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2018.02.22

好景気の罠にハマる日本のBtoBマーケティング。ではどうすれば?

ようやく日本のBtoBマーケティングに夜明けが来たと思ったら、意外にも好景気に足を引っ張られている現状があります。このパラドックスと対策をノヤン先生が解説します。

日本の多くのBtoB企業が遅ればせながらマーケティングに取り組むようになって久しいのじゃが、意外なことに社内でマーケティングを浸透させるのに苦戦している企業が多いんじゃよ。不思議じゃろ?日本人はイノベーションを起こすことは苦手でも、キャッチアップ、つまり追いつくのは得意なんじゃ。じゃからマーケティング不毛だったこの国のBtoB企業も、その重要さに気付けば、そこからは猛烈な勢いで世界に追いつき、追い抜くとワシも思ったんじゃよ。でもそうはなっていないんじゃな。

実は今、各企業でマーケティングの浸透・普及を妨げているのは「好景気」なんじゃよ。

ブランディングやリサーチと違って、デマンドジェネレーションと呼ばれるBtoB企業のマーケティングは、営業や販売代理店に商談を供給する仕組みなんじゃ。じゃから自社や販売代理店の営業が「商談の数」に困っていない時には価値を認めてもらいにくいという弱点があるんじゃよ。今がまさにそんな時じゃの。多くの企業では営業は引き合いからの案件を潤沢に持っておるし、工場もフル稼働で、受注しても納品出来るかどうかが心配だ、という営業も多いんじゃ。
こんな時にマーケティングを始めて、やれ名刺を集めたいとか、メールマガジンを配信したいとか、会員サイトを作るので顧客担当者に登録してもらいたいとか言い出すと、営業から猛烈なクレームが上がってくるんじゃ。確かに顧客対応や手持ちの案件で手一杯の営業からすれば、

  • 「この忙しいのに仕事を増やしてくれるな」

  • 「なんでそんなことを今始めるんだ」

  • 「案件づくり?案件に困ってるやつがどこにいる?」

となるのは当然なんじゃよ。

しかしじゃ、当たり前の話じゃが、景気というのは常に変動を繰り返すんじゃ。ファンダメンタルというやつじゃし、好景気不景気の波、つまりボラタリティの激しいものなんじゃ。想い出せば記憶にあるじゃろ?
バブル以後でも何度か訪れた好景気の時は、多くの企業が数年分もの受注残を抱えて工場をフル稼働させておったし、大手の総合建設業に至っては「もう数年分の仕事があるから、営業の主な仕事は受注をトラブルなく断ることだ」とうそぶいておったんじゃ。でも景気が傾いたとたん、あったはずの数年分の仕事は全部きれいに溶けてしまい、その数年後には大手が手を出さないような小型ビルの建設現場にまでスーパーゼネコンのロゴを見るようになったんじゃよ。

つまりの、景気が良い時はマーケティングなんて必要ないから、投資もしないし、まともな人材も配置しない。そして景気が悪くなってから営業が「案件が足りない」と言いだし、マーケティングが必要になった時には、社内にはナレッジも、まともに機能する組織も、マーケティングに使える洗練されたデータもない、という状況になるんじゃよ。しかもじゃ、そんな時には外部のプロ集団の力を借りて立ち上げるしか方法はないんじゃが、景気が悪くなって赤字転落必至の企業では、優れたプロ集団を採用する予算も出ないんじゃ。泣きっ面にアブ千匹じゃろ?

この20年、日本企業はこれを繰り返している気がするんじゃが、これでは駄目なんじゃよ。

どんなものでもそうじゃが、良いものを創るのには時間が掛かるんじゃ。マーケティングも同じじゃよ。多くの日本企業は戦後の特殊な環境の中、マーケティングの機能を持たなくとも成長できてきたんじゃが、そのためにマーケティングのナレッジも、組織も、外部ブレーンも持っていないんじゃ。じゃからその分、優秀な人材と予算、そして時間を与えなくては、世界と戦えるマーケティング組織なんて作れるはずもないんじゃよ。

それに、新しいチャレンジは必ず失敗を経験する、これはなんでも同じじゃろ?研究開発部門が何の苦労もなくヒット商品を作れたはずもなければ、営業部門が楽々と顧客を開拓できた訳でもないじゃろ?同様にマーケティングの仕組みも最初から一度の失敗もせずに軌道に乗るはずもないんじゃよ。

SFAは運用ルールに乗らない、MAを導入してもマーケティングは自動化できない、IPアドレスは当てにならない、Webマスターのレポートは訳が分からなくて、それがどう売り上げに貢献するかさっぱり判らない。セミナーを開催しても集客できない、できたとしても参加者リストを見て営業がそっぽを向く、ホワイトペーパーのダウンロードサービスを使えば、せっかく購入したリストを営業はフォローしないし、したとしても「全然ホットじゃないからもういらない」とにべもない。インサイドセールスチームを組織してアポ取りコールをすれば、「アポの質が悪い」と文句を言われ、「俺の顧客に勝手に電話するな」と怒鳴り込まれる。そして気がつけばデータが社内に分散し、登録や運用ルールの違いからなかなか統合もできないんじゃ。

日本企業から見れば15年先を歩いている欧米のマーケティング先進企業でさえ、かつてはそうした失敗の学習曲線を歩み、それを糧にしてナレッジを蓄え、やがて営業や販売代理店、海外の現地法人などに良い案件を安定供給できる仕組みをコツコツ作り上げたんじゃよ。新しいマーケティング部門がツールを購入したくらいで一朝一夕にエクセレントなマーケティングができるはずがないじゃろ。

デマンドウォーターフォールで考えるなら、数年後にいくらの商談(SAL:Sales Accepted Lead)を出したいのか?
案件(MQL:Marketing Qualified Lead)からのアクセプト率を50%、SALからの1年以内受注決定率を10%とし、売上げ1000億円の企業が、その10%をマーケティング活動から創ろうと考えれば、マーケティング組織であるデマンドセンターが生み出すMQLは2000億円分でなければならないじゃろ?仮に3年で毎年2000億円分の案件(MQL)を営業サイドに供給する仕組みを作るなら、どんな人材、組織、予算を割り当てるべきなのか、それに対して今の人材や予算はどうなのかを考えれば、いかに「本気で取り組んでいなかったか」が判るじゃろう。

幸い2018年2月現在の日本は好景気じゃ。株も高いし、大卒求人倍率も1.8倍とバブルの頃を思わせる売り手市場。企業の利益や内部留保も潤沢で、経営者の関心は売り上げや利益よりも「働き方改革」に目が向いているんだそうじゃ。結構なことじゃな。でも、これがこのまま何年も続く訳がないじゃろう?
だから今なんじゃよ。マーケティングに最良の人材と十分な予算を割り当てて、しっかりとしたナレッジと組織を構築し、自社の顧客を守り、競合に先んじて新規市場を開拓する。そういうデマンドセンター作りに投資すべきだとワシは思うんじゃ。

日本のBtoB企業も、本気でマーケティングに取り組み、経営戦略の根幹に据え直す時期なんじゃよ。

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