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2020.03.09

フレームワークやモデルは実務家にとってはある種の道具ですから、目的に合わせて使い分ければ良いし、自分に合ったものを選ぶことはどの世界でもとても重要なことです。しかし理解していなければ、最適なものを選ぶことも正しく評価することも出来ないはずです。今回はBtoBマーケティングには縁の深い「ファネル」とその歴史を、2回にわたってノヤン先生が解説します。

さて、今日は三角形をひっくり返したり(flip my Funnel)戻したりするだけでなく、丸くして弾み車(Flywheel)にしたりと忙しいファネルの話をしようかの。「Funnel(ファネル)」、つまり漏斗のことじゃよ。日本では「じょうご」や「ろうと」など、読み方すら定まらない言葉なんじゃが、BtoBマーケティングの世界でも混乱して大分こんがらがっておるんじゃ。でもこれはマーケティングの概念を理解するためにも、設計、実施、検証するためにも、とても大事なモデルじゃからこれを紐解いて解説しようと思うんじゃ。

ファネルと言っても今では世界のBtoBマーケティングのスタンダードになっているSiriusDecisionsのThe Demand Waterfallモデルだけではないんじゃ。あれもそのひとつじゃが、他にも多くのファネルが存在するからの。

考えてみればこの30年間、BtoBのマーケティングツールベンダーやコンサルタント、実務家などのプレゼンや寄稿で、ファネルやその概念図が使われなかった時代は無いと言っても良いじゃろ。当たり前じゃが、水は高いところから低いところに流れるし、汲んだ水に濾過を重ねていけばその量は少なくなるから、グラフにすれば逆三角形になるじゃろう。パイプラインも同じで、持ってる案件が全部受注になる訳は無いし、もしそうなら大量の機会損失が隠れているという事を意味しておるんじゃ。健全なパイプラインは、健全に減衰して先細りしていくものなんじゃよ。それを概念図にすればファネルになるじゃろう。その絞り込み(基準を満たす)を意味する「Qualify」という言葉も、マーケティングの世界には昔から存在したからの。

1980年代後半から1990年代にかけて数多くのCustomer Relationship Management(CRM)Sales Force Automation(SFA)が登場してきたんじゃが、それらの製品リリースの資料や解説には必ずこのファネルが登場したものなんじゃ。企業や製品によってファネルの形や構造に変化をつけ、縦に伸ばしたり、横にしたり、横に長く伸ばしたファネルに穴をたくさん空けて今の顧客管理はいかに無駄が多いかを説明したものなど、それこそ数えきれないほどのファネルのポンチ絵を見てきたんじゃ。

さまざまなファネルの図

さまざまなファネルの図

1990年代に米国のBtoBマーケティングで「Demand Generation(デマンドジェネレーション)」という大きな変革が起きた時も、説明にはこのファネルが使われたんじゃ。もちろんメディアやライターによってはファネルの形状や表現はバラバラだったがの。そして2000年代に入って、このファネルのスタンダードモデルになるThe Demand Waterfallモデルが登場したんじゃ。

ジョン・ネーサンと一緒に

ジョン・ネーサンと一緒に

このモデルの提唱者であるSiriusDecisionsを少しだけ説明しようかの。Gartner(ガートナー)という会社を知っておるじゃろ?アドバイザリー&リサーチファームというカテゴリーではForrester(フォレスター)と並んで世界最大の会社なんじゃ。よく新聞などで半導体の需要予測などの記事の末尾に「ガートナー調べ」なんて書いてあるのを見た事があるじゃろ。この会社はリサーチだけではなく、クライアントに対してアドバイスやコンサルティングサービスを提供しておるんじゃ。そのガートナーの中にBtoBのマーケティングとセールスを研究テーマにしていた専門チームが在ったんじゃ。率いていたのはシニアバイスプレジデントだったJohn Neeson(ジョン・ネーサン)じゃな。そのジョンが2001年にガートナーから独立する形で設立したのがSiriusDecisionsなんじゃ。そしてこのBtoBマーケティング&セールスに特化したアドバイザリーファームが最初に手掛けたのが、ファネルのスタンダードモデルを構築することだったんじゃよ。それがThe Demand Waterfallモデルなんじゃ。

SiriusDecisionsが毎年米国で開催するサミットは、アドバイザリーファームが主催するBtoBのマーケティングイベントとしては世界最大で、毎年世界中から3000人以上を集めて4日間にわたって開催されるんじゃ。わしも毎年参加しておるんじゃが、2018年にフォレスター社による買収の後は正直心配だったんじゃよ。創業メンバーや主要アナリストの転職などがあれば質が下がるからの。でも2019年にテキサス州のオースティンで開催されたサミットは、その規模やクオリティも変っていなかったし創業者のジョンや、Tony Jaros(トニー・ジャロス)などの主要メンバーも顔を揃えたんじゃ、嬉しかったの。

そのSiriusDecisionsが2006年に発表したThe Demand Waterfallモデルは、それまでのファネルを集約し、BtoBマーケティングのマーケティング活動と営業を包含したスタンダードに作り上げたんじゃ。その後2012年に大きく改訂して、これが今でも世界のBtoBマーケティングのスタンダードモデルなんじゃよ。BtoB企業のマーケティングとセールスを構造化し、名前を付け、それぞれのコンバージョンからマーケティングを実数で設計、評価できるようにしたモデルなんじゃ。リードジェネレーション活動を、Web問い合わせなどのインバウンドとリスト購入や展示会出展などのアウトバウンドに分け、そこからナーチャリングとスコアリングを経て、Marketing Qualified Lead(MQL)として営業に渡され、その中から営業が受け入れたものがSales Accepted Lead(SAL)じゃな。そしてSALとマーケティング由来ではなく営業が日頃の活動から作った案件をSales Generated Lead(SGL)の合計をパイプラインで管理すべきSales Qualified Lead(SQL)と呼ぶこのモデルは判りやすく、特に年間のマーケティングプランの作成やマーケティングツールの設計に使いやすいので、世界中に普及したんじゃよ。

ここ数年日本でもバズワードになっているインサイドセールスも、このモデルの中のTeleprospecting Qualified Leads(TQL)Teleprospecting Generated Leads(TGL)を所管するポジションとしてマーケティング内に位置づけると記されておるんじゃよ。これが現代のAccount Development Representative (ADR)の起源じゃな。

The Evolving SiriusDecisions Demand Waterfall

The Demand Waterfallの遷移の図(出典:SiriusDecisions

SiriusDecisionsの中にはこのDemand Waterfall専門のチームがあって、一年中このモデルを研究し、進化させておるんじゃ。最近の5年ほどはTerry Flaherty(テリー・フラハーティ)がこのチームをリードしておるんじゃよ。

テリー・フラハーティと一緒に

テリー・フラハーティと一緒に

2012年に発表以来、世界中の多くのBtoB企業がこれでマーケティングを設計し、実施し、評価し、またこれでツールを開発してきたんじゃ。
実は、今はFlywheel(フライホイール)を提唱しているHubSpotも、Demand Waterfallで自社の製品や開発コンセプトを説明していた時期があるんじゃよ。

『自分たちはリードナーチャリング、つまりMOFU(Middle of Funnel)をメインに設計された他のMAと違って、リードジェネレーションのTOFU(Top of Funnel)を得意とするMAというところに特徴がある』

と他製品との差別化ポイントをDemand Waterfallで説明していたんじゃよ。

次回は、このファネルに起きた新しいムーブメントとその背景を説明しようかの。flip my FunnelやFlywheel、そしてDemand Unit Waterfallなどじゃな。

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