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2014.03.17

マーケティングと営業の深い溝をSQL/MQLで解説すれば

企業がマーケティングの仕組みを作り始めてから半年から1年後に必ずぶつかる深刻な問題、それは、「マーケティング活動で作った有望見込み客リストを営業がフォローしてくれない」という状況です。そのメカニズムをノヤン先生がロジカルに解説します。

さて、日本のBtoBマーケティングはまさに黎明期じゃな。
毎月のように次々と新しいマーケティングサービスの会社が誕生し、活性化した市場の中で多くのプレーヤーが競い合うようになるじゃろう。海外からも多くのマーケティングツールや新しいサービス、そして何より情報が入ってくるので、日本のBtoBマーケティングが一時的なブームで終わる心配はもう無いとワシは考えておるんじゃよ。

そこで今日は、企業がマーケティングの仕組みを作り始めてから半年から1年後に必ずぶつかる深刻な問題を解説しようと考えておるんじゃ。
それは、「マーケティング活動で作った有望見込み客リストを営業がフォローしない」という問題で、BtoBマーケティングにおいては非常に深刻な問題なんじゃよ。なにしろ営業や販売代理店が追いかけてくれないことには案件にも売上げにもならんから、マーケティング活動はなんの貢献もできないということになるんじゃからの。しかもナーチャリング(啓蒙・育成)した案件はニーズが顕在化しておるからもし自社の営業か代理店が追わなければ競合に獲られてしまうんじゃ。自社のコストで育成して競合に獲られるなんて悲しい話じゃろ。

この原因はいくつか在るんじゃ。組織としてマーケティング部門と営業部門がしっくりいっていない、という会社もあるじゃろうし、そもそもマーケティング部門が無いので広報部門がマーケティングを担当しているような場合、営業や販売代理店との関係はもともと希薄じゃから、案件の渡し方もわからんじゃろうし、渡してもさっぱりフィードバックをもらえない、という状況になるんじゃな。でも、この現象にはもっと基本的なメカニズムが存在するんじゃよ。

このメカニズムを説明する前に、先ず「SQL」と「MQL」というマーケティング用語を説明しようかの。BtoBマーケティングでも比較的新しいこの言葉は、なんだかデータベース言語みたいでややこしいんじゃが、日本でも必ず使われるようになる言葉じゃから覚えた方が良いじゃろう。

簡単に説明すると、「SQL:Sales Qualified Lead」とは営業や代理店の日頃の営業活動から発生した「案件」を指す言葉なんじゃ。日本では「引き合い」と呼ばれてきたものじゃな。顧客企業を担当営業が訪問した時に、「こんな機能を追加できますか?」「こういう加工ってできますか?」「この部分の素材をセラミックに替えられますか?」「この製品の在庫って今どれくらい持っていますか?」「これを5000セット買うとしたら単価はいくらになりますか?」という引き合いがあるんじゃ。

こうした日頃の営業活動の中で創り出す案件をSQLと呼ぶんじゃよ。その特徴としては「足が速い」ということじゃな。何しろ顧客の側が何をしたいのか、何が欲しいのかが明確じゃし、多くの場合は数量や予算、納期までも決まっているから、2回目の訪問で見積もり提出、3回目で受注というスピードで決まっていくものなんじゃ。ただし、商談のイニシアチブは完全に顧客側にあるので付加価値を付けることが難しく、価格と納期で決まってしまう場合が多いから、どこよりも安い見積もりを出せなければ勝率を上げる事はできないんじゃ。

これに対して「MQL:Marketing Qualified Lead」とは、マーケティング活動によって創出された案件を指すんじゃな。展示会で集めた名刺やアンケート、営業が過去に交換した名刺、Webからの問い合わせ、セミナーの参加申し込みリストなどをデジタル化して統合し、名寄せや営業対象外の排除を行って見込み客データベースを構築し、それをメールマガジンやWeb、動画、リアルのセミナーなどで啓蒙・育成(リードナーチャリング)して、その反応や企業の属性などで総合的にスコアリング(点付け)して、その上位に電話をかけニーズを確認した上で営業に渡された案件をMQLと呼ぶんじゃよ。
このMQLはSQLとは対照的に「足が遅い」という特徴があるんじゃよ。何しろ顧客は未だ何を欲しいのかも明確に決まっていない場合が多く、もちろん予算化も納期も決まっていないんじゃ。だから訪問してから最終見積もり提出までに6ヶ月も掛かる事が少なくないんじゃ。ただし、SQLのように商談のイニシアチブが完全に顧客側にある訳ではないので、付加価値を付けた提案の余地が多く、結果的には利益率の高い案件になるんじゃよ。

では、このMQLを営業や代理店が追いかけてくれないメカニズムを説明しようかの。
仮にSQL(引き合い)からの1年以内の受注決定率が25%だとして、事業部の売上げ目標が100億円、営業チームが年間で創出できるSQLの合計が400億円以上だった場合、この事業部にマーケティング機能は必要無いんじゃ。営業は自前で創った案件を追いかけて25%以上をクロージングすれば目標を達成できるし、それ以上の案件が有っても、足の速い案件であるSQLの対応で忙しい営業から見れば、先が長いMQLは優先順位が低く真剣に追いかけないんじゃな。
それでも、「マーケティングの強化は会社の方針なのだからちゃんと追いかけろ!」などと上層部からプレッシャーを掛けてもらうと、今度は「マーケティングからの案件は受注まで遠くて・・・」とか「訪問したけど良い案件は無かった」などと文句が山ほど出てきて、マーケティング部門と営業部門の関係は益々悪くなるものなんじゃ。

実は多くの日本企業は戦後の高度成長期やその後の安定成長期を通じて、このSQL(引き合い)を潤沢に持っていたんじゃ。直販営業や特約店、商社などの販売代理店が創るSQL(引き合い)の中から一定の受注を獲得すれば毎年110%〜120%の成長が可能だったんじゃよ。営業が引き合いだけで忙しいから日本企業にはMQLを創ることをミッションにしたマーケティング部門は育たなかったんじゃよ。

ところがじゃ、最近は営業がSQLだけを追いかけていても数字を守れなくなったんじゃ。決定的になったのはリーマンショックじゃな。400億円のSQLを毎年創れていた営業部門が、300億円とか250億円のSQLしか創れなくなったんじゃ。SQLだけで売上げを作るということは、既存顧客が次々に新しい引き合いを出してくれる事が前提なんじゃが、それが崩れると途端に売上げ予算を達成できなくなるんじゃよ。
さらに、市場が縮小すると利益率を落としても受注しようとする競合が出現するから、25%だった決定率も22%になり20%を切るようにまで落ち込んだんじゃ。250億円のSQLから20%を受注しても50億円にしかならんから、100億円の予算に対しては半分しか目処が立たないという状況が多くの企業で起こったんじゃ。それで営業活動以外からの案件が無いとダメだと気がついた企業がマーケティングの強化に乗りだした訳なんじゃよ。

製造業の中には日本国内の市場の縮小を見て、国外市場や、国内の他の産業分野に進出して生き残りを図ろうと考えた企業も多いんじゃ。戦略としては正しいが、具体的な戦術を持たない戦略は「絵に描いた餅」なんじゃよ。つまり今まで取り引きの無い市場には自社の営業も既存の代理店も行かないし、行っても土地勘が無いからSQLは創出できないんじゃ。新製品の投入でも同じじゃな。新しい製品は同じ取引先でも今までとは違う事業所や部署の人に会わなければならないものなんじゃが、これも営業には苦手なことじゃからいくら素晴らしい新製品を開発しても肝心の売り方が判らず案件が創れないという企業が多いんじゃよ。

だからこそ多くのBtoB企業がマーケティングの仕組みを作り始めているんじゃが、長い間SQLだけを追いかけてきた営業部門にとって、MQLをどう扱って良いか判らないんじゃ。引き合い(SQL)とはアプローチの仕方がまるっきり違うからの。

しかし、日本の製造業がこれから挑まなければならない課題は、「新しい市場を開拓する」、「既存顧客の中の未だ取引の無い事業所や部署にきちんと入り込む」、「海外市場を開拓し、現地の営業部隊を支援する」ということなんじゃ。これらにチャレンジしようと思えばマーケティング部門と、そこから供給されるMQLがどうしても必要になるんじゃよ。

だからこのMQLを創出し、営業へと渡す仕組みについてのナレッジや、人材の育成にしっかり取り組んで欲しいとワシは考えておるんじゃ。

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