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2011.10.24

営業の生産性を左右するSFA

日本でも加速度的に進むSFAの導入。でも、「可視化」はあくまで手段であって目的ではありません。目的は「営業の生産性を上げる事」。その違いをノヤン先生が解説します。

ちょうど2年前の2009年9月にこのcampusで「営業のコアタイムを侵食したSFAは定着しない!」というコラムを書いたのじゃが、2年経った今でも、このコンテンツにアクセスが多いんじゃよ。思うに、SFAを導入してもなかなかうまく運用できない、という企業が増えているのかも知れんの。
そこで今日はこれをメインに書いてみようと思うんじゃよ。

日本企業が営業の生産性を上げようと考えるなら、案件ごとにプロセスの進捗を可視化する事が最良の方法なんじゃ。見えれば手が打てるからの。それに、この国の労働基準法下では、欧米企業のように売れない営業をじゃんじゃん解雇したり、給与体系を思い切りインセンティブ中心に切り替えたりする事は不可能なんじゃ。
またマーケティング部門を強化すれば、その効果を検証するのはマーケティング活動によって生み出した商談の「案件化率」や「受注決定率」であるべきなのじゃが、SFAが導入されていない企業でマーケティング活動の効果を測定するのは不可能に近いんじゃ。案件化率も決定率も可視化できていないからの。じゃから、これからの日本企業にとってSFAは必須アイテムなのじゃが、ここに問題が隠れておるんじゃよ。

「可視化」はあくまで手段であって、目的は「営業の生産性を上げる事」なんじゃ。

実はの、この2つはバーター(交換)の関係にあるんじゃ。「可視化」を優先して運用ルールを決めてしまうと、「営業のコアタイム」を侵食することになる。これは売上げ低下に直結し、本末転倒になってしまうんじゃ。

【営業のコアタイム】とは「顧客と会っている」「顧客と電話している」「顧客にメールを書いている」など「顧客とコンタクトしている時間」のことじゃ。営業を行動分析すると判るものじゃが、ほとんどのBtoB企業では、「営業のコアタイム」と「売上」は最も強い因果関係があり、新規でも既存でも大抵は正比例するものなんじゃ。
残業にうるさい近頃では既存顧客でも、顧客側にニーズが無ければ時間を作って会ってくれることは無いからの。例え典型的なルートセールスだとしても、顧客側に用が無ければ訪問先での滞在時間や電話の通話時間は非常に短いはずなんじゃ。

その反対の【営業のノンコアタイム】とは客先への移動時間、社内会議、見積もり作成などで、もちろんSFAへの入力も代表的な「ノンコアタイム」なんじゃ。これらの「営業のノンコアタイム」は売上との因果関係はほとんど無いんじゃよ。
忙しそうにしている割に売れない営業は、ほぼ例外なく「営業のコアタイム」が短く、「ノンコアタイム」にたっぷり時間を掛けているものなんじゃ。顧客より業者さんと、社外の人より社内の人とのコミュニケーションに時間を使っていることが多いし、アポイントの段取りが悪く、午前中は豊洲で1件、午後は八王子で1件という感じで移動時間に途方も無い時間を使っているものなんじゃ。

こうした企業が、営業効率を上げようとSFAを導入したらどうなるじゃろうか?

「営業のノンコアタイムが多い人」つまり「忙しい振りをしている人」にもうひとつ素敵な隠れ蓑を提供することになってしまうんじゃ。SFAに入力することを仕事と認める訳じゃからの。その一方で、本当に顧客を訪問している人、つまり売れている営業マンから大事な「営業のコアタイム」を奪うことになるんじゃよ。つまり売上に直接ヒットして、売上を落とすことになるんじゃよ。怖いじゃろ。

さらにもっと深刻な問題は、トップセールスのモチベーションをどんどん下げてしまうことなんじゃ。そもそも売れる営業はセルフコントロールが出来るし、目標達成意欲が高いから、本来は管理する必要なんて無いんじゃよ。そのトップセールスたちが、営業のコアタイムを削られ、隠し玉も取り上げられて、やる気を失くすことが企業にとっては致命的な事態なんじゃ。そしてこれがSFA導入企業が運用を止める最も多い原因なんじゃよ。会社は売上の低下には半年も耐えられないものなんじゃ。

じゃから、どう使うかも決まっていない項目をやたらと必須にしてしまうのは、とっても危険なんじゃ。それに、外周りで疲れた営業が早く帰りたくて急いで入力したことによって発生する誤入力データが名寄せの精度を落とし、後の運用でどれ程業務の足を引っ張るかも、実際に運用を経験しないと判らないものなんじゃ。

SFAの導入を主導する人はつい実装している機能を多く使いたがるもんじゃが、本物のコンサルなら機能を多く使うことより、封印して使わない機能を指摘するべきなんじゃ。ワシがコンサルする場合でも、可視化の部分を必要最小限度にして、営業のコアタイムを極力侵食しないような業務フローを設計するんじゃよ。

また、ワシがSFAを使ってマーケティングをしないように指導するのもそのためなんじゃ。
実はSFA導入企業で、機能に不満を持っている人の大半は目的外使用、つまりマーケティングに使っているケースなんじゃよ。
「名寄せ」「大量のメール配信」「メール配信後のリストメンテナンス」「Webの行動解析からのスコアリング」などはSFAから見れば目的外使用なんじゃ。

どのSFAにも共通する設計思想は、以下の3つが根幹になるんじゃよ。

  1. 営業案件と営業スタッフを紐付けてプロセスマネージメントすることで決定率を向上させる

  2. 四半期毎の上方・下方修正を最小にするため案件を可視化し、業績予想の精度を向上させる

  3. 営業管理者が営業スタッフの行動を管理(監視)する

SFAにはこの基本思想があるから、商談を管理し、受注した後の販売管理やCRMなどとの連携はうまくできるんじゃが、前工程の営業案件を創出(マーケティング)するための機能、つまり「名寄せ」「メール配信」「スコア」などの機能は実務に使えるレベルでは実装していないんじゃ。そもそも数万件の見込み客データをハンドリングしての「名寄せ」や「メール配信」は想定しておらんからの。
AprimoやResponsysなどマーケティング・オートメーションと呼ばれる、「SFAの前工程を担当するソリューション」の多くが、メール配信サービスから進化しているのはそのせいなんじゃよ。

それに、営業案件の可視化だけでも営業スタッフに大きな負担を掛けるのに、やれ名刺を正確に入力しろ、企業の業種分類や規模などの属性情報まで営業が入力しろ、顧客の昇進や部署移動のデータ更新は営業が管理しろ、アポイントコールの会話まで書き残せ、などとやりはじめたら、営業部門に途方も無い負担を発生させ、それが「営業のコアタイム」を際限無く奪い、結果として売上を低下させてしまうことになるんじゃ。しかもそんな企業に限って、データは穴ぼこと誤入力だらけで使い物にはならんのじゃよ。

日本企業のSFAブームは未だ続くじゃろう。それはこの国にとって非常に良いことなんじゃ。でも、「営業の生産性を上げる」という目的を見失って、「営業のコアタイム」を侵食してしまえば、SFA導入の失敗事例を増やすことになってしまうじゃろ。そんなことにはなって欲しくないもんじゃの。

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