マーケティングキャンパス 基礎から実践までBtoBマーケティングを学ぶサイト

Loading

ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > 失敗から学ぶ、知識と実戦でマーケターを養成する仕組みが必要な理由

2013.05.09

失敗から学ぶ、知識と実戦でマーケターを養成する仕組みが必要な理由

間に合わなければ「無理」になるし、早過ぎれば「無駄」になる。知識を学ばせただけで実戦の場を用意しないでMBAホルダーを流出させた日本企業がその失敗をマーケティングで繰り返さないために今すべきことは・・・。

なんでもそうじゃが、マーケティングの実務でも「タイミング」は極めて重要なものなんじゃ。メールや紙のダイレクトメールなどでメッセージを配信するタイミングを、多くの複合的な要素を考えながら後工程から逆算して設計することがキャンペーン設計の難しく、そして面白いポイントなんじゃ。
もっと俯瞰的に観れば、マーケティング部門の新設なども、いつまでに、どんな人材を何人集めて、どんなツールを導入して、どんな成果を期待するのか、など「いつまでに」という時間的制約の中で逆算した投資であるべきなんじゃ。
ところが実際は「とりあえず・・・」が多いように見えるんじゃ。居酒屋の注文でもあるまいし、これはビジネス、特にマーケティングの設計では、使って良い言葉ではないんじゃよ。実は今、多くの日本企業がこのタイミングを考慮しないで行った投資や施策の結果、悲惨な「無理」や、大量の「無駄」を発生させて疲弊しておるんじゃ。
今日はその話をしようと思うんじゃ。

シンフォニーマーケティングでは、「条件が整えられた状態」を、「必要なものが、必要な時までに、必要なだけ用意されている状態」と、教えておるんじゃ。もし何かをする時に、必要なものが不足したり、間に合わなかったりすれば「無理」になるし、余ったり、早過ぎたりすれば「無駄」になるじゃろ。「無駄」になるだけでなく、早過ぎれば、必要な時までそれを維持しなければならないのでその「コスト」を発生させることになるんじゃ。

今、日本企業は「戦略性がない」と世界中から言われておるじゃろ?戦略論の権威であるマイケル・ポーター博士には日本がバブルに突き進んで浮かれていた1985年から指摘されてきたことなんじゃが、実は日本企業は気がついていなかった訳ではないんじゃよ。ただ、タイミングを間違えただけだったんじゃ。
ワシは、今の日本企業の負け戦のひとつの原因は、企業が社内のMBAホルダーを温存し、活用できなかったことじゃと考えておるんじゃよ。そう考える理由は、経営戦略の基本的な要素で、正しい判断ができずに負け続けて、疲弊している日本企業があまりにも多く見えているからなんじゃよ。

米国や欧州の企業を見ていると、古典的な経営戦略理論を身に付けた人がドライブしているのがよく判るんじゃ。例えばアグレッシブにM&Aや事業売却を繰り返しているハイテク企業であっても、その事業評価は40年以上前に確立されたグロース・シェア・マトリックスであるPPM(Products Portfolio Management)や、そこからさらに発展したファイブフォースモデルなどを活用して意思決定しているのが判るし、分類されたそれぞれの象限へのアクションもかなり基本に忠実なのが判るんじゃ。
例えば市場の成長が止まり、市場シェアが高いキャッシュカウと呼ばれる象限に分類された事業は競合にできるだけ高く売却するじゃろ?キャッシュカウのセオリー通りのアクションは「搾り取れ!」じゃから、通常は追加投資を抑えて売りまくり、フリーキャッシュフローを確保することを求められるんじゃが、もっとてっとり早い搾り取り方は最高値での売却なんじゃよ。価値がなくなれば二束三文でしか売れないし、企業価値が陳腐化するのに1年とかからないのが現代のスピード感なんじゃよ。
日本企業の事業売却はいつも決断が遅れて、この二束三文にしてしまうか、もはや売る相手も見つからずに、膨大なリストラコストを支払いながら廃業に追い込まれるかのどちらかなんじゃよ。

では、欧米企業がこうした基本を踏まえた経営戦略をなぜ実行できるかと言えば、経営戦略を体系的に学び、トレーニングを積んだ人材を持っている、ということに尽きるんじゃ。その体系的な経営戦略を学ぶ場が経営大学院、つまりビジネススクールなんじゃよ。そこで経営学修士号(MBA)を取得したということは、こうした基本技を少なくとも体系的に身につけておるということなんじゃ。
例えば、新規参入や撤退を決断するための重要な指標となるマイケル・ポーター博士のファイブフォースモデルを解説した「競争の戦略」はほとんどのビジネススクールで教科書になっておるし、マーケティングの百科事典とも言われるコトラー博士の「マーケティング・マネジメント」も同様に必読の教科書になっておるんじゃ。またロジカルシンキングも多くのビジネススクールで必須科目になっているから、論理的思考法の基礎である「ディメンション」「クライテリア」「因果律」「演繹」などの基礎をしっかり学んでおるんじゃよ。

実は、日本企業が「近い将来、経営戦略を体系的に学んだ者が必要になる」ことに気付いたのは、もう30年以上も前なんじゃよ。その頃日本は高度経済成長を遂げて世界第2位の経済大国となり、バブルの絶頂へとひた走っておったんじゃ。誰でも儲けたお金は未来に投資したいと考えるじゃろ?その通り、多くの企業は先を争って社費留学制度を創設し、優秀な若手社員を選抜して海外の経営大学院に留学させたんじゃ。今でこそ欧米の大学や大学院への日本人留学生が少なくなって、アジア系の学生の大半は中国、インド、韓国になってしまったんじゃが、20〜30年前はアジア系留学生と言えば日本人だったんじゃよ。
つまり日本企業は「必要なもの」が何であるのかは正確に理解しておったんじゃ。問題は「必要な時」がいつかが判らなかったんじゃよ。「とりあえず留学させよう、留学制度があると言えば新卒採用にも有利だから・・・」という程度にしか考えていなかったんじゃ。その結果、留学生が学位を取得して帰国した時の用意が全然できていなかったんじゃよ。

必死の思いで「経営戦略」、つまり事業評価、国際会計、マーケティング、人事・組織などの知識を身につけて帰国した彼らに、日本企業は活躍の場を用意できなかったんじゃ。それどころか、「2年間もただ飯を食わせて、学費まで払ってやったんだから、10年間くらいは文句を言わずにお礼奉公をしろ」という企業側と、「せっかく寝食を忘れてまで身に付けた知識を活用するチャンスがこの会社にはないではないか。このままではせっかくの知識が錆びついてしまう・・・」と焦る留学組の溝は埋まらなかったんじゃ。
その結果、留学組はどんどん外資系企業やコンサルティングファームに転職してしまったんじゃ。今考えれば、未来に備えて社費留学制度を創設する時に、帰国したMBAに任せる新規事業や海外子会社など、学んだ知識を実践し、知識が本当の実力になるようなキャリアプランを用意すべきだったんじゃよ。それが人材を育てるということじゃからの。

残念なことに、日本企業はせっかくの社費留学制度とそれにかかったコストを「無駄」にしてしまったんじゃが、同時にこれは「リスク」も発生させたことになったんじゃ。自分のスキルを活かす場を与えてくれなかった会社へは当然不信感が募るし、一方の留学しなかった社員からすれば、留学組が帰国後すぐに転職してしまうことで社費留学制度そのものが破綻し、同僚や後輩の留学のチャンスを奪ったんじゃから、転職していった留学組に不信感を持つんじゃよ。
これはモラルの崩壊と、せっかく社費で留学させた優秀な頭脳が流出しただけでなく、双方に感情的なしこりを残したことで、未来に社外ブレーンとして活用する道さえ閉ざしてしまったんじゃ。結局、日本企業はグローバルスタンダードな経営戦略スキルを持った人間を育て、定着させる仕組みを持たないまま、グローバル競争時代に突入してしまったんじゃよ。

これが日本企業がその規模や事業領域に相応しいグローバルスタンダードな経営戦略を考える人材を持っていない理由なんじゃよ。ここから学ぶべきことは、必要なものが定義できても、必要な時が判らなければ「無駄」を抱え込むことになり、その無駄は「コスト」と「リスク」を拡大再生産する、ということじゃ。

では、マーケティングはどうかと言えば、多くの日本企業はようやくその重要性と、社内にマーケティングを任せられる人材がいないことに気付いたタイミングなんじゃ。しかし、経営戦略と違うのは、マーケティングを必要とする「時」は、今だということなんじゃ。だからあちこちの企業で「無駄」ではなく、「無理」を引き起こしておるんじゃよ。
今、日本企業がCRM(Customer Relationship Management)SFA(Sales Force Automation)MA(Marketing Automation)を導入して、しっかりとマーケティングやセールスのプラットホームを整備し、可視化しようとするのはかなり「無理」なことじゃし、国内の代理店網を再構築して販売チャネルを強化するのも、製品やサービスをトリアージ(Triage)という手法を用いて投資分野と撤退分野に仕分け、売却やリストラを行うのも、アジアや欧州でのグローバルマーケティングを企画するのも、かなりの「無理」なんじゃ。それらに必要なノウハウを持っていないし、専門的に学んだ者も社内におらんからの。

そういう意味では今、日本企業が緊急にやるべきことは、自社に必要なノウハウを持ったマーケティングのプロフェッショナルを探して自社のマーケティングチームに参画してもらうことと、社内で知識と実戦の両面からマーケティング担当者を養成する仕組みを創ることじゃろうな。
プロを探すのは難しく、時間がかかるじゃろう。本物を見分ける基準がないし、そもそもこの国には絶対数が少ないからの。でも武道の世界でよく言うじゃろ、「3年稽古するよりも、3年かけて最良の師匠を探せ」とな。
マーケティング担当者を養成する仕組みとは、営業や販売代理店の近くにマーケティング部門を置いて、最前線の彼らが望んでいること、望んでいないことを理解できる環境を用意し、具体的な商材と数値目標と予算を与え、基本設計や実施計画をプロにチェックしてもらう環境を用意し、現場の抵抗や障害を取り除くための担当役員へのホットラインを繋いでやることじゃ。

もうマーケティングが機能しなくても売上が作れた時代は二度とやってこんじゃろう。だからどちらも急がないと手遅れになってしまうんじゃよ。

Copyright © 2013 Noyan All Rights Reserved.・・・・・・・