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2019.09.09

サブスクモデルが生み出したBtoBマーケティングの二極化

Sansanの華々しいIPOをきっかけに、BtoBマーケティングに新しい潮流が生まれました。それが既存のマーケティング戦略をどのように変えたのか、また変わらないものは何なのか、ノヤン先生が語ります。

Sansanを知っておるじゃろ?名刺管理サービスの企業で、「それ早く言ってよ~」というCMで一気に知名度を上げ、2019年6月に上場を果たした企業じゃな。
実はこのSansanの上場は、それまでの多くの日本の常識を変えるほどのインパクトがあったんじゃ。ファイナンス面の話はIPOや企業財務の専門家に譲るとして、今回は日本のBtoBマーケティングに与えた影響について書いてみようかの。

最も大きく変わった点は、BtoB企業の中でサブスク型(サブスクリプションモデル)と呼ばれるビジネスモデルのマーケティング手法が確立された事じゃな。これは課金体系がサブスクリプション型だけではなく、月額で数万円から数十万円、年間でも100〜200万円という取引価格のビジネス全般で起こっている事なんじゃ。テレビCMやタクシーCMで広告を大量投入して認知度を上げ、その知名度を背景にWebへのオーガニックを劇的に増やし、それをインサイドセールスにリレーして契約を獲得する、という従来とはまったく異なる営業スタイルができあがったんじゃよ。
このビジネスモデルが大成功し、それをきっかけに多くの企業が同様の手法を駆使して売上げを拡大しておるんじゃ。今やタクシーに乗れば後部座席で観る動画CMの大半はBtoB企業のものじゃろう?昔はダイエットや美容整形、消費者金融ばかりだったタクシー広告が、すっかり様変わりしたんじゃよ。

それまでマスメディアは、BtoBのターゲット以外の人に見られる機会が多く、新卒や中途の採用活動や広報で活用されることはあっても、ターゲットが明確で実際の売上げを作るBtoB向け商材のマーケティングで使われることはほとんど無かったし、使っても効果が薄いと言われておったんじゃよ。その常識を覆したんじゃな。

そして、この手法を採用するには多額の広告予算を必要とするので、新興企業の資金調達意欲は高まり、日本のベンチャー企業の調達額も一気に数十億から100億円規模へと拡大したんじゃよ。この資金は人材や環境、システム開発にももちろん使われるが、多くはマーケティング、特に動画系の広告に使われるんじゃ。それに、いざ上場という時に知らない企業の株の購入には気が進まないじゃろ?新興市場は一般投資家が支えていると言われているので、その投資家に知られているかどうかは大きな問題なんじゃ。この動画CMを多用する手法はそこにも作用して、より高い株価での公開とそれによる資金調達を可能にするんじゃから、大したもんじゃの。

実はBtoB企業の販売形態には、昔から案件単価によるセオリーが存在したんじゃよ。
案件単価というのは、受注から1年以内に獲得できる売上げの合計金額の事で、それによって販売形態が異なるというものなんじゃ。
例えば案件単価が300〜400万円が、直販営業に売らせる下限と言われておるんじゃ。営業の販売予算は企業のよって異なるものの、平均を採ればひとり数億円から数十億円というところじゃろうから、案件単価が低くなると、その商材をたくさん売っても予算を達成出来ないので売らない、という現象が出てくるんじゃよ。そこでこのレンジを下回る製品やサービスはチャネル、つまり販売代理店を活用することになるんじゃ。代理店は固定した顧客に対して頻繁に訪問し、複数の商材を販売している事が多いので、取り扱う商材が多いほど販売効率が高くなるモデルなんじゃ。だから比較的低い単価の商材でも扱ってくれるんじゃが、それでも30〜40万円までが下限で、それを下回ると動きが悪くなると言われておるんじゃよ。まぁ低価格の商材でも販売やアフターフォローにそれなりに手間が掛かるから “割に合わない”となってしまうんじゃな。
そこで案件単価が30万円を下回る商材には、オンラインとインサイドセールスの組み合わせで「非対面」での販売が向いているとされてきたんじゃ。これも10万円以上の商材ならオンラインとインサイドセールスを組み合わせて販売し、10万円以下の商材だとインサイドセールスの維持コストも出ないのでオンラインのみというのが大まかなセオリーだったんじゃよ。ただ、今まではBtoBでの花形はやはり高額商材だったので、企業の中でもロングテールなどと呼ばれる低価格帯の商材や案件はあまり大事にされてこなかったんじゃ。

それがサブスクリプションモデルの登場で一気に脚光を浴びているのが、今の状況なんじゃよ。

「広告→オーガニック→インサイドセールス」という今の流れは、こうしたセオリーの延長線上にあるんじゃが、これは一過性のものではなく、案件単価の安いパッケージ化された商材の販売手法として確立されていくじゃろう。

その一方で、BtoBの商材でも相変わらず対面でなければ商談が進まないものも多いんじゃ。誰でも数千万円の買い物を、電話とWebのボタンだけで発注する気にはならんじゃろ?カスタマイズも発生するし、そもそも「稟議」という購買プロセスがしっかり根付いている日本市場では、ベンダーと会いもせずに商談を進めたらその担当者のキャリアが危うくなるじゃろう。
つまりこうした高額案件単価の商材や、ソリューション系と呼ばれるヒアリングを繰り返して顧客の解決すべき課題を特定し、それを解決するために自社やサードパーティーの商材を組み合わせて提案するタイプのビジネスでは、相変わらずハイスキルの営業が顧客を訪問しながら商談を進めて行くしか無いんじゃよ。

でも、どの企業でもそんなハイスキルな営業の数には限りがあるじゃろ?

  • 販売している商材に対する深い専門知識

  • 導入事例の紹介

  • 顧客の課題や状況の理解力

  • 解決手法を見つけ出すアイデア

  • そのアイデアを実現するネットワークやアッセンブリー能力

  • それを判りやすく整理する提案力

  • 提案を通すための説得力

  • 提案を実現する推進力

これらを兼ね備えた人材が大量に余っているはずもないんじゃよ。だから、その貴重で稀少な人材を有効に動かすためのマーケティングが必要になるんじゃ。こんな優秀な人材を、確度の低い新規案件に割り当てたりする事は絶対に避けなければならないことなんじゃ。これがこれからのデマンドジェネレーションの設計の要諦じゃな。

つまり、BtoBマーケティングの中で比較的案件単価の低い商材は、非対面での販売を基本とし、広告と連動したインサイドセールスという空中戦が主流になる。一方で、案件単価が高くカスタマイズ性の高い商材は、今までもよりもさらに精緻なデマンドジェネレーションや、その進化系であるABMで商談を見つけて供給する仕組みが必要となるじゃろう。

そう考えると、もう「BtoBマーケティング」という大きなカテゴリーが過去のものになり、「エンタープライズマーケティング」とか、「ソリューションマーケティング」などの新しい分類になっていくのかも知れんの。

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