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ホーム > インタビュー > スペシャル対談[ダッソー・システムズ] “良い製品”から“良い経験”を売る時代へ ダッソー・システムズが考えるマーケティングの未来(前編)
2017.08.24
良い製品を創り、優秀な営業がお客様に持っていけばモノが売れる時代は、テクノロジーの進化と共に終焉を迎えました。今、共感することで得られる経験こそが価値となり、その価値をいかに創出するかが成功の鍵となっています。今回は、企業の“価値の創出”を支えるプラットフォームを提供し、変革の中心を担うダッソー・システムズの最高戦略責任者モニカ・メンギニ氏にインタビューを行い、同社が描く未来について語っていただきました。
Monica Menghini(モニカ・メンギニ)氏
ダッソー・システムズ
CSO(最高戦略責任者)
Simon Hathaway(サイモン・ハサウェイ)氏
ダッソー・システムズ
CMO(最高マーケティング責任者)
庭山 一郎
シンフォニーマーケティング株式会社
代表取締役
庭山:本日はお時間をいただき、ありがとうございます。今日は、ダッソー・システムズ様が取り組まれている日本向けの戦略について伺っていきたいと思います。はじめに、貴社が提供するソリューションについてご紹介いただきたいのですが、『3DEXCITE』は貴社のマーケティングソリューションという位置付けになりますか。
メンギニ氏:『3DEXCITE』をご紹介する前に、私のダッソー・システムズにおけるミッションについてお話しますね。
今、自動車産業にハイテク産業、あらゆる分野において“価値の創出”を求める変革が起こっています。これは、エクスペリエンス(経験)の時代のはじまりであり、当社はこの変革を実現するプラットフォームとして『3DEXPERIENCE プラットフォーム』を開発しました。そしてこのさまざまな産業の変革を支えるソフトウェアソリューションを創ることが私のミッションなのです。『3DEXCITE』は『3DEXPERIENCEプラットフォーム』上のブランドの一つであり、エクスペリエンス(経験)の時代におけるマーケティングソリューションとして位置付け開発したソリューションでもあります。
なぜダッソー・システムズがマーケティングソリューションなのか、という疑問を持たれると思いますが、これは、会社の資産をCross-Enterprise(横串)で使えるようにするプラットフォームが必要であり、その要素の一つにマーケティングが含まれているからです。
例えば、設計・製造の現場において3Dモデルの共有は主流となっていますが、マーケティング部門においては、どの企業もマーケティングエージェントを使いテレビCMやWEB用にコンテンツを創り直しています。もし他部門がエンジニアリングしたデータをマーケティングでも再利用できたなら、時間もコストも大幅に削減できるでしょう。そのために今あるデータを美しく、そして簡単に使えるようにするためのソリューションが必要となり、『3DEXCITE』はまさにそれを実現するものなのです。
庭山:Sirius Summit(※SiriusDecisionsが主催する世界最大級のBtoBマーケティング&セールスのカンファレンス)などで、「マーケティングと営業を繋げた今、最も重要となることはマーケティングとセールスと製造を繋げることだ」と言われていますし、貴社の製品もそこを担うものであるということは理解しています。しかし、日本のBtoBマーケティングは先進国アメリカから15年遅れているとも言われており、まさに今始まったばかりです。
そもそも、日本企業の9割がマーケティング部門を持っておらず、その中でさらにCMO(最高マーケティング責任者)という役職を持つ企業はわずか1%に満たないような状態です。三者はおろか、マーケティングとセールスでさえ繋がっていません。この遅れをどのようにお考えですか。
メンギニ氏:日本が突出して遅れている、ということはないかと思います。日本という国は非常に豊かな文化を持っていて、設計・エンジニアリングについていえば非常に長い歴史があります。日本においては、マーケティング部門自体が受け入れられずにいたのかもしれませんが、それはマーケティングが遅れていたというわけでなく、マーケティング先進国のマーケティング分析方法が発達していたという違いではないでしょうか。
『3DEXCITE』は、いわゆるマーケティングのツールというわけではなく、マーケティングをエンジニアリングするという発想から生まれたソリューションなので、設計力に長けた日本では受け入れられると思っています。
ハサウェイ氏:『3DEXCITE』を使った成功例もあります。Jaguar Land Rover Automotiveなどでは、マーケティング用の素材を自動生成し活用しています。この例が先進的なわけではなく、世界的に自動化へとシフトしつつある段階であって、この波においては日本が突出し牽引する可能性もあります。
私はCMOに就任して7か月経ちますが、私宛に届くDMやメールは全て同じLinkedInのプロフィールから集められた情報であることがわかります。つまり、どのような手法がCMOにコンタクトできるのか、この数年の間にマーケターにとって最も効果的なアプローチ方法として周知されたということです。
このように変革が進むからこそ、「次に何が出てくるのか」を見据えることが非常に重要になると考えます。『3DEXCITE』の面白いところは、自動化によってタッチポイントを繋げる中で、マーケティングで活用した画像を今後はエンジニアリングにフィードバックする、というような連携が起こる点です。この化学反応が次に何を起こすのか、何が出てくるのか、それが非常に楽しみです。
庭山:マーケティングの幅が広がりますね。貴社のソリューションはEloquaやMarketoのようなマーケティングオートメーション(MA)と連携することはできますか?
ハサウェイ氏:『3DEXPERIENCEプラットフォーム』は全てのレガシーシステムと連携できます。また、今後さらにそれらのプロセスを補助する機能を追加していきたいと考えています。
メンギニ氏:『3DEXPERIENCEプラットフォーム』と他システムを連携する場合は、当社のサービス部門を利用いただくか、あるいはクライアント側で連携作業を行う必要がありますが、世界中のありとあらゆるシステムとの連携を設計思想の基本にしているので、どんな複雑なシステムとも連携可能です。当社のマーケティングチームもMAと連携させて使っています。
『3DEXPERIENCEプラットフォーム』があらゆるシステムのインターフェイスとなり、そこに現れたデータに基づきキャンペーン設計をしたり、結果分析を行うということをしています。
庭山:2014年頃から多くのMAベンダーが日本でローンチしました。これによりデータマネジメントとアナリティクスは飛躍的に良くなりましたが、一方でコンテンツはチープなままです。これは、BtoBマーケティングにおける良質なコンテンツの創り方を知っている人があまりいないために起こっているように思います。
メンギニ氏:そうですね。そうお考えの方には、ぜひ『3DEXPERIENCEプラットフォーム』をご覧いただきたいです(笑)。このプラットフォーム上でソリューションを立ち上げて動かします。
例えば、『3DEXCITE』上でデジタルマーケティングの担当者がデザイン編集をしたり、3Dモデルを編集してマーケティングキャンペーン用にアセット化し、そのまま連携させたシステムからメールキャンペーンを実施できます。つまり、このプラットフォームはあくまでもコンテンツ編集を支援するものとして活用できるのです。
ダッソー・システムズでは全社員が『3DEXPERIENCEプラットフォーム』を使っています。弊社社員が、毎朝出社してまず行うことが、このプラットフォームを立ち上げ、自分が参加するコミュニティの情報をチェックすることです。このコミュニティは同じ建物内で形成されることもあれば、海を越えて形成されることもあり、所属する組織を超えたコミュニケーションによってコンテンツやベストプラクティスを共有しているのです。
庭山:部門間はもちろん、海をも超えた情報共有でコンテンツを創る。とても素晴らしいアイデアですね。
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次回は、同社のリブランディングによってどのような変化が起きているのかをお話いただきます。