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2008.06.20

ここが本番!アフターフォロー

出典:展コミ / 庭山一郎

展示会のフォローで重要なのは、「お礼メールを送ること」ではありません。「営業に繋げる」効果的なアフターフォローを実施するポイントとは?

いよいよ連載の第4回目は、展示会で集めた名刺やアンケートを活用して、会社に展示会の効果をレポートするプロセスについてです。

お礼だけのメールは逆効果
お礼メールの副作用を知っていますか?

展示会に出展したら「できるだけ早くお礼メールを出すこと」は決まりごとのようになっています。多くの企業が展示会で収集した名刺やアンケートを、先を争うようにデジタル化し、1時間でも早くお礼メールを配信しようと努力しています。しかし、意外かもしれませんが、これは「危険」なことなのです。

自分の会社で配信するメールマガジン(メルマガ)のクリック率(CTR:クリックスルーレート)をきちんと把握している企業なら判っていることですが、コンテンツの良いメルマガのクリック率は5〜8%にもなります。さらに専門性が高い分野でブランドを確立している企業のメルマガであれば平均10%を超えることもあります。ユニークなリストに対してこのレベルのクリック率が出せれば、マーケティングがかなりうまくいっている証拠だと考えて良いでしょう。

その一方、こうしたメルマガ配信1回の配信拒否率は、総配信数に対して通常0.5%以下です。しかし、展示会来場者へのお礼メールは、配信の仕方によっては10%以上の配信拒否が出てしまうことがあります。仮に展示会で3,000枚の名刺を収集したとして、10%なら300人から拒否されたことになります。日本の展示会で名刺やアンケート1枚を集めるコスト(CPL:コストパーリード)は通常1人あたり10,000円ですから、300人に拒否されれば、少なくとも300万円を失った計算になります。

拒否率が跳ね上がる当たり前過ぎる理由

展示会のブース来場者へのお礼メールはなぜそんなに拒否率が跳ね上がるのでしょうか?
理由は意外と単純です。東京ビッグサイトや幕張メッセなどでの展示会をイメージしてみてください。多くの出展企業と来場者でごったがえした会場で、コンパニオンがノベルティと引き換えにアンケートを集めています。そして通路を行き交う人の多くもパンフレットやノベルティが入った紙袋を提げています。日本の展示会の大きな特徴は、大半の来場者が短時間の滞留時間で数多くのブースを回ることです。展示会によって違いもありますが、1ブースあたりの滞留時間は通常10分未満なのです。

展示会が終了して1週間ほどすると、これらの来場者のメールアドレスに山のようにお礼メールが届くことになります。これは名刺やアンケートの入力にどうしても一定の時間が掛かるので、各社ほぼ同じ時期にお礼メールを配信することになるからです。そしてどれも同じような内容の「来場お礼メール」にうんざりした人は、開封しないか、開封してどんどん配信拒否をするのです。これが拒否率を跳ね上げる理由です。

でも少しだけ考えてみてください。もしあなたが展示会に行って、ある企業のブースに立ち寄って掲示パネルやデモを見たとして、その会社から来場お礼メールが来ないからといって「なんて礼儀知らずの会社だ」と思うでしょうか?私はそんな人に会ったことがありません。つまりこのお礼メールは、ただ展示会を担当した人の「仕事の一区切り」という程度の意味しかない場合が多いのです。「お礼メールを配信するまでが担当者の仕事」という会社は多くあります。それが実は数百万円の損失を招いている事にはあまり気がついていません。

営業に渡す前にするべきこと
効果が出ない原因の多くは展示会後に在る

実は展示会が社内で評価されていない場合、多くは展示会に問題があるのではなく、出展後のフォローや営業部門への渡し方に問題があります。
この中でももっとも良くないのは「うちの部署では集めるだけでフォローはしない」というものです。展示会で集めた名刺やアンケートをそのまま整理も仕分けもせずに営業部門に渡してしまっている企業は意外と多いのです。この方法で営業がちゃんと追ってくれている例はごくまれです。

それどころか、営業部門から「3,000枚も渡されてもフォローできないよ」「よく見れば競合がいっぱい混ざっているじゃないか」「うちは国内だけしか販売していないのに、韓国や台湾の会社がいっぱい入っていたぞ」などのクレームになり、マーケティングのつくる見込み客リストを営業部門が信用しない、という悪循環を引き起こしてしまいます。
個人情報保護法を守るためにも、事故やクレームを起こして営業の足を引っ張らないためにも「名寄せ」や「競合排除」は必ずマーケティング部門でおこなってください。

気質の理解が最適組み合わせの鍵です

「私たちは少ない人数で頑張って集めたのだから、仕分けや競合排除くらい営業部門がやってくれても良いじゃないか?」と思う方もいると思いますが、これは無理なのです。
なぜなら、営業は基本的に「猟師の気質」を持っています。「動く獲物」にしか興味が無いのです。「動く獲物」とは3ヶ月か半年以内に注文をくれる見込み客のことです。展示会のブースで集まる名刺やアンケートの中で営業がこの「動く獲物」だと識別するのは通常1〜3%だと言われています。ですから展示会を営業に任せたり、来場者に説明させたりすると、3,000枚の名刺を集めて、営業がフォローするのは30社だけ、ということになりかねないのです。

一方、展示会を担当する「販売推進」「営業企画」「マーケティング」などのマーケティング部門の人は基本的に「農耕型」の気質を持っています。農耕型とは、土や天候を良く観察して、その風土に合った種を蒔き、水や肥料をやり、雑草を取り除きながら育成し、1年後の収穫時期まで世話ができる気質です。先にも書いたとおり、日本の展示会で集める見込み客の名刺やアンケートは言わばこの「種」にあたります。大事に育成できる体制が必要なのです。
特にBtoB(法人営業)の場合、担当者が興味を持っても、その企業内にニーズがなければ案件にはなりません。ですから性急に案件化しようと思うと、かえって見込み客を枯らしてしまうことになるのです。

絞り込む適正な数は?

ではマーケティング部門でどこまで絞り込んだら良いのでしょう?
私は1ヶ月に営業がアポイントコールできる数の30%を上限にしましょう、と言っています。営業部門が新規営業のコールを900コールできるのなら300件、300コールしかできないなら100件まで絞り込まなければ営業は追ってくれません。1件に対して最低でも3コールしないと、絞り込んだリストの質の確認もできないのです。なぜならビジネスマンは主婦や個人商店主に比べて多忙なことが多く、他の電話に出ていれば電話には出られませんし、会議に出席していても、外出していても電話には出られません。有望かどうかに関係なく物理的に電話を取りにくいのがビジネスマンです。だからBtoBでは最低でも1件あたり3コールしなければならないし、それができる数が絞り込む上限なのです。

費用対効果の検証
収集したリードデータは大切なビジネスシーズ(種)なのです

説明したように展示会で収集した名刺やアンケートは貴重なビジネスのシーズ(種)なのです。もちろんこの「種」は、季節を待ってよく耕された畑に蒔かれ(データベース化)、水と陽光をいっぱいに浴びながら大切に育成され(良質なコンテンツでの啓蒙や告知)、雑草を取り除かれ(競合やターゲット外の排除)、消毒され(不達や配信拒否などのリストメンテナンス)、ようやく秋に収穫されるまでは食べることは出来ません。
だから今月すぐに注文書が欲しい「猟師気質」の営業マンには価値の無いもののように見えていることが多いのです。

しかし、個人情報保護法が施行され、個人情報を入手する方法が制限された今は、展示会で利用目的を告知しながら収集した名刺やアンケートは本当に貴重な「合法的に入手し育成できる種」なのです。
データベースを整備し、メルマガやWebを使って育成すれば、苦労して展示会で収集した名刺やアンケートから豊かな収穫を約束してくれます。

これを展示会ごとに、レポートすれば良いのです。受注までを把握することができなければ案件を、案件までも把握できなければ「有望見込み客」をレポートすれば良いでしょう。セミナー参加者をその参加者の名刺を収集した展示会ごとに集計すれば、意外に優先度が低かった小規模展示会が自社の製品と相性がいいことを発見できるかもしれません。

とにかく、営業に渡すまでの整理整頓と育成をしっかりやらないと、必ず展示会の出展予算を確保できなくなります。

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