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ホーム > 特集 > 再掲によせて「F-15イーグルとマーケティング・ソリューション」

これは、5年以上前の2006年4月に「japan.internet.com」に掲載されたコラムですが、未だに多くの方に閲覧していただいています。私は1990年にシンフォニーマーケティングを設立以来10年間、コンサルタントとして多くのSFACRM導入プロジェクトに関わってきました。そして、あまりにも多くの、導入後に運用に失敗するケースを見て、2000年にコンサルからアウトソーシングへとビジネスモデルを転換しています。

SFAはこれからの日本企業にとって重要なビジネスソリューションです。正しく理解し、運用すれば非常に強力なツールでもあります。SFAが営業の生産性の向上に貢献していないとすれば、ツールの選定か運用設計の誤りか、どちらかを間違えたことが理由で、多くの場合は「運用の設計」なのです。
それを伝えたくてこれを書いた気がします。

今日本は再びSFA導入ブームに沸いています。これがブームで終らないようにと願い、このコラムを再掲します。

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F-15イーグルとマーケティング・ソリューション

出典:japan.internet.com/庭山一郎

オブジェになる運命は最初から決まっていた

私は時々SFAやCRMなどの最先端のマーケティング・ソリューションをジェット戦闘機に例えて話すことがある。

F-15イーグルというアメリカ製の戦闘機は長い間世界最強の戦闘機だと言われてきた。日本を含めた多くの国がこれを主力戦闘機として導入しており、その価格は1機約40億~100億円である。性能比較してみるとこれがいかに優れた兵器かがわかる。スピードや運動性能はもちろん、スマートな戦闘機のくせに拡張性が高く、ちょっと改良して爆弾の搭載能力を高めると、ちゃっかり「ストライク・イーグル」という名の爆撃機になったりするので、使い方に よっては1機で数個大隊にも匹敵する力を持っている。

しかし、当然のことだがどこの国でも持てるわけではない。

もしある小国の大統領がこの戦闘機の性能に魅了されて数十億円を投資して購入したとしよう。戦闘機は納期どおりに納品されるだろうし、メーカーからは多くのエンジニアがやってきてチューニングや試運転、動作確認をするだろう。全てのチェックが完了すると彼らは検収印が押された納品控えを手に帰っていく。後に請求書を残して・・・。
しかし、その国にはこの戦闘機を整備できるエンジニアがいない。この高速ジェット戦闘機を管制できるレーダーシステムも持っていないし、航空戦を指揮できる参謀もいなければ、そもそもこれを飛ばせるパイロットがいない・・・。
かくして世界最強のF-15イーグルは大統領官邸の庭に飾られることになる。数十億円のオブジェとして。

この比喩は大げさだろうか?セールスフォースオートメーション(SFA)、CRM、データマイニング、マーケットプレイス・・・。
BtoB(法人営業)の世界では本当に多くの企業がこうしたマーケティング・ソリューションに多額の投資をし、数ヶ月か数年間苦しみ続けた末に、その活用を断念している。

ASPも解決策にはなりえない

今、この問題を解決する手段としてASP(アプリケーションサービスプロバイダー)という形態が流行っているが、残念ながらこれも解決策にはなりえない。なぜならば、ASPはツール導入時の多額のコストを削減したい、導入後のソフトウェアメンテナンスへのコストや労力を抑えたい、という問題を解決するものだからだ。

上記の比喩のように、多くの企業の抱える問題は「運用できない」ことにある。この小国の大統領の悩みは自国でジェット戦闘機を開発・生産できないことでも、40億円が出せないことでもなく、「戦力として実際に運用できない」ことなのだ。購入金額の支払い方法と整備士の問題だけを解決してもパイロットや作戦指揮官、レーダーシステム、などの運用面の問題は残ってしまう。

弊社は以前コンサルティングをメインビジネスにしていたが、必要なスキルを持った整備士(オペレーター・エンジニア)やパイロット(マーケター)のいないところへのマーケティング・ソリューション導入の手伝いをすることの矛盾を感じて導入コンサルを引き受けなくなった。その後、弊社の仕事はSFAやCRM導入後の再構築が多くなった。導入時のコンサルタントがすでにユーザーの信頼を失っているので、それに代わってなんとか運用できるように再構築する仕事である。

営業本部、情報システム、マーケティング、広報、経営企画・・・さまざまな部門のそれぞれの視点から見た怒りや困惑、不満や焦燥感などを丁寧にヒアリングし、もつれた糸をほぐしていくような仕事だが、不思議なことに失敗した経験はない。まあ、考えてみれば既に多くの人が失敗と判断したプロジェクトに乗り込むわけだから、現状以下は無いところから出発できる利点もある。

しかしそれ以上に大きいのは社内の人がすでにワンクール運用にチャレンジしているので、そのソリューションの限界を知っていることだ。パンフレットに書いてあることが全て実現出来るわけではないし、セールスマンの言ったことが事実とは限らない、そして販売しているベンダーの多くはそのソリューションを自社で運用した経験がないから、運用に関する質問をいくらぶつけても、問題を解決できる答えは返ってこないのだ。

これ以上オブジェを増やさないために

弊社のコンサルティングは決して特殊なものではない。その企業がやりたかったことを実現するには、「どういう機能を備えたツール」と「どういうスキルを持った人材」が「いつ」「どこに」「どれくらい」必要なのか、を運用面にフォーカスして理解するところからはじまる。これが正確に理解できれば、マーケティングからセールスまでをラインとして設計でき、社内にいない人材を「必要な時」までに外部から調達することも出来るし、社内に抱える必要がなければアウトソーシングすることもできる。

逆にこれを明確にしないままソリューションを導入すると、運用をシュミレーションせずにシステムの検収をしなければならないハメになり、いざ使おうとすると「帯に短しタスキに長し」という「無用の長物」を買ったことに後から気づかされる結果になるのだ。

現在弊社の行っているBtoBの見込み客データ管理アウトソーシングサービスは、こうして顧客企業のマーケティングラインを設計している時に、どうしても社内には持ちたくない、あるいは効率良く運用できない業務をワンストップアウトソーシングにまとめたものだ。

SFAやCRMなどのマーケティング・ソリューションはどれも素晴らしい機能を備え、魅力的で、それを導入すれば昨日までの悩みがすべて解決するような幻想を抱かせてくれる。素晴らしいのは嘘ではないし、未来がそこにあるのも事実である。しかし、それらを運用するには自社のリソースやナレッジ、環境を踏まえて運用に関する「成功の条件」を揃えなければ「庭に飾るオブジェ」をまたひとつ増やすことになってしまうのだ。