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2015.02.23

フライフィッシャーに学ぶターゲットセグメントのプロファイリング

今、BtoBマーケターが学ぶべきは、マーケティングツールの特徴や操作ではなく、マーケティングを設計するために、自社のターゲットの情報をどう収集して正しくプロファイリングするかということです。ノヤン先生がフライフィッシングを例に挙げて説明します。

先日のことじゃ、シンフォニーの森の奥で古い映画を観ながらワシは、「フライフィッシングというやつはBtoBマーケティングとそっくりじゃな?」と思ったんじゃよ。ワシはミミズクじゃから魚釣りはやらんがの。

「リバー・ランズ・スルー・イット(A River Runs Through It)」という映画を観たことがあるかの?ノーマン・マクリーンの小説「マクリーンの川」を、ロバート・レッドフォードが製作総指揮・監督を務めて雄大に仕上げた名作で、当時まだ新人だったブラッド・ピッドが主演を務め、1992年のアカデミー撮影賞を受賞した映画でもあるんじゃ。アメリカ北部のモンタナ州の美しい大自然を舞台に、フライフィッシングを愛する一家の物語じゃな。

フライフィッシングとは、川辺を飛ぶ水棲昆虫に似せた疑似餌である毛鉤を使って魚を釣る方法で、その毛鉤を「フライ」と呼ぶんじゃよ。この釣りの特徴は錘(おもり)を使わずにラインと呼ばれる釣り糸の重さだけを使って毛鉤を遠くに飛ばすもので、そのために釣竿を空中で左右に振ってラインを伸ばす姿が実に優雅なんじゃよ。でもワシはこの名画を観ながら、こりゃまるでマーケターがターゲットのプロファイリングをしながらキャンペーンを設計し、コンテンツを作る作業とそっくりじゃわい、などと思いながらチーズポップコーンをほおばっておったんじゃ。

この釣りのもうひとつの特徴は釣り人が自分でフライを作ることなんじゃ。これを「タイイング」と呼ぶそうじゃが、「バイス」という小さな万力のような器具で釣り針を固定して鳥の羽などで疑似餌を作っているところを見たことがある人もいるじゃろ?釣り人は自分で作った何種類かのフライを持っていて、その日の川のコンディションに合わせたフライを選んで水面に飛ばすんじゃ。

当たり前じゃが、このフライはその場で作るわけにはいかんのじゃよ。繊細な作業じゃから時間をかけて丁寧に作らなければならないからの。となると釣り人は来月にはどの川にどういう魚を釣りに行こうと決めたら、いろいろな方法でその川の情報を集めるんじゃ。基本的には狙っている魚がその季節に食べている羽虫に似せたフライが良いのじゃが、どの川ではどの季節にどういう羽虫が飛ぶかは、その川の植生で決まることが多いんじゃよ。植生とは川の周辺の植物の分布じゃな。そして植物は、温度、湿度、標高、緯度、日当たりなどの条件で異なる組み合わせになるんじゃ。
例えば東北地方の標高が1000m前後の山地であればブナやモミを中心にした混成林の中を流れていることが多いのに対し、北海道では、道南の一部を除けばブナの樹は存在しないので、ミズナラやシナノキなどを中心とした森や、トドマツやエゾマツなどの北海道特有の針葉樹の森を流れているんじゃ。このように植生が違えば、飛んでいる虫も、それを食べている鳥の分布もまったく違うものになるんじゃよ。じゃから植生の情報が必要なんじゃ。こうした情報を考慮していくつかのフライを作るんじゃな。

そして、当日は実際に現場に行って確認できる植生と、その日の水温、水の流れの速さ、川底の状態、そして雨などの影響での水の濁り具合などが変数になって使用するフライを選定して、テスト、ダメなら換えてまたテスト・・・という釣りなんじゃよ。

どうじゃ?マーケティングとそっくりじゃろ?
しかもBtoBマーケティングにそっくりだとワシは思うんじゃよ。

BtoCはどうしてもロングテール、つまり巨大なコンシューマ市場を相手にしなければならないので、例えて言うなら、フライフィッシングというより底引き網漁とか定置網漁に近い設計になるんじゃが、BtoBの場合はそんな粗い設計をしたら却って後工程の営業部門や販売代理店に多くの無駄な訪問や作業を発生させることになるので、精緻なプロファイリングとコンテンツマネジメントで絞り込むことが重要なんじゃ。そして、これがBtoBマーケティングは「科学と感性の要素を併せ持った最高に知的な仕事」とワシが常々言っている所以なんじゃ。
もちろん、この比喩では川の情報が顧客データベースであり、フライがコンテンツなんじゃが、このデータベースを創るための情報収集は簡単ではないんじゃ。何でも集めれば良いというわけではないからの。

「価値の有る情報とは多くの場合、それを理解できる者だけにこっそり語りかけるものなんじゃ」

ワシは友人と森を歩いている時に、遠くでかすかに鳴いた鳥や、山影をさっと横切ったタカなどの種類を正確に当てて驚かれることが多いんじゃ。
例えば冬の雑木林ではカラ類の混成群(何種類かの野鳥が混ざった群)を見かけることが良くあるんじゃよ。シジュウカラ、エナガ、ヤマガラなどに、ヒガラかコガラが混ざるんじゃが、この2種類は姿・形も大きさもほとんど同じなので普通の人には見分けがつかないんじゃよ。もちろん標本を手に持って比較すれば違いも判るんじゃが、森の中で常に活発に動いている野鳥の群の中でそっくりな2種類を識別するのはなかなか難しいもんじゃよ。
でもこの2種類は標高で棲み分けているんじゃよ。緯度にもよるんじゃが、だいたい平地から700mまではヒガラ、それ以上ならコガラじゃな。なので歩いている場所の標高が頭に入っておればめったに間違えることはないんじゃ。またこのカラ類の混成群にはよく一匹だけコゲラという小さなキツツキが混ざっていることがあるんじゃ。これは声で聞き分けるんじゃよ。コゲラは枝を移動しながら頻繁に「ギィ〜」と小さい声を出すからの。この小さな声が聞こえたらコゲラが混じっているということなんじゃ。
これは植物でも同じで、コナラとミズナラは樹齢が100年くらいまでは見分けることが難しいんじゃが、葉の形状の細かい特徴を知っていれば識別できるし、ブナとイヌブナもそっくりで見分けが難しいんじゃが葉の裏側の特徴を知っていれば見分けることができるんじゃ。もっとややこしいのはクリとクヌギで、樹形や木肌、葉の形状などではほとんど見分けることができないんじゃ。この場合でも、「冬に枯葉が落葉せずに木に残る」というクヌギの特徴を知っていれば見分けはつくし、根元に落ちている実の形状の違いから見分けることもできるんじゃよ。

つまり、動体視力や聴覚などの「その場の感性」、これはマーケティングで言えばその瞬間のWeb上での行動解析なんじゃが、これだけに頼らなくても、緯度・経度、標高、植生などその地域にその季節にいる可能性のある鳥や動物、植物の情報が長年かけて頭の中にデータベース化されておるから、僅かな情報からでも種類を特定することができるんじゃ。これがプロファイリングなんじゃよ。

プロファイリングという言葉は元々は犯罪捜査からきた言葉で「criminal profiling」が語源じゃな。アメリカで開発され、行動心理学や統計学をベースにして犯人像を推論するもので、広義ではそのための資料収集手法までを指すんじゃ。これで犯人逮捕や犯罪防止に役立てるんじゃよ。

犯人像を特定するために「身体的特徴」「癖や嗜好」「思考パターン」「行動パターン」などを特定するんじゃが、これはクリエイティブの世界で行われている「ペルソナ」に近いかもしれんの。クリエイティブや製品開発でペルソナという場合は心理学の鬼才ユング博士のペルソナとはちょっと違って、筐体デザインやユーザーインターフェースをデザインする時に、想定ユーザーの人格やライフスタイル、ワークスタイルをできる限り鮮明に描き出して、それを判断基準にする手法なんじゃ。

BtoBマーケティングの現場では、販売する製品やサービス、技術の想定ターゲットを定義することから始まるんじゃが、それぞれどういう業種の、どういう規模の、どんな問題を抱えている企業の、どんな部署にいて、どんな役職で、何歳くらいで、今どんな課題を担当し、それを解決するためにどんな情報を追いかけているのか?さらにその人々はどんな展示会に集まるのか、オンラインではどういうサイトを訪れ、どういうキーワードで検索するのか?どういう動画を好むのか?SNSは何を使うのか?ということをプロファイリングするんじゃ。
これを理解し、整理するから、ターゲットデータを効率よく収集するための展示会やSEOなどのリードジェネレーションプランが作れるし、リードナーチャリングのためのコンテンツプランをシナリオという形で設計し、その行動のスコアを定義できるんじゃ。

つまり、情報収集のセンスとイマジネーション(想像力)の組み合わせが重要であって、どんなシステムを使うかは大して重要なことではないんじゃよ。ワシが、BtoBマーケターは、MASFAなどのツールの選定や操作法よりも、売らなければならない製品やサービスのターゲットのプロファイリングや、それを基にしたマーケティングの全体設計にはるかに多くの時間を使うべきじゃ、と話している理由が判ってもらえたかの?

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