マーケティングキャンパス 基礎から実践までBtoBマーケティングを学ぶサイト

Loading

ホーム > 講座 > ノヤン先生のマーケティング講座 > マーケティングはトップ下にボールを集めろ

2015.10.20

マーケティングはトップ下にボールを集めろ

日本のBtoB企業でもマーケティングへの関心度が高まり、MAを導入する企業も増えています。せっかくマーケティングが供給した営業案件を「無視されない」状態にするために、マーケティングと営業の間を繋ぐ重要な役割について、ノヤン先生がサッカーになぞらえて解説します。

さて、今日はADR(Account Development Representative)という日本では耳慣れない用語の話をしようかの。
BtoBマーケティングでマーケティングからのリードの受け先になるとても大事なポジションなんじゃ。

日本のBtoB企業でもようやくマーケティングの重要性に気が付く企業が多くなってきて、そうした企業の経営幹部やマーケティング担当者向けのセミナーが毎週のようにあちこちで開催されておるんじゃが、その多くはマーケティングオートメーション(MA)に関するものなんじゃ。ツールの話から入るのは日本人の悪い癖なんじゃが、まぁそれでもMAをプラットホームに構築するデマンドセンターが、日本のBtoBマーケティングが世界に追いつく突破口になるのなら良いとワシは思うんじゃ。
そして、MAを導入してそれがうまく運用に乗った頃に必ずある問題が発生するんじゃよ。

BtoB企業がマーケティングを整備し、営業部門や販売代理店、特約店に営業案件(以下MQL:Marketing Qualified Lead)を供給できるようになると必ずぶつかる問題とは、そのMQLを営業が追いかけてくれない、あるいはフィードバックをくれない、という問題なんじゃ。

これはマーケティングとしてはとってもせつない話なんじゃよ。
何しろ展示会のブースで3日間足を棒にして名刺やアンケートを集めたリードジェネレーションから始まって、めんどくさいことこの上ない名寄せや競合排除などのデータマネジメントをやって、そのデータに対して最適なコンテンツを作ってメールやWebでせっせとナーチャリングして、その行動解析や企業の属性情報でスコアリングし、インサイドセールスニーズまで確認した苦労の結晶のようなMQLリストが、営業や代理店に渡したとたん、どうなっているのかさっぱり見えなくなってしまうんじゃからの。

あんまり梨のツブテなので、「先月のリストのフォロー状況はどうですか?」なんて聞こうものなら、やれ「まだ温まってなかった」の、「遠い話」だの、「予想外に小さい企業でがっかりした」だの、「電話してもいなかった」だの、挙句の果ては「引き合いの対応で忙しいのでほとんどフォローできていない」などと開き直られることもあるんじゃからの。
もうやってられないわい、とばかりに営業や代理店がすっかり嫌いになってしまうマーケターもいるんじゃよ。そんな時にワシは良く言うんじゃ、「これは成長痛のようなもので、マーケティングが稼動し始めた企業は必ず通る道なんじゃ、じゃからこの問題が発生したということは、マーケティングが機能し始めた証拠なんじゃよ」とな。

実は米国でもこの問題は10年ほど前から顕在化したんじゃよ。今でも米国のマーケティングカンファレンスではテーマになっておるがの。例えば統計好きの米国人はこのMQLの無視率(Ignore Rate)を集計してベンチマークしたりするんじゃよ。
それで、米国のマーケターが知恵を絞った「無視されない方法」がいくつかあるんじゃよ。もちろん解決方法はひとつではないのじゃが、米国ではっきり有効性が確認されている手法のひとつがこのADR(Account Development Representative)というポジションの設置なんじゃよ。企業によってはBDR(Business Development Representative)なんて呼んだりするがの。

ADRは、新規市場や既存顧客から発生する新規案件のコントロールタワーになって、マーケティングから供給されるMQL(営業案件)を受け取り、その質を評価し、さらに営業や代理店にトスして、その後のフォロー状況を確認する役割りなんじゃな。営業サイドに配置され、新規企業だけでなく、取引きのある既存顧客からの新規案件にも責任と権限を持っているのが特徴と言えるじゃろう。

ちょっとサッカーを例に説明しようかの。
11人のサッカー選手の中で、営業をフォワードだとすれば、マーケティングは言わばディフェンスなんじゃ。今まではこのディフェンスからフォワード(営業)にロングパスを出していたんじゃよ。精度が良い筈がないじゃろ。これは距離があるからパスがそれるだけではないんじゃ。物理的に遠いからフォワードのコンディションが見えないんじゃよ。
もしある営業がクロージングが近い大型案件を持っていたら、当然それに集中するから、クロージングまで数ヶ月か数年も掛かるマーケティングからの新規案件(MQL)なんて追ってる場合ではないじゃろう?そのコンディションがマーケティング、つまりディフェンスラインからでは見えないんじゃよ。じゃからよりフォワードの近くにいて各フォワードのコンディションや特性に合わせたキラーパスを出す「トップ下」が必要になったんじゃよ。これがADRじゃな。

このADRは、やはり米国でBtoBマーケティングの主流になりつつあるABM(Account Based Marketing)でも威力を発揮しているんじゃよ。既存顧客や、重点ターゲット企業の場合、社内のデータを統合すれば、ある1社に所属する人が数十人から数百人というリストができることも珍しくないんじゃ。
例えばあるコンテンツに反応して明らかに関心がある挙動を示した人が、1つのターゲット企業内の5つの部署に所属する38人だったとして、その中の誰にアプローチすべきなのかはマーケティングでは判断が難しいんじゃよ。マーケティングができる絞込みはあくまで属性と行動をベースにした解析じゃからの。もっとリアルな社内の政治力や中期経営計画からの投資の優先順位、自社の営業との人間関係などを考慮した判断は、より営業現場の近くにいて営業や販売代理店と常にコミュニケーションを取っているADRでないと無理なんじゃよ。

その重要性に気が付いた米国では、ADR(Account Development Representative)と検索すると出てくるのは米国企業の求人情報ばかりなんじゃ。以下にその募集要項を少し並べたんじゃが、これを読めばこの職種の難しさと責任の重さがわかるじゃろう。

  • Enthusiastic and hard working.(熱狂的できつい仕事)

  • Strong persuasive ability for Sales team.(営業チームに対する強い交渉力)

  • With energy and confidence to build a pipeline of qualified opportunities for our Account Executives.(営業のために有望見込み客でパイプラインを満たす自信とエネルギーを持つ人)

  • Develop sales strategies to increase business revenue.(販売戦略を立案し、売上げ増加に貢献する)

  • Identify potential customers to generate new business opportunities.(潜在顧客からの新規案件の創出)

  • Generate repeat business with existing customers.(既存顧客からのリピート案件の創出)

つまり、日本より15年も前にデマンドジェネレーションとそれを担当する組織であるデマンドセンターの重要性を発見した米国で、そのためのツールとしてMAが誕生し、MAが普及したことによってより精度の高いリード(MQL)を営業に供給できるようになった10年前に営業が多くのリード情報を無視(Ignore)していることが問題になって、その解決策として7年ほど前に編み出されたポジションがADRという訳なんじゃ。まさにBtoBマーケティングの進化の結晶じゃな。

ワシは、このADRは日本でより重要になると考えておるんじゃよ。なぜなら、トップダウンで意思決定する欧米に比べてボトムアップで意思決定し、意思決定を稟議が支配する日本では、トップ下(ADR)がいなければ精度の高いパスを最前線に届けることなんて出来ないからの。
つまり、デマンドセンターとインサイドセールス、そしてADRがちゃんと繋がった企業がBtoBマーケティングのポテンシャルを最高レベルに引き出せるんじゃよ。

Copyright © 2015 Noyan All Rights Reserved.・・・・・・・