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2013.11.18

プル型への転換はマタギの狩猟法に学べ!

多くの企業が失敗しているプル型セールスへの転換。そのヒントはマタギの狩猟法から得られることをノヤン先生が紹介します。

今日は、「営業のプル型への転換」について書いてみようかの。なぜ今頃になってこれを書くのかと言うと、多くの企業が、「営業の生産性を上げたい」としてプル型への転換を志向しながら、とんちんかんな失敗を重ねているからなんじゃ。そもそもプル型への移行に際して営業チームを再教育したり、行動を厳しく管理することは本質的には意味の無いことなんじゃよ。

さて、先ず今なぜプル型かと言えば、多くの企業は社員を増やさずに売上げを増やしたいと考えておるんじゃ。売上げに比例して社員や営業拠点を増やしておったらいつになっても利益は出ないし、特に日本は会社更生法でも申請しない限り解雇は出来ないと言われるほどリストラが難しい国なので余計に人を増やすことには神経質になっているんじゃな。そして、社員を増やさずに売上げを上げるには営業プロセスを分解して役割分担することで生産性を上げるしか方法が無いんじゃ。
つまり営業スタイルを従来のプッシュ型からプル型に転換する必要が在るんじゃよ。

簡単に「プッシュ型」と「プル型」の説明をすると、「プッシュ型」は日本企業がもう何十年も行ってきた営業スタイルで、「とにかく訪問しろ」というやつじゃな。相手に用事が無くても、忙しくても、とにかく強引に訪問して名刺交換をする。そして何度も熱心に訪問して顔と名前を覚えてもらい、可能であれば接待に連れ出す。そこで人間関係を作って、小さな案件から取引を開始してもらうようにする、という「足と汗と勘と度胸」と評される日本企業の得意技じゃな。

その反対の「プル型」は、顧客・見込み客が「詳しい説明が聴きたい」「相談相手が欲しい」「他の企業の採用事例を聞かせて欲しい」「デモが見たい」「実機が見たい」「工場見学をしたい」「サンプルが欲しい」などと思っている時にだけ専門知識を持った営業を訪問させる手法なんじゃ。プル型が、「適切な時に:Right Time」「適切なメッセージを:Right Message」「適切な人に:Right People」と言われるのはこのためなんじゃよ。

こう書くとプッシュ型がまるで原始時代の非生産的な手法のようじゃが、決してこの手法が悪い訳ではないんじゃよ、日本企業はこれで敗戦国の焼け野原から世界第2位の経済大国にのし上がったんじゃからの。でも、この手法はもう10年前に役割を終えたんじゃ。そもそもアポイントが無ければビルにも工場にも入れない時代なんじゃからの。
しかも、この方法を採用すると無制限に人や営業拠点を増やさなくてはならないんじゃ。フットワークとか熱心とかを定量化すれば、どれだけの頻度で訪問したかをベンチマークするしかなく、そのためには出来るだけ顧客事業所の近くに営業拠点を置き、人を多めに配置するしかないからの。でも、それでは人件費や販売管理費が膨らみ過ぎて収益を圧迫するばかりなんじゃ。

そこで「プル型への転換」を考える企業が多い訳じゃが、その時に日本企業が陥る大きな間違いは、プル型に転換するには営業を「再教育しなければならない」と考えていることなんじゃ。この間違いの結果、「営業コンサル」や「営業アセスメント」「コーチング」「営業を管理する目的でのSFAの導入」などが大流行なんじゃよ。
でも、ワシはこうした方法論は間違っておると思うんじゃ。なぜならワシの知る限り大半の営業は元々「プル型志向」なんじゃよ。誰だって、飛び込みで一日数十件を訪問したり、地域ごとに割り振った電話番号リストを渡されて不毛なテレアポの電話を掛け続けたり、名刺を交換してもらうためだけに2時間以上かけて訪問したりなどはしたくないじゃろう?しかもそうやって相手の迷惑も顧みずに訪問してもBtoBでは相手にニーズが無い時には案件にはならないし、何よりこれは訪問される側にとっても貴重な時間の無駄なので、次第に電話にさえ出てくれなくなるものなんじゃ。
相手にニーズが無い時の訪問は企業イメージをダウンさせ、優秀な営業を消耗させ、売れない営業の隠れ蓑になるだけの結果を招くんじゃ。みんな案件が在る企業を訪問したいし、自社の製品やサービスで解決できる問題で困っている人だけに会いたいんじゃよ。その人だけが社内での検討テーブルに乗せてくれるし、稟議書を書いてくれるからの。じゃからプル型に転換する時に営業スタッフを再教育する必要なんてさらさらないんじゃよ。

では、どうやって「プル型」に転換するのが正しいのかと言えば、それは営業の前工程、つまり案件を創るところを仕組みにすることなんじゃ。これが欧米企業で言われる 「デマンドジェネレーション:Demand Generation」なんじゃよ。直訳すると「営業機会の創出」じゃな。実は、営業が訪問する価値があるところまで見込み客を育てる事と、それを確実に「受注」つまり収穫する事はまったく異なるノウハウと能力が必要なんじゃ。じゃからそれぞれの専門性を高めて分業する事で安定した成果を出せるんじゃよ。

実は日本にはこの分業によるプル型への転換のモデルが大昔から存在するんじゃ。それが東日本の山岳地帯に暮らす狩猟民マタギの狩猟法なんじゃ。

今までの日本のプッシュ型セールスは言ってみれば通常の狩猟じゃな。
例えば、ある村に男が30人いたとしようかの。今までは毎朝30人がそれぞれ肩に鉄砲を担いで、思い思いに山や草原へ出かけて行ったんじゃ。ある時は数人がシカやイノシシを仕留めて戻ってきて、その晩は村中でそれを分け、楽しい夕餉が始まる。またある時は全員が手ぶらで帰ってくる。村人はちょっとがっかりし、「明日があるさ」と陽気につぶやいて寝てしまうんじゃな。そして翌日はまた誰かが獲物を担いで誇らしげに帰って来て宴会が始まるんじゃ。これが日本で数十年繰り返されてきた「足と汗と勘と度胸」のプッシュ型の営業スタイルなんじゃよ。

だが、このスタイルが成立するには2つの要件が必要なんじゃ。ひとつは村の周囲の山や草原に獲物が沢山いること。ふたつめは、村の周囲の狩場に他の村の猟師が入ってこないことなんじゃ。
でも今はどうじゃろ?残念ながら今はこの2つの要件が完全に破綻してしまっておる。周囲の山には昔ほど潤沢に獲物がいないし、いても昔よりはるかに賢く手強くなっておるはずじゃ。しかも村の周囲の狩場には近隣の村どころか海を越えて青い目の猟師が見たこともない高性能な鉄砲を持ってやってきているじゃろ。つまり「環境条件」が大きく変ってしまったんじゃ。

そこで「マタギ型」への転換という訳なんじゃ。マタギの村では毎朝村の男全員が鉄砲を担いで思い思いに山に入ることはしないんじゃよ。そのかわり、最も射撃のうまい3〜4人が「ブッパ」と呼ばれる射撃手になって、狩場の決まった場所に配置される。そして残りの男は勢子(せこ)になって獲物を、射撃手の前に追い込むんじゃ。この時に広い狩場全体を見渡せる位置で声や旗で指揮を執るのが「シカリ」と呼ばれるマタギの長、現代で言うならCMO(チーフマーケティングオフィサー)なんじゃ。射撃手は地形を考慮して決められたベストポジションで待っているし、獲物が追い込まれてくる方向も事前にわかるから、目の前に現れた獲物を確実に仕留める事ができて、無駄が無いんじゃよ。まさにプル型じゃろ?

現代のBtoBマーケティングで言うなら、この定位置で鉄砲を構えて待っているベテラン猟師が、ベテラン営業じゃな。そしてその前に獲物を追い込む「勢子」の役割を果たすのはマーケティング部門とインサイドセールスと呼ばれるコールチームなんじゃ。例外もあるがBtoBの営業活動では、ある段階から商品知識と経験を持ったプロの営業パーソンが出て行って商談を重ねないと受注にはならないものなんじゃ。
顧客を安心させる製品知識や導入経験を持っていて、お金の話も出来て、さらに人柄でも顧客から信頼されるような営業パーソンはどの部門でもそう多くは持っていないはずなんじゃ。それが村で最も射撃のうまい猟師(ブッパ)に例えられる存在なんじゃよ。間違ってもこの人たちを勢子にしてはいけないし、逆に腕の悪い人を射撃手にしてはいかんのじゃ。こうしたプロセス分解と各プロセスのマネージメントをちゃんと仕組みに落とすことがプル型への転換なんじゃよ。

今までバラバラの予算と担当部署で実施されていたマーケティングや営業活動、例えば展示会やセミナー、オンライン広告、キャンペーン、メルマガ、製品Web、営業の名刺データ管理などと、営業の案件管理を、この勢子と射撃手の関係で整理してみると、プル型への確実で最短な道が見えてくるものなんじゃ。そしてその各プロセスを管理する道具が必要になった時にはじめてSFAマーケティングオートメーション(MA)を自社の現状に合わせて選べば良いんじゃよ。
ワシが「道具が先ではない」という理由はここなんじゃ。

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