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ホーム > インタビュー > ノヤン先生のマーケティング講座 100回記念 スペシャル対談 マーケターは世界を変えるヒーローになる(後編)
2018.06.25
ノヤンからのコメント
前編に続き、セゾン情報システムズの高山さんとの対談のお届けじゃ。後編ではCX HEROに選ばれた高山さんがマーケターとして成し遂げたものに迫ったんじゃ。ワシの講座への熱い想いも語ってくれたんじゃよ。
高山氏:私がセゾン情報システムズに転職した2013年当時、まだマーケティング部門はありませんでした。配属されたのは営業推進部。4〜5名でWEB関係やイベント運営をまわす宣伝広告系の組織でした。ただ、私は前職のときから庭山社長のお話を聞いてマーケティングを勉強していたこともあり、「売上げに貢献するマーケティング」を実現すべく社内で働きかけました。それが今のマーケティング部発足のきっかけです。
庭山:御社ほどの規模の会社でも、2013年にはまだマーケティング部門はなかったのですね。
高山氏:マーケティングがなくてもある程度売れてしまうほど製品が強かったからでしょうね。イベント出展してリードを集める、メールマガジンの発行などは実施していましたが、その先のフォローはできていませんでした。問い合わせがくれば営業に渡す程度で、評価指標も名刺獲得件数や、評価版のダウンロード件数でした。その後、現次長の伊藤が「ちゃんとマーケティングをやる組織をつくろう」とマーケティング部門の課長となり、私がフォローする形で体制を整えていきました。
庭山:では、高山さんはまさにマーケティングという組織とカルチャーを構築していくど真ん中にいらっしゃったということですね。それは面白いですよね。
高山氏:営業側でSalesforceを入れて管理しようという動きもあったので、パイプライン管理の考え方を根付かせたい、そんな将来の青写真も見えていたんですよね。
庭山:会社としては貴重な存在ですね。今からつくろうとしている組織の在り方が具体的にイメージできているということですから心強い。
高山氏:当初は国産のMAツールを使っていましたが、私は前職でシンフォニーマーケティングのDBFocusを使っていたこともあり、機能面での物足りなさを感じていました。そんな折、HULFTのグローバル展開が決まったんです。当時の世界シェアは4位で、2020年には1位になることを目指していたのですが、その国産ツールは中国語に対応していなかった。そこでMAのリプレイスを検討したのですが、それが2014年、ちょうどEloquaが日本でローンチされたタイミングだったんです。
庭山:タイミングが合ったんですね。運がよかった。MAの選定はすんなり決まったんですか?
高山氏:機能面の豊富さが決め手となり、MAはEloquaになりました。もともと国産ツールを使っていた時から、Excelで管理しながらリードを集め、ホットになったときに営業に渡すというフローはできていました。そのフローを基準に各社のMAを比較してみると、Eloquaはできることが多かったんです。Eloquaの初期設定も元々あったフローに合わせて使えるようにしたので、導入は順調に進められました。
庭山:日本では大変珍しい「正しいMAの導入方法」ですね。素晴らしい。日本の多くの企業はMA運用の経験がないので、何がやりたいかを後回しにしてしまいます。デモや、機能の有無を〇×で示している表だけ見て、導入を決めてしまう。実際は、〇と書いてあるからできるというような単純なものではないんですけどね。
御社は、Eloqua導入前から現在の形の基盤となるマーケティングを実行していた。そういう経験を重ねてきたからこそ、自社が選ぶべきMAがどれなのかがはっきり分かったのでしょう。
庭山:導入後の運用はいかがでしたか?
高山氏:つまずきましたね。MAは魔法の箱、バラ色の未来が待っているイメージを持っていたのですが、1年を過ぎる頃には今までのツールと変わらないのでは?と思い始めて…。あの時期はショックでしたね。でもうまくいかない原因はMAではなく、集めた名刺データに属性情報がないことだったのです。会社名はあっても、その会社がどんな業種なのかが分からない。属性情報はセグメント配信やスコアリングには絶対に必要な情報です。これがなければ、都道府県ごとやパートナーだけにメールを配信することはできても「製造業にキャンペーンを打ちたい」などはできないですからね。
庭山:なるほど。企業属性が分からないみたいなことは、実際よくありますよね。一方で営業は、「製造業で、従業員は〇人くらい、売上はいくらくらいのところを狙いたい」と言いますからね。
高山氏:そうなんです。そこで目視で確認しながらExcelのVLOOKUPでテーブルを作って、建設業の社名を一覧にして名寄せして…。そういう地道な作業をやってみて、「ああ、ここが課題だ」ということが分かりました。また、当初はSFAとも連携していなかったので、営業へ渡したその先が見えませんでした。受注したのかどうか、そもそも営業が追ってくれたのかどうかも分からない。だから「企業の属性情報がない」「SFAと連携ができていない」という2つの課題を解決する必要があると考えました。
そのときタイミングよく、社内のシステムを統合させる動きがあったんです。当時は営業とサポートが使っていたSFAが別々にあり、さらにマーケティングでEloquaを使っていたんですが、どれも連携していなかった。その統合プロジェクトの中で、企業情報もきれいにすることができ、属性情報を付ける仕組みも導入しました。それ以降はオンラインで獲得したリードもオフラインで獲得したリードも、必ずこの仕組みを通すようになったので、2つの課題を解決することができたんです。
SFAを連携したことにより、どこで獲得したリードが受注に至ったのかということが把握できるようになりました。マーケティングの費用対効果や売上げ貢献も見えるようになり、昨年からは、キャンペーンで売り上げを拡大していくことに注力できるようになったんです。私はその基盤となる部分を担当していました。
庭山:素晴らしい!
高山氏:ノヤン先生のマーケティング講座は、どの回も全部好きです。一番好きな回を選ぼうと読み返してみたんですが、選べませんでした(笑)。あえて挙げるとすれば「BtoBマーケティングオーケストレーションとは」ですね。いい話だなと思いながら読みました。我々のHULFTはHarmonius Universal Link File Transferの略なのですが、ハーモニーを奏でるという意味で、すごくオーケストレーションと近くて共感しています。データを集めるだけじゃだめで、きれいにして、つないでいかないとなにもできない。組織も同じで、チームで「営業にデータを渡す」というゴールを共有することで、メンバー個々の役割も明確になり、形もできてきた。次の課題は、つなぎの部分をスムーズにしていくことですね。
庭山:日本企業は部分最適になりがちです。展示会担当は名刺を何枚集めたか、セミナー担当は満席にできたかどうか、Web担当はUUやPVで評価してしまう。でも営業や経営サイドから見れば「UU増えました!」と言われても「UUって何?」と思うのが本音です。本来のデマンドジェネレーションとして統合され、同じ指標で評価されるようにならないといけないですよね。
高山氏:はい。今後もノヤン先生には、こういう問題を伝えていってもらいたいです。
庭山:では次に、これからのことをお聞かせください。会社として、個人として、高山さんが今後挑戦したいことはなんでしょうか。
高山氏:会社としてはやはりHULFTを世界一にすることですね。グローバルの拠点と一緒に取り組んで、グローバルNo1を目指します。
庭山:トップオブトップ。それを達成できたらアワードですね!
個人としての目標はいかがでしょうか。
高山氏:先ほどの話に戻りますが、オーケストレーションを根付かせたいですね。仕組みができ、個々の役割も明確になって、各担当が回せるようになった。でもまだ本質の部分で1つのハーモニーとして奏でられてはいないと思うので。
庭山:最後に日本初のCX HEROとして日本のBtoBマーケターにメッセージをお願いします。
高山氏:私の場合、やりたいことが先にあって、そのあとにMAがあった。振り返ってみてもこれがとても大事なことだったなと思うんですよね。いまはMAであったり、DMPなどのアドテクがあったりしますが、基本がしっかり分かってないと結果は出せないと思います。
取り組みを始めていま5年が経ったところなのですが、私も始めたばかりの頃はイベントに出ることだけが目的になっていたことがありました。でもいまは、まず会社の方針として“ここを攻める”という戦略があって、そのためにマーケティングとして何をすべきかを考えるようになりました。そういう考え方に変わって、ようやくここまでこれたと実感しています。どうしても目の前のマーケティング施策の結果ばかりを考えてしまいがちですが、「戦略に従うこと」「チームでオーケストレーションを奏でること」の2つを意識して、ともに日本のBtoBマーケティングを盛り上げていければと思います。
庭山:本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
ノヤンからのコメント
さすがワシの講座を熱心に読んでくれている高山さんじゃの。日本初のCX HEROも頷けるほど、考え方がしっかりしておったわい。この分ならオーケストレーションを奏でて、トップオブトップになるのも遠くないかもしれんの。ワシも高山さんに負けないように頑張らないとじゃな。