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2012.11.05

営業の気持ち、マーケの気持ち ─こんなに違うマインドセット─

マーケティングと営業は「前工程と後工程」の関係。前工程の仕事やアウトプットを後工程が評価するのは当たり前の事なのですが日本ではなかなかそう上手くいっていない、という現状をノヤン先生は解説します。

今、日本企業は、唯一の弱点とも言える「マーケティング」を強化する目的でマーケティング部門を新設し、苦戦している営業部門の支援に取り組みはじめたんじゃ。これはとっても素晴らしいことなんじゃが、そこに立ちはだかっているのは、営業とマーケティングの価値観や考え方、つまりマインドセットの違いが原因で起こる組織の摩擦なんじゃ。そこで今日はその「マーケティングと営業のマインドセットの違い」について書いてみようかの。

先ず、お互いをどう見ているかを、それぞれからのコメントでいくつか紹介してみるとこんな感じなんじゃよ。

営業から見たマーケティング部門
  • 「あの人たちって毎日何してるの?」

  • 「こっちの仕事を増やさないで欲しい」

  • 「俺の担当顧客に変なメールを出さないで欲しい」

  • 「営業の名刺を集めて何するつもりなの?」

  • 「顧客データの管理レベルが低い」

  • 「なんで競合や関連会社にセミナー案内を送ってるの?」

  • 「無駄なお金の使い過ぎだ!」

  • 「広告やマーケティングの会社に良いように騙されている」

  • 「なんでまだあんな展示会に出展するんだ?」

  • 「屁理屈ばっかりで営業の現場を何も判っていない」

マーケティングから見た営業部門
  • 「展示会などで集めたリストをちゃんとフォローしてくれない

  • 「営業なのに、テレアポが苦手ってどういうこと?」

  • 「アポイントをとっても、訪問した結果をフィードバックしてくれない」

  • 「名刺を自分の所有物だと勘違いしてコピーを取らせてくれない」

  • 「自分の得意な製品の知識しかないので新製品をさっぱり売らない」

  • 「自分の担当企業を自分の縄張りのように勘違いしている」

  • 「顧客企業の中の決まった人としか会わないので、競合に喰い込まれている」

  • 「なんでテレアポする時にいちいち電話しちゃいけない会社を確認しなくちゃいけないの?」

  • 「導入事例などのコンテンツ作りに協力してくれない」

  • 「セミナー集客に協力してくれない」

  • 「そもそもウチは売れる営業マンが少なすぎる」

と、まぁお互いを非難しているコメントが多いのが判るじゃろう?

残念ながら日本は、欧米と比較してもマーケティング部門と営業部門がうまく連携できていない国なんじゃよ。この理由は多くの場合、価値観の違いなんじゃが、お互いに相手の価値観やモチベーションの理由を理解できないと、良い連携はできないんじゃよ。

ワシは、セミナーなどで「営業」は鉄砲を担いだ猟師のようなマインドセットだと説明するんじゃよ。つまり「動く獲物にしか反応しない」人たちの比喩なんじゃ。「動く獲物」とは3ヶ月か6ヶ月以内に注文書をくれる案件のことなんじゃが、こうした「受注が見える案件」に対しては、営業は集中力を発揮して頑張るものなんじゃ。
でも、もし訪問して、他社製品のリースがまだ2年半残っていて「今はニーズがないけど2年後の今頃にもう一度電話しよう」と思ったとしても、会社に戻ってその名刺をデスクにしまって、すっかり忘れてしまうものなんじゃよ。2年後の今頃訪問する営業先、つまり「見込み客」の管理は、営業は苦手なんじゃよ。
展示会でも同じで、営業に説明要員としてブースに立ってもらった場合、説明したり、資料を渡したりした来場者の中で営業が来週さっそくアポをとって訪問してみよう、と考えて名刺の裏に「☆」や「A」と書き込むのは全体の1%程度なんじゃ。展示会で収集した名刺が3,000枚とすれば30人は翌週フォローするが、残りの2,970人には何もしないのが営業なんじゃ。動く獲物の1%しか視界に入らないんじゃな。

では、営業がすぐにフォローしない2,970人の「見込み客」の管理や育成は誰が得意なのか?これは猟師ではなく農耕型のマインドセットを持ったマーケティングの役割なんじゃ。農耕型とは長期間にわたって見込み客データを管理育成できる人たちの比喩なんじゃ。
ちょっと想像して欲しいのじゃが、「農耕」とは先ず荒地を耕して畝(うね)を作り、その土地の標高や気候、土の質に合った作物を慎重に選んでその種を蒔いていく。そして数ヶ月から数年にわたって、水や肥料をやり、害虫を駆除し、育ちが良くない苗を間引き、ようやく収穫期を迎えるまで長期間せっせと世話を焼くことができる人を指すんじゃよ。
意思決定のプロセスが欧米の正反対のボトムアップで、それ故に見込み客の育成(ナーチャリング)期間が欧米より3〜4倍も長い日本でマーケティングを任せるには、こういう農耕型のマインドセットを持った人でないと難しいんじゃよ。
だから経営者は、このふたつのまったく異なる気質の人々を組み合わせて連携させ、マーケティングから営業までのラインを作らなければならないんじゃ。決して成績の悪い営業をマーケティング部門に廻せばなんとかなるという話ではないんじゃよ。

実は、これが製造業になるともうひとつ大きな問題があるんじゃ。製造業の営業は技術系や技術上がりと言われる人が多いんじゃ。顧客企業のエンジニアと会う時にものを言うのはやはり専門知識なんじゃよ。
この技術系と言われる人たちの特徴は、新規営業活動の初動が苦手で不得意ということじゃな。特に電話でアポイントを取るのが本当に嫌いで苦手なんじゃよ。エンジニアだった時代に営業の突撃訪問やしつこいテレアポに嫌な思いをしてきた彼らはテレアポを潜在的に「迷惑な行為」と考えておることが多く、罪悪感をもってコールをしているのでただでさえ下手なコールが余計にダメダメになるんじゃ。これではせっかく長期間育成してスコアして搾り出した有望見込み客リストが枯れてしまうというものじゃな。
ワシはこうした企業の経営者に良く言うんじゃよ。苦手なことをやらせて生産性を落とすより、得意なことにフォーカスさせて苦手なところは何か代替手段を考えたらいかがですか?とな。これは甘やかすとかそういう問題ではないんじゃよ。彼らの持っている専門知識は訪問先から案件が出た場合は受注のために強い強い武器になるんじゃ。特に現場のエンジニアは専門知識の怪しい人間を信用しないからの。

以前、手術用の医療機器を販売しているクライアントの、トップセールスと話したことがあるんじゃが、お世辞にも話がうまいとは思えず、むしろ初対面の人と話す時は目を見て話せないほどシャイなんじゃ。ではなんで売れるかと言うと、その人は自社の機器を使った手術が本当にうまいんじゃよ。
彼は営業で医者ではないし、もちろん医師免許も持っていないんじゃが、自社の製品を使って日夜、魚や鳥や豚の肉を使って手術の練習をし、今ではセミナーや院内勉強会でその手の動きをみた医師が感嘆するくらい手術がうまいんじゃ。そうなると医師たちからの信用も絶大で、彼の手ほどきを受けるために勉強会はいつも満席なんじゃよ。顧客の心を離さない専門知識、これがBtoBの営業なんじゃな。

ところが、こうしたそれぞれの特性やマインドセットを理解しないで組織を作ってしまうので、日本企業の営業部門とマーケティング部門の間には「深くて暗い溝」が存在するんじゃよ。ワシはあるマーケティング系雑誌のコラムでこの「溝」のことを書いたことがあるんじゃが、本当に多くの人から「あの話、まるでウチの会社のことを書かれているようでした」とか「実はウチの会社も同じで困っています」というメッセージをもらったんじゃ。

マーケティング部門に配属される人は、こうした営業とは異なるマインドセットな上に、本を沢山読んでいてボキャブラリーが豊富で、作文や資料作りがうまいのじゃが、中には勘違いして、泥臭いカルチャーを残した営業部門を見下しているような人も存在するんじゃ。当たり前じゃが、こうした考え方はあっという間に営業部門に伝わって相手にされなくなるんじゃな。自社の営業部門から浮いてしまったマーケティングチームは、もう何もできないものなんじゃ。

マーケティング部門と営業部門は上とか下とかの関係ではなく、「前工程と後工程」の関係じゃから、マーケティング活動の評価者は社内の営業部門だとワシは考えておるんじゃ。前工程の仕事やアウトプットを後工程が評価するのは当たり前のことなんじゃよ。そして営業部門が必要と認めてくれる、つまり売上げ作りを本当の意味でサポートするマーケティング部門でなければ予算を確保し続けることはできないんじゃ。
ワシはもう20年以上もBtoBマーケティングの現場におるから、営業を見下して自分勝手なマーケティング活動を展開し、後工程の営業から評価されずに、結局予算を大幅に削られて、展示会もSEOも何もできなくなってしまったマーケティング部門を嫌というほどたくさん見ておるんじゃ。

「最高のマーケティングチーム」とは、マーケティング用語やアクセス解析の知識を持ったチームではなく、営業部門から最高に感謝され、頼りにされるマーケティングチームだけに与えられる称号なんじゃよ。

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