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2011.11.28

米国のマーケティングに季節要因はあるのか?

text:Shunsuke Ueno

夏休みや年末年始付近は、日本のBtoBマーケティングはあまり活発ではない印象を受けます。では、米国では、季節によってマーケティングに違いはあるのでしょうか。

今回は米国のマーケティングの季節要因についてお話します。
私の仕事は独立コンサルタントという部類になるのですが、固定客のある仕事ではないのでいつも次の仕事が何になるのか予想が出来ず、それが楽しみであり、また少し心配でもあります。大抵は何かのキャンペーンやマーケティングプログラムの立案や計画/実行をするのですが、たまに非常にハイレベル、つまりその会社の営業方針に関わるようなお仕事も頂けます。8月中はある会社の来年度の計画と予算策定に関わらせて頂きました。

日本では4月から新年度が始まる企業がほとんどでしょうから、8月に来年度の計画をするには少し気が早いかもしれませんが、米国では納税の年度期間を好きに決められる制度があり、企業により年度設定が異なります。前述の企業はカレンダーと同じ年度制を採用しています。つまり年度は1月1日から12月31日までになりますので、来年度はあと4ヶ月で始まる事となります。
調査した訳ではないのですが、今までの経験からすると米国の大企業の約半数がカレンダー年度を採用しているのではないかと思います。もっとも例外も多く、例えば消費者向け製品の製造業や小売業などの企業であれば、この8〜9月は年末商戦向けの戦略で、10〜11月は用意で、そして12月は商戦本番で忙しくなる為、年度が1月末に終わるところも多いですね。ウオルマートもターゲットも1月末で年度が終わります。おそらく、小売業向け製造業、卸売り/問屋業やその他のサービス業には、年末商戦用に10〜11月に小売店に販売した物の収入が60日後の1月に入るでしょうから(米国では料金は60日後というのが多いです)、1月か2月が年度末になる企業も多いです。
逆に季節にはあまり関係ないマイクロソフト社は7月から、アップル社では10月から新年度が始まります。また米国連邦政府の年度も10月から始まります。
よって結果的に、国全体では年度による繁忙期や閑散期があまり無いようになっています。税法を決めたときにこれを意識して設計していたとすればすごいですね。

一般論から言うと、時期によってマーケティング効果が増減するのは日本と同様でしょう。
夏休みは人が減ってしまうのでマーケティング効果は低くなりますが、クリスマスや日本のお盆のように大多数が一斉に休む週が無いので、マーケターにとっては効果が下がるのを分かっているのにやめられない面倒な時期です。

11月末から年末までは閑散期になります。11月末にサンクスギビング休暇(4連休)があり、ここからいわゆるホリデーシーズンが始まり、何となく浮かれ気分になりがちで面倒な仕事はホリデーシーズンの後(つまり翌年)にまわされたりします。まあ面倒でない仕事を選んでいる訳ですからビジネスチャンスでもありますが。またシーズン最後にクリスマスと新年1月1日にお休みが来ますので、クリスマスから1月1日まで1週間の休みを取ってしまう人も多く、年末はマーケティングの効果がとても低くなるでしょう。

この時期に逆によく使われる方法がグリーティングカードです。米国ではクリスマス前にカードを送る習慣があります。企業から企業向けですと受付の人が見て捨てるだけですが、個人宛に送れば受取人の好きな絵柄などであったら飾ってもらえます。
日本で年末に卓上カレンダーや手帳などの送付が同じ趣旨ですが、グリーティングカードに書くメッセージは手書きです。ここにいれるのは、我々はあなた個人の事をとても気にしているよ、というメッセージです。家族の事をオープンに話す受取人でしたらその話でもよし、でなければ前回会ったときの事を軽く触れてもよし。マーケターなり営業なりがこの受取人との繋がりをきちんと把握していれば簡単な上に、必ず読んでもらえる貴重なメディアです。
部門全体に送る場合はクッキーなどの詰め合わせバスケットを送る事もあります。最近では電子メールでインターアクティブなグリーティングカードを送るのも流行っていますが、グリーティングメールは山のように来る上に、大した用事がないことがハッキリしているので、何かしらの開けてもらう理由をうまく付けたグリーティングメールを作らないと効果は低いでしょう。

日本と違って米国で特に注意すべきなのが、上記の年度末と宗教、営業日の違いです。
まず宗教ですが、国全体ではクリスマスに代表されるように何となくキリスト教系の休日に従っています。
しかし、米国の経済のキーポイントや弁護士など専門職に深く根を張っているのがユダヤ教の人たちです。企業単位でしたら国の休日のみを採用しますが、個人単位で見ますとユダヤ教の聖日なので休みます、というのは結構ある話です。そういう聖日には、地下鉄がラッシュアワーであるにも関わらず座れることがある程に空いていますので、実際かなりの数の国民が休んでいるのだと思います。その為マーケティングや営業活動のキーパーソンはそれぞれ何教なのか、そして宗教上の休みはいつなのかをはっきり把握する必要があります。
例えば医療系などの弁護士の助言が常に必要な企業など、いざ何か必要になった時に宗教上の理由で仕事ができない(電話も取ってはいけないそうです)のでは困ります。
次に営業日ですが、12月26日から30日までは一応営業日であり、1月2日からは仕事が始まります。例えば部品卸売りなどの特に小額を長期に渡って売る企業の場合、お客さんがいざ新年の仕事を始めようと納入業者に連絡を入れても、業者が休みだったら、そこで話が止まってしまいます。
また、1月1日に年度が替わる企業も多いので、新予算を使った購入が開始されます。さらに、特に卸売業などは1月末が年度末なので、そちらに売り込むB2B企業は正念場が始まったばかりです。私自身、広告代理店に勤めていた時に1月1日からのキャンペーンの為に年末年始働いた事もあります。

よって、全体で見ると季節的な大きな動きは見られるものの、業界や個々の企業によって非常に大きな差がありますので、これらの差を活かしてチャンスをつかむのがおいしい方法かと考えています。

ノヤンのつぶやき

ノヤン

日本のBtoBというと4月から7月までの展示会シーズンと、9月以降の刈り取り、そして10月以降の次年度の予算獲得を狙ったキャンペーンという循環が一般的じゃが、米国ではやはり個人の宗教まで考えなければならないんじゃな。勉強になるわい。

Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。

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