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2016.02.09

BtoBマーケティングの王道、ABMの肝は高度なデータマネジメントにあり

BtoBマーケティングの王道とも言うべき「ABM」。「ターゲット企業(アカウント)を定義し、戦略的にアプローチするためのフレームワークまたは手法」と訳されますが、近年米国ではこの言葉をよく聴くようになりました。今回は「ABM」に注目が集まる背景と、実現するための「肝」についてノヤン先生が解説します。

今日はBtoBマーケティングの王道とも言うべき、「Account Based Marketing(以下ABM)」の話をしようかの。この言葉は日本では未だ馴染みがないマーケティング用語じゃが、数年以内には必ず日本でも定着する言葉じゃから覚えておいて損はないじゃろ。

米国で大流行しているこの言葉は、実は新しいマーケティング用語という訳ではないんじゃよ。米国のCクラスだけを狙うマーケティングが行き詰りを見せた2013年あたりから頻繁にこの言葉を聴くようになって、2014年、2015年の米国マーケティング業界はこのABM一色だったんじゃ。国内でも外資系企業では「ABMにフォーカスせよ」という通達が本社から出ているケースが多いんじゃな。
そして米国では、ABMに特化したソリューションがいくつか誕生し、ABMに特化したコンサルティングファームが生まれ、LinkedInなどのSNSがマーケティングソリューションとしてキャンペーンを展開する時のコピーは「ABMに最適なデータにアクセスできます」という感じじゃな。

ABM(Account Based Marketing)をきちんと説明すると以下のようなものなんじゃ。

  • 「ターゲット企業(アカウント)を定義し、戦略的にアプローチするためのフレームワークまたは手法」
    さまざまなコンタクトポイントで収集された顧客データを統合管理し、アカウント(企業)単位で戦略的に攻略する考え方。社内の複数部門が連携することでターゲット企業(アカウント)が抱える問題点や潜在的なニーズに対して最適なソリューションを多次元かつ波状的に提案して攻略するマーケティング&セールスの手法。

と書くと、日本では当たり前と言えば当たり前なんじゃが、なにしろ米国のマーケティング&セールスは、トップダウンで意思決定をするお国柄を反映してキーパーソンしか狙わなかったんじゃ。この事は米国生まれのマーケティングオートメーション(MA)の標準的なスコアを見てもわかるじゃろう。基本は2軸でのスコアなんじゃが、縦軸が「個人の属性(職位)」、横軸が「個人の行動」でスコアするんじゃよ。

ABMは、先ず製品やサービスのターゲット企業(以下アカウント)を明確に定義することが第一歩なんじゃ。これはマーケティングで最も基本的なフレームワーク「STP」の「T(Targeting)」に該当する作業じゃが、STPと若干異なるところは定義する対象が「市場」ではなく「企業(アカウント)」というところなんじゃ。「製造業」でも「輸送機器製造業のティア2」でも「車載部品メーカー」でもなく、「デンソー」という具体的な社名がターゲットになるんじゃよ。
ABMという言葉がマーケティングではなくどちらかと言うとセールスサイドで語られてきた理由はこの辺が理由なのかも知れんの。

さて、ターゲットアカウントをバイネームで定義したら、マーケティング、セールス、サポートがデータを統合管理し、力を合わせてアカウントの解決すべき課題や、本人たちがいまだ気がついていない潜在ニーズなどを察知し、その課題やニーズに対して全社が連携してアプローチするんじゃよ。

とこう書くと、「ABMってとっても当たり前のことですが・・・」と言う人もいるかも知れないの。確かに概念としても新しいものではないし、米国でもIBM出身のセールスコンサルタントなどが古くから法人営業のあるべき姿として教えていた考え方だったんじゃ。
目標とする顧客企業の情報をしっかり収集し、それを分析して、相手のニーズを捉え、経済合理性に適った提案をすることで、受注の可能性を高めることはセールスの基礎とも言えることじゃからの。訪問を予定している企業の四季報やWebで最近のトピックや業績をチェックするのも先輩や上司から教えてもらうイロハなんじゃ。もちろんセールス部門だけでなくマーケティング部門でも企業の属性情報はとても重要な情報だと認識されておったんじゃ。

その基礎的で新鮮味のない概念が欧米のマーケティングシーンでブレークしている理由は「テクノロジー」なんじゃよ。実はこのABMは基礎的な概念としては以前から存在しても、それは「売れる営業は企業情報を元に戦略を立てている」というレベルの個人の行動規範であり、企業の仕組みとしては実現できないものだったんじゃ。なにしろその概念を支援するテクノロジーが存在しなかったんじゃからの。

ABMを実現するための肝は企業内で眠っているデータを統合し、連携させて、高度なデータマネジメントをする事が必要なんじゃよ。
それまで世界中のほとんどの企業が「データとコンテンツを統合管理するプラットフォーム」や「組織」を持っていなかったんじゃ。ところが、2000年代に急速に普及が進んだマーケティングオートメーション(Marketing Automation:MA)とそれをプラットホームにしたデマンドセンターが登場して、ようやくABMを仕組みとして実践できるようになったんじゃ。

もう少し具体的に話そうかの。ある製品のターゲット市場から、ターゲットアカウント(企業)を100社に絞ったとするじゃろう。
この100社に所属する個人のデータは、多くの場合すでに社内に存在しているもんなんじゃ。
営業が名刺交換をしているかもしれんし、エンジニアが訪問しているかもしれん。経営者同士の懇談会などで名刺交換していることだってあるじゃろう。展示会のブースにその会社の誰かが訪問してくれているかもしれんし、小さな事業部が主催した過去のセミナーに参加申し込みをしているかもしれんじゃろう。Webでの資料請求をしてくれいるかもしれんし、実はその企業のエンジニアがメールマガジンを登録して購読してくれているかもしれんのじゃよ。
他にも、基幹システムに保管してある購買履歴などの取り引き実績データ、SFAにある営業の対応データ、業務日報にある訪問や商談の記録、そして与信管理のために購入した企業属性情報、ターゲット企業が上場企業であればWebのIRで告知される中期経営計画なども重要な情報なんじゃよ。

こうした社内の多くの部署にバラバラのフォーマットで眠っているデータを収集し、整理して関連付け、100社のターゲット企業(アカウント)に対して、しっかりと準備されたコンテンツでキャンペーンを実施し、その反応と属性情報でスコア(点付け)してターゲット企業の中で「今アプローチすべき人」を特定し、そのリストを営業に供給するのがデマンドセンターなんじゃ。
つまり、今までは行動規範であり、「べき論」であったABMという概念を、データとコンテンツを統合してハンドリングするデマンドセンターがコントロールタワーになることで実現できるようになったわけじゃな。

ただし、ABMを実践する上で、企業の属性データとアウトバウンドコールの組み合わせだけというのはあまりお勧めできなんじゃ。業種や規模、直前期の決算情報などの属性情報だけでターゲットアカウントを絞り込んで代表電話にコールドコール(ナーチャリングしていないリストに対するコール)をするという焼き畑農法的な手法は、限定的な商材でしか使えないと考えるべきじゃな。

ターゲット企業のキーパーソンが社長を含む数人しか存在しないような零細企業なら別なんじゃが、そうでなければターゲット企業を数十社から数百社に定義したところで、それぞれの企業には多くの事業所があり、事業所には多くの部署があり、部署には多くの社員が勤務しているじゃろう?その中から販売しようとしている製品やサービス・技術で解決できる問題を担当し、ヒントを求めて情報収集している人を探し出さなければ、誰にアプローチしたら良いかわからんじゃろう?
仕方がないのでWebで調べて代表電話にコールすれば、セールス電話の撃退トレーニングを積んでいる受付が出るから担当者にたどりつくことは極めて難しいんじゃよ。まして日本の製造業は事業所(工場)ごとに研究開発センターや設計部門を置いていることが多く、事業所が違えば別の企業と同じで、事業所間の情報共有は必ずしも密ではないものなんじゃ。

大手の数百社しかターゲットにしていない商材を持つ企業でも、展示会に出展したり、プライベートイベントで人を集めたりしておるのを見たことがあるじゃろう?彼らがなぜ毎年多くのリードデータを収集するのかと言えば、不特定多数のリードを収集したかったわけではなく、ターゲット企業に所属する複数部門の多くの人の個人情報を収集し、コンタクトポイントを増やすことが目的だったんじゃよ。
そうして収集したリードデータに対して、メールマガジンやWebでナーチャリングしたり、オンラインキャンペーンやセミナーを実施して、案件を創出するわけなんじゃ。

という訳で、ABMの「肝」は社内データの統合・管理というデータマネジメントと、ターゲット企業に最適化したコンテンツマネジメントなんじゃ。それを行うためにも、日本企業はMAをプラットホームにしたデマンドセンターを構築し、一刻も早くこのABMのノウハウを社内に蓄積すべきと考えておるんじゃよ。これは決して一過性の流行などではないんじゃからの。

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