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2018.01.25

米国ではMAの話題が少なくなっている?その理由と未来は

最近、米国のニュースやカンファレンスでの出展などで、明らかにMAを見ることが減っています。この背景とこれからをノヤン先生が解説します。

最近ある人に、「米国のBtoBマーケティングをウォッチしてるんですが、最近はMA(Marketing Automation)の話題がめっきり少なくなりましたね、すでにブームが終わったということですか?」と質問されたんじゃ。ちょっとびっくりしたがの。
そこで、今日はこれを書いてみようと思うんじゃ。

確かに米国や欧州で開催されるBtoBマーケティング系のカンファレンスやトレードショーでは、数年前までは各MAベンダーが出展して、新しい機能や連携サービスを競っていたんじゃが、最近ではほとんど見かけなくなっているんじゃよ。イベントへのスポンサードだけでなく、広告出稿もあまりしていないので、展示会やメディアを通してウォッチしておればそういう感覚も持つかもしれんじゃろうな。
世界のマーケティングソリューションをカテゴリーごとにマッピングしたポスターを見たことがあるじゃろ?誰がどう数えておるのかは判らんが、毎年どんどん増えて、今ではもう読めないくらい小さなフォントになってしまったんじゃ。ちなみに2010年頃はMAを中心に数十の製品がマッピングされていて、カテゴリー数もせいぜい7つくらいだったかの、それが2014年にはいきなり2000を超える製品群になり、2016年は4000になり、2018年にこれを作るとすれば(作るんじゃろうがの)5000を超えるじゃろうと言われておるんじゃ。もううんざりじゃの。そして当然じゃが、その中でのMAはとても小さなカテゴリーになってしまったんじゃ。MAはもう新しい製品が出てこない「成熟した」カテゴリーじゃからの。
こういうことも、冒頭の質問の原因かも知れないんじゃな。

まず、結論から言うとMAはそもそもブームではなく実需に支えられたニーズであり、最近話題に出ないのは、もはやスタンダードになったからなんじゃ。つまり、米国や英国などのマーケティング先進国の企業では、「MAを導入するかどうか」、あるいは「どのMAを採用するか」、というフェーズはもう終わって、「そのMAで何をするか?」「何と何をどのように連携させて、どこまで可視化するのか?」という時代になっておるということじゃな。それにMAベンダーがトレードショーの中心にいた頃と比較すると、各ベンダーが格段に規模が大きくなったり、大企業に買収されたりで、ブランディングでも、新規リードの獲得でも、もう出展する必要が昔ほどなくなったということも理由のひとつじゃろう。今ではどのMAベンダーも単独で大きなプライベートイベントを開催できるだけの力があるからの。

こう書くと、米国と言えどもMAの普及率はそんなに高くないぞ、という声が聞こえてきそうじゃの。そういう調査データがいくつか有ることは知っておるんじゃが、ちょっと見方が違うんじゃよ。
マーケターにとって数値データとは活用するものであって、振り回されるものであってはいかんのじゃ。データはそれを作る人の意志でどうとでも切り取れるし、集計できるという面を持っているからの。

判りやすいように日本を例に話そうかの、現在日本国内の企業数は約430万社とも言われておるんじゃ。かなり多いじゃろう?これを分母にMAやSFAの導入企業を算定すれば、「未だほとんど普及していない」となるじゃろう。でも、430万社の企業から法人格を有する、つまり株式会社とか有限会社とか、合資会社などの法人として登記されている企業を「会社」として分けると半分以下になるんじゃよ。さらに定期収入がある、年間で1000万円以上の収入がある、などの条件を当てはめると、ここから70%は消えると言われておるんじゃ。さらに言えば利益を計上して法人税を払っている企業となるとさらにその一部なんじゃよ。これが実質的に事業をしている企業じゃな。
その事業をしている企業の中で、売り上げ10億円以上は約10万社、従業員50人以上では約8万社になるんじゃ。もちろんこれ以下の規模でもMAを採用する可能性はゼロではないのじゃが、産業分類で大きな割合を占める製造業や建設業であれば、全従業員が50人でも営業は1人とか2人ということが多く、その営業が案件に困っているかは疑問じゃし、営業案件をデジタルで管理して可視化する必要があると言えば無理があるじゃろ?2人の営業が顧客訪問でスケジュールがパンパンだとすれば、商談を創る仕組みであるデマンドセンターのニーズは無いから、そのプラットホームであるMAは必要ないかも知れんのじゃよ。
米国の企業数は、日本の約5倍の2200万社と言われておるんじゃが、その内訳は似たようなもんじゃろ。それどころか、SOHOと呼ばれる個人で自宅をオフィスとして仕事をしている人は日本よりはるかに多いので、下が大きなピラミッド型なんじゃよ。

このように、企業を規模や社員数、業種などに分類して、精査してMA導入の可能性がある企業を絞っていけば、HubSpotのようにスタートアップやSOHOと呼ばれる小規模企業を得意とする製品を除けば、日本のMAの市場は多くても2〜3万社ということになるじゃろう。
日本市場のMA分野でトップシェアを持つセールスフォースドットコムのpardotでも導入企業数で未だ1000社を超えておらんので、日本には未だMAのホワイトスペースは多く存在するのじゃが、2000年からMAの導入が始まった米国ではホワイトスペースはもうそれ程残ってはおらず、新規のリード獲得を目的とした広告出稿や展示会への出展は費用対効果が合わなくなっておるんじゃよ。まぁそのくらい普及したということじゃな。

2000年に世界最初のMAであるEloquaがリリースされて以来、数多くのMAベンダーが登場し、MAを採用する企業も増え、パイプラインに案件が安定供給される仕組みがしっかり運用されるようになったんじゃ。その周辺ビジネスも数多く登場し、MAのインプリメンテーションを生業とする会社、データ分析とレポートの専門会社、デマンドセンター向けのコンテンツ制作会社、インサイドセールスのアウトソーシング会社など、企業のデマンドセンターをサポートする多くの専門業者が登場して、それらがエコシステムを形成したんじゃ。

では、BtoBマーケティングの中で「MA」とそれをプラットホームにしたデマンドセンターは今後どういう方向に向かい、どんなフェーズに入っていくのかを説明しようかの。

ABM:アカウントベースドマーケティング

世界のBtoBマーケティングは相変わらずABMが主流になっておるんじゃ。これも流行では無いからの。MAとSFAを連携させて運用する時の重要なKPISAL(Sales Accepted Lead)じゃから、これを向上させようと思えば当然のように辿り着く先がABMなんじゃ。日本ではこれにADR(Account Development Representative)を組み合わせると最も効果があるのじゃが、そういう運用面での進化がどんどん進んでいくじゃろうし、その専門ツールも出てきているんじゃよ。クッキーIPで集計されたサードパーティーデータを、自社のファーストパーティーデータとどう組み合わせるか、そこにLinkedInなどのデータをどう組み込んでデータの質を上げるのか。アウトバウンドコールとABMを組み合わせるベンダーも世界中で出てきて、ここは未だ目が離せないカテゴリーじゃな。今は、次々に誕生する独立系のABMベンダーと、MAベンダーのABM機能が並立しておるんじゃが、過去の例にある通りいずれこれらもM&Aなどで統合・集約に向かうじゃろう。

PRM:パートナーリレーションシップマネジメント

BtoB企業の多くは販売代理店(パートナー)制度を採用しておるから、ここの生産性を向上させることは企業の生命線になるじゃろう。そういう意味ではPRMは今後最も注目される分野じゃな。米国では数年前からすでに一つのカテゴリーを形成しており、その中で機能の標準化やM&Aが活発に始まっておるんじゃ。
数年前まではマーケティングファンドの活用や、インセンティブの渡し方、新規パートナーの採用や解約などの【パートナー管理】が主軸だったんじゃが、今では一緒に売り上げを創っていく【パートナー支援】が主流になりつつあり、それが理由で、MAをプラットホームにしたデマンドセンターと密接に関わるようになったんじゃ。日本が欧米から大きく遅れてしまっているプロセスでもあり、これからのキャッチアップが急がれる分野じゃな。

Predictive Analytics:プレディクティブ・アナリティクス

未来を予測したくて顧客やその購買履歴、Webアクセスや、その行動データを分析する訳じゃから、この思想自体はずいぶん昔からあったものなんじゃ。では何が新しいかと言えば、「テクノロジー」なんじゃよ。米国ではファーストパーティだけでなく、サードパーティ、そしてパブリッシャーの持つセカンドパーティのデータまで使って、複合的な分析で近未来の購買行動を予測しようとしておるんじゃ。世の中には膨大なデータが溢れておるから、それを繋ぎ合わせることで、見えなかったものが見えるようになるんじゃよ。ちょっと怖いがの。そして最も技術革新と投資が進んでいる分野じゃな。
ただ、問題は法律なんじゃよ。なにしろ行動データの活用じゃから、これに関しては各国の法律が大きく影響するんじゃな。日本は個人情報関連の法律が最も厳しい国のひとつじゃから、セカンドパーティデータを活用するのはハードルが高いし、EU各国も2018年5月から施行されるGDPRを遵守するとデータ連係には慎重にならざるを得ない。逆にここに法律上の問題がない米国では、こうした複合的なデータを組み合わせての未来予測の技術が一気に進み、マーケティングテクノロジーでの米国の圧倒的な地位がさらに強くなるかも知れないのじゃよ。これはLinkedInのマーケティング活用が米国とその他の国では大きく違うことにも現れておるんじゃ。

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