マーケティングキャンパス 基礎から実践までBtoBマーケティングを学ぶサイト

Loading

ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > BtoBマーケティングは科学と感性の融合したクリエイティブな世界

2013.03.22

BtoBマーケティングは科学と感性の融合したクリエイティブな世界

目的は売上げを創ること、その手法がBtoBマーケティング、いろいろなソフトウェアはその道具のひとつに過ぎず、道具を導入することはゴールではなく「スタートの準備」だということをノヤン先生が解説します。

日本のBtoB企業が、ようやくその重い腰を上げてマーケティングに取り組みはじめたことは、あらゆる指標から明確じゃな。そのせいか最近良く「シンフォニーマーケティングさんにとっては苦節20年でようやく廻ってきた春ですね」と言われるんじゃが、実はワシはこの「ようやく廻ってきた春」に危惧を抱いておるんじゃよ。それは今の日本のBtoBマーケティングがあまりに道具偏重になり過ぎていることなんじゃ。

マーケティングの実務とは、広い範囲の多くの要素を少ない人数でこなす、泥んこの世界なんじゃ。展示会、セミナー、テレマーケティングなどのリアルと、WebやSEO、ログ解析、メルマガなどのオンライン、そしてべらぼうに手間の掛かる顧客・見込み客のデータマネージメントなどじゃな。だから現場はいつもテレビ局のADも顔負けなほど、作業と打ち合わせと根回しと資料作りに追われまくる日々なんじゃよ。
そして、マーケティングは「絶対に売上げに貢献」しなければならないんじゃ。特にデマンドジェネレーション(営業機会の創出)とも言われるBtoBマーケティングのミッションは、リサーチでもアウェアネス(認知度向上)でもなく「売上げ」を創ることであり、そのための道具としてMA(Marketing Automation)SFA(Sales Force Automation)などがあるんじゃよ。

米国でBtoB企業のマーケティング担当者と話していていつも感じることは、彼らは驚くほどツールに興味がないんじゃよ。
彼らとマーケティング戦略の話をしていてツールの話が出てくることはほとんどないし、こちらが「MAは何をお使いですか?」などと水を向けても「マイクロソフトのなんだっけあれ?」「それはSFAではないですか?」「あぁそうそう(笑)」という感じで彼らの中でも優先順位が低いのが良くわかるんじゃ。それよりもマーケティングの新しいアイデア、斬新なエッジでのターゲットセグメンテーション、切れの良いクリエイティブやコピー、購買履歴データ分析の結果から戦術をどう修正したか、その結果は?などの「マーケティング」そのものに、とても興味を持っているんじゃ。
ところが日本では真っ先にツールの話になることが多い気がするんじゃよ。次々に出てくるマーケティング系のバズワードに振り回されて、定義の曖昧な言葉だけが空虚に飛び交っているようにワシからは見えるんじゃ。

ワシはマーケティングの仕組みを構築するというのは、例えて言えば住み心地の良い家を作るようなものだと考えておるんじゃよ。住み心地とは、その製品やサービスが売りやすい環境、売れる仕組みがしっかり構築され、マーケティングと営業や販売代理店との役割分担がしっかりできている状態じゃ。もっと具体的に言えば、毎月、営業や代理店の営業チームにマーケティングから良質の案件をたっぷり渡せる状態じゃな。
プロフェッショナルマーケターの集団であるマーケティングエージェンシーは言わば工務店じゃ。大工さんや設計士などのプロフェッショナルが揃っていて、工場には設計通りに素材を加工する工作機械や、建材を現場に運ぶトラック、クレーン、コンプレッサーや測量器などの機材が揃っておるんじゃ。MAやSFA、キャンペーンマネジメント、アナリティクス、メール配信システム、セミナー受付CGIなどと呼ばれるツール群はこの機材なんじゃよ。

家やビルが建てたいと思った人は普通、建設会社や工務店に行くか、プロの建築デザイナーに相談するじゃろ?相談した工務店の技術者の腕や設備を気にすることはあっても、その人が使う道具のブランドを気にする人がいるじゃろうか?

米国のマーケターたちが道具に興味がない理由がこれなんじゃよ。大事なのは製品やサービス、その市場への深い理解であり、その市場に何を伝えるべきかのアイデアやひらめきであり、それをどう表現するかといったクリエイティブであり、販売部門のリソースやモチベーションを高めることなんじゃ。そうした要素や問題点を短い期間で理解し、それぞれの環境や条件に最適なマーケティング戦略や個別戦術を提案した時にクライアントは、プロフェッショナルの経験に裏打ちされた洞察力や戦略眼、企画力などに対して信頼を寄せるものなんじゃよ。
もしこれらすべての条件を変数にしてプログラム化したらどうなるか?最速のスーパーコンピュータや、ベイジアンネットワークのような未来予測のテクノロジーを駆使しても、計算などしきれないじゃろう。そのくらい同じカテゴリーの製品であっても条件によってはまったく異なるマーケティングを設計しなければならないんじゃ。

ところが、今の日本企業の中にはマーケティングに取り組む時に先ず道具から入る人が多いんじゃ。これがワシの危惧する点なんじゃよ。
何でもそうじゃが、万能な道具なんて存在しないんじゃ。その会社や製品が戦っている市場の状況、直販か代理店販売かなどの販売形態や、販売リソースの質と量など、そして何より重要な要素はそのマーケティングツールを使う人のスキルと経験なんじゃ。「ログ」や「タグ」と言った基本的な用語や意味がわからない人に高価なログ解析ツールを与えてもどうにもならないように、「STP」「マージ&パージ」「デモグラフィックデータ」「スコアリング」などの基本的な要素を理解していない人やチームがMAのような高度な道具を与えられても、メール配信くらいにしか使えないはずなんじゃ。

米国のように自社内に優秀で経験豊かなマーケターがいて、高度な道具でも十分に使いこなせるならともかく、そういう人材を持たない日本企業が道具だけを買い揃えて、それを見つめながら「なんでウチは快適な家が建たないんだろう?」と首をかしげている構図は見ていて痛々しい限りじゃよ。

もし、道具を購入して自社でやる、つまり家に例えれば日曜大工で家を建てるとしようかの。実際にそういう人もいなくはないからの。でも小さな倉庫や犬小屋なら別として、人が快適に暮らす家を建てるというのはそんなに簡単なものではないんじゃよ。そもそも建築基準法の知識がなければ地域の役所に建築確認申請が出願できず、建築確認を取得しないで建てた家は違法建築になるから後で取り壊し命令が出るんじゃよ。
実はマーケティングもまったく同じなんじゃ。よく外資系企業で本社の指示のままにグローバルマーケティングツールを使っているのを見かけるんじゃが、その多くは別法人である外国本社と個人情報をシェアすることが日本の個人情報保護法に違反していることを知らずにやっているんじゃよ。怖い話じゃろ?

また問題は法律だけではないんじゃ。
例えばMAでもSFAでも最新のツールを導入したとしようかの。説明には他システムとの連携もできるし、メールやWebなどマルチコンタクトポイントでハンドリングできると書いてある。まるで魔法の道具のようじゃな。
経営者や担当者は、これを購入すれば高度なマーケティングをすぐに実施できると無邪気に信じているんじゃ。そして実際に社内に分散していたさまざまな形式の顧客・見込み客データを流し込むと、あるファイルは個人名とメアドだけ、あるファイルは電話番号が入ってない、あるファイルは営業が自分で入力しているから見るからに誤入力だらけ、あるファイルは本人が入力したものなので社名が略してあって・・・と、これではとても実装してある名寄せ機能なんかで名寄せできないことに気がつくんじゃな。名寄せができなければ競合排除も自社のグループ会社の社員の排除すらできないので、マニュアルをひっくり返し、ヘルプデスクに電話をしてもラチが開かず、最後は仕方なく流し込んだデータをCSVファイルで吐き出してExcelのVLOOKUP(ブイルックアップ)関数で必死に名寄せをして、もうその時点で心が折れて・・・という企業が本当に多いんじゃよ。そもそもCSVで吐き出したり、VLOOKUP関数を使う時点で「オートメーション」とは言えないじゃろ?
もちろん道具が大切なのは言うまでもないことじゃよ。良い仕事には良い道具がいるからの。それでもワシはBtoBのマーケティングやセールスは、一部の単価の安いものを除けば「自動化(オートメーション)」は不可能だと考えておるんじゃ。

BtoBマーケティングとは、科学と感性が織り成す最高にクリエイティブな世界で、自動販売機のような安っぽいものではないからの。だから、この仕事こそ、この世で最も価値ある仕事のひとつじゃとワシは考えておるんじゃよ。

Copyright © 2013 Noyan All Rights Reserved.・・・・・・・