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2018.09.07

BtoBマーケターが嫌われる理由 ─知識についての正しい知識─

マーケティング部門やその部門の人が社内で嫌われてしまう原因のひとつに「知識」があります。「もの識り」などと呼ばれる知識を多く持つ人は社内の尊敬を集め、頼りにされ、問題を解決し、素敵な人生を送っているものと思いがちです。しかし、現実にはその逆で「知識」が災いを呼んですっかり嫌われて仕事がうまくいかない人の方がはるかに多いのです。その理由は、そして対処法は?知識についての正しい知識をノヤン先生が自戒を込めて解説します。

今日は知識について勉強しようかの。わしは大学院ビジネススクールでBtoBマーケティングを教えておるんじゃ。ミミズクで大学の客員教授にまでなったのはわしくらいのもんじゃろ、森で自慢せんといかんわな。
ま、それはそれとして、大学院にまで進む人の目的は「知識の習得」なんじゃよ。でもその習得しようとしている「知識」というやつは実はかなりやっかいなやつなんじゃ。なにしろそれだけではあんまり役には立たないくせに性格が悪くて、面倒くさいやつなんじゃよ。だから正しく知っておかないと学んだ知識のせいで人生を台無しにすることさえ有るんじゃ、実はわしにも覚えがあるんじゃがの。

マーケティング部門やマーケティング担当者が社内で嫌われてる会社って多いじゃろ?特に営業部門や製品事業部と仲が悪く、そのせいで名刺のコピーさえ取らせてもらえないとか、既存顧客へのマーケティングキャンペーンができない、リードMQL)をフォローしてもらえない、フィードバックをもらえない、という話をよく耳にするし、とても悲しい話じゃと思うんじゃよ。「売上げを伸ばす」という目的は同じなんじゃからの。マーケティング担当者が社内で嫌われる原因のひとつは「知識の特性」なんじゃよ。だから知識について正しく知って欲しいんじゃ。

そもそも知識は意識を持っていて、人間のように性格が有ることはあまり知られておらんのじゃ。この性格がとっても悪いことをするんじゃよ。
知識の性格の3つの特徴を説明しようかの。

傲慢

知識の性格の悪さは、それを蓄積した人間を傲慢にするところなんじゃ。何かを「知っている」ことと「それをできる」ことは根本的に違うという事実をねじ曲げるんじゃよ。「あなたの知ってることはあなたのできること」と思わせようとするんじゃ。そんな訳がないじゃろ?

野球が大好きな人がいたとして、バッティングに関する本を何冊読んだとしても、実際に150キロのボールは打てるわけがないじゃろう?打とうとしてもかすりもしないじゃろうし、唸りを上げるボールを見れば恐ろしくてバッターボックスにすら立てないじゃろ。テレビに映るプロ野球の選手たちは小学校の頃から何百万回も素振りをして自分の思った軌道と速さでバットを振れるようになり、150キロのボールをとらえる動体視力を磨き抜いた人たちなんじゃ。

ゴルフだって同じじゃろ?ゴルフ好きの人がどんなに本や雑誌を読んでも、酒の肴にゴルフの話をしてもスイングの欠点は良くならないし、スコアも伸びんじゃろ。それよりも練習場に行って数多く打つ方が大事じゃし、できればレッスンプロについて練習した方がスコアは伸びるものなんじゃ。

これはビジネスでも同じなんじゃよ。マーケティングの本ばかり読んでも、どんなに熱心にセミナーに参加しても実はマーケティングはうまくはならないんじゃ。でも、勉強して頭でっかちになっている人の中には「知っている」ことを「できる」と勘違いしてしまう人がいるんじゃな。そしてチャンスをもらっても何もできなくて、大恥をかいてプロジェクトは終了、という悲劇をワシは何度も見ておるんじゃ。特にBtoBマーケティングはとことん実務じゃから、基本設計にしてもデータマネジメント、コンテンツマネジメント、アナリティクス、インサイドセールス、営業部門へのピッチなど、現場で実践しなければ身につかないプロセスの方が圧倒的に多いんじゃよ。「営業経験はありませんが、営業の手法はわかってます。やれと言われればできるし売れると思います」。こんなことを平気で言うマーケターは大概営業から相手にされていないんじゃ。法人営業の大変さ、クリエイティブさ、そして気配りの細やかさを理解しないで「自分もできる」などと言わせるのは「知識の傲慢さ」なんじゃよ。

支配欲

知識はそれを蓄積した人を支配しようとするんじゃ、まるで寄生して、宿主を支配する怪物のようで、恐いじゃろ?でも本当のことなんじゃよ。

「知ったかぶり」ってどこでもいるじゃろ?自分の知識をひけらかしたくて仕方がない人じゃな。ああいう人は生まれた時から知ったかぶりではないんじゃよ。赤ん坊には知識なんて無いんじゃから当たり前じゃな。でも知識欲が旺盛、つまり勉強熱心で、本を読んだり、セミナーに参加したり、勉強会で語ったり、コミュニティに参加したりして知識が貯まってくると、その知識に支配されて人格が変貌してしまうんじゃ。

自分が言おうとしたことを先に言われて怒る人、自説に反論されると激高する人、知ってること、知ってる人、務めた会社などを否定されると切れる人の多くはこの知識に人格を支配されてしまった人なんじゃ。マーケティング部門の人が社内で嫌われる原因の多くはこれなんじゃ。「あいつ面倒くさい」「知ったかぶりして話が長い」「すぐ英語や専門用語を混ぜて話すから何を言ってるのかさっぱり判らない」。こんな風に言われている人は「周囲がバカに見えて仕方がない」という知識の最悪の性格に支配されてしまっているんじゃよ。

じゃから、マーケターには特に気をつけて欲しいんじゃよ。マーケティングの世界に入る人はわしがそうであるように知識欲が人一倍旺盛な人が多いし、勉強熱心で、学んだことを語るのが好きな人が多いからの。そんな人は余程気をつけないと貯め込んだ知識に人格まで支配されてすっかり嫌われ者になってしまうんじゃよ。

焼き餅焼き

これは知識の最も恐い面でもあるんじゃが、知識は焼き餅焼きなんじゃよ。よく新しい考え方や手法を根拠もなく攻撃する人がいるじゃろ?そういう人を見るとわしは、あれはあの人が言っているのではなくあの人の中の知識が焼き餅を焼いて言わせていると思うんじゃ。なにしろ新しい知識が入ってきてしまうと古い知識は価値を失う危険が有るからの。だからまるでバイ菌に対する白血球のようによってたかって攻撃するんじゃよ。考えてもみて欲しいんじゃ。古い知識をいっぱい持っている人というのは、かつては新しい知識を貪欲に学んだ人なんじゃ。その人が年齢を重ねたとは言っても新しい知識をとことん否定するなんておかしな話じゃろ?

ガリレオが地動説を唱えた時に反対した当時の学者も、若い頃は新しい学問を夢中で学んだ知識欲旺盛な秀才たちなんじゃ。それに天動説では説明できないことが多いことも当時から判っておったんじゃよ。でも彼らではなく、彼らが習得した知識「海は平らでどこまでも続き、その果てには恐ろしい怪物が棲んでいる」という「天動説」にとっては、「地動説」はもしそれを認めてしまえば自分たちの存在があっと言う間に価値を失う恐ろしいものだったんじゃ。だから宗教裁判まで起こして攻撃したんじゃな。でも地動説は証明され、天動説は今や神話の世界の寓話として存在しているだけなんじゃ。

マーケティングの世界でも同じことは繰り返されてきたんじゃよ。スタン・ラップドン・ペパーズたちが登場し、ダイレクトマーケティングOne to Oneマーケティングを提唱した時に、「米国人2億人に2億通の個別DMを出すのか?」と攻撃した一派がいたし、ブライアン・ハリガンが「インバウンドマーケティング」を提唱した時にも、「あれはデジタル広告でマーケティングではないだろう」と噛みついた人たちがおったし、ABM(Account Based Marketing)が広まった時も「何も新しくないし、ビッグアイデアでもない、ただのアカウントセールスの焼き直しだ」と揶揄する人が多かったんじゃ。これらはみんな「古い知識の焼き餅」なんじゃよ。

*

「知識」はやっかいで面倒くさいやつじゃろ?でもだからと言って知識を学ばないという訳にもいかんじゃろ。無知文盲が幸せな訳でもないし、現代では病気になったら祈祷してもらうより医者に診てもらう方が正しい選択じゃからの。正しいタイミングで正しい医師を選べば大概の病気は治る時代なんじゃ。この医療にとても似ているのがマーケティングなんじゃ。知識の産物を学問として体系化しておるし、特にBtoBマーケティングは科学と感性の融合したロジカルな世界じゃから、まさに知識の塊なんじゃな。だからBtoBマーケターは余計に社内で嫌われる危険が有るんじゃよ。

では、どうしたら社内に敵を作らずにこのやっかいな「知識」と付き合えるのかを話そうかの。

まず知識はそれ自体では役に立たない、ということを肝に命じるべきなんじゃ。知識は痛みを伴った体験を通して始めてその人の血肉となって使える「力」になるんじゃ。同時に体験することによって知識の持つ傲慢さを謙虚さで抑えつけることができるようになるんじゃよ。BtoBマーケティングは組織を横断しないと何も実行できないじゃろ?じゃから謙虚な姿勢で周囲とコミュニケーションしないとうまくいかないものなんじゃ。以下は知識との付き合い方の基本じゃな。

  1. 本やセミナーなどで知識を吸収する

  2. それを自分で咀嚼して自分の言葉として文章や会話で表現してみる

  3. 次にそれを自分の担当している商材(商品・サービス)や自分の会社に落とし込んで、
    どうマーケティングするかを考え、実数を入れて具体的に設計する

  4. その計画を規模や範囲を限定して、営業などの他部門と協力しながら実行する

  5. 実行した内容から正しいデータを取得して分析する

この【5.実行した内容から正しいデータを取得して分析する】で、どれだけの情報、つまり「進化の糧」を得られるかはその人の持っている謙虚さの量と比例するものなんじゃ。設計通りにならなかったことをいちいち他人のせいにしていたら何も学ぶことはできないからの。

これがマーケターの踏むべき「場数」なんじゃよ。これを何回、さまざまなパターンやケース、商材、営業体制で経験したかがその人のスキルを決めるんじゃ。
わしが講演などで「BtoBマーケティングを本気で学びたければプロフェッショナルサービスの会社で3〜5年働くのが一番良い」といつも話しているのは、わしの会社の採用のためではなく、それが実務の場数を最も多く経験できる唯一の道だからなんじゃよ。

というわけで、「知識」との付き合い方にはくれぐれも気をつけるんじゃよ。

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