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2018.11.05

ドードーにならないために今、日本企業がすべき3つのこと

17世紀に絶滅したドードー。私には「ノロマ」という意味の名を持つこの鳥の運命と、日本企業が重なって見えるときがあります。マーケティングという翼を退化させてしまった日本企業が、どう生き延びるのか、をノヤン先生が解説します。

ドードーという鳥を知っているかの?マダガスカル沖に浮かぶモーリシャス島にいた鳥で、17世紀に絶滅してしまったんじゃ。今のシチメンチョウより大きくて重い巨大な鳥で、天敵のいない絶海の孤島という環境の中でのんびり暮らしていたんじゃよ。翼は退化して飛ぶことができず、自身の体重のせいでヨタヨタと歩き、木に登れないので地上に巣を作って、のどかに暮らしていたんじゃ。ところが1600年代になってオランダや英国から入植者が入ってきた時、航海の保存食用に乱獲され、また彼らが持ち込んだ犬や猫やネズミが天敵となってあっという間に絶滅してしまったんじゃよ。

わしは、現代の日本企業はドードーに似ていると考えているんじゃ。
退化した翼はマーケティング力であり、巨大化した体を持て余してヨタヨタ歩く姿は、意思決定の遅さそのものじゃな。
でも、絶滅前に発見された時は翼がすっかり退化して「ノロマ」という意味のドードーという名前まで付けられたこの鳥も最初からこうではなかったはずなんじゃよ。それでは生き残れないからの。長い時間を掛けて天敵のいない安全な環境に適応して退化を重ねた結果が、環境の急変に対応できない程にノロマになった姿だったんじゃ。これも今の日本に似ていて悲しいじゃろ?

では、なぜ日本企業はドードーのような姿になってしまったのじゃろうか?
実は日本企業をドードーにしてしまった原因は第二次世界大戦直後の環境の激変だったんじゃよ。それ以前の日本は厳しい環境の中で極めて俊敏で急激な変化にも対応できる国であり企業だったんじゃ。なにしろ、ちょんまげと二本差しの時代からわずか10年で誰も刀を差さなくなり、マゲを結う人もいなくなって、服装と言わず食べ物と言わずとにかく貪欲に西洋文明を取り込んで劇的な進化を遂げたんじゃ。東洋の島国でありながら、どこの国の植民地にもならずに済んだのは、この時代を生きた変化を恐れなかった人々のお陰なんじゃよ。

ところがじゃ、そうやって努力を重ね日清、日露の戦争に勝利してすっかり世界の強国の仲間に入ったと思った日本は、うっかり世界に喧嘩を売ってしまい、こてんぱんに負けてしまったんじゃな。
そして、皮肉なことに戦争の硝煙が治まった頃、日本企業の前には二つの巨大な市場が門を広げてくれていたんじゃ。

ひとつは国内市場じゃ。戦後の日本には工場も学校も家もなく、焼け野原にバラックが建つ中に8000万人近い腹ペコの国民がいたんじゃよ。じゃから生きるため、家族のためにみんな必死に働き、そして食べ物や着る物を調達して生き延びたんじゃ。やがて少しずつ豊かになると冷蔵庫を買い、洗濯機を買い、テレビを買い、そしてついには車や家を買う人まで現れたんじゃよ。凄いじゃろ?こうした猛烈な勤労と旺盛な消費が巨大な市場になったんじゃ。なにしろスタートがゼロに近いからの、全部買って、捨てて、もっと良いものに買い換えて、というサイクルが続いたんじゃ。「いつかはクラウン」というコマーシャルを覚えておるかの?
戦後の復興から始まり、朝鮮戦争特需、高度経済成長、そしてバブルと巨大な国内市場は断続的に50年近くも成長を続けたんじゃよ。市場が急拡大している時は、マーケティングはあまり必要無いんじゃ。なにしろマーケティングとは顧客に選んでもらうための技術じゃからの。

もうひとつはグローバル、つまり海外市場じゃな。
同盟国であったイタリアやナチスドイツが連合軍に降伏した後も、日本は世界を相手にまさに孤軍奮闘していたんじゃ。その根性が裏目に出て、東京はもちろん全国の主要都市のほとんどが焼け野原になり、挙げ句の果ては核爆弾を2発も落とされたんじゃ。やり過ぎじゃな。世界史の常識で考えれば二度と立ち直れないレベルのダメージを被って敗戦したのが日本だったんじゃよ。
そして戦勝国が占領し、統治することになるんじゃ。連合軍と行っても実質は米軍じゃから日本は米国の統治下に入ったんじゃが、そうなると米国としては統治下の国民を飢え死にさせることも凍死させることも出来ないんじゃ。つまり日本を早く復興させないと、ずっと何から何まで面倒を見ることになり、それはたまらんと考えた米国政府は、当時紙クズ同然だった日本円の国際為替レートを1ドル360円で保証してくれたんじゃよ、それも米国政府単独での。現在の為替から見れば4倍近いレートじゃろ。一方で日本は戦争に負けこそしたものの、敗戦までは独自の技術で世界最先端の戦闘機や軍艦を作る技術を持った第一級の工業国だったんじゃ。やがて復興が始まり、国内市場の旺盛な需要のお陰で企業の設備投資が進み生産体制が整ってくると、この為替のレバレッジが強力に作用したんじゃ。「日本製品は品質が良くて安い」という評価を確立し、世界中で飛ぶように売れたんじゃよ。この固定為替レートは1971年に廃止されたんじゃが、ゆるやかに円が強くなる中でも長い間日本企業に有利に働いておったんじゃ。
こうした圧倒的なアドバンテージを持っている時にはマーケティングはあまり必要では無いんじゃ。

こうして、国内・海外の二つの巨大市場でマーケティングに頼ること無く急成長できた環境が出来上がり、それが半世紀も続いてしまったんじゃ。「良い製品を安く大量に作り、それを足と汗で売りまくる」というのが日本企業の必勝法であり、それで世界第二位の経済大国にのし上がったんじゃ。凄いもんじゃの。でも、企業の人的サイクルから言えば50年というのはDNAレベルでマーケティングを退化させるのに充分な時間なんじゃよ。
その結果、天敵のいない南の孤島でドードーが翼を退化させていったように、日本企業はマーケティングがすっかり苦手になってしまったんじゃ。

海外市場での為替優位性も国内市場での消費の成長も完全に止まってからの日本企業は、1600年代のドードーのようなもんじゃな。まさにドードーを襲った悲劇が日本企業に起きたんじゃよ。入植してきた人間の食料として乱獲され、彼らが連れてきた天敵によって安住の地を追われつつあるんじゃ。
“マーケティング"という強力無比な翼と牙を持った外国企業に対して、そのノウハウも人材も組織も、責任者であるCMOも持たない日本企業はまったく歯が立たないじゃろう。実際BtoBと言わずCと言わず、もうかなりの美味しい市場を持って行かれて、国内でも海外でも外国企業と戦って勝ち残っている分野はもうわずかなんじゃよ。

では、日本企業がドードーのように絶滅しないためには、どうしたら良いんじゃろか?
歴史に“if"は無いことは承知の上でわしは3つのステップで進化して欲しいと考えておるんじゃ。

【1】先ず退化した翼、つまりマーケティングを大至急進化させる必要があるんじゃ。これには投資が必要なんじゃよ。金額もじゃが、より重要なのは人的リソースへの投資じゃな。営業や経営企画、製品事業部のエース級を集めてチームを作る。信頼できるマーケティングエージェンシーに出向させる、プロと一緒にプロジェクトチームを作る、あるいは思い切って外資系企業から破格の条件でノウハウを持った経験者を招聘するくらいの投資をしない限り、絶命前に戦える翼にはならんじゃろ。それには経営陣がこの遅れを正確に把握し、危機感を持つことが大事なんじゃ。いつの世も必要は発明の母じゃからな。

【2】次にダイエットじゃな。翼が進化して大空を飛べるようになるまで生き延びるためにはどてどてヨタヨタ歩いている場合ではないんじゃよ。ダイエット、つまり意志決定のスピードを上げて迅速な経営判断ができるようにならなくてはならんのじゃ。ここでも外部のコンサルやアドバイザリーを入れて意志決定を迅速化する必要があるじゃろう。特にマーケティングに関しては社内に分かる人材が居ない以上、人選も、目標設定も、評価もフィードバックもできないはずなんじゃ。だからその企業も自社のマーケティングが強くないことは分かっていても、どこがどれくらい遅れているかを把握しておらんのじゃよ。まぁおおむね“悲惨"なんじゃがの。スピードは「自分なり」ではダメなんじゃ。犬やネコから逃げられるスピードが無ければ意味がないからの。アフリカのダチョウはライオンやヒョウがウヨウヨしている草原でしっかり種を保っておるんじゃから、ドードーにだって出来ない話ではないんじゃよ。

【3】三つ目が知恵じゃな。ドードーは天敵がいないことを良いことに地上に巣を作って卵を産み、雛を育てておったんじゃ。これでは野生化した犬やネコに穫られてしまうのは当たり前なんじゃ。これはわしは人材じゃと思っておるんじゃよ。今、日本の外資系企業で活躍している日本人の多くは新卒で日本企業に就職しているんじゃ。でも、自分の野心や専門性を高めたいという気持ちと、企業の進化のスピードや意味の分からない人事ローテーションに嫌気がさした人が外資系企業に流失し、そこでポジションを得て日本企業に襲いかかっているんじゃよ。
大事な卵や雛を守ることをもっともっと進めないと、優秀な人から順に転職してしまうようでは、その企業に未来があるとは思えんじゃろ。
日本企業はもう中途半端なゼネラリストを量産する人事ローテーションを止めるべきなんじゃ。財務にしても人事にしても、もちろんマーケティングにしても、プロフェッショナルの世界なんじゃよ。プロは2年や3年で育つ訳がないじゃろう?特にマーケティングだけでスタッフ、マネージャー、シニアマネージャー、CMO、グローバルCMOというキャリアプランがある外国企業を相手に、例え同じツールを買ったとしてもアマチュアが勝てるわけがないんじゃよ。マーケティングのプロを育てるということが「翼を進化させる」ことなんじゃ。

わしには今の日本の状況が幕末に似て見えておるんじゃよ。あの時の日本も250年の鎖国によって世界の文明から完全に遅れをとり、ドードーのように弱々しく、ヨタヨタしておったんじゃ。欧米列強からは赤子の手をひねるように征服できる国家だと見えていたはずじゃ。インドや清国のアヘン戦争などで起きていた欧米列強の植民地政策を見てそれに気付いた少数の下級士族が命を掛けて維新を断行し、服装から文化から何から何まで西洋から貪欲に学び、そのお陰で間一髪のところで欧米の植民地にならずに済んだのじゃよ。

今、日本企業はマーケティングに最大限の投資をすべきなんじゃ。プロフェッショナルとしての人材を育て、外部ブレーンと連繋し、組織を構築し、学習曲線を歩きながらしっかりとノウハウを貯める、こういう施策を大車輪で断行すべきなんじゃよ。躊躇したり、先送りする余裕はもう無いんじゃ。

まさに明治維新がそうであったように、情熱をもった若手と、一部の先見の明を持った経営者によって改革は成され、激変した環境に適応した企業だけが生き残るじゃろう。適応できなかった企業はドードーと同じ道を歩むしかないがの。日本企業は必ず出来る、わしはそう信じておるんじゃ。

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