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2011.01.19
マーケティングの本場アメリカを拠点に活躍するマーケターUeno氏の新連載コラムです。第一回目の今回は、アメリカで広く活用されているモバイル端末を利用したBtoBマーケティングを紹介します。
アメリカで、モバイルマーケティングコンサルタントをしています。現在はフリーランスですが、最近まで広告代理店でマイクロソフト、インテル、Verizonなどのモバイルマーケティング戦略を作ってきました。
同じくアメリカでマーケティングをなさっているハタナカ様を通じて、シンフォニーマーケティングの庭山様とお会いし、アメリカにおいてモバイルでのBtoBマーケティングはどういうものなのか、と言うトピックで楽しくお話をさせていただきました。
このコラムは、その話のまとめと続きを公開でしましょうという企画です。日本での状況は詳しくは存じませんので、日本のことはあくまで参考までで、主にアメリカのお話しをさせていただきます。今回はモバイルBtoBマーケティングについて説明します。
モバイルマーケティングとはその言葉のとおりに、携帯を通して行うマーケティングです。日本で言えば、サーチエンジンで○○○を検索してください、このアドレスに空メールを送ってください、などと広告に出す手法がよく使われているようです。
アメリカでは消費者にテキストメッセージ(日本ではショートメッセージと呼ぶ)を指定のアドレスに送ってもらったり、モバイルサイトやアプリケーション/ゲームなどにバナー広告などを出してクリックしてもらう事による手法が主流です。
よって、いわば数打ちゃ当たる方式で、大々的に広告を出せるような消費者向けの業種にとってはとても有効です。
例えば、今年赤十字が行ったハイチ地震の為のモバイル募金では、実に3千万ドルがテキストメッセージを使って寄付されたそうです。さらには、モバイルのテキストメッセージという誰でも持っていて身近にある道具を使う事で、今までは募金をする意欲や手段がなかった低所得者層やティーンエイジャーを巻き込んだとも言われていますので、モバイルは非常に強力で且つ現代に適したマーケティングツールと言えます。
しかし、 当然ながら 、BtoBを含む、広く一般に広告を出す理由のない業種になりますと、上記などの手法のモバイルマーケティングの効果はとたんに悪くなります。
マーケティングがBtoBの場合、消費者向けマーケティングといくつか大きく違う点があります。まず、広告などでマーケティングの周知を行うときはターゲットを良く絞っておかないと、無関係な相手に広告代を無駄遣いしてしまう可能性があります。
また、買う人、支払う人、使う人が一致するとは限らず、それぞれを納得させられるような理由があった上で、全員の合意があってはじめて買ってもらえます。
そして、これがモバイルという非常にパーソナルな画面の場合、全員の合意をモバイル上で取り付けるのは難しく、よって上記のキーパーソンたちに何をしてもらうかをはっきりさせるのが肝心なようです。
例えばこういうやり方もあります。
農薬等を販売しているある会社は、アメリカ全土に数百人の営業員を展開しています。それぞれが担当の地域の農家や組合を一軒一軒訪問して、時期や状態に見合った製品を説明し、販売しています。この会社に2年ほど前に提案させていただいたBtoBモバイルマーケティングは、スマートフォン用の収穫高計算機アプリケーションを制作することでした。
まず、全営業員にこの計算機アプリケーションを入れたスマートフォン端末を持ってもらいます。そして彼らが農家や組合を訪問したときに、お客様である農家や組合のバイヤーと一緒に、作物の種類、時期、場所、面積などをこのアプリケーションに入れます。すると、本社サーバーで過去のデータと現状での病害や虫害の情報を考慮した上で、このまま何もしなかった場合の収穫予測量と、この社の製品を使った場合の上方修正された収穫予測量の2種類のデータが出されます。
さらに、もしすでに病害や虫害が発生していた場合、すぐアプリケーションから本社にデータを送ると、問題の発生状況をリアルタイムで確認が出来るようになります。また、もし農家のお客様が対応しているスマートフォンをお持ちであれば、このアプリケーションをダウンロードしていただく事も可能です。
この農薬会社の場合、このアプリケーションにより、製品の性能を使用者が一番気にする形で数値化し製品の付加価値を高め、また使用者が提供してくれたデータをクラウドソースとしてお客様に再提供する事で、社自体に対するお客様の信用を上げ、さらに今後データを蓄積して将来の予想精度をあげる事により、総合的な営業力を上げる事が一気にできるようになります。
BtoBマーケティングではあえて宣伝するものでもないので、ニュースになることは滅多にありませんが、上記のようにモバイルBtoBマーケティングはアメリカでは広く活用されています。
次回からは、アメリカのモバイルマーケティング事情、特にBtoBマーケティングを日本とくらべながら、色々なテーマでコラムを書いていきます。
Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。