マーケティングキャンパス 基礎から実践までB2Bマーケティングを学ぶサイト
ホーム > コラム > 今知りたい 世界のBtoBマーケティング ─Global Column─ > 世界のマーケティング最前線! ─Oracle 編─
2017.07.26
一人と一羽の海外マーケティング紀行。第二回は、ラスベガスで開催されたOracleの「Oracle Modern Customer Experience 2017」から、世界で最も歴史と権威を持つアワードの授賞式の様子をお届けします。今回、なんと日本を代表する企業がノミネートされました!
後ろ髪を引かれる思いでMarketoのイベント会場であるサンフランシスコのモスコーニュセンターを後にして、タクシーでサンフランシスコ空港に向かい、ヴァージン・アメリカに飛び乗って次の目的地、ラスベガスに移動しました。
サンフランシスコから約1時間半のフライトでラスベガスのマッカラン国際空港に到着しました。「Oracle Modern Customer Experience 2017」が開催される会場のマンダレイ ベイ リゾートが見えてきました。部屋数4,000を誇る巨大なコンベンションセンター併設のホテルです。
巨大ホテル内のコンベンションセンターに作られたイベントレジストレーション会場です。ここにいると米国のBtoBマーケティング関係の知人が次々とやって来るので、ここにいるだけで楽しい時間を過ごすことができます。
未だオラクルが買収する前にEloquaが行っていた10年を超える歴史を持つマーケティングアワード「Markie Awards」の、新設のアカウントベースドマーケティング(ABM)部門でNECがファイナリストにノミネートされ、セレモニーに臨みます。この日は、Oracle バイスプレジデントのエイブ・スミス氏を交えての前夜祭でした。
ノヤン先生:こんなパーティーにワシを連れていかんのはどうかと思うんじゃよ。まったく・・・。
このイベントのオーナーでもある、Oracle上級副社長のローラ・イプセンのウェルカムスピーチで始まります。今回も壇上に上がる人は女性が多く、この業界の女性優位をしっかり反映したイベントになりました。
「20年前からマーケティングや顧客データ管理で企業は劇的に変化すると言われ続けてきた。理論ではその通りでも多くの企業ではそうした変化は起こらなかった。技術が追いついていなかったのです。今、私たちはようやく理論通りのマーケティングやビジネスを実践できる技術を手にしています。10年前の可能性が、今は現実となってビジネスを劇的に変えています」という話しでした。
ノヤン先生:強いだけではなくて、素敵なスピーチじゃったな。
CEOのキーノートはさすがに超満席で、米国の大企業の経営者にはエンターテイメント性も求められる事を実感します。
ノヤン先生:圧倒的な存在感じゃな。凄いもんじゃよ。
キーノートはCEOのマーク・ハードです。いつも通り壇上には上がらず、聴衆と近い目線で階段に腰掛けながら語ります。
「CEOになりたいと思っている人はいるかい?ふむ、じゃ、CEOなんて絶対に嫌だと思う人は?うん、正しい!」
こんな感じで企業を率いるCEOとそれ以外のCクラスの視点の違いなどを紹介していきます。今どきのIT企業の人には珍しくリモートマウスも使わず、「Next chart!」と、言葉で指示して語り続け、自分自身が旅行した際にレンタカーショップで車が借りられなかったエピソードをユーモアたっぷりに紹介しながら、カスタマーエクスペリエンスと、これからのサービスの在り方を的確に語りました。まぁひとことで言えば「貫禄」という言葉がぴったりのキーノートでした。
ノヤン先生:経営会議でこの人に詰められる幹部は大変じゃろうなぁ(笑)。
Markie Awardsは、まだEloquaがOracleに買収される前から始まり、今回で第11回を数えるBtoBマーケティングでは最も歴史と権威を持つアワードのひとつです。そのセレモニーパーティーの様子を紹介します。
17のカテゴリの中で今回、日本企業として初めてNECがアカウントベースドマーケティング(ABM)部門でファイナリストに選出されました。600社を超えるエントリーの中から、パフォーマンスを基準に厳選されたのですから、日本のBtoBマーケティングにとっては、本当に歴史に残る出来事です。
先ほどまで企業のロゴ入りのポロシャツなどのビジネスカジュアルでカンファレンスや展示場を忙しく歩いていた人たちが、見違えるようなフォーマルに着替えて続々と集まってきます。ファイナリストのテーブルはステージの近くで、私もそこに座りました(当社シンフォニーマーケティングはNECさまのマーケティング活動を支援させていただいています)。
壇上に並んだトロフィーを背にファイナリストと。あれを日本に持って帰れますように。
ゴージャスなドレスに着替えたOracle 上級副社長のローラ・イプセン氏の紹介で発表が始まります。
発表が始まると受賞者のテーブルからは歓喜の叫びが起こり、みんなで抱き合ってたたえ合い、その後プレゼンターが待つステージに向かいます。
関係者がステージに上がり、ローラからトロフィーを受け取ります。歓喜、また歓喜、そしてローラを中心に記念撮影という流れです。
もしNECが受賞したら、私もチームの一員として一緒にステージに上がるはずだったのですが、それは来年以降にお預けです。でも、大喜びでステージに上がる受賞者を見ると、日本のBtoBマーケターにもこんな「栄光の場」が必要だと思いました。そして最終的にはここを目指してほしいと、あらためて思いました。
17のアワードの最後は「Modern Marketing Leader of the Year」です。この5社のマーケティング責任者がファイナリスト、つまり最も成果を上げ売り上げに貢献した5人ということになります。
今年の受賞者はケニア航空のマーケティングマネージャーでした。名前が告げられた瞬間、ものすごい歓声が上がり、テーブルの人同士が抱き合い、中には涙を流している人もいました。数年間の奮闘が報われる瞬間です。
授賞式の余韻に浸りつつ「来年こそは獲るぞ」という、ちょっと複雑な気分を抱きながら会場を後にしようとすると、シャーシー・ウパディアイ氏が「おめでとう、惜しかったね」と声を掛けてくれました。
ABMに特化したBIソリューションとして急激にユーザーを増やしているLattice Enginesの創業者でCEOの彼は、私が『究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)』(日経BP社)を出版したときにメッセージを寄せてくれた1人です。ありがたいなぁ。
もう10年以上前から毎年米国のマーケティングカンファレンスに参加していますが、そのたびに、アワードのステージに日本企業が上がるようにならなければ駄目だと考えていました。それが、MarketoとOracleというBtoBマーケティングを代表する2つの企業のイベントで実現したことは、私にとって感慨無量でした。
私はこれまで、「日本のBtoBマーケティングは先進国に比べて15年は遅れてしまった」と言い続けてきました。今でもその差はしっかり存在すると思っていますが、これは追い付くのに15年かかるということではありません。
古来、日本人の得意は吸収力とキャッチアップのスピードです。中堅企業の領域でSansanが、エンタープライズでNECが権威ある賞にノミネートされたことで、2017年は日本が世界に急速に追い付く起点になるでしょう。その場に立ち会えたことは本当にラッキーでした。
*
最後に、相棒のノヤン先生(それぞれの写真の中心にいるオレンジのミミズク)に、今回の旅で出会った米国のBtoBマーケティングのプレーヤーを紹介してもらいましょう。