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2014.06.02

「具体的で時間的制約を持ったテーマ」を掲げることで、日本のBtoBマーケティングが一気に世界に追いつけるのではないか、という仮説をアポロ計画を例にノヤン先生が解説します。

科学史を研究しているアメリカ人の友人がおっての、その人と話していた時に、「J.F.ケネディ大統領はもしかしたら天才だったんじゃないかって思うことがあるんだ」と唐突に言い出したんじゃ。
米国史上最も人気があった大統領で、キューバ危機や悲劇的な暗殺で有名な人じゃが、科学史の世界から観て天才とはどういうことじゃろう?と不思議に思ったので詳しく聞いたんじゃよ。
彼の話を繋ぎ合わせるとこんなことじゃった。

1961年にケネディが「米国は10年以内に人類を月に送り、生還させる」と宣言した時、それを実現できる科学的な裏づけはほとんど無かったらしいんじゃ。だから米国の研究所や大学は大騒ぎになったんじゃよ。なにしろアメリカ合衆国の大統領と言えば国家元首にして米軍の最高司令官じゃから、その存在の重さは日本の総理大臣の比では無いんじゃ。その人が宣言したことをもし実現できなければ国家の威信は地に堕ちるじゃろう。
あの時に「なんて事を言ってくれたんだケネディは・・・」と頭を抱えた科学者の数は、航空宇宙工学、物理学、人体工学、医学、情報通信工学などの多岐にわたる分野で数千人はいたじゃろうと言われておるんじゃ。

時は流れ、ケネディ大統領は暗殺されてしまったんじゃが、米国の科学者たちはケネディ大統領の約束を守り1969年7月に月面着陸を実現したんじゃ。アポロ11号のアームストロング船長が月を歩く映像は世界中に中継されたもんじゃわい。世界中が月面着陸で沸いていた時にある科学者が、ふと気がついたんじゃよ。このアポロ計画で使われたロケット設計から医学までの無数とも言える科学技術の中で、10年前に存在しなかったものはほとんど無いという事実にの。

つまりケネディが無謀とも言える宣言をした時、既に米国は人類を月に送り、生還させられるだけの基礎技術を総て持っておったんじゃが、バラバラの場所で研究されていたそれらの技術を俯瞰的に理解していたのはケネディ大統領だけじゃったという仮説なんじゃな。事実とすれば凄い話じゃの。
真実はともかくケネディ大統領の約束は、それぞれの専門分野でより専門的な研究に没頭し、横の連携をしようとしない科学者たちに、連携せざるを得ない「具体的で時間的制約を持ったテーマ」を与えて、米国の科学技術のレベルを一気に引き上げたとその友人は考えておるんじゃよ。

では、なんでこんな話をするかと言えばじゃ、実はマーケティングでは米国に圧倒的に遅れをとっている日本じゃが、この「具体的で時間的制約を持ったテーマ」を掲げることで一気に追いつけるのではないかとワシは考えておるんじゃよ。

BtoBマーケティングを要素分解すれば、そのプロセスはおおむね以下の10のステップになるじゃろう。

  1. 製品ごとのターゲットセグメントを定義する(STP

  2. リード情報を必要な量と質を定義し、収集する(展示会・名刺・Webなど)

  3. 収集したリードデータを整理する(名寄せ・競合排除)

  4. ターゲットに最適化したコンテンツで啓蒙する(ナーチャリング

  5. 企業の属性情報や個人の行動解析から有望度を測定する(クオリフィケーション

  6. 有望見込み客リストにコールしてニーズを確認する(インサイドセールス

  7. ニーズが確認できたリストを営業、代理店、特約店に割り当てる(パートナーセールス)

  8. 訪問記録のフィードバックから案件コードを発番してSFAに登録する(営業アシスタント)

  9. 各案件の進捗を管理する(営業本部)

  10. 案件の進捗情報を元にPDCAサイクルを回す

このそれぞれのプロセスの中に、さらに具体的な活動があるんじゃが、今はそれをバラバラの部署がそれぞれの予算と目標を掲げて、他部署との連携も無くやっているんじゃよ。部分最適というやつで、これをいくら改善しても全体最適にはならないんじゃ。

そこを、アポロ計画のように「具体的で時間的制約を持ったテーマ」の下で統合できれば一気に世界の先端に躍り出ることも可能なんじゃよ。

例えば「2016年度の決算の中でMQLからの売上げ比率を15%以上にする」という宣言じゃ。

日本の多くの企業はMQLを創出する仕組みもノウハウも持っておらんから現在は限りなくゼロじゃろう。だから15%というのはかなり無茶なストレッチなんじゃよ。売上げ1,000億円の企業なら150億円の売上げをMQLから創り出すということじゃからの。MQLからの受注決定率を10%とすれば1,500億円の、5%なら3,000億円のMQLを創出しなければならないわけじゃからの。
でも、必要な条件さえ整えれば可能じゃし、もう引き合いだけに頼っていては、未来は拓けないと考えている企業も多いからの。

この「2016年度の決算の中でMQLからの売上げ比率を15%以上にする」という目標が社内で共有され、トップから各部門長、現場スタッフまでが本気で達成しようと思ったら、いったい何が起こるかの?

ターゲットセグメントとその必要な量と質を定義すれば後はそれを収集することが至上命題になるんじゃ。となるとまず、営業が自分の名刺のコピーを取らせない、ということはもう無くなるじゃろう。実は多くの企業では営業の名刺を収集することがマーケティングの最初の関門なんじゃよ。おかしな話じゃがの。
また、展示会を広報部門が主管している企業の場合、イベントの目的はブランディングだから、企業ブランドを考えたブースデザインにして、コンパニオンやノベルティ配布などの名刺を集める施策はNG、ということも無くなるじゃろう。
法務部門が「リスクを減らしたい」というだけの理由で、名刺やアンケートの管理に法律にも書いてないややこしい制限を設けることも無くなるじゃろう。

データを整理する時に与信管理部門が購入している企業情報を使わせない、ということも無くなるじゃろうし、企業コードのルールも現実に運用可能なものに見直されるかも知れんの。また、競合排除するのも営業などの複数部署の協力が必要なんじゃ。日本では企業に競合フラグを立てるのは意外に難しいんじゃよ。ひとつの企業の中である部署は競合、ある部署は販売パートナー、そしてある部署はユーザーということが少なくないからの。だからこれをフラグ処理するには営業などの協力が必要になるんじゃよ。

次にターゲットセグメントのリードを啓蒙・育成(ナーチャリング)しようと思えば、やはりコンテンツが大事じゃな。メールマガジンの中身が製品情報やイベント情報ばかりの場合はクリック率は上がらないし、配信停止やフィルタリングなどの読まない読者を増やすことになるんじゃ。もちろんこうしたメールマガジンはイベントやセミナーの集客にも役には立たないものなんじゃ。この原因は多くの場合メールマガジンの担当者が営業や代理店担当者の協力を得られないことが原因なんじゃ。
特に良いコンテンツとはやはり顧客の導入事例なんじゃよ。でもマーケティングから顧客が見えるとは限らないじゃろう?企業の最前線で顧客と接しているのは営業であり、代理店なんじゃよ。じゃから彼らの協力無くしては良い事例を出し続けることはできんじゃろう。

絞り込む時もマーケティング部門だけでスコアしても、営業から見れば「ハァ?」というリストを創る事になるもんじゃ。スコアの作業に参加してもらえれば良いんじゃよ、もちろん基本的なマーケティング活動を理解してもらった上での。

コールも、所属している部門によってはあまりしっくり行っていないケースも見られるんじゃが、目標が明確になれば、リストを絞り込んだマーケティングとの関係がしっくり行くようになり、コールのたびにスクリプトに手を入れてより良いものに出来るじゃろう。ここで聞き出す情報は営業にとっては非常に重要なものじゃからの。

自分も参加して絞り込んだリストなら「追わない」とか「文句を言う」こともないじゃろう。何しろ目標が明確じゃからの。そして、この目標を達成するためにはMQLの質が大切になるから毎回しっかりフィードバックして少しでもMQLの質が向上するようにするはずなんじゃ。

もちろん、こんなに簡単に行くはずは無いんじゃよ。
でも「具体的で時間的制約を持ったテーマ」を打ち立て、それを本気で実現しようと想えば、こうした奇跡のような変化は起こせるものなんじゃ。遅れている日本のBtoBマーケティングを一気に世界のトップレベルに引き上げるポテンシャルは、日本企業はかなりの部分を社内に持っておるんじゃ。そのポテンシャルたちは会社の中のあちこちでひっそりと「ケネディ大統領の約束」を待っているのかも知れんの。

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