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2011.11.28

マーケティングのエコシステムは森林に学べ

最近、経営戦略やマーケティング関係でよく耳にする言葉に「エコシステム」というのがあります。直訳では「生態系」。さて、これはどんな意味なのか?ノヤン先生が森の生態系をモデルにエコシステムを説明します。

ワシは赤城山麓にあるシンフォニーの森の大ケヤキに棲んでおるんじゃが、そんな森の中に暮らしていて、マーケティングという最先端の経営戦略を研究できるのか?と良く言われるんじゃよ。
静かな森が読書に最適なのは言うまでもないのじゃが、実はワシはこの森の生態から多くのマーケティングの知恵を学んでおるんじゃよ。
森からマーケティング?嘘だと思うじゃろ?
ブナの樹を知っておるかの?

ブナの明るいグレーの幹に美しい模様がついた写真を観た人も多いじゃろ。実は、この模様は「地衣類」と呼ばれる生物なんじゃよ。「地衣類」とは植物である藻類と、キノコやカビの仲間である菌類が合体したもので、まさに自然界のアライアンス戦略なんじゃ。

藻類とは水辺の植物じゃ。ノリとかワカメの仲間じゃよ。その特徴は乾燥に弱いことなんじゃ。もともと水中や水辺で育った植物なので、構造的に水分が抜けやすくできており、他の植物のように水を内部に蓄えておくことができないんじゃよ。じゃから、ブナの樹の幹のように垂直に立っているものに付着すると、重力の関係でどんどん水分が抜けて乾燥してすぐに死んでしまうんじゃ。
ならば地面や水辺の石にへばりついていれば良さそうなもんじゃが、ブナの森は標高の高い山中や、日本海側の豪雪地帯に在る事が多く、地面では半年近くも雪に埋もれて光合成ができず、やはり生きてはいけないんじゃよ。

そこでなんとこの藻はカビやキノコの仲間である菌類とのアライアンス戦略で勝負に出たんじゃ。
菌類はブナの幹に張り付いた藻を粘着性のある菌糸で覆うことで水分を抜けにくくして、藻を乾燥から守っているんじゃ。ブナの幹は年間を通して日当たりが良いから、水分さえあれば藻はせっせと光合成をおこなって養分を作ることができるんじゃよ。
実は菌類の狙いはこれなんじゃ。菌糸の特徴を使ってコケが生きられるようにしてあげる代わりに、コケが光合成で作った養分を分けてもらっているんじゃよ。
そして、地衣類があるお陰でブナも直射日光や乾燥、雨や風などから木肌を守る事ができ、森の中の湿度を一定に保つこともできるんじゃ。美しい模様はオマケじゃな。これがブナの森のアライアンス戦略じゃ・・・素晴らしいじゃろ。

そもそもブナの樹そのものが生態系(エコシステム)の最終ランナーなんじゃよ。ブナとは東日本の山間部の森に見られる樹で、極相林を形成する樹種なんじゃ。極相林って理科で習ったのを覚えておるかの?
裸地→草原→極陽樹林→陽樹林→陰樹林と、植えている植物が変化(遷移)していくことを植物遷移と呼ぶんじゃ。そして、最終的にその地域に最も適した樹木の森にたどり着き、以降変化しない状態を極相林と呼ぶんじゃよ。

ある地区で山火事があって焼け野原になった場合、そこには先ず風などが運んできた種から草が芽生えて草原になるんじゃ。ほとんどの植物は乾燥の中では生きていけないから、大地の乾燥を防ぐために草で覆う役割じゃな。次に陽当りを好む極陽樹といわれる樹が生えるんじゃ。代表的な極陽樹がシラカバじゃよ。シラカバは成長が早く、根から土中のミネラルを吸い上げて光合成を行い、秋に落葉してせっせと腐葉土を作るので英語圏では「ナーシングツリー」(看護の木)と呼ばれるておるんじゃよ。焼けた大地を看護し、他の樹が生きられる環境を作る役目の樹じゃよ。
この極陽樹は極端に日光を求めるので、シラカバの子はシラカバの林では育つことが出来ないんじゃ。親の日陰になってしまうからの。しかもやたらと弱いんじゃよ。虫、風、雨などが原因ですぐに枯れてしまうんじゃ。つまり一代限りの短い命の中で、土壌からミネラルを吸い上げ、枯葉を落として大地を覆い、そして自ら枯れることで枯れ枝や幹が腐葉土の元になり、それが森の次のステージへの準備になるんじゃよ。シラカバの林が出来ることで、草原や荒地には棲まない鳥や動物がいろいろな植物の種を運んで来るようになるんじゃ。

シラカバの林の中で次に育つのは陽樹と呼ばれる樹種じゃよ。コナラ、クリ、カエデ、などじゃな。彼らは極陽樹ほど日光を求めないから自分の林で子を育てることが出来るんじゃ。じゃから数世代にもわたって繁栄し、大地に根を張り、たっぷり落葉して腐葉土を作ることができ、さらに毎年ドングリなどの木の実を落とすことでさらに多くの鳥や動物を呼び寄せることも出来るんじゃ。植物の種類は劇的に多くなり、虫やそれを餌にする鳥や動物の種類も飛躍的に増えるんじゃよ。
その陽樹の森が繁栄するとさすがに森の中が暗くなって、下の方まで日光が届かなくなるんじゃが、こうなるともう陽樹の子は育つことができないから、そこで育つのは陰樹と呼ばれる日陰でも育つことができる樹種なんじゃ。
この陰樹の代表がブナなんじゃよ。

こうして、山火事から数百年から千年を掛けて、それぞれの役割を持った草や樹や、その種を運ぶ鳥や動物の戦略的なアライアンスによってブナの原生林になるんじゃ。ブナの森では陰樹であるブナの子は育つことができるから、その森は以後姿を変えること無くブナが世代交代を繰り返すんじゃ。世界遺産になった白神山地のブナ林はこの典型じゃな。

もうひとつ森のアライアンス戦略を話そうかの。
これは米国の森に棲んでいるある種のリスとヒッコリーという樹の関係じゃ。ヒッコリーという樹はアメリカ東部に多く見られるクルミの仲間の落葉広葉樹じゃ。大木になるんじゃよ。
毎年大きな丸い実(種)を落とすんじゃが、なぜかこのヒッコリーの種はナラやクヌギのドングリやブナの種などと違って落ちた地表で芽を出すことができないんじゃ。地表から10cm以上の地中に埋めてやらないと芽を出すことが出来ないんじゃよ。じゃから地表に落ちた種の大半は虫や鳥や動物の餌になることはあっても芽を出すことは出来ないんじゃよ。

そこでリスの出番なんじゃ。ヒッコリーの森に棲むリスにとって、この実は冬を越すための保存食料なんじゃ。じゃから秋になるとリスはせっせとヒッコリーの実を拾っては自分の印を付けて地中に埋めて、その場所を内緒にしておくんじゃよ。他のリスに食べられてしまうと困るからの。
この埋める深さがちょうどヒッコリーが芽を出しやすい深さなんじゃ・・・。もちろん冬の食料じゃから大半はリスが食べてしまうんじゃが、リスも埋めた場所を総て覚えているわけではないし、そもそもリスが他の動物やタカに襲われて死んでしまうこともある。埋めたリスが死ねば、ヒッコリーの実は誰にも見つけられないんじゃ。そんなこんなで1〜3%の実は芽を出すことが出来るんじゃよ。まるで、大昔にヒッコリーとリスが約束をしたようじゃろ?
これがリスとヒッコリーの森のアライアンスから成るエコシステムなんじゃ。
その約束を知らない人間が、ある森で狩猟によってリスを絶滅させてしまったところ、森の中にヒッコリーの幼樹がまったく育たなくなり、やがて森にヒッコリーの樹がどんどん少なくなってしまったんじゃ。
それで人間はようやくこの秘密のアライアンスに気が付いたんじゃな。人間は遠くの森からリスを連れてきてヒッコリーの森が消えるのを防いだんじゃよ。

これが生態系のバランス、つまりエコシステムなんじゃ。ハイテク産業でアライアンス戦略のことをこう呼ぶじゃろ?つまり企業や製品が共生できる環境をつくり、それぞれが個性を持ちながら助け合い、補完し合う、そんな自然界の生態系に似た仕組みを創りたいと考える企業が増えたという事なんじゃよ。良い事じゃな。

IBMがパーソナルコンピュータ市場に進出したことでマイクロソフトとインテルが大きく成長した事実を、IBMをブナの巨木、マイクロソフトとインテルを藻と菌類の共生である地衣類と考えたらどうじゃろう?そしてその共生から数え切れないくらいのアプリケーションやサービスのエコシステム(生態系)が生まれて、今の世界があると考えるのは飛躍に過ぎるかの?
AppleがiTunesをWindowsに解放した時、iTunesというオンラインライブラリーはまるで陽樹の林のような役目を果たしたんじゃ。あれでiPodユーザーが劇的に増えたからの。それが後のiPhoneやiPadに繋がり、今ではiOS搭載端末は世界で2億7000万台にも達しているんじゃ。まさに目の前で広大な原生林が形成されていったような壮観じゃったわい。
さらに、自分のWindowsPCにiTunesをインストールしてiPodを楽しんでいた人がPCを買い換えるときに、毎回数パーセントがMacに乗り換えるんじゃよ。これなんかはまるでヒッコリーとリスの関係のようじゃろ?
エコシステムとはお互いが相手を助けて共生することが中心なんじゃ。決して寄生して搾り取って殺してしまう「ガン細胞」のような関係ではないんじゃよ。宿主を殺せば自分も死んでしまうのじゃからの。

森から学べることは多いじゃろ?じゃからワシは森に居ながらマーケティングを研究できるんじゃよ。

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