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2021.01.26

今だからSTP ─Back to the Basic─

新製品が売れない、戦略商材としてリリースしたサービスが普及しない、その理由の多くは“乗せる市場を間違っている”ことです。なぜ間違えるのか?それは、マーケティングの最も原典的なフレームワークであるSTPを知識としては知っていても力として使いこなせないからなのです。

今回は、2021年はじめてのノヤン先生の講座じゃな。わしはこの2021年を【原点回帰(Back to the Basic)】の年にしようと考えておるんじゃよ。日本企業がマーケティングを経営戦略の根幹に据えるために何をするべきかを考える年じゃな。中でも、最も古く原典的なフレームワークである【STP】にもう一度光を当てようと考えておるんじゃよ。

実はこのSTPくらい、誰もが知っているが使いこなせていないフレームワークは無いと考えておるんじゃ。多くの企業が抱えている期待通りに売れていない製品やサービスが苦戦している原因は、「勝てない土俵」に乗せられておることなんじゃよ。これはSTPを企業の力として使えない事が原因で起こる問題なんじゃ。

なぜ今STPなのかを説明しようかの?
「企業の目的は顧客の創造である」と喝破したのはピーター・ドラッカーで、「企業の最も重要な資産は顧客情報である」と提唱したのはセオドア・レビットじゃな。これに異論がある人はあまりおらんじゃろ。問題なのはその「顧客」あるいは「顧客になりうる人(市場)」は誰か?ということなんじゃよ。ここがぼやけていたり、ぶれていたりするとマーケティング活動やメッセージ、さらにセールス活動までがバラバラになってしまい、どんなに頑張っても成果が出ないんじゃよ。

【STP】をおさらいしようかの。これはSegmentation、Targeting、Positioningの頭文字を取った言葉で、現代マーケティングの父とも言うべきフィリップ・コトラーがもう50年以上前に提唱したフレームワークなんじゃ。

【S:セグメンテーション】は市場の細分化じゃな。細分化は切り方も難しいし、メッシュのサイズも簡単ではないんじゃ。
「半導体デバイス」というと範囲が余りにも広過ぎて市場を特定することはほぼ不可能じゃろうが、「車載用半導体デバイス」と言えば何とか限定できて、その中ではルネサスが強いんじゃ。デバイスの「コンデンサー」カテゴリーで切れば村田製作所がチャンピオンじゃろ。「工作機械」というのも細分化というには余りに広過ぎるんじゃが、「精密機器の組み立て用ロボット」なら限定できる。そこで強いのはファナックじゃし、「板金加工用機械」と言えばその市場のチャンピオンはアマダなんじゃよ。

さらにBtoBの場合は業種、規模、エリアなどの2次元的属性情報だけで細分化するより、状態などの3次元的な切り方がより重要になってくるんじゃ。商談化の決め手になるのは状態の方が強い相関を持つからの。夏に売上げを伸ばす缶ビールに賞味期限の日付が印字してあるじゃろ。あれはインクジェットプリンターで印字するんじゃが、製造ラインのスピードを上げると印字速度が追いつかないし、何よりプリンターと検査機器を制御するための技術が必要になる。
そこで「もっと製造ラインのスピードを上げたい」という状態(セグメント)で選択されるのが日立産機という企業の製品群じゃな。

【T:ターゲティング】はその細分化した中で自社の製品やサービス、技術、供給能力などが勝てる土俵を探すというプロセスじゃな。実はここがマーケティングすべてのプロセスの中で最も重要で、ここを間違えたら取り返しがつかないプロセスなんじゃ。勝てる土俵を探すことほど重要なことは無いんじゃよ。製品やサービスが売れない原因の多くはこれなんじゃ。勝てる土俵に乗せてもらってないんじゃよ。
言うまでもないがマーケティングのチャネルや媒体、メッセージはこのターゲットセグメントに最適化しなければならないし、その後工程のコールのスクリプトも、販売チャネルもこのターゲットセグメントに最適化しなければならないんじゃ。つまり売れている製品やサービスは「勝てる土俵に乗せてもらって、そこに最適化されたマーケティングとセールスを実施された製品・サービス」なんじゃ。

【P:ポジショニング】は最も説明が分かれるプロセスじゃな。わしはここを「宣言と説明」と解釈しておるんじゃ。BtoCの場合だとここで選択したターゲットセグメントでどういうポジションで戦うか、という解説が一般的なんじゃが、BtoBはそのポジションを先ず定義しないとターゲティングが出来ないんじゃ。だから、ポジションどりではなく、定義したターゲット市場(ターゲットセグメント)の中の企業や担当者に対して宣言し、併せてなぜここをターゲティングしたかを説明するべきなんじゃよ。

さて、STPの説明をこう書けば、「それは知ってましたけど・・・」というだけの事なんじゃが、ではあなたの会社のこの製品・サービスのターゲットセグメントはどこで、その市場を選択するために市場をどうセグメントしたのですか?と質問するとまともな回答が返ってくることは驚く程少ないんじゃよ。つまり「知っている事」と「それを自分の技術として使いこなせる事」は天地ほどの差があるということじゃな。

BtoBの場合はどの市場でも勝てる商材などはほとんど無いと言って良いんじゃよ。それどころか多くの場合は、ある特定の市場(セグメント)でしか勝てないのが普通なんじゃよ。数千億から数兆円という売上げ規模を持つグローバルエンタープライズで使われるERP(エンタープライズリソースプランニング)という市場ではドイツ生まれのSAPが圧倒的に強いんじゃが、1千億円未満の中堅になるとシェアを落とし、数百億円規模になると大手企業の連結子会社を除けばほとんど勝てなくなるんじゃ。
オフィス用の複合機と言えばキヤノン、リコー、ゼロックスなどの大手ブランドがしのぎを削る市場である事は誰でも知っておるじゃろう。でも、ファーストフードやコンビニなどの省スペースが求められる市場になるとブラザーが圧倒的に強くなるんじゃ。彼らのターゲットセグメントはそこじゃからの。非常に高温になる箇所で使用されるパーツの素材には融点の高い金属が求められるんじゃが、3,400度という途方もない融点を持つ特殊金属がタングステンで、その市場では日本タングステンという企業が強いんじゃ。

シンフォニーマーケティングという会社はBtoBに特化したマーケティングのコンサルティング&サービスファームじゃから、多くの企業から相談をいただくんじゃ。当然そのほとんどはあまり売れていない製品やサービス、事業の相談なんじゃ。売れている事業の悩みは受注ではなくて納品じゃからの。製造ラインの稼働状況はどうなのか、納期に間に合うのか、人やパーツの手配は出来るのか、配送体制は万全なのか、という事が心配の種で、これらの心配事はマーケティング会社に相談はしないじゃろ。

そして、その売れていない製品やサービスの担当者からの説明で多く聞くのが「これ良い製品なんですけど、なぜか売れてないのです」という決まり文句なんじゃよ。日本企業が自ら「良くない」と考えている製品やサービスを世に出すことってめったに無いんじゃ。
問題は「視点と視座」なんじゃよ。良い製品・サービスというのは多くの場合「視点」として製品やサービスを観て、それを自社の他の製品や前のバージョン、競合製品・サービスなどと比較しているんじゃな。でも大事な事は視点ではなく「視座」であり、つまり誰から観て?という考え方なんじゃ。これをマーケティング的な表現では「視点=プロダクトアウト」で「視座=マーケットイン」というんじゃな。

つまり「良い製品・サービス」の「良い」が誰から観て良いのか、という質問に明確に答えられなければならないんじゃよ。その製品の前のバージョンと比べて、競合製品と比べて、などは答えにはならないんじゃ。この設問に対する正しい答えは「ターゲット市場内のターゲットペルソナにとって」でなければならないし、それがビジネスを展開している法人とそこで働く人間である以上、「業種・業態・規模・部門・役職・担当ミッション・市場環境・現在の課題」などを活き活きと描かれなければターゲットセグメントを明確に捉えているとは言えないんじゃ。

今までの日本企業はここを営業職が「勘」と「顧客の生情報」で確認しながら行っていたんじゃが、STPはマーケティングのど真ん中であり、経営戦略の根幹とリンクしたものなんじゃ。経営戦略とは経営資源の再配分と言われておるじゃろ?何を基準に再配分するかと言えば、「市場」しか無いんじゃよ。企業は市場という基盤の上で生きている生き物じゃからの。STPを疎かにしていると、自分の会社がどんな基盤の上で生きているのかが見えなくなってくる。企業の盛衰を観ていると、自分の足元を見失った企業は必ず衰退することがわかるんじゃよ。

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