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2013.10.18

マーケティングオートメーションの現在と近未来

第三世代のSFAと共に急成長したマーケティングオートメーションが今、大手企業からの買収ターゲットになっている。その俯瞰図と日本市場への影響をノヤン先生が解説します。

今日はマーケティングオートメーション(以下MA)について整理してみようかの。
MAについては2年前の2011年7月に「SFAの補完機能であるマーケティングオートメーションはなぜ日本に上陸しないのか?」というテーマでコラムを書いておるから、誕生の経緯や役割についてはそちらを読んで欲しいのじゃが、その最後はこう結んでおるんじゃよ。

「数年後には、現在のBI(ビジネスインテリジェンス)と呼ばれる財務シミュレーション用のアプリケーションのように、独立系はほとんど無くなっているかも知れんの。やれやれ、目が離せんわい」

そう、この状態がまさに今起こっておるんじゃよ。

MAは、1990年代後半から普及してきた第三世代のSFA(Sales Force Automation)の補完機能として生まれたんじゃ。
1980年代に誕生したBtoBの営業プロセス管理ツールであるSFAはONYX(オニキス)、Clarify(クラリファイ)などを第一世代、Siebel(シーベル)、Vantive(ヴァンティブ)、Pivotal(ピボタル)などを第二世代とすると、今日、最大のシェアを誇るSFDC(セールスフォースドットコム)やマイクロソフトのMicrosoft Dynamics(マイクロソフトダイナミクス)などは第三世代と言えるものなんじゃ。
そして多くのMAは、この第三世代のSFAの補完機能として共に急成長してきたんじゃよ。SFAは元々営業案件とそれに紐付く担当セールスの営業プロセスを管理するツールじゃから、営業案件を創りだす機能は持っていないんじゃ。じゃから案件を創出するための「補完機能」がないと管理すべき案件が無くなってしまうんじゃよ。

さて、数多くのMAをその進化のルーツからいくつかに分類してみようかの。

先ず、最初のグループはメール配信システムから進化した最も大きな集団じゃ。
メール配信はインターネットが商用化してから最初に出てきた業務アプリケーションやサービスのひとつじゃ。そのトップランナーだったDoubleClick(ダブルクリック)が大量メールを高速配信する事で圧倒的な優位を築き米国で株式上場までしたんじゃが、その後すっかり手詰まりになってあっけなく消えていったんじゃ。それを見ていた後発グループが、もはや高速メール配信だけでは生き残れないと感じてマーケティングツールへと進化したものなんじゃ。

2011年にデータウェアハウスの大手ベンダーであるテラデータに買収されたAprimo(アプリモ)がそうじゃし、2013年にSFDCが買収したExactTarget(イグザクトターゲット)もメール配信システムじゃな。やはり米国系のResponsys(レスポンシス)も、Silverpop(シルバーポップ)もそうだし、日本のシナジーマーケティングやトライコーンが持つマーケティングソリューションもメール配信システムから進化したものなんじゃ。
まぁ、今から思えばDoubleClickは本当に大量・高速のメール配信だけにこだわったテクノロジーオタクな会社で、彼らが未だ上場する前の1990年代前半にマンハッタンのシリコンアレーと呼ばれた地区に彼らのオフィスを訪問したことがあるのじゃが、その時彼らは全米の回線とそこを流れるパケットを測定して、もっとも空いている回線で配信する技術を研究しておったんじゃ。
「どこだったと思う?」とワシに質問するので、当てずっぽに「アラスカ!」と答えたら「なんで知ってるの?」って驚いておったわい。計測なんかしなくても判りそうなもんじゃがな。

このメール配信システムから進化した集団とは別にキャンペーンマネジメントから進化した集団も在るんじゃ。
その代表選手が、IBMが2010年に買収したUnica(ユニカ)や、同じ2010年にPitney Bowes(ピツニーボウズ)が買収したPortrait(ポートレイト)、そして2013年にAdobeが6億ドルで買収したNeolane(ネオレーン)じゃろうな。
特にUnicaはマーケティングの先進国である米国の中でも特にダイレクトマーケティングの中心地と言われるボストンで進化した歴史あるソリューションなので、キャンペーン設計から実施、分析までが出来る強力な機能を実装しておるんじゃ。米国では企業のマーケティング担当者のスキルが高く、ひとりで月に数本の大規模キャンペーンを廻したりするので、こうしたツールが発達したんじゃな。
ただ、使いこなすには相当ハイレベルなマーケティング部門と洗練されたデータベースを持っていることが前提になるじゃろう。

さらにCMS(コンテンツマネジメントシステム)から進化した集団もあるんじゃ。
日本でもリリースされているSitecore(サイトコア)がその代表で、北欧のデンマークで開発され、マイクロソフトプラットホームと非常に相性が良い製品なんじゃ。他にも2010年にAdobeが買収したDay Software(デイソフトウェア)もCMSからの進化系なんじゃよ。
実は面白い事にメール配信システムよりもCMSの方が顧客データベースとの親和性が高いんじゃな。これはメール配信システムが他のデータベースから配信毎にCSVで配信リストを持ってきて配信するというテンポラリー的な使い方を前提として発達したのに対して、CMSはCGIを実装する関係で後ろにデータベースを持たざるを得ないからだとワシは考えておるんじゃ。だから日本でもシャノンがセミナー受付のCGIからマーケティングプラットホームへと進化したんじゃな。

MAにはこうした他のシステムからの進化系が多いのじゃが、最初からMAとして設計・開発された集団も在るんじゃ。
SFDCなどの第三世代のSFAの補完機能としてMAが普及する先駆けになったのは、なんと言っても1999年にカナダのトロントから出てきたEloqua(エロクア)じゃろう。彼らは元々チャットシステムの開発ベンダーだったんじゃよ。米国のWebマーケティングではチャットは良く使われる機能なので、それを開発しておったんじゃ。創業メンバーでCTOを勤めていたSteven Woods(スティーブン・ウッズ)が率いるチームがBtoB用に、メール、Web、DMなどもハンドリングできるマルチコンタクトポイントのMAを設計し、SFDCとのAPI連携を打ち出すことで、急成長するSFDCの龍の尻尾に乗るように売上げを拡大したのじゃよ。

実は、米国ではこの後に面白い現象が起こるんじゃ。設立後の早い段階からベンチャーキャピタルの資金を導入し、そのために拡大志向が強かったEloquaはグローバルエンタープライズと呼ばれる大企業にターゲットをフォーカスしていったんじゃ。何しろ1社あたり多くの売上げを期待できるからの。そしてEloquaはそのターゲットに合わせて機能をどんどん追加し、進化して行ったんじゃよ。
すると、Eloquaが進化した後の市場に2つの大きな穴が開いたんじゃ。ひとつは中堅以上の企業でも、マーケティングチームにITリテラシーが高い人材を持っていない企業、つまり難しい操作を強いられる機能は使いきれない、という市場じゃな。
このぽっかり開いた穴にフォーカスして2006年にリリースされたのがMarketo(マルケト)なんじゃよ。その創立メンバーはCEOのPhil Fernandez(フィル・フェルナンデス)を含め全員がCRMでは大手のEpiphany(イピファニー)出身者で、この魅力的な市場に合わせてとにかく操作性を重視し、機能をシンプルに設計・開発し、猛烈な勢いでユーザーを獲得してシェア第2位になったんじゃ。

もうひとつの穴は、中小零細企業じゃ。このSMBとかSOHOと呼ばれる市場の企業はマーケティング担当者をチームで置く事は難しいので、担当者は基本的に1〜2人で何でもやらなくてはならないんじゃ。顧客データ管理、Webの制作、SEO、オンライン広告、イベント、セミナー集客、メールマガジンの配信からECサイトへのナビゲーションまでを1人でやる時に最適のインターフェースを持ち、価格も手頃なツールが無かったんじゃよ。
この穴を埋めたのがやはり2006年にリリースされたHubSpot(ハブスポット)なんじゃ。日本でも話題になった「グレイトフルデッドにマーケティングを学ぶ」の著者でもあるBrian Halligan(ブライアン・ハリガン)に率いられたチームは見事にこの穴を埋めたんじゃよ。

おさらいすると、先ずEloquaがMAという分野を確立し急成長することで、それを見たメール、キャンペーンマネジメント、CMS、などのシステムベンダーが一斉に進路変更して流れ込み、10年間でMAという新しい市場が誕生したんじゃよ。SFDCのイベントであるDream ForceはまるでMAのお祭りのように多くのブランドが出展していたもんじゃ。

これに劇的な変化が起きたのが2012年のOracleによるEloquaの買収だったんじゃ。Eloquaはその財務体質からM&Aの噂は常に在った会社なんじゃが、まさか上場直後にOracleとは、と驚きのニュースだったんじゃよ。
こうなるとそれまではMA各社とは等距離で接してバランスを取っていたSFDCもすかさず2013年6月ExactTargetを買収したんじゃ。この会社はユーザー数こそ多いが、ソリューション自体は単なるメール配信だったんじゃが、MAに進化するために2012年にPardot(パードット)という小さなMAの会社を買収したばかりだったんじゃ。SFDCの狙いはむしろこれじゃな。大方の予想がSFDCの買収ターゲットはシェア第2位のMarketoだったから当時は驚いたもんじゃわい。

さて、最後に次の3年で日本市場に起こることを話そうかの。

先ず、日本も米国のようなMA戦国時代になるじゃろう。その下地は過去10年間で普及が進んだSFAじゃ。SFAはMAと組み合わせなければ役には立たないからの。今まで日本では世界のMAトップベンダーはビジネスをしていなかったんじゃ。ローカライズもしていなければ、日本法人も持っていなかった。ローカライズに金が掛かる割には魅力的な市場ではなかったんじゃ、言わば未開の地だったわけじゃよ。そこがこれから一気にレッドオーシャンになるじゃろ。

既にIBMはUnicaにコグノスなどの機能を統合して実装したマーケティングソリューションをリリースしているし、テラデータもAprimoをベースにしたエンタープライズ向けのマーケティングソリューションを売り出すじゃろう。
そして過去10年間に5ブランド以上のSFA/CRMソリューションを買い集めたOracleがこれらに最適化したEloquaをリリースし、さらにSFAではトップシェアを持つSFDCもExactTargetとPardotをマージして高度に連携できるマーケティングソリューションをリリースするじゃろう。

Omniture(オムニチュア)を買収以降、それまでのクリエイティブソリューションから一気にマーケティングソリューションに舵を切ったAdobeも、先に買収したDay Software、Auditude(オーディチュード)とNeolaneの機能を統合した新しいマーケティングクラウドをリリースするじゃろうな。
中小企業向けの市場では当面HubSpotに対抗できるソリューションが出てくる気配は無いので、日本でもシェアを伸ばすじゃろう。米国ではMarketoがリリースしたSparkが対抗と見られていたが、まったく異なる市場に製品投入する体力は未だMarketoには無いじゃろうからな。
そしてその間にもMarketo、Silverpop、Act-On(アクトオン)、などの買収や合併のリリースが流れるじゃろ。まだマイクロソフトもSAPもCAもMAを持っていないからの。こうした外資系のソリューションと、これを迎え撃つ日本のマーケティングソリューションの戦いが始まるんじゃ。見応えがありそうじゃの。

「えっ?何を呑気な事を言ってるんですか?シンフォニーも国産でしょ!」という声が聞こえてきそうじゃな。いやいや、シンフォニーマーケティングはシステム屋さんではなく、マーケティングサービスの会社じゃから、クライアントがどのMAを選択しても、どのSFAとどのMAを組み合わせたいと考えても、その上で最高のマーケティングを実施できるんじゃよ。現に今でも、ここで書いた多くのMAに顧客データを入れて実運用しているからの。
日本国内で使う時に問題になる高度な名寄せや、個人情報保護法の遵守、メールの反応分析やインサイドセールスなどで足りない機能があれば、独自で開発したシステムをアドオンして組み合わせる事が出来るから問題は無いんじゃよ。

まぁそれはともかく、いよいよ世界のマーケティングオートメーションが日本市場に入ってくるんじゃ。まるで黒船が束になってやって来るようじゃの。待ちに待った日本の夜明けじゃ!

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