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2011.03.25

SNSマーケティングの効用とは?

text:Shunsuke Ueno

FacebookやTwitterなどのSNSが世界的に流行っている中、マーケティングに活用している企業も増えてきています。BtoBの世界ではどうでしょうか。米国企業の事例を紹介しながら、SNSのポイントや効果について解説します。

本コラムを読んでいただく前に・・・
本コラムでは、Facebookをはじめとする数々のサービス名が登場します。
日本でお馴染みのサービスもあれば、普段聞き慣れないものまで。
それぞれの特徴やメリットを理解した上で読み進めると、より面白いコラムになっていますので、ぜひご覧ください。

※「用語集」に収録してあるワードもいくつかあります。ご活用ください。

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最近はFacebookやTwitterといったSNS(Social Network Services)が消費者向けマーケティングの一番ホットなエリアになっているようです。
数々の企業がFacebookで自分のプロファイルページを作り、Twitterをして、YouTubeでビデオメディア発信して、顧客の囲い込みなどを行っています。SNSマーケティングは、うまくやればお客が企業またはその製品のファンとなって勝手にプロモーションをしてくれるわけですから、費用は低いし、効果はあからさま、お客の声も直接聞けて、時にはお客自身が他のお客のカスタマーサポートをしてくれたりします。こんなおいしい話はなかなかありませんから大流行するはずです。

たとえば日本でも最近おなじみのGroupon(グルーポン)。広告主探しこそ営業活動が必要ですが、商品広告はツイッターやFacebook、商品宣伝はReTweetなどで SNS上で消費者が勝手に行い、回れば回る程に知名度もサーチエンジンのランクも信用度も上がります。その自動的な部分を上手に利用しているのがグルーポンです。ユーザー数がクリティカルマスに自力で到達する必要がなくユーザーが勝手に増えるのです。

SNSは半匿名の多数の人が情報を共有するのに最適なメディアです。これをマーケティングとして利用する場合、何らかの方法で企業(ブランド)が自分のアイデンティティーをはっきり証明することによって、発信源の明らかな信用のおける情報を発信できるようになります。そして情報自身に高い信用性を持たせる事で、消費者などの通常ユーザーが半匿名性を保ったまま共有する事が出来るようになります。ネット上の情報は雑多で不確実でソースが不明なものが多いので、情報自身の信用性は非常に大きな付加価値になります。この高価値の情報を企業商品宣伝と絡めつつ企業のブランドコントロール下(例えばFacebookとか)で発信する事でファンが集まり、結果的にそのファンが企業が出したい情報を広めてくれます。ファンが広めた情報にも十分価値があれば、さらにその先にまで広がります。
グルーポンもそうですし、ほんとソーシャルとバイラル(口コミ)を合わせると怖い事が出来ますね。

もっとも、悪いニュースも出回るのは早いですね。ブランドとはそもそも消費者との約束事ですから、破ると後が大変です。特にSNSの場合、自社の熱狂的ファンを巻き込んでマーケティングをしていますので、 失敗した場合、彼らを他社のファンにしてしまう怖さがあります。

それを防ぐのは何よりも、約束を破らず嘘をつかない事と、ファンと常にコミュニケーションをとる事。そして各チャンネル(例えば Twitter、Facebook、Linkedin、YouTube など)を組み合わせてちゃんと使うこと。どれもマーケティングコミュニケーションの基本ですが、特に一般の目につくSNSマーケティングの場合、企業にとっての選択肢は「SNSする」か「SNSしない」かしかありません。SNSマーケティングは企業が音頭をとって参加者全員で話をしようという企画です。宴会で幹事が途中で退席したり、司会役がどう見ても不真面目だったらどう思うでしょうか。まじめに取り組まないのであれば最初からしない方がいいでしょう。怖いからと言っておそるおそるSNSするのは必ず失敗に繋がります。とはいえ、明らかに欠点より利点が多いですし、失敗しなければ欠点も無いですし、SNSはとても便利なツールだと思うのです。

こんな猫も杓子ものSNSですが、じつはB2Bでの成功例はあまり聞いた事がありません。確かに固定の顧客を持つB2B企業にはSNSはおそらく不要でしょうが、大方のB2B企業は不特定多数の顧客を相手にしていますので、SNSの特性はそれなりに役に立つはずなのですが、どうも大成功例は見当たりません。

例えば、Ciscoという業務用ネット機器の最大手メーカーがあります。ネットワーク管理者に対するB2B業です。確か去年の今頃か、新しい商品の発表を控えて大々的なSNSマーケティングを行いました。Blogで開発時から情報を小出しにし、YouTubeでビデオを流し、SecondLifeでバーチャルなイベントを開催し、ブランドの入った無料ゲームを作って配布し、Facebookでユーザーと直接話をして、商品発売までに認知度を高めました。それぞれコストはそれなりにかかったでしょうが、ネットワーク管理者に必ず見てもらえる場所に必ず見てもらえる方法で宣伝をしましたので、無節操に広告を打つよりよほど効果が上がったであろうと思います。しかしそれ以来Ciscoが大きなSNSマーケティングをしているようでは無いですね。B2Bは買う人と使う人が違う場合が非常に多いので、SNS単体でマーケティングするのは難しかったのでしょうか。

また、ForresterReserchというリサーチ会社があります。リサーチ業ですので完全にB2Bです。この会社はリサーチ業である事を生かして、リサーチ結果や関連するニュースなどをTwitter、Facebook、Linkedin、YouTubeなどで発信しています。例えば YouTubeで出した企業トップインタビュービデオをTwitterで速報、Facebookで続報と関連情報、Linkedinはディスカッション、最終的に自社サイトでメンバー管理をしているようです。当然 Twitter、Facebook ではバイラルを狙っているでしょうね。自前の日刊業界紙を出しているようなことでしょう。数字が出ていませんので成功しているかどうかは分かりませんが、やり方だけ見るとそれぞれのメディアの特性を生かしていますので、失敗ではないでしょう。ですがどうも大成功でもないですよね。

B2B企業とソーシャルというのは実は結構長い歴史があります。例えば携帯電話のノキアは Forum Nokia という自前のB2Bソーシャルネットワークを10年以上前に立ち上げました。もっと古い話ではインターネットが無かった時代でもコンピュサーブというネットワークが数々のB2Bコミュニティーを支えていました。最近でもJavaをする人たちにはSunのコミュニティーが必須でしょうし、アンドロイドOSやアップルの自前のフォーラムも便利だと思います。これらのコミュニティーに基本的に共通しているのは、ユーザーの積極的な参加と、企業側からの強いサポートだと思います。ユーザーがディスカッションをリードし、それを企業側が奨励する姿勢がどれにも見られます。

これらのコミュニティーと最近のSNSは非常に類似したものですので、特に多数のユーザー(顧客)をもつ業界の場合、ユーザーとの対話をちゃんと継続して有益な情報を出す事によって、いずれ長期的な利益になるであろうということはこれら過去の事例からみても確実です。つまりまだ大成功になる時期になっていないだけで、SNSの重要性は大きくなる一方です。

SNSは短期的に見ると無料で商品を配ってしまったり、よけいなビデオやらを作って、ブログなどで客と無駄話ばかりして、企業の役に立ってるようには見えません。それでもこれら企業がSNSマーケティングをおこなうのは、彼らが長期的なマーケティングビジョンとプランを持って、それに沿ってユーザーとの対話を行っているからです。これら企業はいま、長期プランに沿って数々のテストをしているのであろうと思うのです。

そうしますと、日本の皆様はラッキーです。数々の方法がすでにアメリカ企業のよって試されていますので、日本に合った物を大失敗を恐れずにそこから探せます。ただ、上記の通り、長期プランが無いとあなたのSNSマーケティングは無意味に見えますし、実際無意味でしょう。逆にプランが合って目標値があれば、マーケターの腕の見せ所です。

ノヤンのつぶやき

ノヤン米国の事例を学べるという幸運は、まったくUenoさんの言う通りなんじゃ。
ま、それは日本が米国から大きく遅れているからなんじゃがの。ここに書いてあるコンピュサーブのコミュニティというのはパソコン通信のことなんじゃ。

TCP/IP以前のネットワークじゃな。日本ではNIFTYが大いに盛り上がって、素晴らしいコミュニティが沢山あったんじゃよ。その中にはIBMユーザーズフォーラムや、NECユーザーズフォーラムなどのBtoBフォーラムも多数存在したんじゃ。
ワシもNIFTYのヘビーユーザーだったんじゃよ。

Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。