃ。

このSFAの補完機能として2000年以降に出てきたのがこのMAなんじゃ。代表的な製品で言えばEloquaMarketoSilverpop、Market2Lead、Aprimo、Responsys、Unicaなどじゃ。AprimoやResponsysはメール配信サービスから進化したものじゃし、Unicaはキャンペーンマネジメントからの進化系、EloquaやMarketoは最初からMAとして設計されたシステムなんじゃ。

では、なぜSFAに「補完機能」が必要なのかの?
SFAは基本的に営業案件をパイプラインで管理しながら、案件の受注決定率を向上させることと、可視化によって売上予測を正確にすることが目的じゃから、その営業案件を創出するための機能は、どの製品も弱かったんじゃ。
展示会や営業名刺、Webからの資料請求など、社内の見込み客を全部集めれば数万件になるじゃろう?それだけの大量データを統合すれば企業や個人の重複も多いし、営業対象外の企業や人も多数混在しておるものなんじゃ。じゃからマーケティングを始める前に名寄せや競合排除を丁寧に行わないと、成果をあげる前にクレームや事故を起こしてしまうんじゃよ。
一斉配信でセミナー案内メールやメルマガを送り、そのレスポンスを可視化し、またメール配信の後で発生する拒否や不達のメンテナンスを効率良く行い、Web上での行動解析や、そうした行動からスコアを行う機能は、SFAは得意ではないんじゃ。

SFAを触ってみればわかることじゃが、先ず名寄せが弱い。多くの製品では名寄せのキーはメールアドレスだけなんじゃ。メールアドレスを共有している企業もいまだ多い日本では、これだけでは名寄せはできないんじゃよ。また、人や企業を登録する時にオーナーを付けるところを見てもこれが営業案件や顧客を管理するために設計されたとわかるじゃろう。特定多数の見込み客にはオーナー(担当)などおらんからの。
そしてメールの一斉配信も数百件程度しかできない製品が多いんじゃ。セミナー参加者へのお礼メールを30人に、というレベルで使えるものしか実装していないんじゃよ。これは営業案件化した後をメインに設計されておるから、数千件、数万件の見込み客への一斉メール配信など考えておらん、ということなんじゃ。
SFAとMAでは、データマネジメントも根本から違うんじゃ。営業案件というのは企業に紐づくものじゃ。BtoBでは購入するのは個人ではなく法人じゃからの。じゃからSFAでは営業案件と企業を主にして、それに双方の担当者を紐付けるという基本設計が多いのに対し、MAでは企業に所属する個人を主に設計してあるんじゃよ。リードデータベースの中には、ひとつの企業の複数の部署の複数の人、つまり1企業で数十人から多い場合では100人を超える人が登録されておるものなんじゃ。ひとりひとりが担当する業務が違うし、ミッションが違う、もちろんそれは外部からではわからないものなんじゃ。
じゃから誰がどういう情報を集めているか、という行動をマルチコンタクトポイントで解析することで推理するしかないんじゃよ。

米国では、SFAを導入する企業の大半は、こうしたMAのツールを組み合わせてマーケティングが案件を創出し、特定多数の見込み客(リード)の管理はMA上で行い、絞り込んだ見込み客(クオリファイドリード)をSFAに流し込んで担当振り分けを行う、という流れでプル型の営業を実現しておるんじゃ。賢いの。

では、MAが1社も日本に来ていないのはなぜかの?
SFAはセールスフォースドットコムをはじめとして、オラクルやマイクロソフト、SAP、ネットスイート、シュガーなど米国で売上上位の製品の大半が日本に支社を作って販売しているんじゃ。なのに、その補完機能として一緒に伸びてきたMAが1社も日本に上陸していないことにはちょっと驚かされるの。恐らく、業務アプリケーションのカテゴリーの中で、世界シェアのトップ5が日本に支社も置かず、日本語ローカライズもしていないのは、このMAくらいのもんじゃろう。

その理由は、複雑な言語体系と個人情報関連の法律をクリアするためのローカライズに多額のコストが掛かる上に、日本ではまだMAの市場ができていない、と思われているからなんじゃ。

ワシはこの5年間で米国や欧州でいくつかの代表的なMAの企業を訪問し、幹部とディスカッションをしたんじゃが、日本への進出を真剣に考えている企業は無かったんじゃ。なぜなら彼らの主戦場は米国であり、次の戦場は欧州なんじゃ。ここでの市場競争があまりに激しいので、マーケティングの後進国である日本やアジアに目を向けておる場合ではないというのが本音なんじゃな。
昨年、世界シェアでトップ3に入るMAのチーフマーケティングオフィサーに会った時のことじゃ。ワシは日本語ローカライズの進捗状況を質問したんじゃ。その会社は3年前から日本語へのローカライズを進めています、とアナウンスしておったからの。
すると彼はワシにこう質問してきたんじゃよ。

「日本語へのローカライズにいくらくらい掛かると思いますか?」
「QAまで入れて1.5億〜2億円かの?それでもインターフェースやメール配信のところだけで、日本の個人情報関連の法令を守れるところまでにはもう1〜2億円は掛かるじゃろうな」
「その通りだと思う、ではもうひとつ聞きたいのですが、それだけ投資したとして、日本の企業がMAを導入すると思いますか?」
「外資系企業以外は買わんじゃろうな」
「日本にいる外資系企業とはグローバルで契約しているので、新規の契約にはなりません」
「純粋な日本企業がこうしたツールを使うには、まだ時間が掛かるような気がするんじゃが・・・」
「我々もそう考えています・・・」

彼らはちゃんとリサーチをした上で優先順位を決めておったんじゃ。日本にはまだMAの市場は無いとな。
最大の理由は、MAを使いこなすノウハウやナレッジを持っている企業が無いことなんじゃ。MAを使ってマーケティングを設計し、実行し、スコアの結果から有望な見込み客をリストアップして営業にフォワードするノウハウを持っている企業はまだ少ないんじゃよ。
さらに、日本には米国や欧州には無い、個人情報関連の厳しい法律やマネジメントシステムが存在するし、意思決定のプロセスもトップダウンではなくボトムアップじゃから、マーケティングに時間が掛かるんじゃ。リードナーチャリングに時間と手間が掛かるのが、日本のBtoBマーケティングの大きな特徴なんじゃよ。長い期間にわたってデータを保持し、ナーチャリングをしていくのは米国のMAを使っても難しい技なんじゃ。期間が長くなればデータマネジメントはより複雑になり、スコアすべきコンタクトも増えるからの。

セールスフォースドットコムが牽引してくれて、日本でもSFAの導入企業が大幅に増えているんじゃ。これは本当に素晴らしいことなんじゃ。もう汗と根性だけで売上を創れる時代は終わったし、これだけの技術力やサポート力を持つ日本企業の唯一最大の弱点はマーケティングじゃから、そこを強化しようという動きは本当に心強いことなんじゃ。

問題は、日本にはSFAの前工程を担当するMAの業務アプリケーションがまだ来ていない事なんじゃ。ということは、せっかくSFAを導入しても、最も難しい前工程をエクセルなどで行うか、SFAに強引に入力して、連携システムをバラバラに使ってなんとかメール配信だけはできています、という袋小路に迷い込むことになるんじゃよ。
シンフォニーマーケティングはMAのアプリケーションを独自開発して持ってはいるが、アウトソーシングサービスじゃから、システムだけを販売してはおらんのじゃよ。じゃから、日本企業がアウトソーシングに頼らず、社内だけでマーケティングの仕組みを構築しようと思えば、足りない機能を自ら補完して作らなければならないんじゃ。

今後、日本にもMAに近い機能を持ったシステムが生まれて販売されるようになるじゃろうし、米国のシステムも日本市場に参入するかも知れん。日本企業がローカライズ費用を負担すれば彼らはリスク無く参入できるからの。
ワシは、一刻も早く日本のBtoB企業がSFAを導入する時に、その前工程をしっかり整備するようになって欲しいと考えておるんじゃ。それがSFAを活かす道でもあるからの。

さて、これを書いている瞬間にも、米国のMA業界の構図が変化しておるんじゃ。IT業界の特徴なんじゃが、どこがどうなるかさっぱり予測ができんのじゃよ。この1年で、オラクルがMarket2Leadを、IBMがUnicaを、そしてテラデータがAprimoを買収したんじゃ。
数年後には、現在のBI(ビジネスインテリジェンス)と呼ばれる財務シミュレーション用のアプリケーションのように、独立系はほとんど無くなっているかも知れんの。やれやれ、目が離せんわい。

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