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2015.05.11

「デマンドジェネレーション」に必須のアイテムであるマーケティングオートメーション。その名称のために導入さえすれば、マーケティングが自動化できると勘違いされています。MAの導入で大切なものは何なのか、ノヤン先生が解説します。

イゴール・アンゾフ博士を知っておるかの?「経営戦略論の父」とまで言われている経営学者で、後にマイケル・ポーター博士が「ファイブフォースモデル」として確立した「外部環境に立脚した競争優位」も、その対抗軸としてゲイリー・ハメル博士や、C.K.プラハラード博士などが「リソースベースドビュー(RBV)」として提唱した「内部経営資源に立脚した戦略」も、源流を遡ればこのアンゾフ博士に辿りつくという程の人物なんじゃ。父と呼ばれるだけあるじゃろ?

このアンゾフ博士が提唱したのが、経営戦略の意思決定の要素「戦略(Strategy)」「組織(Structure)」「システム(Systems)」という「3S」だったんじゃよ。アンゾフ博士がもう50年以上前に提唱したこの「3S」が、ことマーケティングに限って言えば多くの企業で未だにまったく考慮されていないことが、ワシの最近の心配の種なんじゃ。

2009年頃からこの講座でも何度か紹介してきた「デマンドジェネレーションのためのプラットホーム」であるマーケティングオートメーション(以下MA)が2014年から本格的に日本市場に参入し、今年はもうバズワード化してしまっておるんじゃな。お陰でシンフォニーマーケティングも大忙しなんじゃが、どうしても「戦略(Strategy)」も「組織(Structure)」も後回しにして、とにかくMAという流行の「システム(Systems)」だけを導入しようとしてる企業が多いように思うんじゃ。これでは大半の導入企業が運用で失敗して「MAの屍の山」ができると思えてならないんじゃよ。

案件を営業や販売代理店に安定供給する仕組みである「デマンドジェネレーション」はこれからのBtoB企業には絶対に必要なものじゃし、そのためのプラットホームであるMAもBtoBマーケティングには必須のアイテムなんじゃ。でも、それは「どういうマーケティングを展開するのか?という戦略」と、「誰が運用するのか?という組織」があっての話なんじゃよ。そのふたつを後回しにしてシステムだけ導入しても活用できるはずもないんじゃ。

実は最近になってワシはよく「MAって良いですか?」とか、製品名をあげて「○○というMAはどうですか?」などと質問されることが多いのじゃが、この質問に答えるのはとっても難しいんじゃよ。

たとえば、車に詳しい人がある日突然「フェラーリのスパイダーって良いですか?」と質問されたとしてじゃ、この質問なら「それは良い車ですよ」としか答えようがないじゃろ。でも質問する人が 「家族4人で山の湖にキャンプに行くのですが」という目的を言ってくれれば答えは全然違うものになるじゃろ?「そもそも2人しか乗れませんし、荷物も積めなければ、車高が低いのでオフロードでは走れないんですよ、キャンプなら他の車にしたほうがいいですね」と答えるじゃろう。それにじゃ、誰が運転するかも大きな問題なんじゃ。そもそもオートマチック限定の免許では運転できない車じゃし、免許を持っていたとしても、時速100kmまでの加速に3秒ちょっとしか掛からないとんでもない馬力の車じゃから、運転があまり得意でない人がハンドルを握れば恐ろしいことになるじゃろう。

何でもそうじゃが、「目的」に対して「最適かどうか」ということが重要なんじゃよ。MAの場合でも、海外から日本市場に持ち込まれたものであれば、少なくとも米国市場である程度売れているはずなので、そういう意味ではみんなある水準の機能や品質は持っておるんじゃからの。

だからまず戦略なんじゃ。自分の会社が、あるいは事業が、製品が、どういうマーケティングをやるのか、という戦略を策定することが何より大事なんじゃ。戦略が決まれば、「そのマーケティング戦略を実現できること」が要件になって、道具(MA)を間違いなく選定することが出来るんじゃからの。

そこでじゃ、ワシの経験から、MAの導入の前にしっかり考慮すべき「7つのポイント」を書こうかの。

1. 自動化を勘違いしない

「オートメーション」という言葉が直訳である「自動化」と勘違いされておるんじゃが、BtoBマーケティングは自動化なんてできないと考えた方が良いじゃろ。このことは同じオートメーションという言葉を持つ「SFA(セールスフォースオートメーション)」を使っても営業活動を自動化できなかったのと同じことなんじゃ。確かに多くのMAには「シナリオ設計」というキャンペーンをマネジメントする機能があり、「メール配信」「セミナー招待状」「コール」などのアクションを選んで繋いでいけばキャンペーンを設計できるんじゃ。デモを見ればワクワクするじゃろう。でもワシは「この機能は本当にマーケティングのノウハウがたまってMAに慣れてきたら、少しずつ試すんじゃよ」と説明することが多いんじゃ。なぜなら、この機能を間違って使うと「ループ型のステップメール」という名のスパムメールを量産することになり、営業の足を引っ張り、企業ブランドを傷つける結果にしかならないからなんじゃ。

2. 道具を買ってもマーケティングはうまくならない

ワシもそうじゃが文章を書く時、多くの人はワープロソフトを使うじゃろ。このソフトのおかげで編集が楽になり、文字数のチェックや変更履歴の確認、スペルや誤字のチェックもできて大変便利なんじゃ。しかしじゃよ、どんなワープロソフトでも、「文章での表現がへた」「目の前の状況をどう表現してよいかわからない」「ボキャブラリーが乏しくて適当な言葉で表現できない」という問題は解決してくれないんじゃ。MAも同じなんじゃ。デマンドジェネレーションのプラットホームとしてマーケティングを支援し、便利にはしてくれるんじゃが、あくまで道具じゃからマーケティングを勝手にやってくれるわけではないし、マーケティング部門の仕事を増やすことはあっても減らすことはないんじゃよ。

3. 導入は情シスではなくマーケティング・営業部門が行う

ワシの経験では、SFAにしろMAにしろ、情報システム部門が主管して導入したものが最も稼働しないんじゃ。情報システム部門の悪口ではないんじゃよ。ワシがこう主張する理由は簡単で、情報システム部門は物理的にも心情的にも社内で最も営業現場から遠いからなんじゃ。しかも、営業もシステムエンジニアもお互いに相手を話の通じない異星人と考えておるから、導入や運用に必要な量と質のコミュニケーションが取れないんじゃよ。でも、MAの目的は良い案件を営業や販売代理店に安定供給する仕組みを創ることじゃから、導入前も導入後も営業とのコミュニケーションは必要不可欠なんじゃ。

4. 自社のコンプライアンスとの整合性

MAの導入で後回しにされがちなのが自社のコンプライアンスとの整合性なんじゃ。多くのMAはクラウドで提供されておるからの。つまりMAを導入するということはクラウド上に顧客・見込み客の個人情報を置くということなんじゃよ。実は、導入が決まって契約した後で、コンプライアンスの解釈を巡って社内の法務部門と導入主管部門が対立して個人情報を登録できず、いつまで経っても運用が始まらない、という喜劇のような例をいくつも見ておるんじゃ。

企業の法務部門は「守るミッションを持つ人たち」じゃから、基本的にリスクを回避する傾向があるんじゃ。それで法律が求めるよりも厳しい保守的な社内ルールを決めてしまい、それに縛られてマーケティングができない、という例があちこちで見られるんじゃよ。その中には守れないルールもあって、例えばプライバシーポリシーに、「当社は個人情報の第三者への開示・譲渡は一切行わない」と勇ましく書いてある企業を時々見るんじゃが、これを守ると年賀状や書中見舞いすら出せないということなんじゃよ。日本郵政は民間企業であり、宛名の住所や名前は紛れもなくなく個人情報じゃからの。

5. 最初から求める成果を決めておく

デマンドジェネレーションは、「どのレベルの有望見込み客(MQL)を何件創出し、そこから何件の案件を創出するのか」という目標と、その実現のためのプロセス設計を明確に定義しなければ役に立たないんじゃ。それが目的なんじゃからの。

「まずはメール配信から始めます」という企業を見かけるんじゃが、そういう企業は何年経ってもメール配信にしか使えないものなんじゃ。そもそもメール配信だけならば、国産でも安くて素晴らしいソリューションがいくらでもあるからの。

6. 価格で決めない

実はMAは安いんじゃよ。最初のMAと言われるEloquaが2000年の製品リリースじゃから、完全にクラウドの時代に出てきたソリューションなんじゃ。じゃからどのMAを選択しても、ひと昔前のSFAやCRMのように二桁億円単位の投資などはないんじゃよ。それどころか億を超える案件も余程複雑怪奇な開発をしなければありえないんじゃ。じゃから、MAを価格だけで決めるのは愚かな選択なんじゃよ。

せっかく操作を覚えた頃に、選んだMAでは自社がやりたいマーケティングができないことに気がついて、大騒ぎしてリプレースするという時間の無駄は避けた方が良いのは言うまでもないからの。

7. 「とりあえず」で導入しない

「とりあえず導入して、使い方は後で考える」
いかにも日本企業的な考え方じゃが、残念ながらそんな風に導入されたSFAやMAで、まともに役に立った例を見たことがないんじゃよ。

どの製品を、どのターゲットに対して、どうやって、どういうマーケティングを展開するのか?そのリードはどういう手段でいつどのくらい収集し、何をキーに名寄せを行い、企業情報にはどんな属性情報を付与するのか?そして、どんなコンテンツでナーチャリングし、それへの反応をどうスコアし、どうやってニーズの存在を確認するのか?そしてそれをどういう手段で営業部門に渡し、案件化したのかどうかをどうやって確認するのか?

こうしたマーケティングの全体設計をしてから、それを実現できるプラットホームとしてMAを選ばなければ決して売上には貢献しないものなんじゃよ。「流行っているから」、「競合も入れたようなので」、「海外拠点がうるさく催促するので」などの理由でも「とりあえずの導入」なら今すぐ中止すべきじゃろうな。

最初に書いた通り、「何をやるべきなのかを明確に定義した戦略」と「ミッションに相応しい質(スキル)と量(人的リソース)を持った組織」と「戦略や組織に最適なシステム」が一体でなければ高度なマーケティングであるデマンドジェネレーションなど実現はできないんじゃよ。

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