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2011.04.20

モバイルでB2Bマーケティングは可能か

text:Shunsuke Ueno

スマートフォンやタブレットPCの登場により、ビジネスシーンでのモバイル活用は加速しています。さて、B2Bマーケティングの世界では、モバイルはどのような役割を果たすのでしょうか。

当然です。モバイルほどB2Bマーケティングに向いてるメディアは無いのではないでしょうか。おそらくこのコラムを読まれている多くの皆様も毎日使われているのではないでしょうか。
皆様が顧客を訪問するとき、携帯で連絡を取り、地図を見て、人によっては切符や航空券を買ったりもしているのではないでしょうか。また訪問後に会社に報告したり、時間が出来たら近くに別の顧客がいるか調べたり、これも携帯で行うだろうと思うのです。

マーケティングというのは営業部門がその活動をするにあたり、「何を、どの会社の誰に、どう売ればいいのか」を準備してあげることを指すのだと私は理解します。ですからこれらの自然な携帯の利用法がまさにB2Bモバイルマーケティングそのものなのです。地図を見て顧客に連絡をして会社に報告するのは皆様のB2Bモバイルマーケティング、切符や航空券は交通機関等のB2Bモバイルマーケティングです。ただこれがマーケティングとして認識されにくいのは、モバイルソリューションが一元管理されていないからではないでしょうか。

SAPというBusiness Automationを提供している企業があります。ありとあらゆるビジネスのデータを一元管理する事により、営業や営業以外の部門も最高の効率を実現するアプリケーションを提供しています。この企業は昨年、iPad向けにアプリケーション「SAP BusinessObjects Explorer on iPad」を配布しました。
このアプリケーションにより、営業社員は何をいくらで売れていつ届けられるか、などの情報を顧客の目の前で調べられるようになり、結果その場で契約が取れ、セールスサイクルを大幅に短縮出来るようになったそうです。また管理職は何処で何が起きているのかをリアルタイムで確認し、適切な指示をその場で出す事が出来るようにもなったのです。

また同じようなコンセプトで出されているアプリケーションもいくつかあります。例えば「Hoover's Near Here」というアプリケーションは営業周りをしているときにどの顧客をどういう風に回ればいいのかを調べられます。使う側のこれがマーケティングであるという自覚と、実際に有効活用しようと言うやる気があればとても便利な道具だと思います。

こういうと社内向けだけと考えがちですが、これはマーケターにとってはビジネスチャンスです。米国での話ですが、最近建築、電気、配管工事などの現場責任者にはiPadが流行っているそうです。彼らは最新の設計図や役所から出されたばかりの許可証などを会社のサーバーに入れてiPadからアクセスする事で、行き来の手間を省きつつも正確な情報を取り、生産性を格段に向上させることに成功しました。もし彼らの使う道具の製造元などが、ブランドを見せつつ利便性をもっと上げるような図面参照アプリケーションなどを作れば見事なB2Bモバイルマーケティングが完成します。

また、こちらからアプローチをかけるB2Bモバイルマーケティングもあります。コンピューターメーカー企業のモバイルマーケティングをさせていただいた事があります。
4ヶ月のキャンペーンで製品のアップデートなどの情報を受け取るサービスの登録が目的で、ターゲット客の多そうなサイトにターゲット客の使いそうな携帯端末に絞って集中的に広告を出しました。最終的に1500人がモバイルアラート(お知らせをSMSで受け取るサービス)に登録し、300人がユーザー登録しました。とても少ないようにも見えますが、キャンペーンの目的から考えると、1500人は見込み客で、300人は買うと宣言したようなものです。

つまり、例え5〜6万ドルかかったとしても、単純計算で、商品が欲しいなという客と直接話せるチャンネルを一人20ドルで獲得し、明日にでも買いますという客は100ドルで獲得したとも言える訳です。人を送ったら1件当たりで割ると100ドルでは済まないでしょう。これは単価の高い商品でもあり、非常に良いROI(投資収益率とでもいいますか)を出しているといえます。

モバイルマーケティングはB2Bではとても有効なのになぜかあまり活用しようという企業がいないのはモバイルマーケティングを本業としている私にはとても残念なことです。前述したように、企業の文化として、モバイルマーケティング、もっと突っ込めばマーケティングとは何かがはっきり分かって決まっていない事が多いのでは・・・とも考えます。願わくばこのコラムを書く事で、このコラムを読んだ皆様がどんどんモバイルマーケティングを始めてくださる事で、震災後の日本の景気回復に貢献できますよう、ニューヨークから願っています。

*

今回、SAP日本法人のご担当者の方に上記アプリケーション「SAP BusinessObjects Explorer on iPad」についてお話を伺いました。同社は企業の生産性向上とより円滑なビジネスを実現するため、モバイルソリューションの導入を推進しているそうです。今後、日本でもモバイルを活用したビジネスが形成されていくだろう、とのことでした。
同アプリケーションはiPad/iPhone用があり、日本語版も配布されています。

ノヤンのつぶやき

ノヤンあまり知られていないことじゃが、SNSは20年前は米国より日本の方が進んでおったんじゃ。米国のコンピュサーブをベースに作られたオンラインコミュニティのニフティの上で作られたコミュニティは現代のどのSNSでも実現していない密度と専門性があったんじゃよ。日本人には合っているのかも知れんの。
でも、BtoBで言えば、SNSよりモバイルの方が親和性が高く、利用できる可能性が大きいことは事実なんじゃ。モバイルの持つリアルタイム性や利便性は、ここ数年の日本でのスマートフォンの普及で一気に注目されるじゃろう。

UENOさんの今回のコラムのような仕組みを実現する企業が出てくるのが待ち遠しいのぉ。

Shunsuke Ueno プロフィール
単身アメリカに渡り、20年間インターネット、モバイルなど常に時代の先頭にたったマーケティング活動を行う。マイクロソフト社、インテル社、Verizon社など、大手企業のモバイルマーケティング戦略を手掛ける。現在はフリーランスとして活躍中。