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2017.02.23

ABMとデマンドジェネレーション

今までBtoBマーケティングのスタンダードだったデマンドジェネレーションと、新しい概念であるABMは何がどう違うのでしょうか?その関係性をノヤン先生が解説します。

今日はABM(アカウント・ベースド・マーケティング)デマンドジェネレーションの関係と違いを話してみようかの。

なぜ今これを書こうと考えたかと言うとじゃ、ABMのような新しい概念は、定義が確立しないうちにどんどん意味が変わって多くの場合は我田引水に解釈されてしまうからなんじゃ。
米国でもこの兆候は顕著で、アドテク系の人たちは、もう顧客データを収集したり、ナーチャリングするのは時代遅れで、ターゲット企業を定義すれば、そのIPアドレスに対して広告を集中させたり、LinkedInなどのSNSからターゲット企業のデータをごっそり集めて来られる、それがABMだ!と言っている一派もあるんじゃよ。ちょっと情けないがこれが実態であり、日本でも時間の問題で起こるじゃろう。

ちょっとABMの定義を見てみようかの。これはシンフォニーマーケティングが掲げるABMの定義なんじゃ。

【全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売り上げ最大化を目指す戦略的マーケティング】

米国のITSMA(Information Technology Services Marketing Association)、SiriusDecisions、ABMソリューションのベンダーなどの定義はそれぞれ個別のものなんじゃが、それらを調べ、それぞれの担当者ともディスカッションしたところ、そのポイントは

  1. マーケティングと営業の連携

  2. 定義されたターゲットアカウントにフォーカスする

  3. 戦略的マーケティング

という3つに集約されるんじゃな。IPアドレスにしつこく広告を出すだけなら戦略的とは言えんじゃろ?

そして、“全社の顧客情報を統合して戦略的なマーケティングを展開”するためには、優れたデマンドセンターがどうしても必要なんじゃよ。その理由はABMがデマンドジェネレーションの進化系だからなんじゃが、それを説明するためにABMの簡単な歴史を説明しようかの。

最初のマーケティングオートメーション(以下MA)であるEloquaのリリースを皮切りにして、このMAをプラットフォームにして「案件を創出し、営業や販売代理店に安定供給すること」を目的にした「デマンドジェネレーション」と呼ばれるマーケティングが米国で盛んになったのは2000年代初頭なんじゃな。

バラバラな部署と予算で実施されていたマーケティング活動を統合し、社内に分散していたデータを収集・統合して、良質なコンテンツでナーチャリング(啓蒙・育成)を進め、そこから有望な案件を創出して営業に供給したんじゃよ。まぁBtoBマーケティングの革命と言っても過言ではないプロセスの大改革だったんじゃな。
ところが、この革命的なマーケティングはすぐに壁にぶつかってしまったんじゃよ。それは

「創出した案件を営業がちゃんとフォローしてくれない」

というものだったんじゃ。
米国人はとにかく統計好きでの、デマンドセンターが創出した案件の、営業による「無視率(以下:Ignore Rate)」をカウントしていたんじゃよ。2016年現在の米国企業の平均的なIgnore Rateは50%程度だと言われておるんじゃが、ABMを実践してる企業ではこの無視率が10%というケースも在り、営業が訪問した結果、案件としてSFAに登録した「受け入れ率:(以下SAL:Sales Accepted Lead)」が90%という事例まで出ているんじゃよ。凄いもんじゃろ?
ABMは「営業の視点で再設計したマーケティング」とワシは言っておるんじゃが、つまり営業が行きたい企業の、行きたい部署の、会いたい役職の人、という条件を最優先でスコアリングしているので、営業から見ればSALが上がって当然なんじゃよ。

このABMを実践するためには、より高度で精緻なデータマネジメントや、ターゲットアカウントに合わせたきめ細かいコンテンツマネジメントが必要になるんじゃが、それを担当し、実現できるのは経験を積んだデマンドセンターだけなんじゃよ。米国でも2000年から15年以上掛けてデマンドセンターを整備してきたからこそ、ABMで成果を上げられているんじゃ。

その上にじゃ、日本のBtoB企業は、製品ごとに事業部を作るいわゆるプロダクトアウトの組織になっている企業が多いじゃろ?ワシは、これを悪いとは考えていないんじゃよ。BtoBはプロとプロの世界じゃから、専門性の高いスタッフを育てるべきじゃし、そうでなければ顧客に相手にされんからの。でもこれだけでは、縦糸だけで横糸が無いようなものなんじゃ。日本企業は点や線、つまり現場単位で担当者を強くグリップすることは得意でも、顧客企業を面でグリップすることは得意ではないんじゃ。その点、社内データを統合管理して実践するデマンドセンターは、横糸の機能を構築するには最適なのじゃよ。

では、同じデマンドセンターをベースにしたABMとデマンドジェネレーションの違いは何じゃろうかの?
米国などで開催されるカンファレンスでよく使われるには以下の表現じゃな。

「デマンドジェネレーション=網」
「ABM=銛」

例えて言うならデマンドジェネレーションは定置網のようなものなんじゃよ。漁師は海流や海底の地形を見て、魚群の回遊の道に網を仕掛けるんじゃ。魚は網に沿って誘導され、定置網の袋状の部屋に入って出られなくなって収穫されるんじゃが、デマンドジェネレーションはこれに似ているという事なんじゃよ。だから「Demand Generation is Net」なんじゃ。

一方のABMは「銛」に例えられる事が多いんじゃよ。ABMは定義されたターゲット企業のターゲット部署の人間だけを対象にするので、その考え方が、海を走る船の舳先からカジキなどの大きな魚に銛を打ち込むスタイルに似ているんじゃな。つまり、「ABM is spear(銛)」なんじゃ。

定置網は効率は良いのじゃが、唯一の欠点は網を上げるまで入っている魚の種類やサイズは判らないことなんじゃ。でも、銛で突く漁なら、魚を選ぶことができるからの、要らない魚に銛を打つことはないんじゃ。まさに腕の良い営業パーソンの売り方そのものじゃろう?

ただ、ワシは日本のデマンドジェネレーションは定置網というより、むしろ養殖イケスに似ているような気がするんじゃ。リードジェネレーションが海外のような外部データベースやオンラインを主軸にしているのでなく、展示会や営業名刺などをベースにしているからの。つまり、もし定置網であれば、欲しくない魚も入るじゃろうし、時にはサメに例えられる競合企業の営業が入ってきて、せっかく網に入った魚を食べてしまうかも知れないじゃろう?つまり、定置網は入ってくる魚の種類や量をコントロールすることは不可能なんじゃが、養殖イケスなら最初から収穫したい種類の稚魚だけをイケスに入れて大事に育てることができるんじゃ。

ワシは日本で成功するのは定置網と銛のハイブリッドな仕組みだと考えておるんじゃよ。

展示会や営業の名刺などで収集し、データベースという「イケス」に入れて、ナーチャリング(給餌・育成)して、スコアリング(サイズ計測)して、有望と思われるリストを営業部門に供給し、それを営業に仕留めてもらうのが日本型のABMだと考えておるんじゃ。つまり、ひとつの湾のような巨大な養殖イケスの中に船を乗り入れて、養殖している魚の中から獲りたい魚だけに銛を打つようなものなんじゃ。効率が良いじゃろ?

ただし養殖イケスで長年かけて育成し、安定して営業に供給するには、初期の設備投資と運用コストが掛かるんじゃ。じゃから、高級魚でないと成立しないんじゃよ。マグロやヒラメは養殖するが、サンマは養殖しないじゃろ?その理由は、コストが合わないからなんじゃ。これと同様に日本型のABMはデマンドセンターの維持管理にコストが掛かるので商談単価がある程度高額な商材、または年間の取引金額の多いターゲットアカウントに対してでないと成立しないんじゃよ。

ABMはデマンドジェネレーションの進化系であり、実施するには必ず巨大なイケスのような仕組み、つまりデマンドセンターが必要なんじゃ。デマンドセンターという存在が無く、デマンドジェネレーションの経験も無い企業がいきなりABMに取り組むのは不可能だと言い続けている理由はこれなんじゃよ。

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