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2019.03.11

BtoBでは、カスタマーがあまりジャーニーしてくれない理由と対策

BtoBマーケティングにおいて、「カスタマージャーニー」ではなくて「企業の奥深くで突然あるいはひっそりと発芽したビジネスチャンスを見逃さないで感知する仕組みの構築」に重きを置いている理由をノヤン先生が解説します。

最近BtoBでもカスタマージャーニーが大流行で、少し過大に評価されているようなので、この話をしようかと思うんじゃ。ワシは「企業の奥深くで突然あるいはひっそりと発芽したビジネスチャンスを見逃さないで感知する仕組み」の構築が大事なのであって、ジャーニーマップはその施策のひとつに過ぎない、と考えておるんじゃよ。

「カスタマージャーニー」って言葉、聴いたことあるじゃろ?顧客の体験を、ワイヤーフレームで繋いだジャーニーマップで見たり、実際に自分で作ってみた人も多いじゃろうな。顧客の行動を分析して仮説を立てるのはとても良いことじゃし、それがマーケターのスキルアップにもなることは間違い無いんじゃが、では、BtoBマーケティングにおいてそのカスタマージャーニーがどれくらい商談を創出できているかと言えば、それ程多くないという現実があるんじゃよ。そこのところから説明しようかの。

コンシューマ(消費者)向けのBtoCマーケティングとビジネス(法人)向けのBtoBを分ける特徴のひとつに「BtoBではビジネスチャンスは突然開いて一瞬で閉じてしまう」ということがあるんじゃ。もう少し詳しく説明しようかの。

BtoCは、購買の意志決定を構成する要素の中で、「嗜好」と「エモーショナル(感情的)」がとても大きいんじゃよ。これは男女のどちらにも言えることで、男性でもお洒落な人の洋服ダンスにはネクタイが100本近くも並んでいることも珍しくないんじゃ。ネクタイは知らないうちに増えてしまうものじゃからの。でもどんなにお洒落な人でも首は1本なんじゃよ、キングギドラは怪獣じゃからの。毎日違うネクタイを身に着けたとしても、週に5本、月に2回同じネクタイを締めるとしても10本もあれば充分なんじゃ。でも100本持っている男性がアウトレットに行って素敵なネクタイを見かけたらきっとまた購入することじゃろう。
BtoB(法人)ではこんなことはめったに起こらないんじゃ。なにしろ購買プロセスの中に「稟議」があるからの。たっぷり余剰在庫が在るものをさらに仕入れるなんて稟議を上げたら、その人のキャリアが危ないじゃろ?

つまり意志決定にロジカルや経済合理性を求めるBtoBでは起こらないことが、嗜好やエモーショナルが大きく影響するBtoCでは起こるんじゃよ。これは高額商品でも同じなんじゃ。
例えば車が大好きな人がいたとして、念願だったアウディを購入したとしようかの。でもこの人の車に対する興味や情熱は欲しかった車を購入したからと言って下がることは無いので、他のメーカーがモデルチェンジをしたらWebを詳しく観るじゃろうし気になれば試乗にも行くじゃろう。もちろん数年間は乗り換えることは無いのにじゃよ。もしBtoB企業で担当者が当分購入する予定がない製品やサービスの展示会やショールームに、仕事を放り出して行ったら上司に怒られるじゃろう?

BtoBで実際に購買に至ったケースをマッピングしてみると、あちこちで脱落したり、また帰ってきたり、突然消えたり、突如マップの最後に乱入してきたりして狙った通りに歩いてはくれないんじゃよ。これは多くのカスタマージャーニーやその元となるペルソナが、BtoCと同じプロセスで設計されているからなんじゃ。BtoBの意志決定はもっとロジカルで合理的なんじゃよ。

ロジカルに意志決定するということは、企業が解決すべき課題を認識し、その解決方法を決定し、解決に必要な製品やサービスを決定するまでの期間だけが「ビジネスチャンスがオープンしている時」なんじゃよ。そこを発見してアプローチできなければ土俵にすら乗れないということなんじゃ。

しかもこのビジネスチャンスがオープンする理由の多くが外的要因に影響されてしまうので、“個別”にはコントロールが利きにくいんじゃよ。

生産管理システムを例に話そうかの。
製造業は生産管理システムという業務アプリケーションを使ってものづくりをするんじゃ。原材料や部品の調達から工場のラインスピード、仕掛かり、検査、梱包などを制御するためのシステムじゃな。もし国内に3ヶ所の工場を持っている企業があったとして、今使っている生産管理システムの現場評価が高かった場合、いくら新しいパッケージを提案してもなかなか話は進まんじゃろ。ニーズが無いからの。リースが終了しても再リースがあるからサポートでも切れない限り使い続けるじゃろ。
ところがじゃ、この会社の主要取引先がタイに進出することになったら、この会社がタイについて行かないという選択肢は無いじゃろう。もし行かなければ大口の顧客を失うことを意味するから、資金の余裕があろうが無かろうが一緒に進出することになるんじゃよ。そうなると人件費はタイバーツで支払うことになるし、国際会計基準でドル建てを多用することになるじゃろう。もし今までの生産管理システムが円しか入力できないシステムなら、早急にリプレースしなければならない訳じゃな。つまりビジネスチャンスが発芽した訳じゃ。この会社の情報システム部門、生産技術部門、経営企画部門などの人々が大急ぎで情報を集めるじゃろう。Webで検索し、資料をダウンロードし、オンラインデモを閲覧し、メルマガ登録をし、セミナーに参加し、製造業システムの展示会があれば数人で参加して、ブースでデモを見て熱心に質問して営業と名刺交換をするじゃろう。そうやって情報収集した中から候補を絞った上で営業と商談を重ね、やがてシステムが決定した時にビジネスチャンスは閉じるんじゃ。その後に訪問しても文字通り「後の祭り」なんじゃよ。

もうひとつ、商談をパイプラインで管理するSFAの例で話そうかの。
「うちは営業支援ツール(SFA)の導入はないですね、社長も専務もああいうの嫌いだから」なんて言ってる会社があったとするじゃろう。ある日社長が同業者の集まりに参加して、そこでライバル会社の社長に「最近どう?」と声を掛けたとして、相手が「いやもう業績が伸びちゃってさ、今期の決算大変だよ、節税対策しなきゃ」なんて言われて、その躍進の理由を聞いてみると「実は2年前にSFAを入れてパイプラインで案件を可視化してみたら、やっぱりあちこちで漏れているところがあったんだよ。そこに的確に指示を出したらやっぱり受注できるんだ」と言われたとするじゃろう。社長は翌日の経営会議で「なんでわが社はまだSFAを入れてないんだ。君たちはどういう情報アンテナを張っているんだ」と雷を落とすんじゃな。

その瞬間から、幹部社員はみんなでWeb検索する、セミナーに申し込む、デモを見る、資料を取り寄せるといった大騒ぎが起きるんじゃよ。もちろん何かに決めて契約するまでの期間限定での。決めてしまえば誰一人としてSFAのオンラインセミナーなんて観ないじゃろうし、検索することも無いじゃろう。

このように個別のビジネスチャンスは外的要因によって突然オープンすることが多く、それを売り手側が勝手に作ったカスタマージャーニーで捉えることは難しいんじゃよ。だからワシはシナリオ機能によるステップメールを推奨しないんじゃ。嫌われるだけじゃからの。

マーケターは、ある日突然発芽したビジネスチャンスを取りこぼさないような設計を心掛けるべきなんじゃよ。

論理的にはカスタマージャーニーを否定したり、これを無視したりするつもりはないのじゃが、ワシは、ジャーニーマップを作るのと同時に、企業の奥深くで突然、あるいはひっそりと発芽したビジネスチャンスを見逃さないで感知し、チャンスが閉じるまでにリーチできる仕組みを構築する事がなによりも大事だと考えておるんじゃよ。それこそが本当に営業や販売代理店をサポートし、競合に先んじて商談を進めるために必要な仕組みであり、BtoB企業が持つべきデマンドセンターの役割なんじゃ。

そしてその肝が、コンテンツマネジメントなんじゃよ。

リードナーチャリングの【Nurturing】の語源は「しつけ・子育て」なんじゃよ。母親は子供に「地震が来たら机の下に入りなさい」って教えるじゃろ。外に飛び出して落ちてきたガラスや看板に当たって大怪我をしたり、逃げる人や車にぶつかって大怪我をする話を聴かせながらナーチャリングするじゃろう。その話が染みこんでいる子供は地震がきたら先ず丈夫そうな机の下に入るんじゃよ。つまり、もし遠隔カメラで学校を見ていて、クラスの子供が全員机の下に逃げ込んだら、それは地震の警報が鳴ったか、地震がきたかのどちらかなんじゃ。これがナーチャリングとスコアを背中合わせに実施する理由なんじゃ。

自分たちが顧客を支援して問題を解決した事例をコンテンツとして紹介し続ける、もしそれを過去に読んだ人の中の誰かが困難な課題にぶつかったとしてじゃ、「参ったな、どうすりゃいいんだ。社長怒ってるよ・・・」となった時に「ん、この状況って前に何かで読んだな?」とメールボックスを検索する。過去のメルマガを見つけて「これだ!この事例だ」とクリックしてWebに行くんじゃな。そして「これ今のうちの状況に似てるなぁ。どうやって解決したんだろ?」「これかぁ。この解決に使ったツールって何?」と次々にクリックしていくじゃろう。この行動を解析すれば、この人の企業の中でビジネスチャンスがオープンになった事を類推することが出来るんじゃ。

BtoBマーケティングの専門家として企業の顧客データの分析や管理をもう30年近くやっているワシから観ても、BtoBにおいては、マーケターが描いたジャーニーマップ通りに歩いてくれる方が稀なんじゃ。

だから、「企業の奥深くで突然あるいはひっそりと発芽したビジネスチャンスを見逃さないで感知する仕組み」をお客さまと一緒にせっせと創っておるんじゃよ。

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